有価証券報告書-第77期(2025/04/01-2026/03/31)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としております。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業へ業容拡大を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、2023年11月に公表した中期経営計画「move.2027」より、資本コスト経営を事業運営の軸としていくことを明示し、目標とする経営指標をROE10%以上・PBR1倍以上と設定したうえで、資本コストと資本収益性を意識した経営を進めることとしております。
(3) 経営環境
① 当社の主力事業領域
空調システムは、大きく家庭用と業務用に分けることができます。業務用は、事務所、工場、病院、ホテル、商業施設などを指し、建物の規模によって空調方式を使い分けます。
大規模な建物で採用されるセントラル空調は、建物を一体のシステムと捉える空調方式です。熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り、建物全体に循環させて空調します。それに対し中小規模の建物で採用される個別空調は、各部屋に室外機、室内機をセットで設置して、個々で熱を作って空調します。当社は両空調方式において、居室の温度、湿度、気流、清浄度をコントロールする業務用の空調機器のメーカーです。

② 各方式の特徴と動向
空調方式は、建物の規模や運用によって最適なものが選択されます。熱源機器を大型化して効率を上げ、システムを一括で制御するセントラル空調は、建物全体の管理や省エネルギーに適しています。一方、熱源機器を集中しても効率化されない規模の建物では、個々に制御でき、システムが簡易で利便性が高いと言われる個別空調が採用されます。
1) セントラル空調(大規模建物)
大規模建物においては、エネルギー効率の面から古くよりセントラル空調が採用されてきました。近年、その簡易性から個別空調の採用が増加していましたが、「2050年カーボンニュートラル」に代表される地球環境の面から、セントラル空調が改めて注目されております。その大きなメリットの一つは、熱源からAHU(※)内までの熱の搬送に高GWP(地球温暖化係数)冷媒(主にHFC)を使っていないという点にあります。AHUは自然冷媒である冷温水を使用して熱交換するため、気候変動関連で規制が強化されている高GWP冷媒の使用量を削減することができ「カーボンニュートラル」に貢献いたします。
空調分野において、熱の移動を媒介する冷媒ガス(以下、冷媒)には、古くはアンモニアや二酸化硫黄、20世紀半ば頃からは高効率かつ不燃性で毒性もないフロンが利用されておりました。ところが、フロンによるオゾン層破壊問題がクローズアップされ、1987年のモントリオール議定書によって特定フロンが規制されると、オゾン層を破壊しない代替フロンへの転換が始まりました。その後さらに、地球温暖化問題が顕在化し、1997年の京都議定書では先進国が、2015年のパリ協定では発展途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むこととなり、温暖化係数の高い代替フロンに対する規制が全世界で進んでおります。
冷温水を用いるセントラル空調には、その他にも、大風量の空調に対応できる、冷媒にはできない精緻な温度・湿度制御ができる、上質な空気質を作ることができ、熱源をまとめて大型化するためエネルギー効率の高い運転ができ、機器がまとまって設置されているため保守性がよいなど、多くのメリットがあります。
※ AHU…「Air Handling Unit」(エアハンドリングユニット)の略称。AHUは、セントラル空調方式の二次側機器として、熱源機器(一次側)で作られた冷温水を用いて空気の温度調整をするほか、湿度・清浄度・音・省エネ性・振動・気流などをコントロールし、建物に最適な空気を提供する製品です。
2) 個別空調(中小規模建物)
中小規模の建物においては、簡易性、利便性に加え、エネルギーの効率からも個別空調が採用されており、今後も続くものと思われます。
個別空調で使用される機器についても高効率化は進んでおり、今後は地球温暖化係数のより低い冷媒への転換が進むことで、従来の利便性に加え製品の環境性も向上していく見込みです。
③ 当社製品の役割
当社の主力製品は、セントラル空調で使用されるAHU、ファンコイルユニット(FCU)です。大型のAHUはフロア全体の換気・空調を、小型のFCUは各部屋の空調を行います。セントラル空調は建物用途に合わせて個々に設計されるため、そこで採用される製品もその要求仕様に合わせて最適な形で設計・製造されますが、当社は特にAHUに強みを持っております。
また個別空調で使用されるヒートポンプAHUも主力製品の一部です。セントラル空調と比べると簡易的なシステムが構築されるため、採用される製品も汎用品が多くなりますが、建物の換気・空調を行うヒートポンプAHUには固有の要求仕様が多く、当社がセントラル空調分野で蓄積してきたノウハウを存分に活かすことができます。

④ 業界構造
一定以上の規模の業務用建物の工事において、空調機器は建築工程に合わせて納入、設置されます。発注主としてディベロッパーなどの施主、建物の設計をする設計事務所、建築工事として全体を束ねるゼネコン、設備工事を請けるサブコンを中心に多くの企業が関わり、工事が進められます。サブコンにはそれぞれの専門分野があり、熱源、空調、計装の各メーカーは、空調設備工事を担当するサブコンに対して製品を納入します。
従いまして当社の事業は、主にサブコンから発注を受け、製造した空調機器を建物の工期に合わせて建築現場に納入するという流れで進められます。

⑤ 建設業・物流業における働き方改革の推進と人手不足
2024年4月から建設業および物流業に適用された労働基準法の改正により、建設業界における働き方改革が進みました。当社の主な得意先である管工事のサブコンのほかゼネコンを含む建設業全体で、より持続的な働き方への対応が実施されました。これら法改正への対応により、従来の長時間労働を前提とした工事計画の見直しや工事単価の引き上げなど、業界に一定の影響が生じている環境にあると認識しております。物流業においても、トラックドライバーの減少や労働時間上限規制を背景に、当社製品を含む建設資材の輸送能力不足・物流コスト上昇などが生じており、製品の安定的な輸送体系の構築が重要となっております。また、国内の人口減少と少子高齢化は想定よりも早いペースで進んでおり、人財への投資や業務の効率化など長期的にますますの対処が必要な事業環境と捉えております。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、少子高齢化に伴う労働者不足や気候変動問題への対応など、ESG経営・SDGsへの取り組みを通じて、持続的に発展できる企業グループとして更なる成長を遂げるため中期経営計画を策定しております。資本コスト経営を採用し、2027年3月期では連結売上高630億円・連結営業利益100億円ならびにROE10%以上・PBR1倍以上の達成を目標と定め以下の経営戦略を進めております。
① 長期ビジョン実現に向けたマテリアリティの特定と見直し
当社グループは、長期ビジョン「VISION2030:空気で未来を拓く」および中期経営計画「move.2027」を踏まえ、その実現に向けたマテリアリティ(重要課題)を特定しております。当社グループのマテリアリティは以下の4項目です。
1) 持続可能な社会の実現に向けた空調インフラの提供
2) デジタル技術革新(DX)による新しい価値の創造
3) 多様な人財が活躍できる環境整備と制度の構築
4)透明性の高いガバナンス体制の構築
各項目は、事業特性・事業環境等を考慮して課題を抽出し、社会・環境への影響度と当社グループ事業への重要度を分析して重要性を評価しております。重要性が高い課題は、取締役会での審議・承認を経てマテリアリティとして特定し、事業戦略に組み込んで具体的な施策として実行しております。
② 当社グループが提供する価値と強み
1) 高い環境価値
空調は建物のなかで多くの電力を消費する機能であり、その効率向上は建物の環境性向上に貢献します。主力製品である冷温水を用いるAHUは、高GWP冷媒の使用量が少ないシステムであり、温室効果ガスの低減に貢献します。ファン効率やコイルの熱交換効率がもたらす省エネ性の追求のほか、外板のノンフロン発泡、溶接レス、塗装レスなど製品の作り方も見直し、より良い環境性の提供を目指して研究開発を強化しております。
2) 空調による建物の価値向上
空調は建物の重要な機能の一つです。居住空間では温度や湿度のコントロールを間違えると、快適性が損なわれ建物自体の価値を低下させます。工場では空気の清浄度や温湿度管理によって生産能力や製品の品質が左右されます。データセンターでは24時間の安定稼働が求められます。様々な建物で要求される空気条件を満たし、空調を通じ、建物の価値向上に貢献することが当社グループの提供する価値です。
3) 信頼性の高い稼働と充実したサービスによるお客様体験
AHUをはじめ当社グループの製品が納まる建物には、工場や研究所、オフィスや商業施設などがあります。これらは収益や重要な機能を生み出すインフラであり、竣工に向けて厳格な工期管理が求められます。定められた工期ですべての設備を納めるためには、AHUの品質はもとより、施工過程で生じる技術的要求への対応力や様々な調整力が必要とされます。当社は、過去国内の代表的な建物に製品を納めてきたなかで、お客様とともに数々の挑戦とトラブル対応を含めた現場経験を共有してまいりました。高度な要求に応えなければならないお客様に対して、豊富な現場経験を経て高められた製品の品質と高水準のサポートやメンテナンスサービスを提供することで、信頼と満足を感じるお客様体験が当社グループの提供する価値です。
事業運営のなかでこれらの強みを磨き、お客様や社会に提供する価値を高めることが当社グループの事業基盤を形成しております。

