有価証券報告書-第185期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/22 16:45
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155項目
3.重要な会計方針
以下に記載している会計方針は、別途記載がない限り、当連結財務諸表に記載しているすべての期間について継続的に適用されており、当社グループによって首尾一貫して適用されます。
(1)連結の基礎
①子会社
当社の連結財務諸表は、当社およびその子会社の財務諸表に基づき作成します。当社グループ内のすべての重要な債権債務残高および取引は連結財務諸表の作成に際して消去します。
子会社とは、直接的または間接的に当社により支配されている企業をいいます。当社グループは、企業への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャーまたは権利を有し、かつ、当該企業に対するパワー(関連性のある活動を指図する現在の能力)によりそのリターンに影響を及ぼす能力を有する場合に、企業を支配していると判断します。当社グループが企業を支配しているかの判断には、議決権または類似の権利の状況、契約上の取り決め、およびその他の関連する要因が考慮されます。
子会社の財務諸表は、当該子会社に対する支配を獲得した日から支配を喪失した日まで、連結財務諸表に含めます。子会社の財務諸表は、当社が適用する会計方針と整合させるため、必要に応じて調整します。
支配の喪失を伴わない子会社に対する持分変動があった場合には、資本取引として会計処理しており、非支配持分の調整額と対価の公正価値との差額は、当社の所有者に帰属する持分として資本に直接認識します。
子会社に対する支配を喪失した場合、支配の喪失後に保持している持分は、支配の喪失日の公正価値で再測定され、当該再測定および売却した持分の処分に伴う利得または損失は、純損益で認識します。
②関連会社および共同支配の取決めに対する投資
関連会社とは、当社グループがその財務および経営方針に対して重要な影響力を有しているものの、共同支配または支配していない企業をいいます。
共同支配の取決めとは、複数の当事者が共同支配を有する取決めをいいます。共同支配とは、取決めに対する契約上合意された支配の共有であり、関連性のある活動に対する意思決定が、支配を共有している当事者の全員一致合意を必要とする場合にのみ存在します。当社グループは、共同支配の取決めを共同支配事業と共同支配企業のいずれかに分類します。共同支配の取決めの分類を共同支配事業とするのか共同支配企業とするのかは、当該取決めの当事者の権利および義務に応じて決定します。共同支配企業は、取決めに対する共同支配を有する当事者が当該取決めの純資産に対する権利を有している共同支配の取決めです。共同支配事業とは、取決めに対する共同支配を有する当事者が当該取決めに関する資産に対する権利および負債に対する義務を有している共同支配の取決めです。なお、当社グループにとって重要な共同支配事業はありません。
関連会社および共同支配企業に対する投資は、持分法を用いて会計処理し、取得原価で認識します。当初認識後、関連会社および共同支配企業の純損益およびその他の包括利益に対する当社グループの持分は、帳簿価額を増額または減額することで認識します。
持分法の適用に際して、関連会社および共同支配企業の財務諸表は、当社の適用する会計方針と整合させるため、必要に応じて調整します。
関連会社および共同支配企業に対する投資に関する減損は、投資の回収可能価額を帳簿価額と比較することにより測定します。減損損失は、純損益で認識しており、回収可能価額の算定に用いた見積りの変更により回収可能価額が増加する場合は、戻し入れます。
③企業結合
企業結合は、取得法を用いて会計処理します。
子会社の取得に伴い移転した対価は、当社グループが移転した資産、当社グループに発生した被取得企業の旧所有者に対する負債および当社グループが発行した資本持分の公正価値で測定されます。
特定の取得に対する対価には、マイルストーンや販売目標の達成など、将来の事象に左右される支払いが含まれます。
当社グループは、取得した識別可能な資産ならびに引き受けた負債および特定の偶発負債を、取得日の公正価値で測定します。当社グループは、非支配持分を公正価値、または当社で認識した識別可能純資産に対する非支配持分の比例割合で測定するかについて、個々の企業結合取引ごとに選択しています。
当社はのれんを、譲渡対価の公正価値、被取得企業のすべての非支配持分の金額、および当社グループが従来保有していた被取得企業の資本持分の公正価値の合計から、取得日時点における識別可能な取得資産および引受負債の公正価値を控除した額として測定します。
仲介手数料、弁護士等の専門家報酬等、企業結合に関連して当社グループに発生する取得関連費用は、発生した期間に費用処理します。
(2)外貨換算
①外貨建取引
