有価証券報告書-第134期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2026年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)グループビジョン「At your side 2030」
ブラザーグループは、1908年にミシンの修理業からはじまり、115年以上にわたって、時代や環境の変化に合わせ自らを変革し、お客様のニーズにあった価値を提供し続けてきました。昨今、デジタル化や自動化などの加速によるお客様の購買行動の変化、新型コロナウイルス感染症による社会変容、地政学リスクの顕在化など、ブラザーグループを取り巻く事業環境も大きく、かつ急速に変化しています。
こうした変化の激しい環境に対応しながら、持続可能な成長を実現していくために、2030年に向けたブラザーグループビジョン「At your side 2030」を新たに策定し、2022年度よりスタートしました。
「At your side 2030」は、2030年に向けてお客様にどのような価値を提供していくのか考え、ブラザーの存在意義を再定義した「あり続けたい姿」を起点に、どのような方法で価値を提供するのか(「価値の提供方法」)、何を実現するのか(「注力領域」)を示しています。
1)あり続けたい姿
ブラザーが何のために存在し、どのようにあり続けたいかについては、「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」と定義しています。ブラザーは、世界中に存在する、お客様をはじめとした、価値創出を行い進歩し続けたいと願うすべての人々を“あなた”と位置付け、その人々の願いを叶えるための存在であり続けたいと考えます。そして、社会の持続的な発展の実現に貢献しながら、地球環境への責任を果たしていきます。
2)価値の提供方法
価値の提供方法については、「多様な独自技術とグローバルネットワークを強みに、お客様の成功へのボトルネックを見つけ解消する」と定義しています。ブラザーグループは創業以来、さまざまな事業を生み出し、グローバルに展開してきました。40以上の国と地域に広がる生産・販売・サービス・開発拠点のネットワークをベースとするグローバル複合事業企業ならではの強みを生かし、お客様や取引先など外部からの学びを得ながら、国や地域、事業を越えて優れた価値を迅速に提供します。また、お客様のバリューチェーンに向き合い、ボトルネックとなるものを見つけ、解消します。さらにモノづくりにとどまらないデジタル技術の活用などの“コト”も含めて、お客様への価値提供の幅を広げます。
3)注力領域
上記の価値を発揮することにより、産業用領域とプリンティング領域を2030年までの注力領域と位置づけ、特に強化していきます。産業用領域での飛躍と、プリンティング領域の変容により事業ポートフォリオを変革し、複合事業体として成長し続けます。産業用領域は、ブラザーの強みが活きるビジネス領域において、生産性の向上に加え、働く人々や地球環境の課題を解決することで、ベストパートナーとしての信頼を確かなものにします。プリンティング領域は、オフィスワークやプリンティングを取り巻く環境が大きく変わる中にあっても、働く人々の期待に応え続けるとともに、これまでの事業の枠を超えて新たな柱を築きます。
(2)中長期的な経営戦略
◆中期戦略「CS B2027」(2025~2027年度)
ブラザーグループビジョン「At your side 2030」の実現を見据え、2025年に中期戦略「CS B2027」を策定しました。CS B2027では、「挑む。未来へ、大胆に」をテーマに、長期的な企業価値向上に向け、事業ポートフォリオの変革を加速し、利益創出力を高めていきます。
◆CS B2027の概要
CS B2027では、事業の役割を明確化し、事業ごとに設定された重点指標に基づいた戦略を遂行することで、売上収益1兆円、及び最優先指標である営業利益額1,000億円を目指しています。ROE目標は10%、産業用領域の売上比率は40%を掲げ、資本コストと株価を意識した経営を推進し、TSR*1は対TOPIXで100%以上を目指しています。投資に関しては、3年間でM&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を確実に実行し、産業用領域の成長を推進します。そして変革を支える経営基盤をより強固なものとするための投資も継続して進めます。株主還元については、3年間で600億円の自己株式取得を含む1,400億円の還元を予定するなど、大幅に強化していきます。

これらの目標を確実に遂行するために、以下の4つの重点テーマを掲げています。

◆事業別戦略
ブラザーグループの事業を4つに分類し、それぞれの事業の役割と重点指標を明確化しています。投資・リソースは役割に応じて配分し、各事業は重点指標に基づいた戦略を遂行することで、CS B2027の目標達成を目指します。

