有価証券報告書-第106期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/29 11:49
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事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループの業務執行におけるリスクは、C&C管理委員会が策定するリスク管理の方針及び評価基準に基づいて、経営会議においてリスクの抽出、分析、評価及び対策の検討・実施を行い、重大リスク事項の特定及び対策実施の方針については取締役会が決定しております。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営環境に関するリスク
1.経済状況の変動
当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国内及び海外の各地域の経済状況の影響を受けるため、景気変動等により、影響を受ける可能性があります。主要製品であるバルブは、建築設備、機械、工場、プラントなどの向け先に幅広く販売されており、その需要は国内外の建設動向、石油、石油化学関連等の製造業の設備投資動向に影響を受ける傾向にあります。また、半導体製造装置向けの製品については、半導体市況の影響が大きく、短期間のうちに市場環境が激しく変動するため、売上・利益に対する不安定要因となります。
伸銅品事業については、主要製品である黄銅棒は、水栓金具、ガス機器、家電製品、自動車部品等の素材として幅広く使用され、主に国内市場で販売しており、国内の住宅関連投資動向に影響を受ける可能性があります。また、販売価格は原材料である銅相場に連動するため、市況の影響を大きく受けます。
その他では、ホテル事業については、海外からの観光客の増減を含む日本の観光市場の動向により大きな影響を受けます。日本の観光市場は、経済状況、自然災害、事故、疾病等の影響を受ける可能性があります。
2.為替相場の変動
当社グループは、日本、アジア、欧州及び南米にて生産活動を行うとともに、世界市場において販売活動を行っております。このため、生産拠点と販売拠点の取引通貨が異なり、常に為替レート変動の影響を受けております。
当社では、国内にて生産し輸出する金額と海外子会社で生産し国内販売向けに輸入する金額は概ね均衡しており、為替の急激な変動に耐え得る経営構造となっておりますが、米ドルに対して円高が進むと、営業利益には若干の有利のインパクトとなります。
また、輸出入のバランスの変化や、大きなプロジェクト案件等で売上代金の回収に時間を要する場合など一部の外貨建の取引については、為替リスクを回避するため、必要に応じて為替予約を行っています。グループ会社間の借入については、基本的に決算上の機能通貨と同じ通貨で行っておりますが、機能通貨と異なる通貨の場合には為替予約によりヘッジを行っております。
なお、当社の海外事業への投資については、現地通貨安が進行すると為替換算調整勘定を通じて自己資本が減少するリスクがあります。
3.資金調達環境
当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場環境に変化があった場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、借入金利につきましては、原則固定化しており、借入期間中の金利変動リスクは僅少であります。
資金調達環境の影響を受けないよう直接金融と間接金融のバランスをとり資金調達を実行する他、総額135億円のコミットメントライン契約を当社取引銀行と締結し、有事の際の短期資金需要の発生に備えておりますが、営業利益及び純資産に関する財務制限条項があります。
(2) 事業活動に関するリスク
1.市場構造の変化及び競合他社との競争
当社グループは、広範多岐にわたる製品・サービスの開発、生産及び販売を行っており、国内外の大企業から小規模でも専門性に優れた企業まで、様々な企業と競合しています。当社グループは、今後も競争力の維持・強化に向けた様々な取り組みを進める方針ですが、競合他社が当社グループよりも優れた技術力、財務力その他の推進力を有している可能性があり、将来にわたって優位に事業を展開できなくなる可能性があります。
また、バルブの原材料は、大きく金属と非金属(樹脂等)とに分かれ、市場、用途別にすみ分けられております。現在、非金属製バルブは使用される市場、分野が限定されておりますが、技術の変化、顧客ニーズの変化等により、非金属への置き替えが進み、金属製バルブ市場規模が縮小する可能性があります。伸銅品事業につきましても、主力製品である黄銅棒は、多種多様の用途に用いられておりますが、予期し得ない代替製品の登場により、需要が大きく減少する可能性があります。
建築設備市場において、バルブが最も多く使用されるのは、空調関連設備です。空調方式は大きくセントラル空調方式と個別空調方式に分かれ、セントラル空調方式においては、多数のバルブが使用されます。空調方式は、主に建築設備の規模(延床面積)により、決定されておりますが、技術的進歩、顧客ニーズの変化により、個別空調方式への置き換えが急速に進んだ場合、バルブの需要が大きく減少する可能性があります。
その他では、ホテル事業については、「ホテル紅や」のブランドで一般消費者向けの事業を展開しており、食中毒や火災等のブランドイメージを毀損する事案が発生した場合には、風評被害によりレピュテーションが低下するリスクがあります。
2.代理店・販売店等
当社グループの販売は、一部製品について、エンジニアリング会社等のユーザー顧客との直接取引を行っているものもありますが、主に販売代理店を通じて行っております。この販売代理店との長年に渡る協力関係により、当社グループは、国内外において強固な販売・サービス網を構築していると認識しております。