外貨建取引は、取引日の為替レートを使用して当社グループ各社の機能通貨に換算します。外貨建の貨幣性資産および負債は、報告期間の末日の為替レートで機能通貨に換算します。取得原価で測定されている外貨建非貨幣性項目は、取引日の為替レートで機能通貨に換算します。公正価値で測定されている外貨建非貨幣性項目は、当該公正価値の算定日における為替レートで機能通貨に換算します。貨幣性項目の決済または換算によって生じた為替差額は、純損益で認識します。ただし、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産およびヘッジが有効な範囲内におけるキャッシュ・フロー・ヘッジのヘッジ手段から生じる換算差額は、その他の包括利益で認識します。
②在外営業活動体
在外営業活動体の資産および負債は、報告期間の末日の為替レートにより円貨に換算し、収益および費用は為替レートが著しく変動している場合を除き期中平均レートにより円貨に換算します。表示通貨への換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識します。在外営業活動体を処分する場合には、この在外営業活動体に関連する為替換算差額の累積金額を処分にかかる利得または損失の一部として純損益に振り替えます。
(3)金融商品
①非デリバティブ金融資産
当社グループは、非デリバティブ金融資産を、償却原価で測定する金融資産、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の各区分に分類します。当社グループは、原則として、ベンチャーキャピタル等への投資を除き、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融商品に指定するという取消不能な選択を行っています。
当社グループは、償却原価で測定する金融資産をそれらの発生日に当初認識します。その他のすべての金融資産は、金融商品の契約の当事者となった時においてのみ、金融資産を連結財政状態計算書に認識します。
当社グループは、金融資産について、当該金融資産からのキャッシュ・フローに対する契約上の権利が消滅した場合、または、当該金融資産の譲渡において、当該金融資産からのキャッシュ・フローを受け取る権利を移転し、かつ所有にかかるリスクと経済価値の実質的にすべてを移転した場合に、認識を中止します。金融資産の認識の中止を行ったものの金融資産に対する支配の保持をもたらさない持分を引き続き保有しているものについては、別個に資産または負債として認識します。
当社グループが保有する金融資産のうち、次の条件がともに満たされる場合には、償却原価で測定する金融資産に分類します。
・契約上のキャッシュ・フローを回収するために金融資産を保有することを目的とする事業モデルの中で保有されている。
・金融資産の契約条件により、元本および元本残高に対する利息の支払いのみであるキャッシュ・フローが所定の日に生じる。
償却原価で測定する金融資産は、当初認識時、公正価値に直接取引費用を加算して測定します。なお、重大な金融要素を含まない営業債権については取引価格によって測定します。当初認識後、償却原価で測定する金融資産の帳簿価額については実効金利法による償却原価から減損損失を控除した金額で測定します。実効金利法による償却および認識が中止された場合の利得または損失は、当期の純損益に認識します。
当社グループは、原則として、ベンチャーキャピタル等への投資を除き、公正価値の事後の変動をその他の包括利益に表示するという選択を行っています。その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品は、当初認識時、公正価値に直接取引費用を加算して測定し、当初認識後は公正価値で測定します。
公正価値の変動はその他の包括利益に含めて認識し、純損益に振り替えることはありません。また、当社グループは、その他の包括利益に累積された金額をその後利益剰余金に振り替えることはありません。なお、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品からの配当金については、配当金が明らかに投資原価の一部の回収である場合を除き、金融収益として純損益に認識します。
上記の償却原価で測定する金融資産およびその他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品以外の金融資産は、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類します。
純損益を通じて公正価値で測定する金融資産は、当初認識後も公正価値で測定し、その変動は純損益で認識します。また、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産にかかる利得または損失は、純損益に認識します。
②金融資産の減損