1)成長事業
ブラザーグループとして大きく伸ばしていく事業を成長事業として位置づけ、売上収益を重点指標としています。成長事業に対しては、M&Aを含めた成長投資を積極的に実施して非連続成長を実現し、将来の柱にしていくとともに、人的リソースも優先的に配分することを掲げています。
2025年度は、インダストリアル・プリンティング事業(IP事業)において、産業用プリンターにおける事業拡大に向け産業用大判プリンターを主力製品とするMUTOHホールディングス株式会社(現:MUTOH株式会社)の株式公開買付けを実施し、連結子会社化しました。IP事業の既存領域については、ドミノのデジタルラベル印刷や段ボール印刷の領域で初期導入費用を抑えた新製品を投入したほか、ガーメントプリンターにおいてブラザー初のDTF*2プリンターを発売するなど、ラインアップ強化を進めました。
マシナリー事業の産業機器においては、工作機械のショールームを併設した「ブラザーテクノロジーセンター」をインド及び日本に新設するとともに、ドイツのテクノロジーセンターを拡張移転するなど、重点地域での販売・サービス拠点網を強化しました。また、工作機械の新製品として、工程集約や自動化ニーズに対応する工具増本モデルや、大物・長尺ワークの多面加工が可能な横形5軸マシニングセンタなどを投入し、新たな市場の創出を図っています。
また、新規事業においては、ワークコミュニケーションソフトウエアサービス「BuddyBoard」に関する事業を、投資会社とのジョイントベンチャーで新会社として独立させました。これにより、SaaSビジネスとしての事業成長の加速を目指します。
2)コア事業
プリンティング&ソリューションズ事業(P&S事業)は、全社での収益基盤を支えるコア事業に位置づけ、営業利益額を重点指標としています。市場におけるポジショニングのさらなる強化とビジネスモデル変容のための投資を行うことを方針としています。
2025年度は、インクジェット及びカラーレーザー市場に向けて複数の新製品を投入しました。中でも、インクジェット複合機においては認知度向上に向けたマーケティング・広告宣伝活動を強化し、各地域で販売台数が伸長しました。また、つながるビジネスの拡大に向けては、欧米でBtoC向けのサービスプラットフォームの提供を開始しました。製品本体の延長保証やアプリの活用などを通じ、お客様の利便性を向上するとともに、お客様の利用実態の把握による提供価値の向上や純正消耗品の利用促進に努めています。
3)収益性追求事業
収益性追求事業は、全社に利益貢献することをミッションとし、営業利益率を重点指標としています。
2025年度は、パーソナル&ホーム事業において、刺しゅうデザインデータなどを作成できるアプリ「Artspira」においてAI技術を活用した画像生成機能を実装するなど、顧客提供価値の向上を進めています。
ニッセイ事業においては、世界で初めて金属製球状歯車の量産に向けた工法を確立し、今後はヒューマノイドロボットの関節をはじめとする様々な機械の駆動部での活用に向けたマーケティング活動を実施していきます。
4)収益性改革事業
収益性改革事業は、着実に利益貢献ができるよう収益構造を徹底的に見直すことを掲げており、営業利益率を重点指標としています。
2025年度は、マシナリー事業の工業用ミシンにおいては、欧州を中心に工業用ミシンのソリューション提案ビジネスを展開する独Konrad Busche社の自動車部品向け部門の事業を譲受しました。これにより、エアバッグなどの自動車内装部品を中心としたノンアパレル領域での成長と収益性改善を加速させます。
また、ネットワーク&コンテンツ事業においては、通信カラオケビジネスのさらなる成長を実現すべく、グループ外への譲渡を決定しました。カラオケ店舗等の運営事業を営む株式会社スタンダードについては、2025年11月に株式会社コシダカホールディングスへ事業譲渡し、業務用カラオケ事業や音楽・映像ソフト事業等を主業とする株式会社エクシングについては、2026年4月に株式会社U-NEXT HOLDINGSへの株式の70%の譲渡が完了しました。
◆経営基盤の強化
各領域において事業ポートフォリオ変革を支える取り組みが進捗しています。