③ デジタル技術革新を軸にした新しい製品開発と製販体制
国内の人口減少に伴う人財不足に対応するため、基幹業務の効率化を狙ったDX投資を進めております。労働集約的な生産体制の脱却を目指す「SIMA(SINKO Innovative Manufacturing of AHU)」プロジェクトは、新たな空調機設計システムである3D-CADの段階的な実装と運用を2024年度からスタートさせ、製造・販売プロセスで必要となる製品のデータ化を進めております。また設計システムに次ぐデジタル化の第2フェーズとして、製品リードタイム短縮と品質向上を目指す新しい生産システムを構築し、2026年4月から一部の製品で運用を開始しました。製品の設計情報や製造上の指示などをデジタルデータに集約することで、属人的な生産体制の脱却を進めるとともに、長期の需要予測・生産計画立案や製造工程の平準化といった製販業務の最適化を進めてまいります。また組立工程において「ライン生産方式」と「セル生産方式」を併用し、製品の構造や仕様に応じた効率的な生産体制を構築しているほか、事業継続プランを準備し、大規模地震などの災害が起こった場合の調達過程等の不確実性に備えております。さらに、物流業の労働時間上限規制に伴う輸送能力不足への対応として、生産計画と連動した製品保管・出荷計画の立案や全国の中継拠点の整備など、新しい物流システムの構築に取り組んでおります。

研究開発においては、当社が長年培ってきた研究開発の実績・ノウハウとデジタル解析技術を組み合わせ、コアビジネスの競争力強化を目指すプロジェクト「SSA(SINKO Scalable Architecture)」を2023年度に立ち上げ、取り組みを進めております。実機試作と解析・シミュレーション技術を併用したコア技術深耕により、当社製品の基幹部品である送風機および熱交換器の高効率化・コンパクト化を実現し、環境負荷低減・CO₂削減・省エネルギー化のニーズに応えてまいります。また施工現場、生産現場での人手不足に対応するため、分割搬入・現地組立が可能な製品の設計や現場省力化の技術開発に努めてまいります。これらの取り組みを通じて、企業成長とカーボンニュートラルなどの社会貢献の2つの軸でNo.1を追求できる基幹部品の開発を推進してまいります。

さらに2026年度からは、豊富な納入実績とノウハウを含むデジタル資産を活用し、事業機会そのものの拡大を実現する新たなDX構想「SWA(SINKO Web Architecture)」をスタートさせてまいります。グループ内の連携を強化し、マーケティングおよびアフターサービスにおける業務変革に取り組むことで、グループシナジー創出・グループ全体の運営効率化を目指す計画です。
SIMAからSSA、SWAへの段階的拡張のなかで、当社のDX戦略は、基幹業務の効率化にとどまらず社内外の様々な側面での価値創造にまで対象領域を広げております。こうした取り組みの具体例として、AI技術を活用し運用を開始した生産予約システムや当社独自の製品データベースをお客様ご自身で検索できるサービス「SINKOダイレクト」、製品本体の二次元コードからインターネット上のメンテナンス情報にアクセスできる「SINKOかざしてメンテ」、画像認識技術を活用した社内図面検索システムの稼働、生成AI技術を用いた未利用技術データ検索システムのリリースなど、当社の業務プロセス全体において新しい変革が生まれております。これらによって当社グループの価値を総合的に引き上げ、中長期的に事業の発展性・収益性を高めてまいります。

④ ターゲット市場と成長戦略
国内市場
当社ではAHU市場を5つの重点分野に分け、それぞれのターゲットに合った販売戦略を立てております。5つの重点分野とは、大型ビル空調、産業空調、データセンター、更新案件、個別空調をいいます。それぞれのターゲットは固有の市場特性があり求められる技術要件も異なりますが、当社が培ってまいりましたノウハウをもって5つの分野にオールラウンドでアプローチしてまいります。そのなかでも、 (A)データセンター、(B)個別空調、(C)空調設備工事・メンテナンス、(D)再エネ蓄熱を成長領域のターゲットとして定めております。各ターゲットと想定する市場規模および経営戦略は以下のとおりです。

