有価証券報告書-第86期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 13:03
【資料】
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【項目】
153項目
本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「エレクトロニクス分野を通して高い品質と優れた技術に基づいた価値ある製品・サービス・情報を提供することにより夢とゆとりのある社会の実現に貢献します」という当社の経営理念のもと自動車、家電、産業機など様々な電子製品に搭載されるエレクトロニクス部品の取り扱いとともに製造業向けに各種メカトロニクス装置や関連システムをトータルに提供する技術商社機能、高品質で優れた技術力に基づき、お客様のニーズに合わせ各種のシステム・ソフトウェアを開発し提供するシステムインテグレーター機能、並びにエレクトロニクス製品に欠かせないプリント配線板を生産するエレクトロニクス部品メーカーの3つの機能を柱として事業展開を図っております。
今後とも先端技術の分野で、創造的な製品やサービスを提供し、企業としての成長・発展を維持していく方針です。
また、企業経営においては、常に株主に対する利益還元を念頭におきながら安定利益の確保に努め、同時に、全てのステークホルダーとの相互の信頼関係や、社会全体に対する貢献を大切にしてまいります。
(2)経営環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続きましたが、消費税増税や米中貿易摩擦問題の先鋭化などから不透明感が増加し、2020年に入ってからの新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済の減速を受けて輸出や製造業における設備投資が大幅に減少し始めるなど急速に悪化し始めました。
また、海外においては、米国経済が、2019年内は個人消費に支えられて底堅く推移いたしましたが、2020年に入ってからの新型コロナウイルスの感染拡大による世界各地でのサプライチェーンの分断や生産活動の停止を受け、中国経済はもとより世界経済全体が急速に悪化いたしました。新型コロナウイルスの感染拡大は依然として終息の見通しが立っておらず、先行きは極めて不透明な状況が続いています。
足許では斯かる不透明感の強い状況にありますが、当社事業の主たる市場動向は以下のとおりであります。
当社グループの主要顧客であるエレクトロニクス業界では、自動車の電装化が引き続き進むことが見込まれる車載関連、第5世代移動通信(5G)のサービス開始に伴う通信関連などにより更なる市場拡大が見込まれます。
FA機器、メカトロニクス装置並びに関連するシステム開発の市場においては、省人化ニーズやメカトロニクス装置をネットワークに接続するIoTの普及などから積極的な設備投資が期待されます。
また、省人化ニーズが益々高まるとともにデータ連携に基づく生産性の向上などを可能にするロボティクスの隆盛が今後は更に加速すると思われ、ハードウェアの販売に留まらず倉庫や工場全体の管理を可能にするシステム化のニーズが拡大をしていくと思われます。
当社グループのシステム開発業務の主要顧客である電力関連業界は、異業種からの参入が増加しておりますが、中長期的には再生可能エネルギー利用促進に向けた取り組みによる新たなシステム開発の需要が見込まれるものと期待されます。
(3)経営環境を踏まえた取り組み
当社では2019年12月末を以てルネサスエレクトロニクス株式会社との特約店契約を解消いたしましたが、引き続き三菱電機株式会社製半導体を始めとした幅広い内外商材を取り扱う営業・技術両面での体制を整え、自動車の電装化が引き続き進むことが見込まれる車載関連、第5世代移動通信(5G)のサービス開始に伴う通信関連などによる半導体デバイス事業の市場拡大を捉えた商機拡大に取り組んでおります。
省人化ニーズやメカトロニクス装置同士をネットワークに接続するIoTの普及などからFA機器、メカトロニクス装置並びに関連するシステム開発などへの積極的な設備投資が期待される状況のもと、主要な仕入先である三菱電機株式会社との密接な連携や、協力会社との協働と当社SEのシステム開発力を融合させて商機発掘、拡大に努めております。
省人化ニーズの高まりからロボティクスの隆盛が期待される状況においては、工場以外にも、近時、設備投資需要が旺盛な物流倉庫業をターゲットにしたソリューション営業の体制を強化している他、黎明期から取り扱いを開始していた3Dプリンタ事業も機器販売に留まらず、造形サービス、保守サービスなどを含めた多面的な事業化が進展するなど、新規事業の拡大、構築へも積極的に取り組んでおります。また、事業本部とは独立をしたビジネスイノベーション室を設置し、次世代へ向けた事業創造や新規事業発掘への取り組みを行っております。
(4)目標とする経営指標
当社グループでは、安定的な収益力の確保とグループ全体の業績向上のため事業効率を重視し、営業利益率3%の早期達成をはかり、さらなる利益率の向上及び株主価値の最大化を図ってまいります。
(5)優先的に対処すべき課題
当社を取り巻く事業環境は、グローバル化による競争の激化に加え、技術革新の進展により新たな競争機会が増えるとともに省人化ニーズやIoTの普及などから新たな商機が幅広い領域で見込まれるなど大きく変化しております。