当社グループは、償却原価で測定する金融資産にかかる減損について、各報告日において、測定する金融資産にかかる信用リスクが当初認識以降に著しく増大しているかを評価することにより、当該金融資産にかかる予想信用損失に対して貸倒引当金を認識します。当初認識以降に当該金融資産にかかる信用リスクが著しく増大していない場合には、報告期間の末日後12ヵ月以内に生じ得る債務不履行事象から生じる予想信用損失(12ヵ月の予想信用損失)に基づき貸倒引当金を測定します。一方、当初認識以降に当該金融資産にかかる信用リスクが著しく増大している場合または金融資産が信用減損している場合、予想信用損失にかかる引当金は、当該金融資産の予想存続期間にわたるすべての生じ得る債務不履行事象から生じる予想信用損失(全期間の予想信用損失)に基づいて計算されます。ただし、売上債権などの営業債権および契約資産については常に全期間の予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を測定します。
信用リスクが著しく増大しているか否かは、債務不履行発生のリスクの変動に基づき判断し、債務不履行発生のリスクに変動があるかの判断にあたっては、深刻な財政困難、契約違反、債務者が破産または他の財務上の再編を行う可能性の増加を考慮します。貸倒引当金繰入額および戻入額は、純損益で認識します。
③非デリバティブ金融負債
当社グループは、非デリバティブ金融負債を、償却原価で測定する金融負債に分類します。また、負債証券はその発行日に当初認識します。その他のすべての金融負債は、その金融商品の契約の当事者となった日に当初認識します。当社グループは、契約上の義務が免責、取消しまたは失効となった時に、認識を中止します。
償却原価で測定する金融負債は、当初認識時に公正価値からその発行に直接起因する取引コストを減算して測定しており、当初認識後は、実効金利法に基づく償却原価で測定します。利息発生額は連結損益計算書の金融費用に含めています。
④デリバティブ金融商品
当社グループは、為替リスクおよび金利リスクをヘッジする目的で、為替予約、金利スワップ、通貨オプション等のデリバティブを利用します。デリバティブは公正価値で当初認識し、その後も公正価値で再測定されます。ヘッジ手段として指定されたデリバティブは、開始時にキャッシュ・フロー・ヘッジ、公正価値ヘッジまたは純投資ヘッジに分類されます。ヘッジ手段として指定されないデリバティブについて、公正価値の変動は、純損益で認識します。ヘッジ手段として指定されたデリバティブについては、当社グループは、ヘッジの開始時に、ヘッジ手段とヘッジ対象との関係、リスク管理目的、ならびにヘッジ取引およびヘッジされたリスクにかかる戦略を文書化します。当社グループはまた、ヘッジ開始時および継続的に、ヘッジ手段が特定のヘッジ対象の公正価値またはキャッシュ・フローの変動を相殺するために非常に有効であるかについての評価を実施します。公正価値ヘッジまたは純投資ヘッジのヘッジ手段として指定されたデリバティブは現在当社グループに存在しません。
⑤キャッシュ・フロー・ヘッジ
デリバティブの公正価値の変動のうち、有効部分はその他の包括利益で認識され、非有効部分は、直ちに純損益で認識されます。その他の資本の構成要素に累積された金額は、ヘッジ対象のキャッシュ・フローが純損益に影響を与えるのと同じ期に、純損益に振り替えられます。ヘッジ手段が失効、売却、終結または行使された場合、ヘッジ会計の要件をもはや満たしていない場合、予定取引の発生がもはや見込まれない場合または指定を取り消した場合は、キャッシュ・フロー・ヘッジによるヘッジ会計を将来に向かって中止します。なお、国際会計基準(IAS)第39号のヘッジ会計を継続して適用するオプションを選択しています。
(4)現金及び現金同等物
現金及び現金同等物は、手許現金、随時引出し可能な預金、および容易に換金可能であり、かつ価値の変動について僅少なリスクしか負わない取得日から3ヵ月以内に償還期限の到来する流動性の高い短期投資から構成されます。
(5)有形固定資産
有形固定資産は、取得原価から減価償却累計額および減損損失累計額を控除した額で測定します。取得原価には資産の取得に直接関連する費用、解体・除去費用および土地の原状回復費用、ならびに資産計上すべき借入コストが含まれます。有形固定資産の重要な構成要素の耐用年数が構成要素ごとに異なる場合、それぞれ別個(主要構成要素)の有形固定資産項目として会計処理します。有形固定資産の処分損益は、純損益で認識します。
土地および建設仮勘定など減価償却を行わない資産を除き、資産は、資産の見積耐用年数にわたり、主に定額法により認識します。残存価額は、耐用年数到来時の売却価格(処分費用控除後)を見積ることができるものを除き、ゼロとします。
主な有形固定資産の種類別の見積耐用年数は以下のとおりです。
建物及び構築物 7~60年
機械及び装置 2~22年
工具、器具及び備品 2~20年
減価償却方法、耐用年数および残存価額は、各報告期間の末日に見直しを行い、必要に応じて変更します。
(6)のれん