1) データセンター
近年のAI技術の大幅な進化、サービスのクラウド化、5Gから6Gへの切り替えに伴う通信量の増大を背景として、国内市場においてデータセンターの建築需要が高まっています。特に、生成AIの登場を機にハイパースケーラーのデータセンターは、グローバルな大手テック企業を含め、積極的な投資を計画しており、今後も中長期的に増加する見込みです。
当社の主力製品であるAHUが有する大風量で大きな熱負荷を処理できる能力は、データセンターのサーバー冷却に適しております。また、当社のグループ会社である日本ビー・エー・シー株式会社が取り扱っている大型冷却塔も、同様にサーバー冷却のための熱源として採用されております。データセンターのサーバーの冷却方式は、空冷から液冷に一定程度変わっていくと予測しておりますが、大型冷却塔はサーバーの冷却方式に関わらず必要な設備であり重要な事業と位置付けております。また、24時間安定稼働する品質と迅速な国内サービス体制など当社グループのバリューチェーンを活かした信頼性という価値提供を通じて、多くのハイパースケーラーのデータセンターで採用が進んでおります。それに合わせてデータセンター事業への人財増強を進めるとともに、神奈川工場内に、国内有数の規模でデータセンター向け空調機の試験ができる総合実験棟「SINKO AIR DEVELOPMENT LAB」及び同じくデータセンター向け大型冷却塔の実機の展示施設「BAC BASE」を開設いたしました。本ターゲットにおいては、2027年3月期で55億円としていた売上高目標に対し、2026年3月期において50億円を達成しております。
2) 個別空調
ヒートポンプAHUは、熱源と一体で提供されるため設計の容易さや設置工事の簡便さにおいて高い価値を有しており、中小規模の建物の空調やスポットでの空調に適しております。高GWP冷媒を用いるヒートポンプAHUは環境規制にさらされているものの、今後は環境性の高い新冷媒への切り替えが進むことで、従来のメリットを保持しながらその価値を高めていくと考えております。ヒートポンプAHUは、中小建物向け市場を開拓する戦略製品であり製品開発と販売強化に挑戦してまいります。本ターゲットにおいては、2027年3月期の目標としていた売上高33億円を前倒しで達成するなど好調に推移しており、2026年3月期においては売上高35億円を達成しております。
3) 空調設備工事・メンテナンス
空調設備工事は、AHUやヒートポンプAHUなどの製品の据付工事や整備工事及びメンテナンス工事等を示しております。この市場では、当社グループ会社で空調工事を専門とする新晃アトモス株式会社が、当社製品のほか他社のAHU関連製品も扱う専門の工事会社として事業を続けてまいりました。大型の建物で使われるAHUの整備工事は、建物の重要な要素である空調の機能を左右するため、製品知識、工事技術、安全管理など高度なノウハウと現場経験が求められます。建築市場の拡大や更新需要の高まりを背景に、空調設備工事市場の規模は増大しており人手が常に不足している状態にあります。この分野での人財採用と育成が課題ですが、一方で収益性の高い成長が見込める市場と捉えております。働き方改革や社員の支援を強化し、従業員エンゲージメントを高めることで人財の確保と育成を進め、収益拡大を目指してまいります。本ターゲットにおいては、2026年3月期の売上高が146億円となり、2027年3月期で126億円としていた売上高目標を前倒しかつ大幅に上回って達成いたしました。
4) 再エネ蓄熱
太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、エネルギー安全保障にも寄与できる重要な国産エネルギー源です。これらは高い環境価値がある一方で、発電時間や発電量が安定しないという側面があります。日本ビー・エー・シー株式会社の製品である氷蓄熱は、余剰電力を冷熱として維持できることから、再生可能エネルギーを利用した発電を安定させる機能を有しています。今後拡大が見込まれる再生可能エネルギー市場に対して蓄熱機器の販売を強化し新しい市場の獲得に挑戦してまいります。
本ターゲットは、2027年3月期で7億円としていた売上高目標に対し、2026年3月期において0.6億円となりましたが、長期的な視点で引き続き可能性を探ってまいります。
5) 更新需要
東京オリンピックを境に控えられた建設投資は2021年度以降回復しており、産業空調並びに東京大阪を中心とした大型再開発などで新築物件が見込まれます。今後は納入後20~30年が経過したAHUの更新需要を中心としたストックビジネスへの移行が予測されます。
更新物件については、高度経済成長期に建設された高層ビルの建て替えや1990~2000年代に建てられた施設の設備更新の時期がきております。例えば建設後50年が経過し、3度目の大規模更新を迎えた日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビル、1990年前後にオープンしたランドマークタワーや東京ドームなどは当社が継続的にAHU更新を行ってきた大規模建物の一例になります。また既設機器の保守サービスについて、これまでは都市圏での引合いが中心でしたが、需要は地方にも広がっております。その中には、過去に撤退した大手電機メーカー製AHUも多く含まれており、これまで以上に個々の現場に合わせた柔軟性と技術力が求められる状況になっております。これら更新案件で特別に求められる工事対応も多く、スピードや信頼性を強みとして更新案件の獲得を強化してまいります。
アジア市場
アジア最大の市場である中国では、通商問題の深刻化や不動産市場の停滞を抱えつつも、インフラ整備による生産性向上や技術革新を重視する政策に支えられ、中長期的には製造業を中心とした内需拡大を予測しております。一方で、価格競争の厳しい市場であることから収益性は低迷しておりその向上が課題です。現地の市場における地産地消を進めるべく、日本側からの技術支援やノウハウ提供を行い販売面・製造面での差別化を訴求するほか、空調工事を含めた総合サービスを提示することで販売価格の引き上げと原価低減を実現し収益性の向上を目指してまいります。
⑤ 投資戦略
中期経営計画における業容拡大を実現するため生産能力の引き上げが必要です。購入した当社神奈川工場の隣接地に生産設備等の投資を行い、生産能力を引き上げ中期経営計画の実現を目指してまいります。また引き続き事業のデジタル化に対する投資を行い、強みの一層の向上と弱みの克服を行い、当社グループが市場に提供できる価値を高めてまいります。2025年3月期から2027年3月期までに135億円の投資を計画しており主な内訳は生産能力の増強とシステム投資です。
⑥ ESG経営の推進
環境面において、塗装や溶接の削減など生産工程での環境負荷低減を進めるほか、現場の省力化や省エネルギーを可能にする製品開発を進め、予測される気候変動リスクを緩和し事業機会の獲得を進めてまいります。また社会面においては人的資本経営を掲げ、挑戦を促す企業文化の定着を目指した人財育成、多様性を活かす安全で生き活きとした職場づくりの維持と発展に努めてまいります。ガバナンス面においては、取締役会の多様性確保、透明性の高い情報開示と投資家との健全な対話を通じて企業価値を向上してまいります。さらに、内部統制システムの整備やリスク管理とコンプライアンスの徹底を通じて、強い事業基盤をつくってまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のとおり認識しております。
対処すべき課題
① 中期経営計画「move.2027」の実現 ~資本コスト経営の浸透とワクワクの創造~
当社グループは2023年11月に公表した中期経営計画「move.2027」において、ROE10%以上・PBR1倍以上を経営指標として掲げ、事業の軸として資本コスト経営を採用することといたしました。その目標達成のためには、空調機器の販売・製造を基盤事業として磨きつつ、新しいマーケットに挑戦するマインドと能力を持つ幹部人財の育成がカギとなります。気候変動やデジタルなどの環境変化のなかに機会を見いだし、持てる専門性を活かして挑戦を続ける幹部人財の育成に注力してまいります。前向きさのなかから生まれる従来の延長線を超えた発想と知恵で成功例を積み重ね、ワクワクしながら未来の自分達に向かって挑戦しているグループを目指してまいります。
② 気候変動対応としてのセントラル空調及び個別空調
気候変動問題は顧客の購買行動に大きな変化をもたらします。当社の主力製品であるAHUは、熱源からAHU内の熱の搬送に高GWP冷媒を使用せず、自然冷媒である冷温水を用いております。顧客要求に応えるAHUを提案し、温室効果ガスの使用量が少なく環境性の高いセントラル空調採用の建築物を増やしていくことに貢献してまいります。一方、個別空調ではこれまでHFC等の冷媒が広く使用されてきましたが、気候変動関連の規制強化を受け、今後はGWPの低い冷媒への転換が進展する見込みです。当社は、設計や施工の簡便性に優れる個別空調に対して、環境価値を高める低GWP冷媒技術を組み合わせることで、製品価値の更なる向上を図ってまいります。
