有価証券報告書-第165期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1)経営方針
はじめに、当社グループにおける不適切行為(公的規格又は顧客仕様を満たさない製品等(不適合製品)につき、検査結果の改ざん又はねつ造等を行なうことにより、これらを満たすものとしてお客様に出荷又は提供する行為。以下「本件不適切行為」といいます。)に関し、お客様、お取引先様、株主様その他多数の関係者の皆様に多大なるご迷惑をお掛けしておりますこと、改めて深くお詫び申しあげます。不適合製品の納入先として公表した、のべ688社の安全性検証を早期に完了させるべく、お客様とともに安全性の検証を最優先に進めると同時に、「(2)経営環境及び対処すべき課題」に記載しております再発防止策を進めてまいります。
当社グループは、平成28年4月に、中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION “G+” (ジープラス)」として「素材」「機械」「電力」の3本柱の事業体確立を目指した新中期経営計画をスタートしました。現在、その達成に向けた様々な戦略的な取組みを推し進めております。また、変化の激しい時代、かつ多様な価値観が存在する中で、当社は「働き方変革活動」や「ダイバーシティの推進」などの取組みも継続して進めております。
平成29年には、グループ企業理念を改定し、グループ全社員でこの価値観を意識・共有することによって、全社員が一つになって、より良い企業集団、すなわち「誇り」「自信」「愛着」「希望」溢れる企業集団を作り、当社グループが持続的に発展していくことを目指した活動「KOBELCOの約束 Next100プロジェクト」(次の100年に向けた活動)を開始しております。平成30年においても、この活動の不足している部分を補強しつつ、より強化していきます。加えて、本件不適切行為において、お客様をはじめ多くの皆様に多大なご迷惑をお掛けするとともに、社会に対する大きな影響を与えた反省を踏まえ、「KOBELCOの6つの誓い」を見直し、「品質」に対する指針として「品質憲章」を新たに定めました。当社グループで働く全ての者が共有し、当社グループの信頼回復に全力で取り組んでいきます。
(2)経営環境及び対処すべき課題
足下の当社グループを取り巻く事業環境は、国内においては雇用環境の改善や企業の設備投資及び個人消費の持直しの動きを受け、緩やかな回復基調が続くことが想定されます。海外では、中国においては成長率の鈍化を想定するものの、米国、東南アジア等においては景気回復傾向が続くことが見込まれます。
一方で、海外で見られる保護主義的な通商政策や急激な為替変動などが景気動向に与える影響については、引き続き注視する必要があります。
このような環境において、当社グループが取り組むべき課題は、現在取り組んでいる素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による将来に向けた成長戦略の確実な推進はもちろんのこと、まずは、平成29年10月に公表いたしました本件不適切行為を受けた品質を中心としたガバナンスの立直しと、失った信頼の回復が急務であると認識しております。
〈当社グループにおける品質ガバナンスの立直しについて〉
~これまでの経緯~
当社は、平成28年6月に発覚した神鋼鋼線ステンレス(株)におけるJIS法違反事案を契機として、平成29年4月、JIS等の品質に関する公的規格のみならず、顧客仕様に違反して出荷されている製品の有無を確認するため、当社の全事業部門を対象として、本社主導による品質監査を開始いたしました。また、平成29年8月初旬には、当社グループ全体に対して、過去1年間(平成28年9月から平成29年8月)の出荷実績に対する品質自主点検を平成29年9月から実施することを併せて要請いたしました。
この要請を受け、一部先行して品質自主点検を開始していた当社のアルミ・銅事業部門において、平成29年8月末、本件不適切行為が行なわれていたことが発覚いたしました。
これを受けて、当社は、本件不適切行為のなされた製品の出荷を即時停止するとともに、外部法律事務所を起用した社内調査を実施したうえ、平成29年9月よりお客様への説明を開始し、平成29年10月8日に対外公表をいたしました。
その後、平成29年10月26日、当社と利害関係を有しない弁護士を委員とする外部調査委員会を設置して調査を引き継ぎ、同委員会による調査に全面的に協力してまいりました。
そして、平成29年11月10日、その時点までの当社の原因分析等を取りまとめた報告書を公表するとともに、取締役会の諮問機関として、社外取締役5名を含む8名の委員によって構成される品質ガバナンス再構築検討委員会を設置し、同報告書で示した当社グループガバナンスに関する課題について継続的に検討してまいりました。
その後、当社は、外部調査委員会の調査結果を受け、当社のコンプライアンス委員会、品質ガバナンス再構築検討委員会における検討結果と併せて、本件不適切行為に係る事実関係、原因分析及び再発防止策を平成30年3月6日に公表いたしました。その概要は以下のとおりです。
※当社の公表内容の詳細は、当社ホームページ http://www.kobelco.co.jp をご覧ください。
①本件不適切行為の原因分析
本件不適切行為を引き起こした原因は、a.収益偏重の経営と不十分な組織体制、b.バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下、c.本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続、の3つに集約されると考えております。具体的には、以下のとおりです。
a.収益偏重の経営と不十分な組織体制
・本社の収益評価に偏った経営姿勢に従って、各事業部門が工程能力を十分に検証することなく受注をするといった生産至上主義に陥ったこと
・各事業部門への大幅な権限委譲が本社による統制力の低下を引き起こし、本社による品質コンプライアンス統制が十分に機能しなかったこと
・本件不適切行為が早期発見に至らなかったガバナンス上の要因として、過去に本件不適切行為と類似の行為が発覚した際に当社経営陣が抜本的な対応を行なわなかったことや、事業部門内における監査が十分に行き届いていなかったこと
b.バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
・工程能力に見合わない顧客仕様等に基づく製品の製造、受注の獲得と納期の達成を至上命題とする生産・納期優先の風土があったこと