子会社の取得により認識されるのれんは、個別に識別されない他の資産とともに発生する将来の経済的便益を表す資産です。のれんは償却を行わず、少なくとも年に1回およびのれんが配分された資金生成単位について減損の兆候がある場合にはその都度、減損テストを行います。当社グループは、移転された対価、被取得企業のすべての非支配持分の金額、および従来保有していた被取得企業の資本持分の取得日公正価値の総額が、取得した識別可能な資産および引き受けた負債の正味の金額を超過する額としてのれんを当初測定します。当該金額の総計が被取得企業の識別可能資産および引受負債の正味の金額を下回る場合、その差額は割安購入益として純損益で認識します。
(7)無形資産
市場販売目的のソフトウェアおよび自社利用目的のソフトウェアの開発費用は、以下のすべてを立証できる場合に限り、無形資産として資産計上します。
・使用または売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
・無形資産を完成させ、さらにそれを使用または売却するという企業の意図
・無形資産を使用または売却する能力
・無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法
・無形資産の開発を完成させ、さらにそれを使用または売却するために必要となる、適切な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能性
・開発期間中に無形資産に起因する支出を、信頼性をもって測定できる能力
特許権やライセンス等のその他の無形資産は、取得時に取得価額で認識します。企業結合により取得し、のれんとは区分して認識した資産化された開発費等の無形資産は取得日の公正価値で計上します。
無形資産で耐用年数が確定できるものについては、当該資産が使用可能な状態になった日から見積耐用年数にわたり、主として定額法により償却します。無形資産の償却費は、売上原価ならびに販売費及び一般管理費に含まれます。顧客関連資産は、見積耐用年数にわたり、定額法により償却します。市場販売目的のソフトウェアは、見込有効期間における見込販売数量に基づいて償却しますが、当該償却方法が将来の経済的便益が消費されるパターンを反映しない場合には、残存耐用年数にわたり定額法により償却します。自社利用目的のソフトウェアは、見込利用可能期間にわたり、定額法により償却します。特許権やライセンス等のその他の無形資産についても、当該資産が使用可能な状態になった日から契約期間等の見積耐用年数にわたり、将来の経済的便益が消費されるパターンを反映する方法によって償却します。
主な無形資産の種類別の見積耐用年数は以下のとおりです。
市場販売目的ソフトウェア 1~ 9年
自社利用目的ソフトウェア 3~ 5年
顧客関連資産 3~19年
企業結合により取得し資産化された開発費 3~17年
その他 2~13年
耐用年数を確定できる無形資産の償却方法、耐用年数および残存価額は、各報告期間の末日に見直しを行い、必要に応じて変更します。
(8)リース
当社グループは、契約時に、その契約がリースであるか、またはその契約にリースが含まれているかを判定します。契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合には、その契約はリースまたはリースを含んでいます。また、当社グループは、リース期間が12ヵ月以内の短期リースおよび原資産が少額であるリースについて、使用権資産およびリース負債を認識しないことを選択しています。これらのリースに関して、当社グループは、リース料をリース期間にわたり定額法により費用として認識します。
借手のリース
当社グループは、リースの開始日において、原資産を使用する権利を表す使用権資産およびリース料の支払義務を表すリース負債を認識します。
リース負債は、開始日に支払われていないリース料の現在価値で測定します。そのリース料は、リースの計算利子率が容易に算定できる場合には、計算利子率を用いて割り引きますが、計算利子率が容易に算定できない場合には、借手の追加借入利子率を用いて割り引きます。
リース負債の測定に含められるリース料は、次の額で構成されます。
・固定リース料(実質上の固定リース料を含む)
・変動リース料のうち、指数またはレートに応じて決まる金額(当初測定には開始日現在の指数またはレートを使用)
・残価保証に基づいて当社グループが支払うと見込まれる金額
・購入オプションおよび延長オプションを当社グループが行使することが合理的に確実である場合の、当該オプションの行使価格
・リースの解約に対するペナルティの支払額(当社グループが解約オプションを行使しないことが合理的に確実である場合を除く)
リース負債は、実効金利法に基づく償却原価で事後測定し、指数またはレートの変動、残価保証に基づく当社グループの見積支払額、または当社グループが購入オプション、延長オプションまたは解約オプションを行使するかの判定の変更により、将来のリース料の変動が発生した場合に再測定されます。