◆財務戦略
資本コストと株価を意識した経営を推進し、継続的に株主価値を向上させ、企業価値の最大化に取り組んでいきます。事業成長から創出される営業キャッシュ・フローと有利子負債を活用し、成長投資を実行するとともに、株主還元を大幅に強化していきます。

・成長投資
3年間でM&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を実行していきます。戦略投資であるM&A・アライアンスについては、マシナリー・ファクトリーオートメーション、インダストリアル・プリンティング、業務用ラベリング、そして新規事業をターゲット領域と定め、産業用領域の成長を実現するための基盤・組織能力を強化します。
2025年度は、独Konrad Busche社の自動車部品向け部門の事業譲受と、MUTOHホールディングス株式会社(現:MUTOH株式会社)の株式公開買付けとして、322億円の戦略投資を実施しました。基盤投資については、インクジェットヘッドの生産工程自動化や、ドミノグループの基幹業務システム刷新、P&S事業のつながるビジネス拡大に向けたITインフラ構築、産業機器の開発製造体制強化や販売拠点網の拡充などを中心に、107億円の投資が進捗しています。
・株主還元
配当については、これまでの流れを引き継ぎ、安定的かつ継続的な株主還元を実施する基本方針の下、1株当たり年間100円の配当を下限とし、配当性向40%を目安として還元します。また、CS B2027の期間中に合計600億円の自己株式の取得を予定します。加えて、業績等の状況に応じて追加還元も検討していきます。
このような方針のもと、2025年度は、年間100円の配当を実施し、200億円を上限とした自己株式の取得(2025年5月~2026年4月)を実施しました。2026年度も、200億円を上限とした自己株式の取得(2026年5月~2027年4月)を実施予定です。
・資本コストなどについての認識
〇資本コスト
株主資本コストは約8%~10%と認識しています。CAPMをベースに計算していますが計算のタイミングや前提の違いにより変動があるため、レンジで捉えています。今後については有利子負債も活用しながら、事業ポートフォリオの変革を加速し、株主資本コストの低減を図っていきます。
〇資本収益性指標
ROEは、2025年度は9.3%、過去5年間(2021年度~2025年度)の平均で8.2%であり、株主資本コストを上回るリターンの創出が課題と捉えています。事業成長により健全にROEを向上させることを基本方針とし、CS B2027において資本コストを上回るROE10%を達成することを掲げており、継続的にエクイティスプレッドを確保できる水準のROEを目指します。
〇市場評価
PBRは、2026年3月末時点で0.94倍、過去5年間(2021年度~2025年度)の平均は1.00倍となりました。TSRについては、2025年3月末を起点とした1年間で、当社は110.3%(配当込み)と堅調に推移したものの、TOPIXが半導体関連銘柄を中心に伸長したことなどを受け、対TOPIXでは81.9%となりました。収益力の向上や成長投資の継続による事業ポートフォリオ変革の推進などにより、PBR及びTSRのさらなる向上を図ります。
◆未財務目標
財務目標との関わりが深い3つのマテリアリティを未財務目標として定め、活動を推進しています。未財務目標の「人々の価値創出の支援」については「◆事業別戦略」を、「多様な人々の活躍」については「◆経営基盤の強化」を、「CO₂排出削減」については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。