・事業部門を横断した人事交流や人事異動がほとんど存在しない閉鎖的な組織運営、適切な教育・研修や懲戒処分が行なわれてこなかったこと
・社員の品質コンプライアンス意識が鈍麻していたため、顧客仕様を逸脱しても、一定程度ならば安全性の問題はないため、出荷しても構わないといった誤った考え方があったこと
c.本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続
・品質管理プロセス上の問題として、改ざん又はねつ造を可能とする検査プロセス、単独かつ固定化した業務体制、およそ遵守することが困難な社内規格の設定があったこと
②本件不適切行為に対する再発防止策
当社は、上記の原因分析に基づき、外部調査委員会からの提言も踏まえつつ、本件不適切行為に対する以下の再発防止策を策定し、現在取り組んでおります。
a.ガバナンス面―品質ガバナンス体制の再構築
b.品質マネジメントの変革
c.品質管理プロセスの強化
当社グループによる品質自主点検や外部調査委員会による調査の結果明らかとなった本件不適切行為に係る事実関係や、当社が過去複数のコンプライアンス事案を起こしてきたことも考え併せると、当社は、そのコンプライアンスに関する体制のみならず、組織風土や役員・社員の意識等の面で根深い問題を抱えていると言わざるを得ません。
本件不適切行為の原因を究明していく過程で、当社の品質保証に関するマネジメントや業務プロセスにおける課題に目を向ける必要性はもちろんのこと、品質問題を超えたガバナンス全般を含む、より根本的な改革に取り組む必要性も明らかになりました。また、取締役会のあり方、事業部門制のあり方、人事配置・育成や経営計画策定のあり方等、今後、さらに検討を深めていくべき課題も認識しております。
今後も、最優先事項として安全性の検証に取り組むとともに、上記「②本件不適切行為に対する再発防止策」の項で述べた諸施策を、経営トップが先頭に立ち、当社グループの全社員で真摯にかつ愚直に実行していくことを通じて、組織体制、企業風土の抜本的改革を進める所存です。
なお、当社グループは、本件不適切行為に関し日本の捜査機関による捜査を受けているほか、不適合製品を米国のお客様に対して販売した疑いがあるとして、平成29年10月より、米国司法省の調査を受けております。
加えて、当社グループは、(1)カナダにおいて、当社グループの製造した自動車向け金属製品や、それらを使用して製造された自動車に関する、経済的損失の賠償等を求めるクラスアクション、(2)米国において、当社ADR証券に関する、米国証券法違反(コンプライアンス体制等の虚偽表示)に基づくクラスアクション、(3)米国において、当社の製造した金属製品を使用して製造された自動車に関する、転売価値の下落等の経済的損失の賠償等を求めるクラスアクション、の3つの民事訴訟を提起されており、今後も同様の訴訟を提起される可能性があります。
日本の捜査機関の捜査、米国司法省の調査及び上述の民事訴訟は、いずれも初期段階であり、現時点で最終的な罰金額・損害賠償額等を合理的に見積ることは困難ですが、金銭的負担が生じる可能性があります。
当社グループは、本件不適切行為に伴い生じたこれらの捜査、調査及び訴訟を厳粛に受け止め、早期解決に向け、鋭意取り組んでまいります。
〈2016~2020年度グループ中期経営計画の推進について〉
当社グループは、平成28年4月に「2016~2020 年度グループ中期経営計画」を策定し、素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による成長戦略を一層深化させ、盤石な事業体を確立させる新たな中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION “G+”(ジープラス)」への取組みをスタートいたしました。
収益力強化の面で取り組んできた鋼材事業における上工程の加古川製鉄所への集約については、平成29年11月に完了いたしました。また、前年度に多額の引当金を計上した建設機械事業についても中国における販売体制の見直しと生産体制の再編により、業績を回復軌道に乗せることができております。外部環境は目まぐるしく変化しておりますが、中長期経営ビジョンの実現に向け確実に前進しているものと考えております。
5カ年計画の丁度折り返しを迎える中、現在進行中の輸送機軽量化への取組みや、エネルギー・インフラ分野での事業拡大、電力事業の拡大などを確実に推し進めるとともに、「D/Eレシオ 1倍以下」とする財務規律を維持すべくキャッシュ対策を推進し、経営基盤の強化を通じて、盤石な事業体の確立と成長を目指してまいります。
1)3本柱の事業成長戦略
素材系事業
<輸送機軽量化への取組み>◆ 軽量化実現のためのマルチマテリアル化(※)が加速する自動車分野での取組み
・高強度鋼板(ハイテン)・アルミ製品(板、押出材及び鍛造材)の競争力強化推進
・複数の素材と接合技術を有する当社ならではの幅広いソリューション提案を武器としたグローバルな自動車市場におけるシェア拡大
※自動車軽量化において、自動車メーカーが鋼板、アルミ製品、炭素繊維強化プラスチックなどをそれぞれが持つ優れた特性を活かして部品毎に適材適所で使い分けること。
◆ 運航機数の拡大が見込まれる航空機分野での取組み
・当社が保有するチタン・アルミ・マグネシウムなどの素材事業において、上工程(溶解、鋳造/鍛造)の強化及び下工程(機械加工、表面処理、塗装)への参入・拡大
・サプライヤーが不足するアジア圏での上~下工程一貫完結型のシンプルなサプライチェーン構築
<鉄鋼事業の収益力強化>・鋼材生産の上工程(高炉~連続鋳造)の加古川製鉄所への集約の完了(平成29年度)
・上工程集約による稼働率の向上などによるコスト低減の実現(+150億円/年)
・追加の収益改善策(+300億円/平成28年度からの5カ年)の実行と輸送機分野での成長の両輪で収益の底上げ
機械系事業
<エネルギー・インフラ分野への取組み>・圧縮機事業の拡大に向けた、世界最大級の非汎用圧縮機試運転設備の立上げと各種工場で使用される大型ターボ圧縮機市場への参入
・グローバル展開や商品競争力強化、生産基盤強化(生産効率向上、リードタイム短縮)による汎用圧縮機事業の拡大
・両施策実施によるアジアにおける地位確立
・水素ステーション総合テストセンター新設と再生可能エネルギーを利用した水素ステーションの実証試験による差別化技術の確立、国内外市場での競争力強化及び水素ステーション向けユニットなどの拡販
<建設機械事業の収益力強化>・中国油圧ショベル事業の再構築(需要に応じた現地生産能力の見直しと収益力強化)
・欧米や需要伸張が見込まれるインドでの拡販等の実行
・事業会社の統合による強靭な事業基盤確立
電力事業
