有価証券報告書-第82期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/23 10:41
【資料】
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【項目】
203項目
当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中における将来の事項については、有価証券報告書提出日(2026年6月23日)現在において判断したものです。
当社グループは、鉄鋼事業を中核とした資源循環型事業を通じて社会と共生し、日本経済および地域社会の発展に貢献することを経営理念に定めています。この理念の実現に向け、安全とコンプライアンスを徹底する経営風土の確立、進取と変革に挑戦する企業風土の醸成、メーカーの原点である現場重視の経営体制の構築を行動指針とし、グループ一丸となって取り組んでいます。
当社グループは、「100年企業」に向け、創業の精神である“Spirit of Challenge”を原点とし、社会のインフラづくりや環境保全に貢献する企業、すべてのステークホルダーに貢献し信頼される企業、そして安定した収益力を備えた強靭な企業集団を目指しています。
(1) 中期経営計画について
当社は、2026年度を最終年度とする中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」を2024年4月に公表しました。本中期経営計画では、「グループ内をつなぐ力」「外部とつなぐ力」「次代につなぐ力」という三つの視点を定性面の中核に据え、事業の成長と経営基盤の強化に取り組んできました。
一方で、計画策定以降、国内外の事業環境は大きく変化しています。国内では、建設分野を中心とした需要環境の変動や人手不足の深刻化、原材料やエネルギー価格の上昇などが継続しています。海外においても、地域ごとに事業環境の濃淡が生じており、経営としてより慎重かつ柔軟な対応が求められる局面となっています。
こうした環境変化を踏まえ、当社グループは、本中期経営計画において掲げてきた重点的な取り組みを、現時点における重要な経営課題として再整理し、対応を進めています。
当社は創業以来「鉄づくりを通じて社会に貢献する」ことを企業理念として、業容を拡大してきました。当社グループの中核である電炉事業は、鉄スクラップを鉄鋼製品に再生し、社会に送り出す資源循環型事業であり、持続可能な社会の実現に貢献しうる存在です。当社は「100年企業」に向け、創業の精神である“Spirit of Challenge”という経営理念のもと、「世界のインフラづくりや地球の環境保全に貢献する企業」「すべてのステークホルダーに貢献する企業」「安全で働きやすい職場づくりを進める企業」「コンプライアンスや品質を重視する信頼性の高い企業」をありたい姿とし、社会の発展と地球環境との調和に貢献する「エッセンシャル・カンパニー」を目指します。
①本中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」の進捗と現状認識
本中期経営計画の策定に際して、当社グループは、事業の成長性と財務の健全性を両立させる観点から、計画期間を通じた目標水準として、定量目標・KPI(重要業績評価指標)を設定しました。下表は、これらの定量目標について、初年度からの実績および次期(2027年3月期)の業績予想を、策定時の当初目標とともに示したものです。
<財務KPI>
2025年3月期2026年3月期2027年3月期
実績実績計画
(業績予想)
中計策定時目標
(当初)
売上高3,228億円3,151億円3,600億円3,800億円
経常利益157億円162億円140億円250億円
出荷量313万トン328万トン360万トン400万トン体制
(国内)
(海外)
145万トン
168万トン
138万トン
190万トン
140万トン
220万トン
160万トン
240万トン
ROE5.4%4.8%4.2%8.0%以上
自己資本比率57.5%56.7%55.9%50%以上
ネットDEレシオ※0.10倍0.08倍0.30倍0.5倍以下
配当性向36.2%39.7%33.8%30~35%
設備投資・事業投資171億円162億円526億円1,100億円/3年
859億円/3年

※ネットDEレシオの算出に際しては、信託口座保管分(IRB)、譲渡性預金(有価証券)、リース債務を含んでいます。
なお、信託口座保管分(IRB)は、当社の連結子会社であるビントン・スチール社における、Vinton Steelプロジェクト向けIRB(産業歳入債)の免税起債枠を用いた資金調達に関連して、信託契約に基づき受託者が管理する信託口座に預託された資金であり、当連結会計年度末において、その他流動資産に9,668百万円計上しています。
設備投資については、維持更新投資のほか、海外鉄鋼事業、特に北米事業の強化に向けての戦略投資、人的資本やブランド価値など無形資産への投資、CO2削減に向けた環境投資などを中心に、前中期経営計画で実行が後ろ倒しとなった投資も含めて、3ヶ年累計で約1,100億円を計画しています。なお、このうちおよそ500億円を米国拠点における大型設備投資計画に充当します。
