有価証券報告書-第85期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 15:05
【資料】
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【項目】
131項目

研究開発活動

当社グループは、顧客の企業価値・競争力向上と社会的課題の解決に貢献する独創的なソリューションの提供に必要な商品・技術の開発に重点的に取り組んでおります。また、ビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションに必要なセンシング技術、データ解析技術、最適制御技術の開発や、当社商品技術を支える水処理の作用・障害の機構解明、デジタルトランスフォーメーションのベースとなる水処理技術の数理モデル化にも注力して取り組んでおります。
今後も、永年培ってきた“水”の技術にさらに磨きをかけるとともに、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する水と環境の独創的価値の創造者」の実現に向けて、日本、ドイツ、シンガポール、北米等の開発拠点が連携して、産業と社会のニーズに幅広く対応する商品・技術の開発を積極的に進めてまいります。
研究開発は、主に当社の開発本部により推進されており、研究開発スタッフはグループ全体で約180名にのぼり、これは従業員総数の2.5%に当たっております。当連結会計年度の研究開発費の総額は5,317百万円(売上高比2.0%)であります。
当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発概要と主な成果および研究開発費は、以下のとおりであります。
(1) 水処理薬品事業
顧客の節水・省エネルギー・廃棄物削減や、生産性向上・環境負荷低減に貢献する水処理薬品の開発を推進しております。また、センシング技術を用いた薬品処理効果の診断や自動最適制御などの技術開発にも取り組んでおります。当該連結会計年度における主な成果は以下のとおりであります。
・用水設備や排水回収設備における水処理膜を用いた装置の安定稼働・省エネ運転を実現するため、有機物に起因する汚染防止技術を強化し、従来よりも微生物による汚れの抑制力に優れた水処理剤や、従来は洗浄が難しかった有機物の汚れを除去できる高性能洗浄剤を開発しました。
・製鉄所における降雨による原料中の水分上昇に伴う移送ラインの閉塞や燃料使用量アップの抑制や、製紙工場における低品質古紙の利用による乾燥用蒸気の使用量アップの抑制など、製鉄・製紙プロセスの省エネルギーと原料コスト低減に寄与する機能性薬品とそれらの最適添加制御技術を開発しました。
・グローバルにニーズが高まっている工場や空調設備の冷却水系薬品処理における環境負荷低減を実現するため、冷却水設備の立ち上げから通常運転までの工程で、富栄養化の原因となるりんを使用せずに処理することが可能な環境保全型の冷却水処理技術を開発しました。
・排水処理プロセスの汚泥脱水運転を最適化するための独自のセンシング技術を用いた診断制御システムを開発しました。
なお、当事業に係る研究開発費は1,722百万円であります。
(2) 水処理装置事業
排水の回収・再利用、廃棄物の削減やリサイクルによる再生可能エネルギー創出などの循環型社会実現に向けた技術開発に取り組んでおります。また、排水処理システムや半導体など電子産業製品の生産性向上に寄与する超純水製造システムの省エネルギー化、環境規制を先取りした土壌浄化技術の開発などを推進しております。当該連結会計年度における主な成果は以下のとおりであります。
・食品残渣等の廃棄物をメタン発酵させてエネルギーを回収するバイオガス発電施設の安定運転と収益向上に貢献するため、難分解性廃棄物からのメタン生成率を向上させ、受入可能な原料を拡大する前処理技術や、最適な原料投入をサポートするナビゲーションシステムを開発しました。
・超純水製造システムの動力費を削減し、省エネルギー・省コストに貢献するために、顧客の製造プロセスにおける使用水量の変動に追従してオンデマンド運転可能な流量変動運転技術を開発しました。
・水供給設備や排水処理プラントにおける監視業務の省力化や安定運転に貢献するため、AIを活用した画像診断で水槽内のトラブルを早期に自動検知するシステムなどを開発しました。
なお、当事業に係る研究開発費は3,594百万円であります。