<安定収益化への取組み>・既設の神戸発電所の安定操業継続と真岡・神戸の2つの新規発電プロジェクトの着実な推進による、将来に向けた安定収益基盤の確立
2)経営基盤の強化
ⅰ)コーポレートガバナンスの強化
・取締役会の体制見直しなどによるコーポレートガバナンスの強化
ⅱ)人材確保・育成
・ダイバーシティの推進や働き方変革を通じた安全で働きやすい職場作りへの注力による、当社グループの成長を牽引する人材の確保・育成
ⅲ)技術開発力・ものづくり力の向上
・主力製品の競争力強化のための差別化技術、自動車、航空機、エネルギー・インフラ分野で顧客価値を実現する製品・プロセスの創出
・品質力や現場力の強化、IoTなどのデータ活用による生産基盤強化とものづくり力の底上げ
3)財務戦略
・素材系・機械系事業の成長に向けた戦略投資、事業基盤を支える定常投資は、事業キャッシュ・フローにて対応
・財務規律を維持しながら着実に輸送機軽量化など重点分野への投資を実施すべく、1,000億円規模の資産売却、運転資金改善、投資の厳選といったキャッシュ対策を実施
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創立から110年余り、お客様、お取引先様、株主様その他多数の関係者の皆様からの「信頼」を大切にして事業を営んでまいりました。それにもかかわらず、その「信頼」を失ったことは痛恨の極みであります。本件不適切行為に対する当社の責任を果たし、再び「信頼」していただける会社に生まれ変わるために、私共は、「ものづくりの原点」に立ち返り、確かな品質こそが「信頼」の核心であることを改めて心に刻み、不退転の決意を持って再発防止に努めてまいります。
また、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(「会社支配に関する基本方針」)は以下のとおりであります。
1.会社支配に関する基本方針
当社は、明治38年の創立から110年を超える歴史の中で、独自の事業領域を形成してまいりました。特に、当社の素材系事業や機械系事業は事業の裾野が非常に広く、これらの事業分野を構成する個別の事業の多様性を前提として初めて創出されるシナジーが存在いたします。また、これらの事業は、研究開発や生産現場で果敢な挑戦を続ける当社従業員をはじめ、当社との間で長年に亘り信頼関係を培ってきた輸送機やエネルギー・インフラ分野をはじめとする国内外の取引先並びにお客様等の多様なステークホルダーによって支えられております。さらに、当社は、素材系事業における代替困難な素材や部材、機械系事業における省エネルギーや環境に配慮した製品等、当社独自の多彩な製品群を幅広いお客様に供給するとともに、電力事業においても極めて重要な社会的インフラである電力の供給という公共性の高いサービスを提供しており、社会的にも大きな責任を担っているものと考えております。当社は、こうした各事業間における技術の交流・融合によるシナジー効果や、独自・高付加価値製品の提供とこれにより構築されたステークホルダーとの信頼関係、社会的インフラ提供の責務と社会の皆様からの信頼こそが当社の企業価値の源泉であると考えております。
当社は、上場会社として、株式の自由な取引の中で、上記のような源泉から生み出される当社の企業価値、ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する形であれば、支配権の異動を伴う当社株券等に対する大規模な買付行為であっても、当然是認されるべきであると考えておりますが、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、このような当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を向上させる上で必要不可欠な、当社の経営理念、当社を支えるステークホルダーとの信頼関係等の当社の企業価値を生み出す源泉を十分に理解し、その結果として当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を確保し、向上させる者でなければならないと考えております。
したがって、当社は、当社株券等に対する大規模な買付行為を行ない又は行なおうとする者に対しては、関連する法令の許容する範囲内において、適切な対応をとることにより、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保に努めなければならないと考えております。
2.基本方針の実現に資する特別な取組み
(1)経営戦略の展開による企業価値向上への取組み
当社は、平成28年4月に「2016~2020年度グループ中期経営計画」を策定し、素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による事業成長戦略を一層深化させ、盤石な事業体を確立させる新たな中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION“G+”(ジープラス)」への取組みをスタートさせ、その実現に取り組んでおります。
輸送機の軽量化やエネルギー・インフラ等の中長期的に伸張する成長分野に経営資源を集中し、当社グループ独自の付加価値をさらに高め、競争優位性を発揮していくことで、事業を拡大・発展させるとともに、社会への貢献を目指してまいります。
(2)コーポレートガバナンス強化による企業価値向上への取組み
当社は、継続的に企業価値を向上させるためには、コーポレートガバナンスの強化が必要であると考えております。
当社は、監査等委員会設置会社への移行、取締役会メンバーの見直し、独立社外取締役の全員を構成員とし、経営に関する客観的な意見の提供等を行なう場でもある独立社外取締役会議や、委員の過半数を社外取締役で構成する指名・報酬委員会の設置等の様々な取組みを通じて、コーポレートガバナンス体制の強化を図ってまいりました。
今後も、当社は、独立社外取締役会議において出された意見や、事業年度毎に各取締役に対して行なうアンケート及びその結果に対する監査等委員会の評価に基づいて実施する取締役会実効性評価の結果等を踏まえながら、さらなるコーポレートガバナンスの強化に向けて、継続的に検討を進めてまいります。
3.基本方針に照らして、不適切な者によって当社の財務及び事業の決定を支配されることを防止するための取組み
当社は、当社株券等の大規模な買付行為を行ない又は行なおうとする者に対しては、当社の企業価値及び株主共同の利益を確保する観点から、関係する法令に従い、株主の皆様が大規模な買付行為の是非を適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示するとともに、株主の皆様の検討のために必要な時間と情報の確保に努めるものといたします。