非財務KPIについては、以下を目標に定めています。当期の実績を併せてお示しいたします。
<非財務KPI>
最終年度目標2026年3月期実績
CO2排出量※50%削減
(2013年度対比 2030年度目標:国内生産4拠点)
37%削減
(2024年度確定値)
女性総合職比率15%以上(単体)16.3%
管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合3.0%以上(単体)3.7%
教育研修費/人15万円(単体)
※2022年度の1.5倍
14.4万円
社会貢献活動支出額連結当期純利益の0.5%程度0.48%

※2025年度のCO2排出量は速報値を当社ウェブサイトに掲載しています。
(https://www.kyoeisteel.co.jp/ja/csr/esg/Mate-utsukusii/Mate-utsukusiiCO2.html)
②重点的に対処すべき課題
本中期経営計画において、当社グループが重点的に取り組むべき事項として掲げてきた以下の6項目については、計画策定後の事業環境の変化やこれまでの取り組み状況を踏まえ、引き続き重要な経営課題であると認識し、対応を進めています。
<事業の成長に向けた取り組み>a.海外鉄鋼事業:北米事業の強化とベトナム事業の再構築
海外鉄鋼事業については、計画策定時の事業環境に基づき、ベトナム事業の再構築と北米事業の収益基盤強化を重要な課題として取り組んできました。計画策定からの2年において、ベトナムでは政府の政策転換により需要が回復に向かいました。これに対し、ベトナムの各拠点では、従前より進めてきた販売体制の見直しやコスト削減策、北部で計画通りに稼働を開始した新圧延工場(製鋼・圧延生産一貫体制の完成)によるコスト競争力の強化を通じ、事業の安定化と質的向上を図っています。北米については、良好な需要環境を捉えつつ、米国における設備老朽化対応を主眼に、中長期的な競争力強化に向けた取り組みを進めています。カナダにおいても、堅調な需要のもと、生産効率を高め、収益増を目指します。
b.国内鉄鋼事業:国内4事業所体制による連携強化と質的向上
国内鉄鋼事業については、国内4事業所体制のもと、需要環境やコスト構造の変化に対応しながら、安定供給体制の維持と収益力の確保を図るとともに、最大需要地である関東圏における当社の存在感の向上を目指しています。また、2025年度に本格的に営業活動を開始した「エシカルスチール」(後述)を軸としたブランド戦略を進めており、資源循環型社会における同製品の価値の浸透を図りつつ、採用増に向けた販売活動に取り組んでいます。併せて、各事業所間の連携強化や、生産・販売・物流を含めたオペレーション全体の最適化を進めています。
c.環境リサイクル事業および鉄鋼周辺事業
環境リサイクル事業および鉄鋼周辺事業については、資源循環型社会への移行に伴う社会的要請の高まりを背景に、当社グループの強みを生かした事業基盤の強化と持続的な成長に向けた取り組みを進めています。特に、難処理廃棄物への対応力強化や、安定した事業運営に資する施策を講じています。
鉄鋼周辺事業については、国内とベトナムで展開する鋳物事業の安定した成長を図ります。
<成長を支える基盤強化>d.無形資産投資に向けた取り組み強化
人的資本やブランド価値などの無形資産については、中長期的な企業価値向上に不可欠な経営基盤と位置づけ、引き続き投資と施策の充実に努めています。人材の確保・育成、働きやすい職場環境づくり、「エシカルスチール」を軸としたブランド価値の幅広い浸透など、企業価値の向上に向けた取り組みを進めています。
e.「100年企業」を目指したESG経営
ESGへの取り組みについては、長期的な視点に立ち、環境負荷低減への対応、地域社会との共生、適切なガバナンス体制の構築を通じ、持続可能な経営の実現を目指しています。また、カーボンニュートラルに向けた取り組みや、社会貢献活動を継続しています。
f.経営基盤の強化
経営基盤の強化については、安全・安定操業の確保を最優先としつつ、DXの推進や業務プロセスの高度化などを通じて、事業環境の変化に柔軟に対応できる体制整備を進めています。また、財務規律を維持しながら、持続的な経営を支える基盤強化を進めています。
③資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応
当社の2026年3月期のROEは、4.8%と目標である8.0%には未達であり、また株主資本コスト(7%程度)も下回っている状況です。海外鉄鋼事業の業績の安定性への懸念などから、現状では市場からの評価は十分に得られておらず、PBR(株価純資産倍率)は1.0倍を下回る水準で推移しています。
こうした状況に対し当社は、上記重点方針にある「事業の成長に向けた取り組み」を一つひとつ実現することで、ROE(株主資本利益率)8.0%以上を達成し、安定した収益基盤を確立することを目指しています。