CS B2027のテーマは、「挑む。未来へ、大胆に」です。ここには、現状に安住せず、大胆な行動で未来を切り開く意思を込めています。ブラザーグループは、CS B2027で、事業ポートフォリオ変革を加速させ、これを確実に実行することで利益創出力を高め、長期的な企業価値の向上を図ります。
*1:TSR(Total Shareholder Return)
株主総利回り。投資家に対する総合的なリターン(値上がり益+配当金)を測定する指標
*2:DTF(Direct to Film)
フィルムに印刷した後、布に転写する方式のガーメントプリンター
*3:LTV(Life Time Value)
顧客生涯価値。製品・サービス利用期間全体におけるお客様にとっての価値及び企業にもたらされる収益
*4:売上高原単位
売上収益に対するCO₂排出量を示す指標
(1)グループビジョン「At your side 2030」
ブラザーグループは、1908年にミシンの修理業からはじまり、115年以上にわたって、時代や環境の変化に合わせ自らを変革し、お客様のニーズにあった価値を提供し続けてきました。昨今、デジタル化や自動化などの加速によるお客様の購買行動の変化、新型コロナウイルス感染症による社会変容、地政学リスクの顕在化など、ブラザーグループを取り巻く事業環境も大きく、かつ急速に変化しています。
こうした変化の激しい環境に対応しながら、持続可能な成長を実現していくために、2030年に向けたブラザーグループビジョン「At your side 2030」を新たに策定し、2022年度よりスタートしました。
「At your side 2030」は、2030年に向けてお客様にどのような価値を提供していくのか考え、ブラザーの存在意義を再定義した「あり続けたい姿」を起点に、どのような方法で価値を提供するのか(「価値の提供方法」)、何を実現するのか(「注力領域」)を示しています。
1)あり続けたい姿ブラザーが何のために存在し、どのようにあり続けたいかについては、「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」と定義しています。ブラザーは、世界中に存在する、お客様をはじめとした、価値創出を行い進歩し続けたいと願うすべての人々を“あなた”と位置付け、その人々の願いを叶えるための存在であり続けたいと考えます。そして、社会の持続的な発展の実現に貢献しながら、地球環境への責任を果たしていきます。
2)価値の提供方法
価値の提供方法については、「多様な独自技術とグローバルネットワークを強みに、お客様の成功へのボトルネックを見つけ解消する」と定義しています。ブラザーグループは創業以来、さまざまな事業を生み出し、グローバルに展開してきました。40以上の国と地域に広がる生産・販売・サービス・開発拠点のネットワークをベースとするグローバル複合事業企業ならではの強みを生かし、お客様や取引先など外部からの学びを得ながら、国や地域、事業を越えて優れた価値を迅速に提供します。また、お客様のバリューチェーンに向き合い、ボトルネックとなるものを見つけ、解消します。さらにモノづくりにとどまらないデジタル技術の活用などの“コト”も含めて、お客様への価値提供の幅を広げます。
3)注力領域
上記の価値を発揮することにより、産業用領域とプリンティング領域を2030年までの注力領域と位置づけ、特に強化していきます。産業用領域での飛躍と、プリンティング領域の変容により事業ポートフォリオを変革し、複合事業体として成長し続けます。産業用領域は、ブラザーの強みが活きるビジネス領域において、生産性の向上に加え、働く人々や地球環境の課題を解決することで、ベストパートナーとしての信頼を確かなものにします。プリンティング領域は、オフィスワークやプリンティングを取り巻く環境が大きく変わる中にあっても、働く人々の期待に応え続けるとともに、これまでの事業の枠を超えて新たな柱を築きます。
(2)中長期的な経営戦略
◆中期戦略「CS B2027」(2025~2027年度)
ブラザーグループビジョン「At your side 2030」の実現を見据え、2025年に中期戦略「CS B2027」を策定しました。CS B2027では、「挑む。未来へ、大胆に」をテーマに、長期的な企業価値向上に向け、事業ポートフォリオの変革を加速し、利益創出力を高めていきます。
◆CS B2027の概要
CS B2027では、事業の役割を明確化し、事業ごとに設定された重点指標に基づいた戦略を遂行することで、売上収益1兆円、及び最優先指標である営業利益額1,000億円を目指しています。ROE目標は10%、産業用領域の売上比率は40%を掲げ、資本コストと株価を意識した経営を推進し、TSR*1は対TOPIXで100%以上を目指しています。投資に関しては、3年間でM&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を確実に実行し、産業用領域の成長を推進します。そして変革を支える経営基盤をより強固なものとするための投資も継続して進めます。株主還元については、3年間で600億円の自己株式取得を含む1,400億円の還元を予定するなど、大幅に強化していきます。

これらの目標を確実に遂行するために、以下の4つの重点テーマを掲げています。

◆事業別戦略
ブラザーグループの事業を4つに分類し、それぞれの事業の役割と重点指標を明確化しています。投資・リソースは役割に応じて配分し、各事業は重点指標に基づいた戦略を遂行することで、CS B2027の目標達成を目指します。