また、仮に大規模な買付行為に対する速やかな対抗措置を講じなければ、当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損されるおそれがあると合理的に判断されるときには、株主から経営を負託された当社取締役会の当然の責務として、関連する法令の許容する範囲内において、適宜、当該時点で最も適切と考えられる具体的な措置の内容を速やかに決定し、実行することにより、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保に努めてまいります。
なお、上記2.及び3.に記載の取組みは、上記1.に記載の方針に従い、当社の企業価値及び株主共同の利益に沿うものであり、当社の役員の地位の維持を目的とするものではありません。
はじめに、当社グループにおける不適切行為(公的規格又は顧客仕様を満たさない製品等(不適合製品)につき、検査結果の改ざん又はねつ造等を行なうことにより、これらを満たすものとしてお客様に出荷又は提供する行為。以下「本件不適切行為」といいます。)に関し、お客様、お取引先様、株主様その他多数の関係者の皆様に多大なるご迷惑をお掛けしておりますこと、改めて深くお詫び申しあげます。不適合製品の納入先として公表した、のべ688社の安全性検証を早期に完了させるべく、お客様とともに安全性の検証を最優先に進めると同時に、「(2)経営環境及び対処すべき課題」に記載しております再発防止策を進めてまいります。
当社グループは、平成28年4月に、中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION “G+” (ジープラス)」として「素材」「機械」「電力」の3本柱の事業体確立を目指した新中期経営計画をスタートしました。現在、その達成に向けた様々な戦略的な取組みを推し進めております。また、変化の激しい時代、かつ多様な価値観が存在する中で、当社は「働き方変革活動」や「ダイバーシティの推進」などの取組みも継続して進めております。
平成29年には、グループ企業理念を改定し、グループ全社員でこの価値観を意識・共有することによって、全社員が一つになって、より良い企業集団、すなわち「誇り」「自信」「愛着」「希望」溢れる企業集団を作り、当社グループが持続的に発展していくことを目指した活動「KOBELCOの約束 Next100プロジェクト」(次の100年に向けた活動)を開始しております。平成30年においても、この活動の不足している部分を補強しつつ、より強化していきます。加えて、本件不適切行為において、お客様をはじめ多くの皆様に多大なご迷惑をお掛けするとともに、社会に対する大きな影響を与えた反省を踏まえ、「KOBELCOの6つの誓い」を見直し、「品質」に対する指針として「品質憲章」を新たに定めました。当社グループで働く全ての者が共有し、当社グループの信頼回復に全力で取り組んでいきます。
| KOBELCOの3つの約束 |
| 1. 信頼される技術、製品、サービスを提供します |
| 2. 社員一人ひとりを活かし、グループの和を尊びます |
| 3. たゆまぬ変革により、新たな価値を創造します |
| KOBELCOの6つの誓い | ||
| 1. 高い倫理観とプロ意識の徹底 私たちは、法令、社内ルール、社会規範を遵守することはもちろんのこと、高い倫理観とプロとしての誇りを持って、公正で健全な企業活動を行います。 | ||
| 2. 優れた製品・サービスの提供による社会への貢献 私たちは、「品質憲章」に基づき、安全かつ安心で、優れた製品・サービスを提供し、お客様の満足と社会の発展に貢献します。
| ||
| 3. 働きやすい職場環境の実現 私たちは、安全で安心して働くことができる職場環境を実現します。また、一人ひとりの人格・個性・多様性を互いに尊重し、それぞれが最大限の能力を発揮して活き活きと働ける職場環境を実現します。 | ||
| 4. 地域社会との共生 私たちは、グループの基盤である地域社会に貢献するよう努めます。 | ||
| 5. 環境への貢献 私たちは、より豊かで住みやすい社会づくりを目指して、環境に配慮した生産活動を行い、技術・製品・サービスで環境に貢献するよう努めます。 | ||
| 6. ステークホルダーの尊重 私たちは、お客様、お取引先、社員、株主等を含む幅広いステークホルダーを仲間として尊重し、健全かつ良好な関係を築きます。 |
(2)経営環境及び対処すべき課題
足下の当社グループを取り巻く事業環境は、国内においては雇用環境の改善や企業の設備投資及び個人消費の持直しの動きを受け、緩やかな回復基調が続くことが想定されます。海外では、中国においては成長率の鈍化を想定するものの、米国、東南アジア等においては景気回復傾向が続くことが見込まれます。
一方で、海外で見られる保護主義的な通商政策や急激な為替変動などが景気動向に与える影響については、引き続き注視する必要があります。
このような環境において、当社グループが取り組むべき課題は、現在取り組んでいる素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による将来に向けた成長戦略の確実な推進はもちろんのこと、まずは、平成29年10月に公表いたしました本件不適切行為を受けた品質を中心としたガバナンスの立直しと、失った信頼の回復が急務であると認識しております。
〈当社グループにおける品質ガバナンスの立直しについて〉
~これまでの経緯~
当社は、平成28年6月に発覚した神鋼鋼線ステンレス(株)におけるJIS法違反事案を契機として、平成29年4月、JIS等の品質に関する公的規格のみならず、顧客仕様に違反して出荷されている製品の有無を確認するため、当社の全事業部門を対象として、本社主導による品質監査を開始いたしました。また、平成29年8月初旬には、当社グループ全体に対して、過去1年間(平成28年9月から平成29年8月)の出荷実績に対する品質自主点検を平成29年9月から実施することを併せて要請いたしました。
この要請を受け、一部先行して品質自主点検を開始していた当社のアルミ・銅事業部門において、平成29年8月末、本件不適切行為が行なわれていたことが発覚いたしました。
これを受けて、当社は、本件不適切行為のなされた製品の出荷を即時停止するとともに、外部法律事務所を起用した社内調査を実施したうえ、平成29年9月よりお客様への説明を開始し、平成29年10月8日に対外公表をいたしました。
