有価証券報告書-第85期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 15:05
【資料】
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【項目】
131項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念とし、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する“水と環境の独創的価値の創造者”」の実現を目指し事業活動を展開しております。また、CSR(Corporate Social Responsibility)に関する方針として「水と環境の問題にソリューションを提供し、未来への責任を果たす」を定め、CSRを経営の中核に位置付け、企業価値の向上と競争優位の創出に邁進しております。そして当社グループは、株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様に対する適正かつ迅速な情報開示を通じ、より透明性の高い経営の実現を目指しております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
①中期経営計画
当社グループは、2018年4月より5カ年の中期経営計画「MVP-22」(Maximize Value Proposition 2022)をスタートさせました。成長投資と収益性の改善を重要な課題と捉え、MVP-22計画最終年度(2022年度)の業績目標は以下のとおり設定しております。
売上高年平均成長率 3%以上(M&A等による上積みを除いた自律的成長分)
売上高事業利益率 15%※
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE) 10%以上
※事業利益は、売上高から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の指標であります。
MVP-22計画の策定に先立ち、当社グループの競争力の源泉(バリュープロポジション)を「顧客親密性」と特定しました。顧客親密性とは、単なる顧客との物理的、時間的な密着度ではなく、顧客にとっての必要不可欠なパートナーとしての存在価値の大きさを意味しております。誰よりも顧客を知り、顧客と共に課題解決に取り組むことで、長期的に強固な関係構築を目指していきます。MVP-22計画では「既成概念を壊し、仕事の品質とスピードを飛躍的に高め、顧客親密性を最大化する」を基本方針として、「社会との共通価値の創造」、「ソリューション提供の高速化」、「収益性のさらなる向上」、「コーポレートガバナンスの強化」、「働き方・意識改革とICT活用」を目指し、次の重点施策にスピードを上げて取組んでおります。
水処理薬品事業では、ビジネスモデルの変革と海外事業基盤の強化を進め、収益性の向上を目指しております。水処理装置事業では、超純水供給事業で培った知見や技術力を、大型のEPC(プラント建設などにおける設計(Engineering)、資材調達(Procurement)、建設工事(Construction)の一連の工程を請け負う案件)を起点とするメンテナンスと運転管理の包括契約提案につなげ、収益性の向上を目指しております。
(重点施策)
・CSV(Creating Shared Value)ビジネスの展開
自然環境、産業、人々の生活に貢献する独創性の高い技術・商品・サービスで収益を拡大する。
・総合ソリューションの拡充
水処理薬品、水処理装置、メンテナンスの技術・商品・サービスを駆使した総合ソリューションを顧客に迅速に展開する。
・水処理装置事業の生産体制の再構築
生産体制・プロセスを抜本的に見直し、生産活動の品質とスピードを飛躍的に高める。
・新事業の創出とイノベーション推進
既存の事業領域を拡大・拡充するとともに、新たな収益の柱となる事業領域を創出する。
・研究開発の基盤強化と推進
技術立社としての強固な基盤を構築し、先進的な研究開発を推進する。
・グループガバナンスの体制整備
グループ各社における内部統制の実効性を向上させる。
②価値創造ストーリー
当社グループは、社会と共に持続的、長期的に成長していくための道筋をクリタグループの価値創造ストーリーとして言語化しました。併せて、MVP-22計画における戦略ストーリーを作成しました。当社グループの一人ひとりが価値創造ストーリーの担い手となることで、企業理念の実現を目指してまいります。
(クリタグループの価値創造ストーリー)
私たちクリタグループは、世界の様々な現場で日々変化する水の課題に対しソリューションを提供しております。
現場から得られる水に関する課題や情報は、私たちの知として集約、蓄積されます。私たちはこの知の活用により、お客様の真の課題を理解し、お客様と共有できる形での価値の予測とともに最適なソリューションを提供します。
私たちは、予測した価値の実現により、お客様と社会との共通価値を創造(Creating Shared Value:CSV)し、社会と産業を変えていきます。そして、創造した価値にふさわしい収益を得るとともに、お客様と社会からの信頼を基に更なる現場と新たな知を獲得していきます。