③ 5つの重点ターゲットとDX戦略
当社ではAHU市場を5つの重点分野に分け、それぞれのターゲットに合った販売戦略を立てております。5つの重点分野とは、大型ビル空調、産業空調、データセンター、更新案件、個別空調をいいます。それぞれのターゲットは、固有の市場特性があり、求められる技術要件も異なりますが、当社が培ってまいりましたノウハウをもって5つの分野にオールラウンドでアプローチしてまいります。成長領域の攻略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 中長期的な会社の経営戦略 ④ ターゲット市場と成長戦略」に記載のとおりであり、経営資源を重点的に投入し業績向上を図ってまいります。
当社は、これらの重点分野において事業を拡大させていくため、DXへの投資を進め、将来の人口減少に伴う人財不足の克服および事業全般のプロセス変革に取り組んでおります。デジタルデータ化された製品情報に基づく設計・製造プロセスの効率化、新しい生産予約システムによる生産の平準化、当社製品データの検索サービス「SINKOダイレクト」を通じたデジタルマーケティングの実現、製品にある二次元コードからインターネット上のメンテナンス情報にアクセスできる「SINKOかざしてメンテ」、AI技術を用いた積算の自動化、画像認識技術を応用した社内技術情報検索など、設計・積算・製造・生産管理・マーケティング・アフターサービスなど多様な側面で社内外への新しい価値提供が始まっております。今後もDX戦略による事業の益々の進化を狙ってまいります。
④ 生産方式の進化
1) 生産能力の引き上げと事業のデジタル化
中期経営計画実現のため、神奈川工場の生産能力の段階的な引き上げを計画しております。購入した同工場の隣接地に新しい生産設備等を導入し中期経営計画に沿った生産体制構築のための投資を実行いたします。
労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。また近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりは限界を迎えております。当社が強みとする個々の現場への対応力をさらに高めるには、個人の習熟度合いに左右されない業務体制の確立が急務であり、そのためには顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウなどのデジタル化による業務プロセスのイノベーションが必須になります。デジタル技術革新に基づいた業務体系の変革を確実に推進し、需要予測の精度向上、設計工程の見直し、造り方改革、生産工程を効率化するAI開発などを通して、労働集約型工場からの脱却を進めてまいります。
2) 総合品質の向上
お客様に提供する価値を高めるため、国際的な基準として認められたAMCA認定やAHRI認証の取得に加え、日本産業規格(JIS)に基づく性能評価などを行い、高い信頼性と透明性に基づく製品品質を追求しております。また、製品の品質だけでなく、部門間の連携でお客様の多種多様な要望に対応する組織力や、過去の実績・経験に基づきお客様への提案を行う技術力を掛け合わせた総合品質を、当社の強みとして磨いております。納入先の建物ごとに最適な製品を提供する設計・生産、建築現場の要望に沿った納期対応、納品後の充実した保守サービスなどの競争力を高めるために積極的にデジタル投資を行い、グループを挙げて総合的な品質を向上させ、お客様に対しより大きな安心を提供できるよう努めてまいります。
⑤ 需要予測と納期管理サービス
多品種少量生産の枠組で製造されるAHUは、それぞれに異なる建物の空調ニーズに応じた能力が求められる製品です。部材手配からラインの組み替えまで、生産現場が柔軟に対応する必要があり、量産メーカーにとっては高い障壁となります。より困難なことは、月によって出荷のバラつきが大きく、生産量を安定させられない点にあります。
当社は、建物の計画段階から設計を手伝う業界最大の上流営業部門を構え、早期に案件情報を獲得し、共有された情報による需要予測を行っております。新築案件、納入実績からの更新案件、短納期が多い小口案件などの生産要求を適切に調整するため、SIMAプロジェクトの一環として生産予約システムを2024年4月に稼働させました。生産量を安定させるとともに、お客様に納期情報提供できる仕組みを構築しております。
⑥ 海外事業の安定化
アジア市場において、中国現地法人では採算性を重視した販売戦略への切り替えや原価管理の強化によって、収益の改善を進めております。継続的に利益を確保できる体制構築を進めるため、国内事業で蓄積してきたノウハウを現地ニーズに合致・深化させ、製品改良や現地法人の技術者の育成など、事業基盤の安定に注力してまいります。
⑦ 人的資本経営と従業員エンゲージメントの向上
資本コスト経営実現のため、挑戦を促す企業文化の定着が必要と考えております。また、社員の成長が企業価値の向上につながるとの考えのもと、新入社員研修、社内技術講習、AI/DX講習、幹部向け経営セミナーなどの教育機会を充実させております。また、多様な人財が活躍できる組織をつくるため、ダイバーシティ推進委員会を設立し、国籍・性別・世代の異なる社員の意見を取り入れ社内の制度改定に反映しております。特に、女性や外国人社員の活躍推進を通じて、経営層・幹部層の多様化と意思決定力の強化を図り、組織の活性化につなげてまいります。定期的にストレスチェック診断および従業員エンゲージメント調査を行い組織の問題点を洗い出し、分析結果を職場環境等の改善に活かし従業員エンゲージメントを向上させてまいります。このような施策によって社員の能力と品格を引き上げ、人的資本の質を高めることで企業価値向上を目指してまいります。
⑧ 次世代の成長市場の探索と新しい事業機会への投資
資本収益性を高めるためには、事業から生まれる利益を新しい成長分野に再投資し続けることが必要です。新たに事業戦略立案を専門的に担う部署を立ち上げたほか、次期中期経営計画立案プロジェクトにおいて優れた戦略・戦術の創出を目指すなど、事業のレベルを引き上げてまいります。長期的に拡大する市場や新技術の探索・分析を継続的に行い、新しい市場への挑戦と新事業の創造に取り組んでまいります。また、新規ターゲットへの挑戦においては、共通の価値創造を目指すパートナーとの協業・提携の可能性を積極的に取り込んでまいります。
財務上の課題
① 株主還元の強化と負債・資本のリバランス
2023年11月に公表した中期経営計画「move.2027」にて、2025年3月期からの配当性向の目安を50%に引き上げ、かつ、業績悪化のタイミングにおいてもDOE3.5%を下回らないことを配当政策といたしました。また、2025年3月期から約5年間で100億円を上限とする自己株式の取得を行うこととしておりました。100億円の自己株式取得は前倒しで進捗しており、2026年3月末時点で93億円取得済であります。なお、2025年4月には2030年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を発行し、調達した60億円分の全額を当該自己株式取得の原資として充てるなど、負債と資本のバランスの適正化も進めてまいりました。
② 政策保有株の売却
当社グループは、政策保有株の保有継続について、資本業務提携や強い取引関係の存在など、保有することにビジネス上の合理的な理由がある場合を除き、売却を進める方針としており、これまでも保有株の売却を進めてまいりました。今後も、政策保有株の保有については、継続的に協議を行い適正に判断・対処してまいります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としております。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業へ業容拡大を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、2023年11月に公表した中期経営計画「move.2027」より、資本コスト経営を事業運営の軸としていくことを明示し、目標とする経営指標をROE10%以上・PBR1倍以上と設定したうえで、資本コストと資本収益性を意識した経営を進めることとしております。
(3) 経営環境
① 当社の主力事業領域
空調システムは、大きく家庭用と業務用に分けることができます。業務用は、事務所、工場、病院、ホテル、商業施設などを指し、建物の規模によって空調方式を使い分けます。
大規模な建物で採用されるセントラル空調は、建物を一体のシステムと捉える空調方式です。熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り、建物全体に循環させて空調します。それに対し中小規模の建物で採用される個別空調は、各部屋に室外機、室内機をセットで設置して、個々で熱を作って空調します。当社は両空調方式において、居室の温度、湿度、気流、清浄度をコントロールする業務用の空調機器のメーカーです。