その後、平成29年10月26日、当社と利害関係を有しない弁護士を委員とする外部調査委員会を設置して調査を引き継ぎ、同委員会による調査に全面的に協力してまいりました。
そして、平成29年11月10日、その時点までの当社の原因分析等を取りまとめた報告書を公表するとともに、取締役会の諮問機関として、社外取締役5名を含む8名の委員によって構成される品質ガバナンス再構築検討委員会を設置し、同報告書で示した当社グループガバナンスに関する課題について継続的に検討してまいりました。
その後、当社は、外部調査委員会の調査結果を受け、当社のコンプライアンス委員会、品質ガバナンス再構築検討委員会における検討結果と併せて、本件不適切行為に係る事実関係、原因分析及び再発防止策を平成30年3月6日に公表いたしました。その概要は以下のとおりです。
※当社の公表内容の詳細は、当社ホームページ http://www.kobelco.co.jp をご覧ください。
①本件不適切行為の原因分析
本件不適切行為を引き起こした原因は、a.収益偏重の経営と不十分な組織体制、b.バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下、c.本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続、の3つに集約されると考えております。具体的には、以下のとおりです。
a.収益偏重の経営と不十分な組織体制
・本社の収益評価に偏った経営姿勢に従って、各事業部門が工程能力を十分に検証することなく受注をするといった生産至上主義に陥ったこと
・各事業部門への大幅な権限委譲が本社による統制力の低下を引き起こし、本社による品質コンプライアンス統制が十分に機能しなかったこと
・本件不適切行為が早期発見に至らなかったガバナンス上の要因として、過去に本件不適切行為と類似の行為が発覚した際に当社経営陣が抜本的な対応を行なわなかったことや、事業部門内における監査が十分に行き届いていなかったこと
b.バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下
・工程能力に見合わない顧客仕様等に基づく製品の製造、受注の獲得と納期の達成を至上命題とする生産・納期優先の風土があったこと
・事業部門を横断した人事交流や人事異動がほとんど存在しない閉鎖的な組織運営、適切な教育・研修や懲戒処分が行なわれてこなかったこと
・社員の品質コンプライアンス意識が鈍麻していたため、顧客仕様を逸脱しても、一定程度ならば安全性の問題はないため、出荷しても構わないといった誤った考え方があったこと
c.本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続
・品質管理プロセス上の問題として、改ざん又はねつ造を可能とする検査プロセス、単独かつ固定化した業務体制、およそ遵守することが困難な社内規格の設定があったこと
②本件不適切行為に対する再発防止策
当社は、上記の原因分析に基づき、外部調査委員会からの提言も踏まえつつ、本件不適切行為に対する以下の再発防止策を策定し、現在取り組んでおります。
a.ガバナンス面―品質ガバナンス体制の再構築
| (ア)グループ企業理念の浸透 ・経営トップが当社グループの企業理念「KOBELCOの3つの約束」とその行動指針である「KOBELCO6つの誓い」の趣旨やこれらに込めた経営幹部の思いを社員に直接語りかける活動である「Next100プロジェクト」活動(次の100年に向けた活動)のさらなる推進による、当社グループの信頼回復に向けた改革の断行 ・品質等のコンプライアンス違反の反省を持ち続けるため、毎年10月を「KOBELCOの約束月間」と制定 ・社会に大きな影響を与えたことを踏まえ、全社員が守るべき誓いである「KOBELCOの6つの誓い」をお客様の満足や社会への貢献を重視した言葉に見直し (イ)取締役会のあり方 ・取締役会の公正性と透明性の向上等を目的に、独立社外取締役の構成比を3分の1以上に変更 ・任意の諮問機関として、委員の過半数を社外取締役で構成する「指名・報酬委員会」を設置 ・会長職を廃止するとともに、独立社外取締役の中から、取締役会議長を選出 ・全事業部門長を取締役とする構造を見直し、素材系1名、機械系1名、電力1名の構成とし、コンプライアンスを総括する取締役、品質を総括する取締役をそれぞれ配置 ・品質コンプライアンスに関する様々な課題を協議する組織として、外部有識者で構成される外部品質監督委員会を設置 (ウ)リスク管理体制の見直し ・「コンプライアンス意識調査アンケート」の定期実施 ・「グループ標準」に基づくグループ会社のリスク管理強化 ・「KOBELCO品質ガイドライン」の策定 ・外部から招聘するコンプライアンス専任の執行役員のもとコンプライアンス統括部を新設 (エ)組織の閉鎖性の改善 ・事業部門・グループ会社の再編による抜本的なガバナンス強化 ・事業部門間での人事ローテーションを実施することによる組織の閉鎖性改善 ・社員意識調査の実施等の施策による現場で生じる諸問題を掌握・解決 (オ)品質保証体制の見直し ・「品質憲章」の制定 ・本社の品質統括部及び事業部門直轄の品質保証部署の設置による製造所/工場・事業部門・本社の階層別の品質保証体制強化 ・品質統括部による品質監査、品質保証担当人材の育成等の統括並びに事業部門の教育・研修支援の実施 ・品質統括部を担当する執行役員の外部からの招聘 |
| (カ)事業管理指標の見直し ・持続的な企業価値向上の実現のため、組織の末端まで機能する健全な内部統制とリスクの早期把握・適切な対応を可能とする目標・指標を設定し、これを踏まえた経営を実行(事業管理指標として、経済性、法令・契約遵守、顧客満足度、品質安定性、安全性、社員満足度、環境負荷を念頭に定義・運用方法を平成30年度中に決定) |
b.品質マネジメントの変革
| (ア)品質マネジメントの対策 ・「KOBELCO品質ガイドライン」による事業所の品質保証マネジメントの強化 ・品質統括部を事務局とするグループ品質リーダー会議の開催等の実施 ・品質保証部署による監査を実施するとともに、本社の専門人材による「品質キャラバン隊活動」による現場の問題解決支援の実施 (イ)品質保証人材の教育・育成 ・品質保証人材を全社共通の専門人材と位置付け、事業部門・事業所間を横断した人材のローテーションや育成の実施 ・品質に係る当社グループで働くすべての人を対象とした、品質憲章に基づく社内教育の強化 |
c.品質管理プロセスの強化