使用権資産は、リース負債の当初測定額に、開始日以前に支払ったリース料等を調整した額で当初測定し、開始日から原資産の耐用年数の終了時またはリース期間の終了時のいずれか短い期間にわたり定額法により減価償却します。原資産の見積耐用年数はその有形固定資産の見積耐用年数と整合するよう決定されます。また、開始日後は、使用権資産は、取得原価から減価償却累計額および減損損失累計額を控除し、リース負債の再測定について調整した額で測定されます。使用権資産は、連結財政状態計算書において、「有形固定資産」に含めて表示されています。
(9)棚卸資産
棚卸資産の評価額は、取得原価と正味実現可能価額のいずれか低い金額で測定します。棚卸資産の測定において、代替性がある場合には先入先出法または総平均法により測定し、代替性がない場合には個別法により測定します。
取得原価には、棚卸資産の取得にかかる費用、製造費および加工費、ならびに当該棚卸資産を現在の場所および状態とするまでに要したその他の費用が含まれます。製造棚卸資産および仕掛品については、正常操業度に基づく製造間接費の適切な配賦額を含めます。正味実現可能価額は、通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する見積原価および販売に要する見積販売費用を控除した額です。
(10)非金融資産の減損
当社グループは、各報告期間の末日現在、棚卸資産、繰延税金資産、売却目的で保有する資産、従業員給付から生じる資産、契約資産、および顧客との契約獲得のためのコストから生じる資産を除く非金融資産の帳簿価額が減損している可能性を示す兆候の有無を判定します。当該判定は、資産または資金生成単位について行われます。資金生成単位は、他の資産または資産グループのキャッシュ・インフローから、概ね独立したキャッシュ・インフローを生み出す最小の資産グループです。減損損失は純損益で認識し、帳簿価額はその回収可能価額まで減額します。回収可能価額は、資産が他の資産または資産グループから、概ね独立したキャッシュ・インフローを生成しない場合を除き、個別の資産または資金生成単位ごとに決定します。当社グループの全社資産は独立したキャッシュ・インフローを生み出さないため、全社資産に減損の兆候がある場合、全社資産が帰属する資金生成単位について回収可能価額を算定します。全社資産は、のれん以外の資産で、検討の対象である資金生成単位と他の資金生成単位の双方のキャッシュ・インフローに寄与する資産をいい、間接部門で保有する土地や建物が含まれます。
回収可能価額は、資産または資金生成単位の処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額とします。使用価値とは、資産または資金生成単位から生じると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値です。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、その資金生成単位が属する国、産業の状況を勘案して決定した成長率に基づき作成し、貨幣の時間的価値および当該資産または資金生成単位に固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割り引きます。
のれんおよび耐用年数を確定できない無形資産は、毎年同時期に、のれんおよび耐用年数を確定できない無形資産が配分された資金生成単位のレベルで回収可能価額の見積りを行います。上記の他、減損の兆候がある場合にはその都度、減損テストを行います。
過年度において、のれん以外の資産について認識した減損損失は、認識した減損損失がもはや存在しないかまたは減少している可能性を示す兆候があり、かつ、減損損失を最後に認識してから、当該資産の回収可能性の算定に用いた見積りに変更があった場合にのみ、減損損失を戻し入れます。減損損失の戻し入れは、減損損失を認識しなかった場合の帳簿価額から必要な減価償却費または償却費を控除した後の帳簿価額を超えない金額を上限とします。なお、のれんについては減損損失の戻し入れを行いません。
(11)売却目的で保有する資産
非流動資産または処分グループの帳簿価額が、継続的使用よりも主として売却取引により回収が見込まれる場合には、売却目的で保有する資産または処分グループに分類します。分類の条件は、現状で直ちに売却することが可能であり、かつ売却の可能性が非常に高い場合にのみ満たされます。当社グループが子会社に対する支配の喪失を伴う売却計画を確約する場合で、かつ上記の条件を満たす場合、当社グループが売却後も従前の子会社に対する非支配持分を有するか否かにかかわらず、当該子会社のすべての資産および負債を、売却目的保有に分類します。売却目的保有に分類された非流動資産または処分グループは、その帳簿価額と売却費用控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定します。売却目的保有に分類された有形固定資産や無形資産について、減価償却または償却は行いません。
(12)従業員給付
①確定給付型制度