1)成長事業
ブラザーグループとして大きく伸ばしていく事業を成長事業として位置づけ、売上収益を重点指標としています。成長事業に対しては、M&Aを含めた成長投資を積極的に実施して非連続成長を実現し、将来の柱にしていくとともに、人的リソースも優先的に配分することを掲げています。
2025年度は、インダストリアル・プリンティング事業(IP事業)において、産業用プリンターにおける事業拡大に向け産業用大判プリンターを主力製品とするMUTOHホールディングス株式会社(現:MUTOH株式会社)の株式公開買付けを実施し、連結子会社化しました。IP事業の既存領域については、ドミノのデジタルラベル印刷や段ボール印刷の領域で初期導入費用を抑えた新製品を投入したほか、ガーメントプリンターにおいてブラザー初のDTF*2プリンターを発売するなど、ラインアップ強化を進めました。
マシナリー事業の産業機器においては、工作機械のショールームを併設した「ブラザーテクノロジーセンター」をインド及び日本に新設するとともに、ドイツのテクノロジーセンターを拡張移転するなど、重点地域での販売・サービス拠点網を強化しました。また、工作機械の新製品として、工程集約や自動化ニーズに対応する工具増本モデルや、大物・長尺ワークの多面加工が可能な横形5軸マシニングセンタなどを投入し、新たな市場の創出を図っています。
また、新規事業においては、ワークコミュニケーションソフトウエアサービス「BuddyBoard」に関する事業を、投資会社とのジョイントベンチャーで新会社として独立させました。これにより、SaaSビジネスとしての事業成長の加速を目指します。
2)コア事業
プリンティング&ソリューションズ事業(P&S事業)は、全社での収益基盤を支えるコア事業に位置づけ、営業利益額を重点指標としています。市場におけるポジショニングのさらなる強化とビジネスモデル変容のための投資を行うことを方針としています。
2025年度は、インクジェット及びカラーレーザー市場に向けて複数の新製品を投入しました。中でも、インクジェット複合機においては認知度向上に向けたマーケティング・広告宣伝活動を強化し、各地域で販売台数が伸長しました。また、つながるビジネスの拡大に向けては、欧米でBtoC向けのサービスプラットフォームの提供を開始しました。製品本体の延長保証やアプリの活用などを通じ、お客様の利便性を向上するとともに、お客様の利用実態の把握による提供価値の向上や純正消耗品の利用促進に努めています。
3)収益性追求事業
収益性追求事業は、全社に利益貢献することをミッションとし、営業利益率を重点指標としています。
2025年度は、パーソナル&ホーム事業において、刺しゅうデザインデータなどを作成できるアプリ「Artspira」においてAI技術を活用した画像生成機能を実装するなど、顧客提供価値の向上を進めています。
ニッセイ事業においては、世界で初めて金属製球状歯車の量産に向けた工法を確立し、今後はヒューマノイドロボットの関節をはじめとする様々な機械の駆動部での活用に向けたマーケティング活動を実施していきます。
4)収益性改革事業
収益性改革事業は、着実に利益貢献ができるよう収益構造を徹底的に見直すことを掲げており、営業利益率を重点指標としています。
2025年度は、マシナリー事業の工業用ミシンにおいては、欧州を中心に工業用ミシンのソリューション提案ビジネスを展開する独Konrad Busche社の自動車部品向け部門の事業を譲受しました。これにより、エアバッグなどの自動車内装部品を中心としたノンアパレル領域での成長と収益性改善を加速させます。
また、ネットワーク&コンテンツ事業においては、通信カラオケビジネスのさらなる成長を実現すべく、グループ外への譲渡を決定しました。カラオケ店舗等の運営事業を営む株式会社スタンダードについては、2025年11月に株式会社コシダカホールディングスへ事業譲渡し、業務用カラオケ事業や音楽・映像ソフト事業等を主業とする株式会社エクシングについては、2026年4月に株式会社U-NEXT HOLDINGSへの株式の70%の譲渡が完了しました。
◆経営基盤の強化
各領域において事業ポートフォリオ変革を支える取り組みが進捗しています。