| (ア)品質管理プロセスの見直し ・試験・検査記録の自動化推進とデータ入力の一人作業の極少化 ・出荷基準の一本化による、二重の出荷基準(顧客仕様と社内基準)に起因する不適切行為の機会の排除 (イ)新規受注時の承認プロセスの見直し ・新規受注時の承認プロセスを見直し、顧客仕様に対する自社の工程能力を受注時に把握できる仕組みの整備 (ウ)製造プロセス変更時の承認プロセスの見直し ・品質に影響を及ぼすような製造プロセス変更時の承認プロセスの見直しの実施 |
当社グループによる品質自主点検や外部調査委員会による調査の結果明らかとなった本件不適切行為に係る事実関係や、当社が過去複数のコンプライアンス事案を起こしてきたことも考え併せると、当社は、そのコンプライアンスに関する体制のみならず、組織風土や役員・社員の意識等の面で根深い問題を抱えていると言わざるを得ません。
本件不適切行為の原因を究明していく過程で、当社の品質保証に関するマネジメントや業務プロセスにおける課題に目を向ける必要性はもちろんのこと、品質問題を超えたガバナンス全般を含む、より根本的な改革に取り組む必要性も明らかになりました。また、取締役会のあり方、事業部門制のあり方、人事配置・育成や経営計画策定のあり方等、今後、さらに検討を深めていくべき課題も認識しております。
今後も、最優先事項として安全性の検証に取り組むとともに、上記「②本件不適切行為に対する再発防止策」の項で述べた諸施策を、経営トップが先頭に立ち、当社グループの全社員で真摯にかつ愚直に実行していくことを通じて、組織体制、企業風土の抜本的改革を進める所存です。
なお、当社グループは、本件不適切行為に関し日本の捜査機関による捜査を受けているほか、不適合製品を米国のお客様に対して販売した疑いがあるとして、平成29年10月より、米国司法省の調査を受けております。
加えて、当社グループは、(1)カナダにおいて、当社グループの製造した自動車向け金属製品や、それらを使用して製造された自動車に関する、経済的損失の賠償等を求めるクラスアクション、(2)米国において、当社ADR証券に関する、米国証券法違反(コンプライアンス体制等の虚偽表示)に基づくクラスアクション、(3)米国において、当社の製造した金属製品を使用して製造された自動車に関する、転売価値の下落等の経済的損失の賠償等を求めるクラスアクション、の3つの民事訴訟を提起されており、今後も同様の訴訟を提起される可能性があります。
日本の捜査機関の捜査、米国司法省の調査及び上述の民事訴訟は、いずれも初期段階であり、現時点で最終的な罰金額・損害賠償額等を合理的に見積ることは困難ですが、金銭的負担が生じる可能性があります。
当社グループは、本件不適切行為に伴い生じたこれらの捜査、調査及び訴訟を厳粛に受け止め、早期解決に向け、鋭意取り組んでまいります。
〈2016~2020年度グループ中期経営計画の推進について〉
当社グループは、平成28年4月に「2016~2020 年度グループ中期経営計画」を策定し、素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による成長戦略を一層深化させ、盤石な事業体を確立させる新たな中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION “G+”(ジープラス)」への取組みをスタートいたしました。
収益力強化の面で取り組んできた鋼材事業における上工程の加古川製鉄所への集約については、平成29年11月に完了いたしました。また、前年度に多額の引当金を計上した建設機械事業についても中国における販売体制の見直しと生産体制の再編により、業績を回復軌道に乗せることができております。外部環境は目まぐるしく変化しておりますが、中長期経営ビジョンの実現に向け確実に前進しているものと考えております。
5カ年計画の丁度折り返しを迎える中、現在進行中の輸送機軽量化への取組みや、エネルギー・インフラ分野での事業拡大、電力事業の拡大などを確実に推し進めるとともに、「D/Eレシオ 1倍以下」とする財務規律を維持すべくキャッシュ対策を推進し、経営基盤の強化を通じて、盤石な事業体の確立と成長を目指してまいります。
| 2016~2020年度グループ中期経営計画 基本方針 | ||
| 1)3本柱の事業成長戦略 | 素材系事業 | 輸送機軽量化への取組み |
| 鉄鋼事業の収益力強化 | ||
| 機械系事業 | エネルギー・インフラ分野への取組み | |
| 建設機械事業の収益力強化 | ||
| 電力事業 | 安定収益化への取組み | |
| 2)経営基盤の強化 | ⅰ)コーポレートガバナンスの強化 | |
| ⅱ)人材確保・育成 | ||
| ⅲ)技術開発力・ものづくり力の向上 | ||
| 3)財務戦略 | 財務規律の維持とキャッシュ対策の実施 | |
| 2020年度達成目標 | ||
| ◆ROA(経常損益/総資産):5%以上 | ||
| ◆D/Eレシオ(有利子負債/自己資本):1倍以下を堅持 | ||
1)3本柱の事業成長戦略
素材系事業
<輸送機軽量化への取組み>◆ 軽量化実現のためのマルチマテリアル化(※)が加速する自動車分野での取組み
・高強度鋼板(ハイテン)・アルミ製品(板、押出材及び鍛造材)の競争力強化推進
・複数の素材と接合技術を有する当社ならではの幅広いソリューション提案を武器としたグローバルな自動車市場におけるシェア拡大
※自動車軽量化において、自動車メーカーが鋼板、アルミ製品、炭素繊維強化プラスチックなどをそれぞれが持つ優れた特性を活かして部品毎に適材適所で使い分けること。
◆ 運航機数の拡大が見込まれる航空機分野での取組み
・当社が保有するチタン・アルミ・マグネシウムなどの素材事業において、上工程(溶解、鋳造/鍛造)の強化及び下工程(機械加工、表面処理、塗装)への参入・拡大
・サプライヤーが不足するアジア圏での上~下工程一貫完結型のシンプルなサプライチェーン構築
| 〈取組み実績〉 ・自動車と航空機向けの取組みを全社横断的に進めるため、経営企画部に「輸送機材事業企画室(※)」を新設(平成28年4月) ・中国での自動車用冷延ハイテンの生産拠点となる合弁会社の開業(平成28年4月)により、日・米・欧・中での「ハイテンのグローバル供給体制」構築完了 ・米国に自動車用アルミ押出材生産拠点を設立(平成28年5月)し、建設工事に着手(平成29年度以降、段階的に操業開始し、日・米の両極体制を構築) ・真岡製造所における自動車用アルミパネル材専用設備増強に向けた投資を決定(平成29年4月) ・米国におけるアルミ鍛造品の設備能力増強に向けた追加投資を決定(平成29年4月) ・Novelis Inc.の100%子会社であるNovelis Korea Ltd.と韓国においてアルミ板圧延品を製造する合弁事業契約に合意し、合弁会社「Ulsan Aluminum, Ltd.」を設立(平成29年9月) ・北米における自動車用ハイテンの需要拡大への対応に向け、United States Steel Corp.(USスチール社)との合弁会社であるPRO-TEC Coating Company(現PRO-TEC Coating Company, LLC)に新たに溶融亜鉛めっき鋼板の製造設備を1基増設することをUSスチール社と合意(平成29年9月) ・今後の自動車用超ハイテンの需要拡大への対応に向け、加古川製鉄所薄板工場において、新たに薄鋼板の連続焼鈍設備を中心とした設備投資を決定、建設工事に着手(平成30年4月) ・超ハイテンとアルミを接合できる異種金属接合用ロボットシステムをファナック(株)と共同開発(平成30年4月) ※平成29年4月の自動車ソリューションセンター設立にあわせて、自動車軽量化事業企画室に発展的改編 |
