有価証券報告書-第59期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/27 15:36
【資料】
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【項目】
140項目
(4)戦略
①マテリアリティの特定
日立建機グループでは、社会情勢や各国の政策・規制等の変化を踏まえ、2021年度にマテリアリティを刷新しました。特定プロセスにおいては、SDGsやESGといった社会課題の視点と、自社の企業価値の向上および毀損につながる外部環境の視点の両面で、中長期的なリスクと機会を検討し、4つのテーマを抽出しました。社内外のステークホルダーの意見を取り入れながら議論を重ね、2021年7月の執行役会にて承認を受け、取締役会にて報告しました。マテリアリティごとにKPI(重要業績評価指標)を設定し、サステナビリティ・ガバナンス体制のもとで進捗管理を行っています。なおマテリアリティは、外部環境の変化等を踏まえ、今後も随時見直しを行っていきます。0102010_011.png
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4つのマテリアリティに基づき、サステナビリティ課題に対応する「環境戦略」「技術戦略」「人財戦略」について報告します。
②環境戦略
-カーボンニュートラルに達成に向けてー
2050年までにバリューチェーン全体を通じてのカーボンニュートラルをめざすべく、製品開発および生産工程の両面で
CO₂削減に取り組んでいます。
建設機械のライフサイクル全体でのCO₂排出量をみると、お客さまの直接排出(Scope1)にあたる製品の稼働時の排出量が90%を占めており、これを下げていくことが、ライフサイクル全体のCO₂排出量の削減には重要です。私たちは、カーボンニュートラル達成を見据え、よりCO₂を排出しない環境配慮製品をお客さまや社会に提供するための指標として、2030年度にCO₂排出量を2010年度比で33%削減する目標を設定し、推進しています。
本目標達成に向け、コンパクトからマイニングの超大型機まで全製品レンジの開発を進め、燃費低減に加えて電動化建機の早期市場投入、水素燃料製品の技術面での見極め、さらにはお客さまの使用段階でのCO₂削減を実現するソリューションの提供を進めています。また、大手鉱山各社のお客さまは、2050年までのネット・ゼロ・エミッションの実現を目標に掲げており、なかでも台数の多いダンプトラックのゼロエミッション化の要望が高く、その要望に応えるため、当社はスイスABB社と連携してフル電動化に取り組み、鉱山現場全体のネット・ゼロ・エミッションをめざしています。当社が既に持っている電動走行可能なトロリー式ダンプトラックのエンジンをバッテリーに置き換えることで、トロリー給電とバッテリー給電を併用してフル電動化を実現します。当社のリジッドダンプトラック「EH3500AC-3」をフル電動駆動にした場合、1日20時間稼働で6.8トンのCO₂排出量の削減につながります。
一方、生産工程においては、省エネ、再生可能エネルギーへの転換(設備投資による自家発電、再生可能エネルギー電力導入)、電化、燃料転換などの面でCO₂排出量の削減を推進しています。特に省エネは、エネルギーコストの削減、再エネクレジットの購入費用の削減、さらに将来想定される炭素税軽減において効果を発揮します。また、インターナルカーボンプライシング(ICP)を活用した新設備投資基準を導入し、CO₂削減量が大きい設備に優先的に投資していきます。これは国内外の生産拠点とグループ会社のすべてに適用して推進しています。
0102010_013.png<環境配慮製品を拡充し、オープンイノベーションでスピード加速>-TCFD提言への対応-
2020年7月に全社のコーポレート部門と事業部門の部門長およびキーマンによる社内タスクフォースを設立し、同年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。2022年には、1.5℃と4℃を想定したシナリオ分析、気候変動リスクの発生可能性や財務影響について評価を行っています。TCFDフレームワーク*1に基づき、気候変動がもたらすリスクと機会および対応する戦略についての開示を行い、持続可能な事業展開をめざして、本提言に沿った推進強化に努めています。
また2022年度には経済産業省の主導するGX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本方針に賛同し、2023年5月よりGXリーグ*2に参画しています。
0102010_014.png*1 TCFDフレームワーク …TCFD提言の取り組みの詳細については、「日立建機グループ統合報告書2022」 P41-46を参照ください。