株主還元については、2024年4月に配当方針を見直し、配当性向の目途を従来の「25~30%」から「30~35%」に引き上げました。当事業年度の配当については、結果として配当性向が当該目途を上回る水準となっています。これは、自己資本比率やネットDEレシオなどの財務指標が中期経営計画で掲げる水準を満たしており、当社の財務体質は健全な水準を維持していることから、成長投資の着実な実行と財務規律の両立を図りつつ、短期的な業績変動局面においても安定的な株主還元を重視する姿勢を示すものとして、総合的に判断したものです。
併せて、「成長を支える基盤強化」の取り組みである人的資本やブランディングなどの無形資産投資も積極的に行い、さらにIR活動の強化などを通じ、PBRの改善に取り組んでまいります。その結果が、「100年企業」に向けた持続可能な経営、そして「資源循環型社会の実現に貢献するエッセンシャル・カンパニーになる」ことの実現につながると考えています。
(2) 2027年3月期(2026年度)の対処すべき課題
本中期経営計画2年目となる当事業年度は、国内では想定以上に厳しい事業環境となりましたが、海外ではベトナムの需要回復などにより、全体では前期を上回る利益水準となりました。
3年目となる2027年3月期(2026年度)においては、中長期的な成長に向け、特に海外鉄鋼事業を軸とした成長投資の着実な実行を最重要課題と位置づけ、引き続き以下の3つの取組みに注力いたします。
1つ目は、当社グループの中長期的成長をけん引する取り組みとして位置付けている、北米における成長投資の着実な実行です。2025年度に、米国拠点のビントン・スチール社では、老朽化対策として、製鋼工場の新設・圧延ラインの大規模リニューアルに着手しました。その過程において、同社の位置するテキサス州の鉄鋼需要が米国内でも特に堅調であることから、今年1月、当初計画からの生産能力拡大を決定しました。これに伴い、投資額は327百万ドル(約500億円)、稼働開始時期は製鋼工場が2027年3月、圧延工場が同年9月へと変更となりました。当社創立以来最大規模の投資となる本リニューアルの完遂に向けて、全社一丸となって取り組んでまいります。
2つ目は、国内鉄鋼事業における非価格競争力の強化を通じた収益構造の転換です。当社は国内の主要需要地にある4つの拠点で事業を展開していますが、需要動向は地域により違いがあります。近年は、国内の鉄鋼需要が低迷する中でも、首都圏を含む関東圏は、再開発案件などにより引き続き堅調な需要を維持しています。こうした状況を踏まえ、本中期経営計画では、従来他の地域に比べて希薄であった関東圏における当社の存在感向上を重点項目として位置付けています。当社が生産する付加価値製品の拡販や鉄筋加工を手掛けるグループ会社との連携強化などにより、取り組みを進めてまいります。また、2024年5月に公表した「エシカルスチール」を軸としたブランド戦略の推進も大きな要素です。「エシカルスチール」は、電気炉による廃棄物処理から鉄鋼製品の生産・出荷までトレーサビリティを確保した製品です。地球の資源を有効活用する資源循環型社会の実現に貢献する企業集団を目指していく、という思いをブランド化した製品であり、様々な施策を通じて積極的に発信しています。2025年度からは、「ウルトラマン」をキャラクターに採用した販促活動や、取引先や施主に向けた営業活動を本格的に展開し、受注件数も徐々に伸びてきています。環境意識の高い需要家に採用いただくことにより、地産地消が基本である鉄筋ビジネスにおいて、非価格競争の実現を図っていきたいと考えています。
3つ目は、従前より当社グループの事業の柱の一つとして位置付けている環境リサイクル事業における、新たな収益軸の模索です。当社は1989年より、35年以上にわたって、電気炉による医療廃棄物・産業廃棄物の溶融処理を中心とした環境リサイクル事業を手掛けています。使用済み注射針の不法投棄問題に着想を得、電気炉の高温を活用して鉄の生産と同時に廃棄物を処理するこの事業は、社会的意義があり、また安定した収益源となるユニークな事業であると認識しています。しかし近年は、焼却炉による処理業者の参入による競合環境の激化や廃棄物排出量の減少など、事業環境は厳しさを増しています。当社は、電気炉による溶融処理の強みを生かし、アスベストなど難処理廃棄物の処理案件の獲得に、より一層注力しつつ、各事業所による許認可取得や他社との提携による処理品目の拡大、スラグ製品の新たな用途開発、また、「エシカルスチール」を軸とした新顧客の開拓など、新たな収益の軸を模索しています。企画部門の強化など体制の見直しも行いながら、独自性のあるこの事業のもう一段の飛躍を図りたいと考えています。
足下では、中東情勢の緊迫化などにより世界経済の行方が見通しにくい状況となっています。当社グループにおいても、エネルギー費や物流費など、徐々に影響が出てくるものと想定していますが、当社グループは今後も「世界3極体制」のもと、それぞれの地域で地産地消を中心とした鉄筋のビジネスを行いつつ、国内外での連携を強化し、グループ総合力を以て難局を乗り切っていく考えです。
当社グループは、今後も資源循環型社会に貢献するエッセンシャル・カンパニーを目指し、強い会社、安定した収益力を備えた企業集団となるべく努めてまいります。

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