<鉄鋼事業の収益力強化>・鋼材生産の上工程(高炉~連続鋳造)の加古川製鉄所への集約の完了(平成29年度)
・上工程集約による稼働率の向上などによるコスト低減の実現(+150億円/年)
・追加の収益改善策(+300億円/平成28年度からの5カ年)の実行と輸送機分野での成長の両輪で収益の底上げ
| 〈取組み実績〉 ・鋼材生産の上工程(高炉~連続鋳造)の加古川製鉄所への集約(平成29年11月) ・追加の収益改善策を推進中(平成28年度からの2カ年実績+180億円) |
機械系事業
<エネルギー・インフラ分野への取組み>・圧縮機事業の拡大に向けた、世界最大級の非汎用圧縮機試運転設備の立上げと各種工場で使用される大型ターボ圧縮機市場への参入
・グローバル展開や商品競争力強化、生産基盤強化(生産効率向上、リードタイム短縮)による汎用圧縮機事業の拡大
・両施策実施によるアジアにおける地位確立
・水素ステーション総合テストセンター新設と再生可能エネルギーを利用した水素ステーションの実証試験による差別化技術の確立、国内外市場での競争力強化及び水素ステーション向けユニットなどの拡販
| 〈取組み実績〉 ・米国水素ステーション向けに高圧水素圧縮ユニット「HyAC mini-A(ハイアック ミニ エー)」の販売開始(平成29年2月) ・世界最大級の非汎用圧縮機試運転設備を立上げ(平成29年4月) ・プレス装置の世界大手メーカーであるQuintus Technologies社(スウェーデン)を買収し、産業機械事業を拡大(平成29年4月) |
<建設機械事業の収益力強化>・中国油圧ショベル事業の再構築(需要に応じた現地生産能力の見直しと収益力強化)
・欧米や需要伸張が見込まれるインドでの拡販等の実行
・事業会社の統合による強靭な事業基盤確立
| 〈取組み実績〉 ・再参入した米国において、油圧ショベルの組立工場の稼動を開始し、供給体制を確立(平成28年4月) ・コベルコ建機(株)とコベルコクレーン(株)の関係会社を含む統合の完了(平成29年12月) ・インドにてショベル工場の生産能力増強設備投資(2,000台/年から3,000台/年)を意思決定(平成29年11月) ・中国油圧ショベル事業の当社主導での体制再構築 ‐中国側パートナーとの合弁解消合意(平成29年2月) ‐販売代理店の絞込・統廃合、販売管理体制の再構築中 ‐成都(内陸部)を中国向け、杭州(沿岸部)を輸出向け拠点とする生産体制再編完了(平成30年5月) |
電力事業
<安定収益化への取組み>・既設の神戸発電所の安定操業継続と真岡・神戸の2つの新規発電プロジェクトの着実な推進による、将来に向けた安定収益基盤の確立
| 発電規模 | 供給先 | 備考 | |||
| 既設 | 神戸 | 140万kW | 関西電力(株)へ全量供給 | 操業中 | |
| 新設 | 真岡 | 124.8万kW | 東京瓦斯(株)へ全量供給 | 平成31年度稼動予定 | |
| 新設 | 神戸 | 130万kW | 関西電力(株)へ全量供給 | 平成34年度稼動予定 | |
| 合計 | 約395万kW | ||||
| 〈取組み実績〉 ・既設の神戸発電所について、関西電力(株)と現行契約満了後の受給契約を締結(平成28年12月) ・真岡プロジェクト:平成28年6月に建設工事に着手し、予定どおり推進中 ・神戸プロジェクト:環境アセスメントを実施中 |
2)経営基盤の強化
ⅰ)コーポレートガバナンスの強化
・取締役会の体制見直しなどによるコーポレートガバナンスの強化
| 〈取組み実績〉 ・監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行(平成28年6月) ・取締役会実効性評価制度開始(平成28年4月) ・役員研修制度の見直し・強化実施(平成28年4月) ・コンプライアンスを総括する取締役、品質を総括する取締役を配置(平成30年4月) ・外部有識者で構成される外部品質監督委員会の設置(平成30年4月) ・任意の諮問機関として、委員の過半数を社外取締役で構成する「指名・報酬委員会」を設置(平成30年4月) ・独立社外取締役の構成比を3分の1以上に変更(平成30年6月) ・全事業部門長を取締役とする構造を見直し、素材系1名、機械系1名、電力1名の構成に見直し (平成30年6月) ・会長職の廃止、独立社外取締役の中からの取締役会議長の選出(平成30年6月) |
ⅱ)人材確保・育成
・ダイバーシティの推進や働き方変革を通じた安全で働きやすい職場作りへの注力による、当社グループの成長を牽引する人材の確保・育成
| 〈取組み実績〉 ・全事業所にて管理監督職を対象にダイバーシティ推進への理解を深めるとともに気付きを促す研修を実施 ・19時以降の残業の原則禁止や会議の効率化など就労環境改善のための「働き方変革活動」を全社にて開始 (平成28年4月) |
ⅲ)技術開発力・ものづくり力の向上
・主力製品の競争力強化のための差別化技術、自動車、航空機、エネルギー・インフラ分野で顧客価値を実現する製品・プロセスの創出
・品質力や現場力の強化、IoTなどのデータ活用による生産基盤強化とものづくり力の底上げ
| 〈取組み実績〉 ・自動車向けの素材・異材接合技術など自動車軽量化に向けた当社独自のソリューション提案を推進・加速させるため、「自動車ソリューションセンター」を設立(平成29年4月) ・本社の品質統括部及び事業部門直轄の品質保証部署の設置による製造所/工場・事業部門・本社の階層別の品質保証体制強化(平成30年1月) ・「品質憲章」の制定(平成30年2月) ・品質統括部を担当する執行役員の外部からの招聘(平成30年4月) |
3)財務戦略
・素材系・機械系事業の成長に向けた戦略投資、事業基盤を支える定常投資は、事業キャッシュ・フローにて対応
