有価証券報告書-第88期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 15:22
【資料】
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【項目】
160項目

事業等のリスク

(1)特定用途向けの需要が大きな割合を占めていることによる需要変動のリスク
金属チタン事業の主力製品の一つであるスポンジチタンは、航空機向け用途が需要の中心となっております。機能化学品事業では、触媒製品の「THC」はプロピレン重合用にほぼ特化した触媒であります。また、超微粉ニッケル及び高純度酸化チタンも、積層セラミックコンデンサなどの電子部品向けの用途が需要の大部分を占めております。このように当社グループの事業は、セグメント別に見た場合、特定用途向けの需要が大きな割合を占め、当該用途先業界の好不調により販売量が大きく変動する傾向があります。
特に、航空機向けのスポンジチタンは、これまで、世界の経済情勢や航空旅客数の動向、航空会社による航空機の更新やメンテナンス需要の動向等により、大きな幅で好不調を繰り返してまいりました。今後も、景気の悪化や地政学的リスクの顕在化等により、需要が減退する可能性があります。
また、一般工業向けのチタンインゴットについても、その多くが電力、化学プラントや海水淡水化プラント用として、主にアジア・中東地域向けに間接輸出されております。したがって、これらの地域の政治・経済情勢の変動により、需要が減退する可能性があります。
当社グループは、事業の多角化、製品の新たな用途開拓、競争力ある製品の提供により、その影響を最小限にすべく努めておりますが、用途先業界の状況変化によって、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(2)価格変動のリスク
金属チタンをはじめとする当社グループの製品の価格は、需要の動向により大きく変動する傾向があります。
需要の動向によっては、製品価格が下落し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(3)原料代及び電力代の上昇に伴うリスク
金属チタンの製造コストは、原料代及び電力代がその相当部分を占めており、原料価格及び電力単価の変動の影響を受けます。当社はその影響を緩和すべく、比較的安価な低品位鉱石の使用や電力使用量の削減など、徹底したコスト削減に取り組んでおりますが、原料価格の上昇や電力単価の値上げに伴い、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(4)輸出比率が高いことによる為替リスク
金属チタン事業のスポンジチタンや機能化学品のTHC、電子部品材料は、輸出が販売量の大きな割合を占めており、当社グループ全体の売上高に占める輸出の割合は、当連結会計年度実績で44.7%となっております。輸出の多くはUSドル建てとなっているため、為替による影響を受けます。当社グループは、短期的な変動に関し為替予約取引によるヘッジを行うなど、為替リスクを最小化すべく努めておりますが、為替の変動によっては、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(5)地震等の自然災害のリスク
当社グループは、製品のほとんどを自社で生産しており、自然災害による工場施設に対する被害により、製品の生産・販売に支障が生じる可能性があります。特に、茅ヶ崎工場は、東海地震の地震防災対策強化地域内に所在しております。当社グループは、これら自然災害による被害を防ぐべく、設備の耐震強化、防災諸設備の整備、防災体制の強化、防災訓練の実施などの対策に努めているほか、複数拠点の設置によりリスクを低減しておりますが、自然災害の規模及び内容によって、当社グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(6)環境・安全に関するリスク
当社グループは、製造現場を持つ企業として、安全確保と環境保全は事業運営上、最も重視しなければならない事項と認識しております。そのため、設備・技術の改善や管理体制の強化により、安全操業の維持と環境保全に万全を期しておりますが、万が一、事故・災害等が発生した場合は、操業の停止・制約や対策コストの発生により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(7)品質に関するリスク
当社グループは素材メーカーであり、その社会的使命は、顧客が満足する製品・サービスを安定的に供給することであります。そのため、ISO9001に基づく品質管理システムを整えるとともに、その維持及び継続的な改善により品質管理に万全を期しておりますが、万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合は、対策コストの発生や当社グループ製品への評価の低下により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(8)親会社等との関係に関するリスク
当社は、JXTGホールディングス㈱並びにJX金属㈱の子会社であります。
JXTGホールディングス㈱は、エネルギー事業のJXTGエネルギー㈱、石油・天然ガス開発事業のJX石油開発㈱、金属事業のJX金属㈱、その他多くの子会社・関連会社を有し、「JXTGグループ」を形成しております。当社は、その中で「金属事業」のセグメントに属する独立事業会社と位置付けられております。当社とJXTGグループとの間には、①当社からJX金属㈱への高純度チタンの販売、②JX金属㈱から当社への各種金属の溶解加工委託、③JX金属㈱から当社への非常勤役員の派遣、④JXTGグループから当社への従業員の出向等の関係があります。
当社と親会社等との関係については、当社の自主性・独立性を確保したうえで、両社の企業価値向上を目指し連携・協力しあうことを基本と考えております。取引の条件等は、協議・交渉を行ったうえで決定しており、当社が受ける制約はありませんが、親会社等において、当社グループとの取引等に関する基本方針に変更が生じた場合
は、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)海外事業に関するリスク
当社は、チタン事業の中長期的な競争力向上を目的として、サウジアラビアでのスポンジチタン生産合弁事業に参画しております。当社(35%出資、出資額約50億円)とサウジアラビアの石油化学メーカーであるタスニー社のグループ企業AMIC社(65%出資)が共同で設立したAdvanced Metal Industries Cluster and Toho Titanium Metal Co.,Ltd.(ATTM社)は、現在、サウジアラビアのヤンブーにおいて、2019年のスポンジチタン生産開始に向けて準備中であります。
ATTM社のスポンジチタン工場の生産設備は完成していますが、原料である四塩化チタンは隣接する酸化チタンメーカーから供給を受けることになっており、この原料供給設備の稼働開始が遅れていることから、スポンジチタン工場の操業開始が計画に比べ遅れております。
当社はATTM社への投資については、連結決算手続き上、持分法を適用する予定ですが、短期的な業績変動要因として、更に原料供給設備の稼働開始が遅延し現在計画しているスポンジチタン工場の操業開始時期が遅れる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼすことになります。また中長期的には、サウジアラビアは周辺諸国に比較して小さいと考えていますが、地政学的リスクが内在していると考えております。このリスクが顕在化しATTM社を取り巻く事業環境が大きく変化した場合は、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。