② 各方式の特徴と動向
空調方式は、建物の規模や運用によって最適なものが選択されます。熱源機器を大型化して効率を上げ、システムを一括で制御するセントラル空調は、建物全体の管理や省エネルギーに適しています。一方、熱源機器を集中しても効率化されない規模の建物では、個々に制御でき、システムが簡易で利便性が高いと言われる個別空調が採用されます。
1) セントラル空調(大規模建物)
大規模建物においては、エネルギー効率の面から古くよりセントラル空調が採用されてきました。近年、その簡易性から個別空調の採用が増加していましたが、「2050年カーボンニュートラル」に代表される地球環境の面から、セントラル空調が改めて注目されております。その大きなメリットの一つは、熱源からAHU(※)内までの熱の搬送に高GWP(地球温暖化係数)冷媒(主にHFC)を使っていないという点にあります。AHUは自然冷媒である冷温水を使用して熱交換するため、気候変動関連で規制が強化されている高GWP冷媒の使用量を削減することができ「カーボンニュートラル」に貢献いたします。
空調分野において、熱の移動を媒介する冷媒ガス(以下、冷媒)には、古くはアンモニアや二酸化硫黄、20世紀半ば頃からは高効率かつ不燃性で毒性もないフロンが利用されておりました。ところが、フロンによるオゾン層破壊問題がクローズアップされ、1987年のモントリオール議定書によって特定フロンが規制されると、オゾン層を破壊しない代替フロンへの転換が始まりました。その後さらに、地球温暖化問題が顕在化し、1997年の京都議定書では先進国が、2015年のパリ協定では発展途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むこととなり、温暖化係数の高い代替フロンに対する規制が全世界で進んでおります。
冷温水を用いるセントラル空調には、その他にも、大風量の空調に対応できる、冷媒にはできない精緻な温度・湿度制御ができる、上質な空気質を作ることができ、熱源をまとめて大型化するためエネルギー効率の高い運転ができ、機器がまとまって設置されているため保守性がよいなど、多くのメリットがあります。
※ AHU…「Air Handling Unit」(エアハンドリングユニット)の略称。AHUは、セントラル空調方式の二次側機器として、熱源機器(一次側)で作られた冷温水を用いて空気の温度調整をするほか、湿度・清浄度・音・省エネ性・振動・気流などをコントロールし、建物に最適な空気を提供する製品です。
2) 個別空調(中小規模建物)
中小規模の建物においては、簡易性、利便性に加え、エネルギーの効率からも個別空調が採用されており、今後も続くものと思われます。
個別空調で使用される機器についても高効率化は進んでおり、今後は地球温暖化係数のより低い冷媒への転換が進むことで、従来の利便性に加え製品の環境性も向上していく見込みです。
③ 当社製品の役割
当社の主力製品は、セントラル空調で使用されるAHU、ファンコイルユニット(FCU)です。大型のAHUはフロア全体の換気・空調を、小型のFCUは各部屋の空調を行います。セントラル空調は建物用途に合わせて個々に設計されるため、そこで採用される製品もその要求仕様に合わせて最適な形で設計・製造されますが、当社は特にAHUに強みを持っております。
また個別空調で使用されるヒートポンプAHUも主力製品の一部です。セントラル空調と比べると簡易的なシステムが構築されるため、採用される製品も汎用品が多くなりますが、建物の換気・空調を行うヒートポンプAHUには固有の要求仕様が多く、当社がセントラル空調分野で蓄積してきたノウハウを存分に活かすことができます。