当社グループの確定給付型制度には、確定給付型年金制度および退職一時金制度が含まれます。確定給付型制度にかかる負債または資産の純額は、確定給付制度債務の現在価値から、制度資産の公正価値を控除します。当社グループは確定給付制度債務を、制度ごとに区別して、従業員が過年度および当年度において提供した勤務の対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定します。割引率は、上記債務と概ね同じ満期日を有するもので、かつ、支払見込給付と同じ通貨建ての、報告期間の末日における優良社債の利回りによります。当社グループでは、各確定給付制度債務について、確定給付制度債務の現在価値、勤務費用および過去勤務費用の決定に、予測単位積増方式を用いています。制度改訂または縮小により生じる過去勤務費用は、制度改訂または縮小の発生時に純損益として認識します。確定給付制度の再測定はその純額を一括してその他の包括利益で認識し、その後利益剰余金への振替は行いません。
②確定拠出型年金制度
確定拠出型年金制度は、当社グループが一定額の掛金を別個の事業体(基金)に拠出し、その拠出額以上の支払いについて法的または推定的債務を負わない退職後給付制度です。確定拠出型年金制度の拠出債務は、従業員が勤務を提供した期間に、従業員給付費用として純損益で認識します。
(13)引当金
引当金は、当社グループが過去の事象の結果として現在の債務(法的または推定的)を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、当該債務の金額について信頼できる見積りが可能である場合に認識します。
(14)売上収益
当社グループは、下記の5ステップアプローチにより収益を認識します。(IFRS第9号「金融商品」に基づく利息および配当収益等ならびにIFRS第16号「リース」に基づく受取リース料を除く。)
ステップ1:顧客との契約を識別する
ステップ2:契約における履行義務を識別する
ステップ3:取引価格を算定する
ステップ4:取引価格を契約における履行義務に配分する
ステップ5:履行義務の充足時に(または充足するにつれて)収益を認識する
顧客との契約における別個の履行義務の特定
当社グループは、ハードウェアおよびパッケージソフトウェアの提供に関する契約、ならびに役務の提供およびシステム・インテグレーション/工事に関わる顧客との契約から収益を認識します。これらの契約から当社グループは別個の約束された財またはサービス(履行義務等)を特定し、それらの履行義務に対応して収益を配分します。
当社グループは、約束された財またはサービスが別個のものである場合、すなわち、財またはサービスを顧客に移転するという約束が契約の中の他の約束と区分して識別可能であり、かつ、顧客がその財またはサービスからの便益をそれ単独でまたは顧客にとって容易に利用可能な他の資源と組み合わせて得ることができる場合、区分して会計処理します。
取引価格の算定
当社グループは、取引価格を算定するにあたり、変動対価、変動対価の見積りの制限、契約における重大な金融要素の存在、現金以外の対価および顧客に支払われる対価からの影響を考慮します。
当社グループは、変動対価として、主に販売促進活動の一環で販売代理店等の顧客に対して提供される販売奨励金等を認識しています。顧客から受け取る対価が事後的に変動する可能性がある場合には、変動対価を見積り、その不確実性が解消される際に認識した収益の累計額に重大な戻入れが生じない可能性が非常に高い範囲で、売上収益に含めて処理しています。販売奨励金は、販売店別・製品別の過去の販売実績を考慮の上、期待値法に基づき見積ります。
契約が金融要素を含んでいるか、および金融要素が契約にとって重大であるかを評価する際には約束した対価の金額と約束した財またはサービスの現金販売価格との差額、約束した財またはサービスを顧客に移転する時点と、顧客が当該財またはサービスに対して支払いを行う時点との間の予想される期間の長さ、関連性のある市場での実勢金利を考慮し判断します。
取引価格の履行義務への配分
当社グループは、約束した財またはサービスを顧客に移転するのと交換に権利を得ると見込んでいる対価の金額を描写する金額で取引価格をそれぞれの履行義務へ配分します。取引価格をそれぞれの履行義務に独立販売価格の比率で配分するため、契約におけるそれぞれの履行義務の基礎となる別個の財またはサービスの契約開始時の独立販売価格を算定し、取引価格を当該独立販売価格に比例して配分します。独立販売価格が直接的に観察可能ではない場合には独立販売価格を見積ります。ハードウェアおよびパッケージソフトウェアの提供に関する顧客との契約については、主に市場価格調整アプローチに基づき独立販売価格を見積っています。役務の提供およびシステム・インテグレーション/工事に関わる顧客との契約については、主に予想コストにマージンを加算するアプローチに基づき独立販売価格を見積っています。
履行義務の充足