このような環境のもと、当社といたしましても事業環境の変化に対応するためには、収益構造の改善や新規事業への取り組み体制の強化を行い、経営基盤の安定強化を図る必要があると捉えており、以下の項目を対処すべき経営課題と認識しております。
①収益力を強化するために
・ロボティクスビジネスなどの新事業・新分野の更なる開拓を図る
・先進先端技術への取り組みや、成長事業へ積極的に資源投入を図る
・海外事業推進とエンジニアリングサービス強化のためのアライアンス戦略を強化する
・自社ブランド製品の開発、販売を強化するとともに、それを支える品質管理体制の強化を図る
・主要仕入先・取引先との連携強化を図る
・システム投資や業務プロセスの見直しにより間接経費の削減を図る
②お客様にとってのNo.1パートナー企業グループとなるために
・取扱商品の幅を広げるとともに、当社のICT技術と組み合わせることにより、お客様にとって付加価値の高い各種製品、サービス、ソリューション、ビジネスモデルの提供を図る
・Only1 技術を探求し、お客様の事業発展に貢献する
③技術力の強化と人材育成のために
・業務に必要な商品、技術、各種制度及び語学などの知識を深め、グローバルな視野を持ち、自律的に行動できる人材を育成するとともに専門性の高い人材を外部からも積極的に採用する
④企業基盤の整備と改革のために
・事業環境の変化に即応した組織機構・人事制度の改革を図る
・従業員満足度を向上させて従業員の士気向上を図る
・効率的に資産を活用し、財務内容の健全化を図る
⑤コーポレートガバナンスを強化するために
・経営の根幹をなすCSR活動を推進するとともに内部統制システムの整備充実を図り、コンプライアンス意識の浸透を徹底する
(6)中長期的な会社の経営戦略と見通し
わが国経済は、2020年に入って世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が進んでいることから、国内外経済が2008年のリーマンショック時を凌ぐと言われる混乱に陥るとともに、回復への道筋が容易に見通せないという極めて不透明感の強い状況にあるため、非常に厳しい状況が続くことが予想されます。このような厳しい状況のもとではありますが、当社では、2020年3月28日付にて公表をいたしました2020年4月から2023年3月までの中期経営計画に基づいて、外部環境の変化に左右されずに、確立したテクノロジーを持った競争力を有するグループ経営の実現に向けた施策に取り組んでまいります。
中期経営計画のスタートに際し、当社では、お客様にとって付加価値の高い各種製品、サービス、ソリューション、ビジネスモデルを提供するために、グループを挙げた全社横断的な動きを更に活性化させ、今後の環境変化に対しても機動的な対応が可能な体制を構築するために、従来の4事業本部(商事本部、ICTサービス事業本部、製造本部、事業戦略本部)を、半導体をはじめ電子部品、モジュール製品等の販売、開発、生産を行うコンポーネントソリューション事業本部(CS事本)とFAシステムをはじめメカトロニクス製品、各種ビジネスシステムの販売、開発を行うトータルソリューション事業本部(TS事本)の2事業本部に再編しました。
各事業本部では、中期経営計画の初年度である今年度より以下の施策に取り組んでまいります。
CS事本は、2019年12月末を以てルネサスエレクトロニクス株式会社との間の特約店契約を解消したことから売上高が減少する見通しではありますが、三菱電機株式会社のパワー半導体、他の内外メーカーの半導体デバイスの販売活動を核とする半導体デバイス事業を中心に、プリント基板事業、IC設計&ソフト開発事業を組織的に統合することで、付加価値の向上、シナジー効果の極大化に取り組んでまいります。また、車載・通信・インバータなどの成長分野をターゲットとし、部品販売に留まることなく当社の技術力を活かしてモジュールビジネスを強化することで収益基盤の安定化を図ります。
TS事本は、三菱電機株式会社製品を中心にしたFAシステム機器、メカトロニクス製品の販売及び斯かる機器・製品に関するシステムの構築、各種システム・ソフトウェアの開発・販売等といった既存事業を維持拡大することに加えて、当社の保有技術の融合により、変化する市場やお客様ニーズに最適なサービスを提案、提供するトータルソリューション事業を拡大してまいります。また、最近の省人化ニーズの高まりからニーズが拡大、多様化しているロボット、IoT等を活用して物流倉庫業界へのソリューション提案に注力をしてまいります。
更に、従来より取り組んでおりますFAX送受信代行サービス、3Dプリンタによる造形サービスや保守ビジネスなど、各事業におけるストックビジネスを強化することで収益基盤の安定化を図ります。
以上のような事業本部の取り組みに加えて、中期経営計画のスタートに際しては、企画・管理機能をコーポレート本部に集約をし、機能の重複解消、システム化へ投資の促進などにより、間接経費の削減に取り組んでまいります。
2021年3月期の連結業績見通しにつきましては、新型コロナウイルスの感染拡大が国内外経済、並びに当社顧客の最終製品の市況、需給に与える影響が極めて不透明な状況にあり、当社連結業績に与える影響を現在精査中であります。従いまして、現時点では2021年3月期の連結業績見通しは未定とさせていただき、連結業績予想の開示が可能となった時点で改めて開示させていただきます。