当社グループは、今後も販売代理店と友好的な関係を維持できるものと認識しておりますが、販売代理店との関係悪化、取引方針の変更、信用力の低下等が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社の債権回収につきましては、その責任は各営業部門にあるとの考えを徹底するとともに、経理部門にて、取引先に対する売掛金の回収状況の把握、取引先の信用情報の収集などを行なっております。また、取引先ごとの与信管理を徹底し、国内取引では、代理店販売もしくは商社経由、グループ一体となった取引信用保険に加入することで債権の保全を行っております。海外輸出・仲介取引につきましては、前金、LC決済によりリスク軽減を図っております。
3.製品価格の下落
当社グループは、国内外の市場において激しい競争に晒されております。こうした状況に対応するため、高付加価値製品の開発、コストダウン活動等に鋭意取り組んでいますが、これらの企業努力を上回る価格下落圧力が生じた場合、当社グループの利益の維持・確保に深刻な影響を与える可能性があり、その影響は特に製品の需要が低迷した状況において、顕著となります。
なお、国内バルブ市場においては、当社グループのシェアが高く、比較的価格は安定しておりますが、海外バルブ市場においては、多数の競合他社が存在しており、特に近年アジアのバルブメーカーの競争力向上により、価格競争が激化しております。
伸銅品事業につきましては、黄銅棒の売価及び原材料の購入単価は、銅相場に連動して決定されますが、仕入から販売までのリードタイムが数か月であるため、相場が下降する局面においては、損益が悪化する可能性があります。
4.海外事業活動、カントリーリスク
当社グループのバルブ事業の海外生産比率は約40%であり、主要な拠点は、タイ、台湾及び中国です。また、バルブ事業の海外売上高比率は約40%であり、主要な販売地域はアジア(アセアン、中国、韓国)、米州(北中南米)です。これらの地域の経済、政治、法・税制の変更、自然災害あるいは新型ウイルスなど疫病の蔓延等の情勢により、製品・部品供給等の事業活動及び経営成績が大きな影響を受ける可能性があります。
また、グループ会社間の国際的な取引価格につきましては、当社移転価格方針に基づき、適用される日本及び相手国の移転価格税制を遵守しておりますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受ける可能性や、協議が不調となった場合に二重課税や追徴課税を受ける可能性があります。
5.固定資産の減損
当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上しております。それらにつき、減損会計基準を適用し、定期的に減損テストを実施しておりますが、事業環境の変化に伴い、将来キャッシュ・フローの低下が見込まれた場合には、減損損失を認識する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当連結会計年度末におけるのれんの未償却残高は僅少であります。
また、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
6.購買調達
当社グループ製品の主要な原材料は、銅、ステンレス、アルミ、鉄、亜鉛等の金属材料であり、こうした原材料及び部品等を安定的かつタイムリーに調達することが、当社グループの生産活動にとって不可欠です。
金属材料は、市況によって価格が急激に変動する可能性があり、特に銅市況の変動は、経営成績に対して大きな影響を与える可能性があります。バルブ事業、伸銅品事業とも、原材料価格上昇分を全て販売価格に転嫁できる保証はありません。なお、伸銅品事業においては、原材料である銅の一部につき、ヘッジ取引を行い、変動リスクの軽減を図っております。
また、当社グループは、複数のサプライヤーの中から信頼のおけるパートナーを選定し、原材料、部品等を調達する方針をとっておりますが、調達品目によっては、仕入先の代替が難しいものがあります。それらのサプライヤーに不測の事態が生じ、供給が中断した場合、当社グループの生産体制に影響を及ぼす可能性があります。
7.情報システム、情報セキュリティ
当社グループの事業活動は、情報システムに依拠して行われております。この情報システムを守り適正に運用することを目的として、機密性、完全性及び可用性を確保するために、情報システムに関する管理体制強化と、社員に対する情報リテラシー向上を図る教育を実施しております。また、同時にハード・ソフトの両面からの適切なセキュリティ対策を講じております。
しかしながら、高度情報化への対応の遅れや予期せぬ自然災害及びウイルス感染等のサイバー攻撃などにより、情報システムや通信回線システムの停止、重要な経営情報の破壊、改ざん、窃取及び漏洩等の重大な障害が発生した場合には、業務効率の著しい低下や社会的信用の失墜が避けられず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 法的規制・訴訟・コンプライアンスに関するリスク
1.品質、製造物責任等
当社グループは、厳格な品質保証体制を構築し、高い性能と信頼性を備えた製品及びサービスを提供しておりますが、万が一、当社グループの製品あるいはサービスに欠陥が発生した場合、製造物責任又は契約上の責任等に基づき、多額の損害賠償金や対策費用を負担する可能性があります。また、事案によっては、当社グループの信用力やブランド力の低下などのレピュテーションリスクが発生する可能性があります。
2.訴訟・法的処分
当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、その過程においては、第三者との間で訴訟が発生したり、規制当局の法的処分を受ける可能性があります。当社グループが、第三者から訴訟が提起された場合や、規制当局の法的処分を受けた場合、結果によっては、多額の損害賠償金、罰金や費用を負担する可能性があります。また、事案によっては、当社グループの信用力やブランド力の低下などのレピュテーションリスクが発生する可能性があります。
一方で、当社グループが第三者に対し訴訟を提起する場合には、結果によっては、多額の費用を費やしながら敗訴し、または当該費用以上の回収が見込めない可能性もあります。