④ 業界構造
一定以上の規模の業務用建物の工事において、空調機器は建築工程に合わせて納入、設置されます。発注主としてディベロッパーなどの施主、建物の設計をする設計事務所、建築工事として全体を束ねるゼネコン、設備工事を請けるサブコンを中心に多くの企業が関わり、工事が進められます。サブコンにはそれぞれの専門分野があり、熱源、空調、計装の各メーカーは、空調設備工事を担当するサブコンに対して製品を納入します。
従いまして当社の事業は、主にサブコンから発注を受け、製造した空調機器を建物の工期に合わせて建築現場に納入するという流れで進められます。

⑤ 建設業・物流業における働き方改革の推進と人手不足
2024年4月から建設業および物流業に適用された労働基準法の改正により、建設業界における働き方改革が進みました。当社の主な得意先である管工事のサブコンのほかゼネコンを含む建設業全体で、より持続的な働き方への対応が実施されました。これら法改正への対応により、従来の長時間労働を前提とした工事計画の見直しや工事単価の引き上げなど、業界に一定の影響が生じている環境にあると認識しております。物流業においても、トラックドライバーの減少や労働時間上限規制を背景に、当社製品を含む建設資材の輸送能力不足・物流コスト上昇などが生じており、製品の安定的な輸送体系の構築が重要となっております。また、国内の人口減少と少子高齢化は想定よりも早いペースで進んでおり、人財への投資や業務の効率化など長期的にますますの対処が必要な事業環境と捉えております。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、少子高齢化に伴う労働者不足や気候変動問題への対応など、ESG経営・SDGsへの取り組みを通じて、持続的に発展できる企業グループとして更なる成長を遂げるため中期経営計画を策定しております。資本コスト経営を採用し、2027年3月期では連結売上高630億円・連結営業利益100億円ならびにROE10%以上・PBR1倍以上の達成を目標と定め以下の経営戦略を進めております。
① 長期ビジョン実現に向けたマテリアリティの特定と見直し
当社グループは、長期ビジョン「VISION2030:空気で未来を拓く」および中期経営計画「move.2027」を踏まえ、その実現に向けたマテリアリティ(重要課題)を特定しております。当社グループのマテリアリティは以下の4項目です。
1) 持続可能な社会の実現に向けた空調インフラの提供
2) デジタル技術革新(DX)による新しい価値の創造
3) 多様な人財が活躍できる環境整備と制度の構築
4)透明性の高いガバナンス体制の構築
| マテリアリティ | テーマ | 関連する主な項目 |
| 持続可能な社会の実現に 向けた空調インフラの提供 ・脱炭素推進による製品・ サービスの環境価値向上 ・バリューチェーン施策での グループ力を活かした事業強化 ・社会・産業全体のレジリエンスに 貢献する価値提供 | 製品価値の向上 | ・ライフサイクルカーボンの削減 ・環境に配慮した製品開発 ・国内唯一の認定企業 (AMCA・AHRI認証) ・自社の知的財産獲得と保護 |
| 既存事業の深耕、新市場開拓 | ・大型基準階・産業空調市場の強化 ・DC事業・蓄熱事業強化 ・モノ売りからコト売りへの転換 | |
| カーボンニュートラル の実現 | ・製造・輸送に関わる環境負荷低減 ・製品部品の再利用比率の向上 | |
| デジタル技術革新(DX)による 新しい価値の創造 ・業務プロセスの効率化と生産性 向上の仕組み構築 ・製品の安全性と信頼性の追求 | 生産能力・生産効率の 向上 | ・工場最適化、新規設備導入 ・製品リードタイム(LT)短縮 |
| 総合品質の向上 | ・製造検査体制と検査効率向上 ・品質データの連携 | |
| 多様な人財が活躍できる 環境整備と制度の構築 ・資本コスト経営の浸透と ワクワクの創造 ・誰もが幸せに働ける環境づくり ・多様な人財の活躍推進 | 挑戦を促す企業文化の 定着 | ・人財育成プログラム、技術伝承 ・国家資格取得の推奨 |
| 働きやすさの向上 | ・就業環境整備 ・福利厚生制度の充実 ・労働安全衛生活動の推進 | |
| 人権の尊重、多様性を 活かした持続的成長 | ・ダイバーシティ推進計画 | |
| 透明性の高いガバナンス 体制の構築 ・取締役会の機能発揮と多様性の 確保 ・ステークホルダーとの対話の推進 ・リスク管理体制の強化 | ステークホルダーとの 対話・共生 | ・投資家との対話 ・地域社会への貢献 |
| 企業ガバナンス体制強化 | ・業務執行の監督機能の強化 ・透明性の高い情報開示 | |
| リスクマネジメント強化 | ・情報セキュリティの啓蒙 | |
| コンプライアンス遵守 | ・社内コンプライアンス教育 ・コンプライアンス相談窓口の充実 |
各項目は、事業特性・事業環境等を考慮して課題を抽出し、社会・環境への影響度と当社グループ事業への重要度を分析して重要性を評価しております。重要性が高い課題は、取締役会での審議・承認を経てマテリアリティとして特定し、事業戦略に組み込んで具体的な施策として実行しております。
② 当社グループが提供する価値と強み
1) 高い環境価値
空調は建物のなかで多くの電力を消費する機能であり、その効率向上は建物の環境性向上に貢献します。主力製品である冷温水を用いるAHUは、高GWP冷媒の使用量が少ないシステムであり、温室効果ガスの低減に貢献します。ファン効率やコイルの熱交換効率がもたらす省エネ性の追求のほか、外板のノンフロン発泡、溶接レス、塗装レスなど製品の作り方も見直し、より良い環境性の提供を目指して研究開発を強化しております。
2) 空調による建物の価値向上
空調は建物の重要な機能の一つです。居住空間では温度や湿度のコントロールを間違えると、快適性が損なわれ建物自体の価値を低下させます。工場では空気の清浄度や温湿度管理によって生産能力や製品の品質が左右されます。データセンターでは24時間の安定稼働が求められます。様々な建物で要求される空気条件を満たし、空調を通じ、建物の価値向上に貢献することが当社グループの提供する価値です。
3) 信頼性の高い稼働と充実したサービスによるお客様体験
AHUをはじめ当社グループの製品が納まる建物には、工場や研究所、オフィスや商業施設などがあります。これらは収益や重要な機能を生み出すインフラであり、竣工に向けて厳格な工期管理が求められます。定められた工期ですべての設備を納めるためには、AHUの品質はもとより、施工過程で生じる技術的要求への対応力や様々な調整力が必要とされます。当社は、過去国内の代表的な建物に製品を納めてきたなかで、お客様とともに数々の挑戦とトラブル対応を含めた現場経験を共有してまいりました。高度な要求に応えなければならないお客様に対して、豊富な現場経験を経て高められた製品の品質と高水準のサポートやメンテナンスサービスを提供することで、信頼と満足を感じるお客様体験が当社グループの提供する価値です。
事業運営のなかでこれらの強みを磨き、お客様や社会に提供する価値を高めることが当社グループの事業基盤を形成しております。