*2 GXリーグ …GX(グリーントランスフォーメーション)リーグは、経済産業省主導で立ち上げられた、2050年カーボンニュートラルに向けて「産・学・官・金」が連携し、経済社会システム全体の変革に取り組む協働の場です。
-資源循環型ビジネスへの転換について-
当社は「資源循環型ビジネス」をめざします。
再生・中古車・レンタル・サービスといったバリューチェーン事業を通じて、廃棄量をさまざまな角度から減らす取り組みを4つのR(Reduce・Reuse・Renewable・Recycle)として日立建機グループ全体で取り組んでいます。
製品の利用過程における取り組みにおいては、当社の強みであるConSiteや部品再生、本体再製造を活用することで、車体稼働年数を10年から15年に長期化をしていきます。このことにより、廃棄物の削減、投入資源の抑制に貢献し、最終的にはCO₂削減につながります。本取り組みにより、製品ライフサイクル1.5倍をめざしてバリューチェーン事業を拡大し、顧客価値の最大化と資源消費の最小化を両立し、当社がめざす、資源循環型ビジネスを実現します。
③技術戦略
―DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進―
日立建機グループは、バリューチェーンの深化やデジタル活用によって、お客さまの課題解決に貢献することをめざしています。2020年4月より全社DXをリードする組織としてDX推進本部を立ち上げ、さまざまな施策を展開しています。
2022年1月には株式会社日立製作所と共同で、建設機械の稼働状況や生産・販売・在庫などのデータを活用するためのプラットフォーム「DX基盤」を構築しました。従来、これらのデータを活用するシステムを個別に構築していましたが、DX 基盤を活用することでデータの収集・分析・利活用が格段に効率化されます。DX基盤を用いた取り組みの第一弾として、2022年度より「営業支援アプリ」を国内で運用を開始しました。国内で建設機械の販売や部品・サービス事業を担う日立建機日本株式会社の各担当者(全国243拠点、約1,000名)が対象となります。お客さまが保有する機械の稼働状況やメンテナンス計画、取引履歴などの情報をまとめて閲覧でき、これらのビッグデータをもとにAIによって判断した複数パターンの提案内容を瞬時に表示できるようになります。本アプリを活用し、新たな価値の創出につなげていきます。
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-DX人財の育成-
DXの基盤を活用するには、これらを駆使できる人財の育成が必要となります。
日立建機グループでは、デジタルソリューション事業や業務プロセス改革をより強化するため、2つのプログラムを実施しています。
「デジタル基礎研修」では、リテラシーの向上を図ってデジタル人財の裾野を広げ、さらに、「デジタルチャレンジプログラム」では、顧客価値を起点とするDX事業を創出できるようにフロント業務とモノづくり現場のそれぞれに必要なデジタルスキルを考慮した上で、実践的なスキルを身に付けるように取り組んでいます。2023年度までにこれらのプログラム受講者の目標を1,000人とし、今後さらに求めれるデジタル化へ向けて、迅速に対応できるよう人財を育成していきます。
④人財戦略
人的資本に関する戦略
「第2の創業期」にある現在、日立建機グループは、既存事業の拡大に加え、デジタルソリューションを中心とした成長事業の深化と、今後の柱となる新規事業の探索をしてまいります。
上記のような事業構造の大きな変革局面においても、日立建機グループにとって人とは財産・資本、すなわち「人財」であり、会社の成長に欠かせない「人的資本」です。それを「Kenkijin」と称しております。そして、変革が必要な今こそ、Kenkijinが個性・強みを最大限に発揮できるよう、育成の強化や変革に臨む組織・風土の醸成等、数々の取組みが不可欠と考えます。こうした取組みにより会社と事業を変革し、顧客に対する新たな価値を創造して企業価値の向上に努めることが、日立建機グループにおける「人的資本経営」です。
そして、人的資本経営を進める上での基本思想として、2つの思いを特に大切にしております。
第一は、「会社と個人は、対等の関係」です。基礎を成す考え方として従業員と会社は双方にとって「選び・選ばれる関係」と捉えた上で、会社は従業員のキャリア形成や成長を支援することを通じて、新たな価値創造や企業価値の向上につなげていくことをめざします。
第二は、「チームで勝つ」です。成長事業の深化や新規事業の探索等の新たな取組みに、チームで挑んでまいります。特にソリューション・サービスにおいて、現場の従業員がお客さまに寄り添って最適なサービスに気付き提供するには、組織や立場に関係なく一体となったチームが不可欠です。そこで、誰もが個性や強みを発揮できる環境を整えることで、多様な個人の組合せにより「チームで勝つ」ことをめざします。
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