・財務規律を維持しながら着実に輸送機軽量化など重点分野への投資を実施すべく、1,000億円規模の資産売却、運転資金改善、投資の厳選といったキャッシュ対策を実施
| 〈取組み実績〉 ・海外におけるグループ内資金の有効活用や資産の一部売却を実施 ・上場株式や関係会社株式等の資産売却等を実施 |
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創立から110年余り、お客様、お取引先様、株主様その他多数の関係者の皆様からの「信頼」を大切にして事業を営んでまいりました。それにもかかわらず、その「信頼」を失ったことは痛恨の極みであります。本件不適切行為に対する当社の責任を果たし、再び「信頼」していただける会社に生まれ変わるために、私共は、「ものづくりの原点」に立ち返り、確かな品質こそが「信頼」の核心であることを改めて心に刻み、不退転の決意を持って再発防止に努めてまいります。
また、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(「会社支配に関する基本方針」)は以下のとおりであります。
1.会社支配に関する基本方針
当社は、明治38年の創立から110年を超える歴史の中で、独自の事業領域を形成してまいりました。特に、当社の素材系事業や機械系事業は事業の裾野が非常に広く、これらの事業分野を構成する個別の事業の多様性を前提として初めて創出されるシナジーが存在いたします。また、これらの事業は、研究開発や生産現場で果敢な挑戦を続ける当社従業員をはじめ、当社との間で長年に亘り信頼関係を培ってきた輸送機やエネルギー・インフラ分野をはじめとする国内外の取引先並びにお客様等の多様なステークホルダーによって支えられております。さらに、当社は、素材系事業における代替困難な素材や部材、機械系事業における省エネルギーや環境に配慮した製品等、当社独自の多彩な製品群を幅広いお客様に供給するとともに、電力事業においても極めて重要な社会的インフラである電力の供給という公共性の高いサービスを提供しており、社会的にも大きな責任を担っているものと考えております。当社は、こうした各事業間における技術の交流・融合によるシナジー効果や、独自・高付加価値製品の提供とこれにより構築されたステークホルダーとの信頼関係、社会的インフラ提供の責務と社会の皆様からの信頼こそが当社の企業価値の源泉であると考えております。
当社は、上場会社として、株式の自由な取引の中で、上記のような源泉から生み出される当社の企業価値、ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する形であれば、支配権の異動を伴う当社株券等に対する大規模な買付行為であっても、当然是認されるべきであると考えておりますが、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、このような当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を向上させる上で必要不可欠な、当社の経営理念、当社を支えるステークホルダーとの信頼関係等の当社の企業価値を生み出す源泉を十分に理解し、その結果として当社の企業価値、ひいては株主共同の利益を確保し、向上させる者でなければならないと考えております。
したがって、当社は、当社株券等に対する大規模な買付行為を行ない又は行なおうとする者に対しては、関連する法令の許容する範囲内において、適切な対応をとることにより、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保に努めなければならないと考えております。
2.基本方針の実現に資する特別な取組み
(1)経営戦略の展開による企業価値向上への取組み
当社は、平成28年4月に「2016~2020年度グループ中期経営計画」を策定し、素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による事業成長戦略を一層深化させ、盤石な事業体を確立させる新たな中長期経営ビジョン「KOBELCO VISION“G+”(ジープラス)」への取組みをスタートさせ、その実現に取り組んでおります。
輸送機の軽量化やエネルギー・インフラ等の中長期的に伸張する成長分野に経営資源を集中し、当社グループ独自の付加価値をさらに高め、競争優位性を発揮していくことで、事業を拡大・発展させるとともに、社会への貢献を目指してまいります。
(2)コーポレートガバナンス強化による企業価値向上への取組み
当社は、継続的に企業価値を向上させるためには、コーポレートガバナンスの強化が必要であると考えております。
当社は、監査等委員会設置会社への移行、取締役会メンバーの見直し、独立社外取締役の全員を構成員とし、経営に関する客観的な意見の提供等を行なう場でもある独立社外取締役会議や、委員の過半数を社外取締役で構成する指名・報酬委員会の設置等の様々な取組みを通じて、コーポレートガバナンス体制の強化を図ってまいりました。
今後も、当社は、独立社外取締役会議において出された意見や、事業年度毎に各取締役に対して行なうアンケート及びその結果に対する監査等委員会の評価に基づいて実施する取締役会実効性評価の結果等を踏まえながら、さらなるコーポレートガバナンスの強化に向けて、継続的に検討を進めてまいります。
3.基本方針に照らして、不適切な者によって当社の財務及び事業の決定を支配されることを防止するための取組み
当社は、当社株券等の大規模な買付行為を行ない又は行なおうとする者に対しては、当社の企業価値及び株主共同の利益を確保する観点から、関係する法令に従い、株主の皆様が大規模な買付行為の是非を適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示するとともに、株主の皆様の検討のために必要な時間と情報の確保に努めるものといたします。
また、仮に大規模な買付行為に対する速やかな対抗措置を講じなければ、当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損されるおそれがあると合理的に判断されるときには、株主から経営を負託された当社取締役会の当然の責務として、関連する法令の許容する範囲内において、適宜、当該時点で最も適切と考えられる具体的な措置の内容を速やかに決定し、実行することにより、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保に努めてまいります。
なお、上記2.及び3.に記載の取組みは、上記1.に記載の方針に従い、当社の企業価値及び株主共同の利益に沿うものであり、当社の役員の地位の維持を目的とするものではありません。