有価証券報告書-第84期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 14:46
【資料】
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【項目】
96項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念とし、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する“水と環境の独創的価値の創造者”」の実現を目指し事業活動を展開しております。また、CSR(Corporate Social Responsibility)に関する方針として「水と環境の問題にソリューションを提供し、未来への責任を果たす」を定め、CSRを経営の中核に位置付け、企業価値の向上と競争優位の創出に邁進しております。そして当社グループは、株主・投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様に対する適正かつ迅速な情報開示を通じ、より透明性の高い経営の実現を目指しております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、2018年4月より5ヵ年の中期経営計画「MVP-22」(Maximize Value Proposition 2022)をスタートさせました。成長投資と収益性の改善を重要な課題と捉え、MVP-22計画最終年度(2022年度)の業績目標は以下のとおり設定しております。
売上高年平均成長率 3%以上(M&A等による上積みを除いた自律的成長分)
売上高事業利益率 15%(※)
親会社所有者帰属持分当期利益率 10%以上
(※)…事業利益は、売上高から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の指標であります。
MVP-22計画の策定に先立ち、当社グループの競争力の源泉(バリュープロポジション)を「顧客親密性」と特定しました。顧客親密性とは、単なる顧客との物理的、時間的な密着度ではなく、顧客にとっての必要不可欠なパートナーとしての存在価値の大きさを意味しております。誰よりも顧客を知り、顧客と共に課題解決に取り組むことで、長期的に強固な関係構築を目指していきます。MVP-22計画では「既成概念を壊し、仕事の品質とスピードを飛躍的に高め、顧客親密性を最大化する」を基本方針として、「社会との共通価値の創造」、「ソリューション提供の高速化」、「収益性のさらなる向上」、「コーポレートガバナンスの強化」、「働き方・意識改革とICT活用」を目指し、次の重点施策にスピードを上げて取組んでおります。
水処理薬品事業では、ビジネスモデルの変革と海外事業基盤の強化を進め、収益性の向上を目指しております。水処理装置事業では、超純水供給事業で培った知見や技術力を、大型のEPC(プラント建設などにおける設計(Engineering)、資材調達(Procurement)、建設工事(Construction)の一連の工程を請け負う案件)を起点とするメンテナンスと運転管理の包括契約提案につなげ、収益性の向上を目指しております。
(重点施策)
①CSV(Creating Shared Value)ビジネスの展開
自然環境、産業、人々の生活に貢献する独創性の高い技術・商品・サービスで収益を拡大する。
②総合ソリューションの拡充
水処理薬品、水処理装置、メンテナンスの技術・商品・サービスを駆使した総合ソリューションを顧客に迅速に展開する。
③水処理装置事業の生産体制の再構築
生産体制・プロセスを抜本的に見直し、生産活動の品質とスピードを飛躍的に高める。
④新事業の創出とイノベーション推進
既存の事業領域を拡大・拡充するとともに、新たな収益の柱となる事業領域を創出する。
⑤研究開発の基盤強化と推進
技術立社としての強固な基盤を構築し、先進的な研究開発を推進する。
⑥グループガバナンスの体制整備
グループ各社における内部統制の実効性を向上させる。
(3) 会社の対処すべき課題
当社は、企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水と環境の独創的価値の創造者』」の実現を目指し、2018年度よりMVP-22計画に取り組んでおります。MVP-22計画では、CSRを経営の中核に据え、社会との共通価値の創造に努めております。また、当社の競争力の源泉が「顧客親密性」であることを明確化し、仕事の品質とスピードを飛躍的に高めたビジネスプロセスを実行することで、顧客に新たな価値を提供し、高い収益性と持続的な成長を実現することを目指しております。
MVP-22計画の2年目である当期は、総合ソリューションの展開に注力しました。製品・技術・サービスと契約方法を包含した水平展開可能なソリューションモデルの創出を進めたほか、国内の営業体制の再編や米国子会社の統合を進め、今後効率的に総合ソリューションを展開できる体制を構築しました。さらに、M&Aを通して、RO膜薬品・RO膜管理サービスや精密洗浄事業など、総合ソリューションの拡充につながる製品・技術・サービスの強化を図りました。このように、総合ソリューション展開の基盤を継続して強化しておりますが、MVP-22計画の目標達成に向けては、ソリューションモデルの創出とグループ一体となった収益性向上の取り組みを加速させる必要があります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、各国において都市封鎖や移動制限などの措置が講じられております。経済活動、企業活動の制限により、世界経済への影響は非常に大きく、先行きの不透明な状況が続いております。当社の事業環境についても、電子、食品市場では操業が維持されておりますが、商業施設の営業自粛や閉鎖を受けビル・空調市場などが低調となっております。当社及び国内のグループ会社では、外出の自粛が要請された地域においては原則在宅勤務とし、外出を伴う業務は、感染拡大防止策を講じた上で、顧客及び当社グループの事業継続や社会的要請に応える業務に限り対応してきました。また、海外のグループ会社においても各国の状況に応じた対応を行っております。調達面についても、グループ全体での効率的な原材料の調達や代替調達先への切り替えなどにより、影響の最小化に努めております。
当社グループの対処すべき課題は、このような状況下にあっても、社会課題の解決や顧客事業活動の継続に必要不可欠な製品・技術・サービスの提供により、高い社会価値・顧客価値を継続して提供していくことと捉えております。
これらを踏まえ、MVP-22計画の中間年度となる2020年度は、顧客の「節水」「CO2排出削減」「廃棄物削減」効果に優れ、社会との共通価値創造を促進する「CSVビジネス」の推進、さらなるソリューションモデルの創出、およびIoTやAIを活用したビジネスプロセスやビジネスモデルの変容を加速させ、次の3つの重点施策に取り組みます。
①総合ソリューションの展開の加速
顧客市場ごとにマーケティング・営業・技術・開発が連携する体制を強化し、総合ソリューションの展開を加速させます。徹底した社会課題や顧客課題の理解に基づき、高い価値を提供できる顧客への提案活動に注力するとともにCSVビジネスやソリューションモデルをサービス契約型ビジネスとして国内外で展開していくほか、具体的な収益性改善目標を設定し管理します。
②ビジネスモデル、ビジネスプロセスの変容
既存のビジネスモデルから脱却し、新たな価値を生み出していくためにデジタル技術を活用する、デジタルトランスフォーメーションの推進に向け、デジタル戦略本部を新設し、当社グループのIT関連部署を統合することで、当社グループの事業の変容を加速します。米国子会社のフラクタが保有する技術やノウハウも活用し、新しい顧客価値の創出につなげていきます。また、AIの活用による設計の自動化やシミュレーション技術の導入により、プラント生産体制の効率化を図ります。
③海外における収益性の向上
海外事業においては、これまでM&Aで獲得した事業基盤や技術を活用し、グローバルとローカルの両面で収益性の向上を図ります。具体的には、全世界横断的な取り組みとして、アビスタ・テクノロジーズ社を中心とし、RO膜薬品と関連サービスの開発とグローバルな市場展開を強化していきます。また、各地域においては、米国での子会社統合によるシナジー発揮を目指すほか、東アジアではEPC案件を起点に運転管理やメンテナンスを包括するサービス契約型ビジネスの拡大を図っていきます。