当社グループは、約束した財またはサービスを顧客に移転することによって履行義務を充足した時に、または一定期間にわたり履行義務を充足するにつれて、収益を認識します。財またはサービスに対する支配を一定の期間にわたり移転し履行義務を充足する場合とは、当社グループの履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する、履行が資産を創出するかまたは増価させ、顧客が当該資産の創出または増価につれてそれを支配する、または、履行が他に転用できる資産を創出せず、かつ、当社グループが現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能な権利を有している場合であり、収益を一定期間にわたり認識します。上記以外の場合には、資産に対する支配が顧客に移転したと判断した一時点で収益を認識します。
製品・サービスの種類ごとの履行義務および収益の測定方法
ハードウェアおよびパッケージソフトウェアの提供に関する契約
ハードウェアおよびパッケージソフトウェアの提供に関する主な内容は、ハードウェア(サーバ、メインフレーム、スーパーコンピュータ、ストレージ、企業向けパソコン、POS、ATM、制御機器、無線LANルータ)、ソフトウェア(統合運用管理、アプリケーションサーバ、セキュリティ、データベース)、企業ネットワーク(IPテレフォニーシステム、WAN・無線アクセス装置、LAN製品)、ネットワークインフラ(コアネットワーク、携帯電話基地局、光伝送システム、ルータ・スイッチ、ワイヤレスバックホール)等です。
当社グループは、支配が顧客に移転したと判断した時点で収益を認識します。支配が顧客へ移転した時点を決定するにあたり、(a)資産に対する支払いを受ける権利を有している、(b)顧客が資産に対する法的所有権を有している、(c)資産の物理的占有を移転した、(d)顧客が資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を有している、(e)顧客が資産を検収しているか否かを考慮します。一般的に、支配の顧客への移転の時期は顧客の検収に対応しています。サーバ、ネットワークプロダクトなど、据付等の重要なサービスを要するハードウェアの販売による売上収益は、原則として、顧客の検収時に認識します。パソコン、電子デバイス製品などの標準的なハードウェアの販売による売上収益は、原則として、当該ハードウェアに対する支配が顧客に移転する引渡時に認識します。
役務の提供に関する契約(保守およびアウトソーシングを含む)/システム・インテグレーション/工事に関する契約
役務の提供およびシステム・インテグレーション/工事の主な内容はシステム・インテグレーション(システム構築、コンサルティング)、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンス、サービスプロバイダ向けソフトウェア・サービス(Operation Support System(OSS)/Business Support System(BSS))、サービス&マネジメント(OSS/BSS、サービスソリューション)、ネットワークインフラ(海洋システム)、アウトソーシング・クラウドサービス、サポート(保守)等です。
上記サービスの提供は、通常、(a)当社グループの履行によって提供される便益をその履行につれて顧客が同時に受け取って消費する、(b)当社グループの履行が資産を創出するかまたは増価させその創出または増価につれて顧客が当該資産を支配する、または、(c)当社グループの履行が他に転用できる資産を創出せず、当社グループが現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能な権利を有している場合のいずれかに該当するため、一定の期間にわたり充足される履行義務です。サービスの提供の売上収益は、履行義務の完全な充足に向けた進捗度を合理的に測定できる場合は進捗度の測定に基づいて、進捗度を合理的に測定できない場合は履行義務の結果を合理的に測定できるようになるまで発生したコストの範囲で、認識します。
一括請負などの成果物の引渡し義務を負うサービス契約は、原則としてプロジェクト見積総原価に対する連結会計期間末までの発生原価の割合で進捗度を測定する方法に基づいて売上収益を認識します。ただし、契約開始時に当社が履行する義務に関してマイルストーンが定められている場合は、当該マイルストーンの達成に基づいて売上収益を認識します。
継続して役務の提供を行うサービス契約は、サービスが提供される期間に対する提供済期間の割合で進捗度を測定する方法に基づいて売上収益を認識します。単位あたりで課金するアウトソーシング・サービスは、サービスの提供が完了し、請求可能となった時点で売上収益を認識します。時間単位で課金されるサービスは、サービス契約期間にわたり売上収益を認識します。メンテナンスは原則としてサービスが履行される期間にわたり売上収益を認識しますが、時間単位で課金する契約については実績金額をもとに売上収益を認識します。
なお、契約当初に見積った売上収益、進捗度または発生原価に変更が生じた場合は、見積りの変更による累積的影響を、当該変更が明らかとなり見積り可能となった連結会計期間に純損益で認識します。