3.環境規制
当社グループは、事業活動を行っているすべての国の様々な環境関連規制(大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理、リサイクル、土壌・地下水汚染等)の遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や賠償責任が発生した場合、社会的信用が著しく失墜する可能性があります。また、環境関連規制が将来さらに厳格化した場合には、追加的義務及び費用が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループ製品の原材料である金属や化学物質が、RoHS指令(電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についてのEUによる指令)、REACH規則(EUにおける化学品の登録、評価、認可、制限に関する内容について定められた規則)等の環境規制に適合できない場合は、製品を市場に供給することができず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、こうしたリスクに対応するため、全社環境委員会を設置し、環境データの収集から目標・実績管理、改善施策の立案・実行、効果の把握までのPDCAサイクルを運用する環境マネジメント体制を推進しています。
4.コンプライアンス
当社グループは、事業活動を行う国や地域における、会社法、税法、独占禁止法、贈収賄関連諸法、貿易関連諸法、環境関連諸法、各種業法などの多岐に亘る法令、規制に従う必要があります。
当社グループは、C&C(クライシス及びコンプライアンス)管理委員会が、コンプライアンス課題に対する解決・改善や、コンプライアンス・リスク低減のための教育・研修の実施・監督などを行っています。2019年度は、当社及び国内グループ会社の全従業員を対象とするコンプライアンス・アンケートを実施し、各グループ会社・部門固有の課題を特定しました。各課題につき、解決・改善するための施策を立案し、当社のC&C管理委員会がその進捗状況を監督しています。
しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクは完全には回避できない可能性があり、当該リスクが万一発現した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、事案によっては、当社グループの信用力やブランド力の低下などのレピュテーションリスクが発生する可能性があります。
(4) その他のリスク
1.自然災害、事故
異常気象などにより大地震、大雨、洪水などの自然災害が発生し、当社グループの事業所(生産現場や生産設備、事務所など)や情報システム設備、物流に関連したインフラストラクチャ-(道路、鉄道、港など)が甚大な被害を受けた場合、長期間にわたり事業活動が停止し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特に、当社グループの国内における主要な製造拠点は、山梨県北西部から隣接する長野県南部の地域に集中しており、今後30年以内に震度6以上の規模で発生する確率が70%~80%とされている「南海トラフ巨大地震」が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、こうしたリスクに対応するため、防災マニュアルや事業継承計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの採用、耐震対策、防災訓練などの対策を講じています。
また、当社グループは、電気炉や塗装などの機械設備の火災事故などに対し万全を期しておりますが、万一、当該事態が発生した場合は、その規模によっては生産の一時的な停止などにより、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
2.新型コロナウイルス等の感染症拡大
感染症拡大は、新型コロナウイルス、新型インフルエンザ等の感染拡大からも解るように、重大なリスクです。
当社グループが感染症拡大の対象国に生産拠点を有する場合、従業員等の関係者の感染又は当局の政策等により、工場の全部又は一部が稼働停止に追い込まれるほか、材料・部品等の調達が困難となり、あるいは物流が停滞することなどにより、製品供給が正常に機能しない状況となる可能性があります。
また、当社グループが感染症拡大の対象国に販売拠点を有する場合、同様の理由により、事業所の全部又は一部が使用停止に追い込まれ、在宅勤務を余儀なくされるほか、物流が停滞すること、あるいは代理店等の顧客が同様の状況に陥ることで販売金額及び数量が低下する可能性があります。
今回の新型コロナウイルス感染症への対応としては、在宅勤務環境を整えることにより出勤率を低下させるとともに、時差出勤、オンラインでの会議実施、本社・工場間の移動の禁止などの拡大防止策を実施いたしました。また、経営成績等に与える影響につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営環境」に記載しております。なお、2020年12月期通期の連結業績予想につきましては、新型コロナウイルス感染拡大が経営成績に及ぼす影響を有価証券報告書提出日現在において予想することが困難であることから、未定としております。今後予想が可能となった段階で、速やかに公表いたします。
3.退職給付及び年金債務
当社の従業員退職金制度は、会社が年金運用リスクを負わない確定拠出制度(401K制度)、前払退職金及び会社が外部に年金資産を積み立て、その運用リスクを負って退職金の額を保証する確定給付年金制度からなっておりますが、確定給付年金制度の割合は僅少となっております。また、確定給付年金制度上の年金資産残高は年金債務に見合う水準にあり、年金資産は、最低運用利率の保証された一般勘定を中心にリスクを抑えた運用を行っております。