③ デジタル技術革新を軸にした新しい製品開発と製販体制
国内の人口減少に伴う人財不足に対応するため、基幹業務の効率化を狙ったDX投資を進めております。労働集約的な生産体制の脱却を目指す「SIMA(SINKO Innovative Manufacturing of AHU)」プロジェクトは、新たな空調機設計システムである3D-CADの段階的な実装と運用を2024年度からスタートさせ、製造・販売プロセスで必要となる製品のデータ化を進めております。また設計システムに次ぐデジタル化の第2フェーズとして、製品リードタイム短縮と品質向上を目指す新しい生産システムを構築し、2026年4月から一部の製品で運用を開始しました。製品の設計情報や製造上の指示などをデジタルデータに集約することで、属人的な生産体制の脱却を進めるとともに、長期の需要予測・生産計画立案や製造工程の平準化といった製販業務の最適化を進めてまいります。また組立工程において「ライン生産方式」と「セル生産方式」を併用し、製品の構造や仕様に応じた効率的な生産体制を構築しているほか、事業継続プランを準備し、大規模地震などの災害が起こった場合の調達過程等の不確実性に備えております。さらに、物流業の労働時間上限規制に伴う輸送能力不足への対応として、生産計画と連動した製品保管・出荷計画の立案や全国の中継拠点の整備など、新しい物流システムの構築に取り組んでおります。

研究開発においては、当社が長年培ってきた研究開発の実績・ノウハウとデジタル解析技術を組み合わせ、コアビジネスの競争力強化を目指すプロジェクト「SSA(SINKO Scalable Architecture)」を2023年度に立ち上げ、取り組みを進めております。実機試作と解析・シミュレーション技術を併用したコア技術深耕により、当社製品の基幹部品である送風機および熱交換器の高効率化・コンパクト化を実現し、環境負荷低減・CO₂削減・省エネルギー化のニーズに応えてまいります。また施工現場、生産現場での人手不足に対応するため、分割搬入・現地組立が可能な製品の設計や現場省力化の技術開発に努めてまいります。これらの取り組みを通じて、企業成長とカーボンニュートラルなどの社会貢献の2つの軸でNo.1を追求できる基幹部品の開発を推進してまいります。

さらに2026年度からは、豊富な納入実績とノウハウを含むデジタル資産を活用し、事業機会そのものの拡大を実現する新たなDX構想「SWA(SINKO Web Architecture)」をスタートさせてまいります。グループ内の連携を強化し、マーケティングおよびアフターサービスにおける業務変革に取り組むことで、グループシナジー創出・グループ全体の運営効率化を目指す計画です。
SIMAからSSA、SWAへの段階的拡張のなかで、当社のDX戦略は、基幹業務の効率化にとどまらず社内外の様々な側面での価値創造にまで対象領域を広げております。こうした取り組みの具体例として、AI技術を活用し運用を開始した生産予約システムや当社独自の製品データベースをお客様ご自身で検索できるサービス「SINKOダイレクト」、製品本体の二次元コードからインターネット上のメンテナンス情報にアクセスできる「SINKOかざしてメンテ」、画像認識技術を活用した社内図面検索システムの稼働、生成AI技術を用いた未利用技術データ検索システムのリリースなど、当社の業務プロセス全体において新しい変革が生まれております。これらによって当社グループの価値を総合的に引き上げ、中長期的に事業の発展性・収益性を高めてまいります。

④ ターゲット市場と成長戦略
国内市場
当社ではAHU市場を5つの重点分野に分け、それぞれのターゲットに合った販売戦略を立てております。5つの重点分野とは、大型ビル空調、産業空調、データセンター、更新案件、個別空調をいいます。それぞれのターゲットは固有の市場特性があり求められる技術要件も異なりますが、当社が培ってまいりましたノウハウをもって5つの分野にオールラウンドでアプローチしてまいります。そのなかでも、 (A)データセンター、(B)個別空調、(C)空調設備工事・メンテナンス、(D)再エネ蓄熱を成長領域のターゲットとして定めております。各ターゲットと想定する市場規模および経営戦略は以下のとおりです。