複合取引
複合取引とは、ハードウェア販売とその付帯サービス、あるいはソフトウェア販売とその後のサポートサービスなどのように複数の財またはサービスが一つの契約に含まれるものです。顧客に約束している財またはサービスは、顧客がその財またはサービスからの便益をそれ単独でまたは顧客にとって容易に利用可能な他の資源と組み合わせて得ることができる(すなわち、当該財またはサービスが別個のものとなり得る)場合、かつ、財またはサービスを顧客に移転するという企業の約束が契約の中の他の約束と区分して識別可能である(すなわち、当該財またはサービスが契約の観点において別個のものである)場合には、別個の履行義務として識別します。取引価格は前述のとおり、関連する独立販売価格に基づいて各履行義務に配分します。
進捗度の測定方法
当社グループは、収益を一定期間にわたり認識する場合、約束した財またはサービスに対する支配を顧客に移転する際の履行を描写するため進捗度を測定します。前述のとおり進捗度を合理的に測定できる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務についての収益を認識します。また、進捗度を合理的に測定できない場合についても、前述のとおり、発生したコストの範囲でのみ収益を認識します。
製品保証
当社グループは、製品販売後または受託開発プログラム引渡後、契約に基づき一定期間無償で修理・交換を行っており、製品保証引当金については売上高等に対する過去の実績率や追加原価の発生可能性を個別検証した結果を基礎として見積額を認識します。顧客に対して、個別に、または当該瑕疵担保に加えて追加で製品保証を提供する場合には、当該製品保証を別個の履行義務として特定し、取引価格を配分のうえ、製品保証期間にわたり収益を計上します。
契約資産および契約負債
契約資産は企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(当該権利が、時の経過以外の何か(例えば、企業の将来の履行)を条件としている場合)であり、契約負債は顧客に財またはサービスを移転する企業の義務のうち、企業が顧客から対価を受け取っている(または対価の金額の期限が到来している)ものです。工事契約から生じる前受金については、契約負債に計上します。
契約コスト
顧客との契約獲得のための増分コスト及び契約に直接関連する履行コストのうち、回収可能であると見込まれる部分について資産として認識します。償却方法は、当該資産に関連する財またはサービスの顧客への移転と整合的で規則的な基礎で償却します。
(15)法人所得税
法人所得税は、当期税金と繰延税金から構成されます。これらは、直接資本の部またはその他の包括利益で認識される項目を除き、純損益で認識します。
①当期税金
当期税金は、報告期間の末日において施行または実質的に施行されている税率および税法を使用した、当年度の課税所得について納付すべき税額、または税務上の欠損金について還付されると見込まれる税額です。
②繰延税金
繰延税金資産および負債は、会計上の資産および負債の帳簿価額と税務上の金額との一時差異および報告期間の末日時点における税務上の繰越欠損金に基づいて算定されています。
なお、次にかかる一時差異に対しては繰延税金資産または負債を認識しません。
・企業結合以外の取引で、会計上の利益と課税所得のどちらにも影響を与えない資産および負債の当初認識である場合
・子会社、関連会社および共同支配に対する投資にかかる一時差異について、予測可能な将来にその差異が解消されない可能性が高い場合
・のれんの当初認識により将来加算一時差異が生じる場合
繰延税金資産および負債は、報告期間の末日に施行または実質的に施行されている法律に基づいて、一時差異が解消される時に適用されると予測される税率を用いて測定します。
繰延税金資産および負債は、当期税金資産と負債を相殺する法律上強制力のある権利が存在し、かつ法人所得税が同一の税務当局によって同一の納税企業体に課されている場合に、相殺します。
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金および将来減算一時差異に対して利用できる課税所得が発生すると見込まれる範囲内で認識します。
また、繰延税金資産の一部または全部の便益を実現させるのに十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなった場合に、繰延税金資産を減額します。
(16)株主資本
①普通株式
普通株式は、資本として分類します。普通株式の発行に直接関連する増分費用は、資本の控除項目として認識します。
②自己株式
自己株式は、取得原価で認識され、資本から控除します。当社グループがその後自己株式を売却した場合は、帳簿価額と売却時の対価の差額を資本剰余金として認識します。また、自己株式の取得・売却に直接関連して追加的に発生する費用は、資本からの控除として認識します。