◆財務戦略
資本コストと株価を意識した経営を推進し、継続的に株主価値を向上させ、企業価値の最大化に取り組んでいきます。事業成長から創出される営業キャッシュ・フローと有利子負債を活用し、成長投資を実行するとともに、株主還元を大幅に強化していきます。

・成長投資
3年間でM&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を実行していきます。戦略投資であるM&A・アライアンスについては、マシナリー・ファクトリーオートメーション、インダストリアル・プリンティング、業務用ラベリング、そして新規事業をターゲット領域と定め、産業用領域の成長を実現するための基盤・組織能力を強化します。
2025年度は、独Konrad Busche社の自動車部品向け部門の事業譲受と、MUTOHホールディングス株式会社(現:MUTOH株式会社)の株式公開買付けとして、322億円の戦略投資を実施しました。基盤投資については、インクジェットヘッドの生産工程自動化や、ドミノグループの基幹業務システム刷新、P&S事業のつながるビジネス拡大に向けたITインフラ構築、産業機器の開発製造体制強化や販売拠点網の拡充などを中心に、107億円の投資が進捗しています。
・株主還元
配当については、これまでの流れを引き継ぎ、安定的かつ継続的な株主還元を実施する基本方針の下、1株当たり年間100円の配当を下限とし、配当性向40%を目安として還元します。また、CS B2027の期間中に合計600億円の自己株式の取得を予定します。加えて、業績等の状況に応じて追加還元も検討していきます。
このような方針のもと、2025年度は、年間100円の配当を実施し、200億円を上限とした自己株式の取得(2025年5月~2026年4月)を実施しました。2026年度も、200億円を上限とした自己株式の取得(2026年5月~2027年4月)を実施予定です。
・資本コストなどについての認識
〇資本コスト
株主資本コストは約8%~10%と認識しています。CAPMをベースに計算していますが計算のタイミングや前提の違いにより変動があるため、レンジで捉えています。今後については有利子負債も活用しながら、事業ポートフォリオの変革を加速し、株主資本コストの低減を図っていきます。
〇資本収益性指標
ROEは、2025年度は9.3%、過去5年間(2021年度~2025年度)の平均で8.2%であり、株主資本コストを上回るリターンの創出が課題と捉えています。事業成長により健全にROEを向上させることを基本方針とし、CS B2027において資本コストを上回るROE10%を達成することを掲げており、継続的にエクイティスプレッドを確保できる水準のROEを目指します。
〇市場評価
PBRは、2026年3月末時点で0.94倍、過去5年間(2021年度~2025年度)の平均は1.00倍となりました。TSRについては、2025年3月末を起点とした1年間で、当社は110.3%(配当込み)と堅調に推移したものの、TOPIXが半導体関連銘柄を中心に伸長したことなどを受け、対TOPIXでは81.9%となりました。収益力の向上や成長投資の継続による事業ポートフォリオ変革の推進などにより、PBR及びTSRのさらなる向上を図ります。
◆未財務目標
財務目標との関わりが深い3つのマテリアリティを未財務目標として定め、活動を推進しています。未財務目標の「人々の価値創出の支援」については「◆事業別戦略」を、「多様な人々の活躍」については「◆経営基盤の強化」を、「CO₂排出削減」については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。

CS B2027のテーマは、「挑む。未来へ、大胆に」です。ここには、現状に安住せず、大胆な行動で未来を切り開く意思を込めています。ブラザーグループは、CS B2027で、事業ポートフォリオ変革を加速させ、これを確実に実行することで利益創出力を高め、長期的な企業価値の向上を図ります。
*1:TSR(Total Shareholder Return)
株主総利回り。投資家に対する総合的なリターン(値上がり益+配当金)を測定する指標
*2:DTF(Direct to Film)
フィルムに印刷した後、布に転写する方式のガーメントプリンター
*3:LTV(Life Time Value)
顧客生涯価値。製品・サービス利用期間全体におけるお客様にとっての価値及び企業にもたらされる収益
*4:売上高原単位
売上収益に対するCO₂排出量を示す指標