1) データセンター
近年のAI技術の大幅な進化、サービスのクラウド化、5Gから6Gへの切り替えに伴う通信量の増大を背景として、国内市場においてデータセンターの建築需要が高まっています。特に、生成AIの登場を機にハイパースケーラーのデータセンターは、グローバルな大手テック企業を含め、積極的な投資を計画しており、今後も中長期的に増加する見込みです。
当社の主力製品であるAHUが有する大風量で大きな熱負荷を処理できる能力は、データセンターのサーバー冷却に適しております。また、当社のグループ会社である日本ビー・エー・シー株式会社が取り扱っている大型冷却塔も、同様にサーバー冷却のための熱源として採用されております。データセンターのサーバーの冷却方式は、空冷から液冷に一定程度変わっていくと予測しておりますが、大型冷却塔はサーバーの冷却方式に関わらず必要な設備であり重要な事業と位置付けております。また、24時間安定稼働する品質と迅速な国内サービス体制など当社グループのバリューチェーンを活かした信頼性という価値提供を通じて、多くのハイパースケーラーのデータセンターで採用が進んでおります。それに合わせてデータセンター事業への人財増強を進めるとともに、神奈川工場内に、国内有数の規模でデータセンター向け空調機の試験ができる総合実験棟「SINKO AIR DEVELOPMENT LAB」及び同じくデータセンター向け大型冷却塔の実機の展示施設「BAC BASE」を開設いたしました。本ターゲットにおいては、2027年3月期で55億円としていた売上高目標に対し、2026年3月期において50億円を達成しております。
2) 個別空調
ヒートポンプAHUは、熱源と一体で提供されるため設計の容易さや設置工事の簡便さにおいて高い価値を有しており、中小規模の建物の空調やスポットでの空調に適しております。高GWP冷媒を用いるヒートポンプAHUは環境規制にさらされているものの、今後は環境性の高い新冷媒への切り替えが進むことで、従来のメリットを保持しながらその価値を高めていくと考えております。ヒートポンプAHUは、中小建物向け市場を開拓する戦略製品であり製品開発と販売強化に挑戦してまいります。本ターゲットにおいては、2027年3月期の目標としていた売上高33億円を前倒しで達成するなど好調に推移しており、2026年3月期においては売上高35億円を達成しております。
3) 空調設備工事・メンテナンス
空調設備工事は、AHUやヒートポンプAHUなどの製品の据付工事や整備工事及びメンテナンス工事等を示しております。この市場では、当社グループ会社で空調工事を専門とする新晃アトモス株式会社が、当社製品のほか他社のAHU関連製品も扱う専門の工事会社として事業を続けてまいりました。大型の建物で使われるAHUの整備工事は、建物の重要な要素である空調の機能を左右するため、製品知識、工事技術、安全管理など高度なノウハウと現場経験が求められます。建築市場の拡大や更新需要の高まりを背景に、空調設備工事市場の規模は増大しており人手が常に不足している状態にあります。この分野での人財採用と育成が課題ですが、一方で収益性の高い成長が見込める市場と捉えております。働き方改革や社員の支援を強化し、従業員エンゲージメントを高めることで人財の確保と育成を進め、収益拡大を目指してまいります。本ターゲットにおいては、2026年3月期の売上高が146億円となり、2027年3月期で126億円としていた売上高目標を前倒しかつ大幅に上回って達成いたしました。
4) 再エネ蓄熱
太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、エネルギー安全保障にも寄与できる重要な国産エネルギー源です。これらは高い環境価値がある一方で、発電時間や発電量が安定しないという側面があります。日本ビー・エー・シー株式会社の製品である氷蓄熱は、余剰電力を冷熱として維持できることから、再生可能エネルギーを利用した発電を安定させる機能を有しています。今後拡大が見込まれる再生可能エネルギー市場に対して蓄熱機器の販売を強化し新しい市場の獲得に挑戦してまいります。
本ターゲットは、2027年3月期で7億円としていた売上高目標に対し、2026年3月期において0.6億円となりましたが、長期的な視点で引き続き可能性を探ってまいります。
5) 更新需要
東京オリンピックを境に控えられた建設投資は2021年度以降回復しており、産業空調並びに東京大阪を中心とした大型再開発などで新築物件が見込まれます。今後は納入後20~30年が経過したAHUの更新需要を中心としたストックビジネスへの移行が予測されます。
更新物件については、高度経済成長期に建設された高層ビルの建て替えや1990~2000年代に建てられた施設の設備更新の時期がきております。例えば建設後50年が経過し、3度目の大規模更新を迎えた日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビル、1990年前後にオープンしたランドマークタワーや東京ドームなどは当社が継続的にAHU更新を行ってきた大規模建物の一例になります。また既設機器の保守サービスについて、これまでは都市圏での引合いが中心でしたが、需要は地方にも広がっております。その中には、過去に撤退した大手電機メーカー製AHUも多く含まれており、これまで以上に個々の現場に合わせた柔軟性と技術力が求められる状況になっております。これら更新案件で特別に求められる工事対応も多く、スピードや信頼性を強みとして更新案件の獲得を強化してまいります。
アジア市場
アジア最大の市場である中国では、通商問題の深刻化や不動産市場の停滞を抱えつつも、インフラ整備による生産性向上や技術革新を重視する政策に支えられ、中長期的には製造業を中心とした内需拡大を予測しております。一方で、価格競争の厳しい市場であることから収益性は低迷しておりその向上が課題です。現地の市場における地産地消を進めるべく、日本側からの技術支援やノウハウ提供を行い販売面・製造面での差別化を訴求するほか、空調工事を含めた総合サービスを提示することで販売価格の引き上げと原価低減を実現し収益性の向上を目指してまいります。
⑤ 投資戦略
中期経営計画における業容拡大を実現するため生産能力の引き上げが必要です。購入した当社神奈川工場の隣接地に生産設備等の投資を行い、生産能力を引き上げ中期経営計画の実現を目指してまいります。また引き続き事業のデジタル化に対する投資を行い、強みの一層の向上と弱みの克服を行い、当社グループが市場に提供できる価値を高めてまいります。2025年3月期から2027年3月期までに135億円の投資を計画しており主な内訳は生産能力の増強とシステム投資です。
⑥ ESG経営の推進
環境面において、塗装や溶接の削減など生産工程での環境負荷低減を進めるほか、現場の省力化や省エネルギーを可能にする製品開発を進め、予測される気候変動リスクを緩和し事業機会の獲得を進めてまいります。また社会面においては人的資本経営を掲げ、挑戦を促す企業文化の定着を目指した人財育成、多様性を活かす安全で生き活きとした職場づくりの維持と発展に努めてまいります。ガバナンス面においては、取締役会の多様性確保、透明性の高い情報開示と投資家との健全な対話を通じて企業価値を向上してまいります。さらに、内部統制システムの整備やリスク管理とコンプライアンスの徹底を通じて、強い事業基盤をつくってまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を以下のとおり認識しております。
対処すべき課題
① 中期経営計画「move.2027」の実現 ~資本コスト経営の浸透とワクワクの創造~
当社グループは2023年11月に公表した中期経営計画「move.2027」において、ROE10%以上・PBR1倍以上を経営指標として掲げ、事業の軸として資本コスト経営を採用することといたしました。その目標達成のためには、空調機器の販売・製造を基盤事業として磨きつつ、新しいマーケットに挑戦するマインドと能力を持つ幹部人財の育成がカギとなります。気候変動やデジタルなどの環境変化のなかに機会を見いだし、持てる専門性を活かして挑戦を続ける幹部人財の育成に注力してまいります。前向きさのなかから生まれる従来の延長線を超えた発想と知恵で成功例を積み重ね、ワクワクしながら未来の自分達に向かって挑戦しているグループを目指してまいります。
② 気候変動対応としてのセントラル空調及び個別空調
気候変動問題は顧客の購買行動に大きな変化をもたらします。当社の主力製品であるAHUは、熱源からAHU内の熱の搬送に高GWP冷媒を使用せず、自然冷媒である冷温水を用いております。顧客要求に応えるAHUを提案し、温室効果ガスの使用量が少なく環境性の高いセントラル空調採用の建築物を増やしていくことに貢献してまいります。一方、個別空調ではこれまでHFC等の冷媒が広く使用されてきましたが、気候変動関連の規制強化を受け、今後はGWPの低い冷媒への転換が進展する見込みです。当社は、設計や施工の簡便性に優れる個別空調に対して、環境価値を高める低GWP冷媒技術を組み合わせることで、製品価値の更なる向上を図ってまいります。
③ 5つの重点ターゲットとDX戦略
当社ではAHU市場を5つの重点分野に分け、それぞれのターゲットに合った販売戦略を立てております。5つの重点分野とは、大型ビル空調、産業空調、データセンター、更新案件、個別空調をいいます。それぞれのターゲットは、固有の市場特性があり、求められる技術要件も異なりますが、当社が培ってまいりましたノウハウをもって5つの分野にオールラウンドでアプローチしてまいります。成長領域の攻略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 中長期的な会社の経営戦略 ④ ターゲット市場と成長戦略」に記載のとおりであり、経営資源を重点的に投入し業績向上を図ってまいります。
当社は、これらの重点分野において事業を拡大させていくため、DXへの投資を進め、将来の人口減少に伴う人財不足の克服および事業全般のプロセス変革に取り組んでおります。デジタルデータ化された製品情報に基づく設計・製造プロセスの効率化、新しい生産予約システムによる生産の平準化、当社製品データの検索サービス「SINKOダイレクト」を通じたデジタルマーケティングの実現、製品にある二次元コードからインターネット上のメンテナンス情報にアクセスできる「SINKOかざしてメンテ」、AI技術を用いた積算の自動化、画像認識技術を応用した社内技術情報検索など、設計・積算・製造・生産管理・マーケティング・アフターサービスなど多様な側面で社内外への新しい価値提供が始まっております。今後もDX戦略による事業の益々の進化を狙ってまいります。
④ 生産方式の進化
1) 生産能力の引き上げと事業のデジタル化
中期経営計画実現のため、神奈川工場の生産能力の段階的な引き上げを計画しております。購入した同工場の隣接地に新しい生産設備等を導入し中期経営計画に沿った生産体制構築のための投資を実行いたします。
労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。また近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりは限界を迎えております。当社が強みとする個々の現場への対応力をさらに高めるには、個人の習熟度合いに左右されない業務体制の確立が急務であり、そのためには顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウなどのデジタル化による業務プロセスのイノベーションが必須になります。デジタル技術革新に基づいた業務体系の変革を確実に推進し、需要予測の精度向上、設計工程の見直し、造り方改革、生産工程を効率化するAI開発などを通して、労働集約型工場からの脱却を進めてまいります。
2) 総合品質の向上
お客様に提供する価値を高めるため、国際的な基準として認められたAMCA認定やAHRI認証の取得に加え、日本産業規格(JIS)に基づく性能評価などを行い、高い信頼性と透明性に基づく製品品質を追求しております。また、製品の品質だけでなく、部門間の連携でお客様の多種多様な要望に対応する組織力や、過去の実績・経験に基づきお客様への提案を行う技術力を掛け合わせた総合品質を、当社の強みとして磨いております。納入先の建物ごとに最適な製品を提供する設計・生産、建築現場の要望に沿った納期対応、納品後の充実した保守サービスなどの競争力を高めるために積極的にデジタル投資を行い、グループを挙げて総合的な品質を向上させ、お客様に対しより大きな安心を提供できるよう努めてまいります。
⑤ 需要予測と納期管理サービス
多品種少量生産の枠組で製造されるAHUは、それぞれに異なる建物の空調ニーズに応じた能力が求められる製品です。部材手配からラインの組み替えまで、生産現場が柔軟に対応する必要があり、量産メーカーにとっては高い障壁となります。より困難なことは、月によって出荷のバラつきが大きく、生産量を安定させられない点にあります。
当社は、建物の計画段階から設計を手伝う業界最大の上流営業部門を構え、早期に案件情報を獲得し、共有された情報による需要予測を行っております。新築案件、納入実績からの更新案件、短納期が多い小口案件などの生産要求を適切に調整するため、SIMAプロジェクトの一環として生産予約システムを2024年4月に稼働させました。生産量を安定させるとともに、お客様に納期情報提供できる仕組みを構築しております。
⑥ 海外事業の安定化
アジア市場において、中国現地法人では採算性を重視した販売戦略への切り替えや原価管理の強化によって、収益の改善を進めております。継続的に利益を確保できる体制構築を進めるため、国内事業で蓄積してきたノウハウを現地ニーズに合致・深化させ、製品改良や現地法人の技術者の育成など、事業基盤の安定に注力してまいります。
⑦ 人的資本経営と従業員エンゲージメントの向上
資本コスト経営実現のため、挑戦を促す企業文化の定着が必要と考えております。また、社員の成長が企業価値の向上につながるとの考えのもと、新入社員研修、社内技術講習、AI/DX講習、幹部向け経営セミナーなどの教育機会を充実させております。また、多様な人財が活躍できる組織をつくるため、ダイバーシティ推進委員会を設立し、国籍・性別・世代の異なる社員の意見を取り入れ社内の制度改定に反映しております。特に、女性や外国人社員の活躍推進を通じて、経営層・幹部層の多様化と意思決定力の強化を図り、組織の活性化につなげてまいります。定期的にストレスチェック診断および従業員エンゲージメント調査を行い組織の問題点を洗い出し、分析結果を職場環境等の改善に活かし従業員エンゲージメントを向上させてまいります。このような施策によって社員の能力と品格を引き上げ、人的資本の質を高めることで企業価値向上を目指してまいります。
⑧ 次世代の成長市場の探索と新しい事業機会への投資
資本収益性を高めるためには、事業から生まれる利益を新しい成長分野に再投資し続けることが必要です。新たに事業戦略立案を専門的に担う部署を立ち上げたほか、次期中期経営計画立案プロジェクトにおいて優れた戦略・戦術の創出を目指すなど、事業のレベルを引き上げてまいります。長期的に拡大する市場や新技術の探索・分析を継続的に行い、新しい市場への挑戦と新事業の創造に取り組んでまいります。また、新規ターゲットへの挑戦においては、共通の価値創造を目指すパートナーとの協業・提携の可能性を積極的に取り込んでまいります。
財務上の課題
① 株主還元の強化と負債・資本のリバランス
2023年11月に公表した中期経営計画「move.2027」にて、2025年3月期からの配当性向の目安を50%に引き上げ、かつ、業績悪化のタイミングにおいてもDOE3.5%を下回らないことを配当政策といたしました。また、2025年3月期から約5年間で100億円を上限とする自己株式の取得を行うこととしておりました。100億円の自己株式取得は前倒しで進捗しており、2026年3月末時点で93億円取得済であります。なお、2025年4月には2030年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を発行し、調達した60億円分の全額を当該自己株式取得の原資として充てるなど、負債と資本のバランスの適正化も進めてまいりました。
② 政策保有株の売却
当社グループは、政策保有株の保有継続について、資本業務提携や強い取引関係の存在など、保有することにビジネス上の合理的な理由がある場合を除き、売却を進める方針としており、これまでも保有株の売却を進めてまいりました。今後も、政策保有株の保有については、継続的に協議を行い適正に判断・対処してまいります。