(3) 会社の対処すべき課題
当社は、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水と環境の独創的価値の創造者』」の実現を目指し、2018年度よりMVP-22計画に取り組んでおります。MVP-22計画では、CSRを経営の中核に据え、社会との共通価値の創造に努めております。また、当社の競争力の源泉が「顧客親密性」であることを明確化し、仕事の品質とスピードを飛躍的に高めたビジネスプロセスを実行することで、顧客に新たな価値を提供し、高い収益性と持続的な成長を実現することを目指しております。
MVP-22計画の3年目である当期は、新型コロナウイルス感染拡大という世界的な社会課題に直面しました。その中で当社グループは、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた今後の事業の在り方を考え、総合ソリューションの展開、ビジネスプロセスの変革とビジネスモデルの変容に注力しました。
また、社会課題への対応として、TCFD(注1)の提言に基づき、CO₂削減に関する長期目標を設定し、気候変動問題への取り組みを開始しました。水資源の問題への取り組みとしては、国連グローバル・コンパクト(UNGC)(注2)における取り組みの一つであるThe CEO Water Mandate(水に関するCEOの任務)(注3)において設立されたWater Resilience Coalition(WRC)に設立会員として参加し、世界各地域の水ストレス下にある流域における水資源の保全の取り組みを開始しました。ダイバーシティ(多様性)に関しては、女性の活躍推進を始めとしたダイバーシティの加速に向け専門組織を設置し、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)ビジョンの策定と働きがいの向上、働きやすさの改善に取り組みました。
これらを踏まえ、当社グループの対処すべき課題は、持続可能な社会の実現に向け、デジタルトランスフォーメーション推進によるビジネスプロセスの変革とビジネスモデルの変容、および気候変動問題への対応を含む社会価値に寄与するソリューションモデルの創出と展開の加速、そしてグループの体質強化と捉えております。MVP-22計画の4年目となる2021年度は、次の3つの重点施策に取り組んでまいります。
①デジタルトランスフォーメーションによるビジネスプロセスの変革とビジネスモデルの変容
デジタル技術やツールの活用によって、内務、開発、生産、営業の各機能が相互に連携し、顧客への価値提供につながるビジネスプロセスを構築するとともに、多様な現場接点で収集したデータを「水に関する知」として活用し、リモートを主とした顧客接点の構築など、新たな顧客提供価値を生み出す体制を構築します。また、メタ・アクアプロジェクトによる設計の自動化や最適化、水処理装置の運転効率化と最適化を推進していきます。
②社会との共通価値創造につなげる顧客提供価値の追求
社会との共通価値に対しインパクトの強いソリューションビジネスを顧客に最速で提供可能な体制を構築し、重点的に展開します。また、2020年度より試行した顧客親密性調査結果に基づき戦略を明確化するとともに、総合ソリューションの実績を水平展開する仕組みを強化し、CSVビジネス、ソリューションモデルを拡大展開します。国内の販売事業会社における水処理薬品とメンテナンスの融合も加速させ、総合ソリューション提案を拡大展開していきます。
③経営資源の最適活用と体質強化
2021年4月に吸収合併した栗田エンジニアリング株式会社の洗浄事業との融合を進め、社会・産業インフラ市場における中核事業の確立に向け、シナジーを創出する体制を具体化します。また、グループ各社が保有する競争優位性の高い技術、ビジネスモデルを活用し、グループ全体で推進するプロジェクトを拡大展開します。さらに、生産プロセスのノンコア業務においてスタートアップ企業等を活用し、当社エンジニアがコア業務に集中する体制を整備することで、エンジニアリングチェーン、サプライチェーンを強化します。また、ダイバーシティへの取り組みを強化することで、多様な視点・背景などからイノベーションが創出される風土の醸成と仕組み・体制の整備を加速させていきます。
(注)1.気候変動関連の情報開示と金融機関の対応について検討するため金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」
2.「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野における企業や団体の自発的取り組みにより持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み。2000年に発足し、2021年4月現在で17,000社を超える企業および団体が署名・参加しております。
3.水利用の目標を定め、水不足と衛生問題に国際的に取り組むイニシアチブ。2007年に発足し、2021年4月現在で190社以上が署名しております。