有価証券報告書-第68期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/30 14:39
【資料】
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【項目】
138項目
当社グループの主要市場である北米において、中国製液晶テレビ等との競争激化による価格下落が与える収益へのダウンサイドリスクに加え、インターネット動画配信サービスの普及による影響を受け、ブルーレイディスク・DVD関連製品の市場の縮小のリスク等が生じております。
こうした業界環境におきまして当社グループの経営方針、対処すべき具体的な課題及び対応は下記のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営基本方針
当社グループは「より良い製品を」「より厚い信用を」「より実りある共存共栄を」の社是のもと、最も効率的な開発、生産、販売体制を構築し、世界マーケットへ高品質かつ適正価格の製品を安定供給することによって、厚い信用を築くとともに、更に当社に関わるすべての人々の相互繁栄を期することを基本方針として事業活動を推進してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの経営指標につきましては、売上高営業利益率を最も重視しており、全社をあげて中期的に売上高営業利益率5%以上を目標に取り組んでまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 経営環境に関する課題
a.売上高の拡大及び収益力の回復
当社グループでは売上高の拡大と収益力の回復を最重要課題と位置づけております。
「映像機器」につきましては、後述の通り北米市場におきましては主要量販店において個人消費獲得を図ってまいります。日本市場におきましては、2020年6月より「観る・録る・ひろがる」をコンセプトとする高付加価値テレビによりラインアップを刷新し、更なるブランド浸透を目指してまいります。
「情報機器」につきましては、中国向け大容量型インクジェットプリンターやラベルプリンター、ネイルアートプリンターのOEM並びに自社ブランドの販売拡充を図ることで増収増益を計画しております。当社が保有しているインクジェット技術の応用を加速するため「プリンターエンジンスターターキット」も導入し事業化のスピードアップを図ってまいります。また、世界最大の一般消費財メーカーに対するマイクロフルイディクス(微量流体制御技術)を活かした派生製品の共同開発と既存開発アイテムの販売も推進いたします。
「新規事業(その他)」につきましては、長年培ってきた技術の応用により車載用ダイレクトバックライトや業務用サイネージ事業、医療及びヘルスケア分野等への新製品の投入を積極的に進めてまいります。特に医療及びヘルスケア分野は、「映像機器」中心の当社事業ポートフォリオを再構築する一環として経営の柱の一つとすることを計画しており、2020年5月には歯科用CT機器の開発販売会社であるプレキシオン株式会社を子会社化いたしました。
営業利益面につきましては、売上構成比の9割を占める「映像機器」において液晶パネル等の主要な部材を戦略的に購買することが大変重要な取り組み課題となっております。液晶パネルにつきましては、将来の需給動向を見据えるとともにサイズ別の調達戦略を推進し、利益率向上を図ってまいります。生産や在庫管理の徹底にて販売先の実売に応じた購買戦略を展開することにより、製品及び部品など原材料の在庫による評価損失を抑制することに努めてまいります。更に世界中から選ばれる製品を創ることを目指し、製品の返品率の低減に重点的に取組むとともに、返品処理に伴う損失発生の最小化を図ってまいります。これらの施策を通じて、安定的に利益を確保できる体制を構築してまいります。
b.人材の育成と登用
当社グループでは、新しいグローバル競争時代を勝ち抜き、中長期の事業戦略を推進するうえで、社員個々人の能力を向上させグループ力強化に繋げることが重要であると認識しております。そのため、部長候補者研修、課長候補者研修などを毎年定期的に実施して、将来の幹部候補生を育成しております。加えて、社内外の研修体制の強化・拡充により若手、中堅社員を問わず積極的な人材育成と登用を行っております。
また、自己啓発を支援するためのeラーニングや、次期幹部候補者の育成を目的とした階層別研修も、毎年定期的に実施しております。
② 新型コロナウイルス感染症拡大に関する課題
当社グループにおきましては、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したことにより、生産拠点への影響、生産拠点以外の事業所及び営業拠点への影響、当社グループの主力市場となる米国及び日本市場への影響と多岐にわたる課題が生じており、対処すべき具体的な課題及び対応は下記のとおりであります。
a.生産拠点への影響
生産拠点への影響につきましては、液晶テレビの主要生産拠点であるFUNAI(THAILAND)CO.,LTD.におきましては、現時点で稼働停止となる期間はございませんでしたが、主に中国部品メーカーからの部品調達遅延などによる一部減産を余儀なくされておりました。タイ国内では現時点におきましては新型コロナウイルス感染症が収束状況にあり、中国部品メーカーの工場稼働率が改善し部品調達も回復していることから、増産対応を行い減産分について取り戻しを図ってまいります。
また、米国向け65インチ超の液晶テレビの生産拠点であるFunai Manufacturing,S.A.DE C.V.におきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大傾向が続き、稼働率が低下していることを受け、2020年6月から米国向け大型液晶テレビの一部をFUNAI(THAILAND)CO.,LTD.において分散生産を開始いたしました。Funai Manufacturing,S.A.DE C.V.が所在するバハカリフォルニア州ティファナ市におきましては、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け非常事態宣言が出されたことから、2020年4月13日から4月27日まで同工場が生産停止となりました。その後、2020年4月下旬より生産再開に向けた準備を開始し、5月初旬から一部正常稼働に戻り、5月中旬からは更なる生産増に向けて準備を始めております。今後はメキシコ国内の感染症拡大の状況に注視しながら増産に向けた取り組みを行うとともに、減産対策としてFUNAI(THAILAND)CO.,LTD.でリスク分散生産を行っております。
ブルーレイディスクレコーダーやプリンター機器を生産するFunai Electric Philippines Inc.につきましては、工場の所在するルソン島において2020年3月16日以降外出禁止令等が発令されたことにより、2020年3月17日から4月12日まで工場が封鎖され、4月15日以降、一部生産を開始し稼働率は概ね20~30%に戻りました。フィリピンにおける部品調達先の中には依然として問題が残っているところがあり、物流につきましても一部混乱が生じております。これらの問題が解決次第、正常稼働に戻せるものと考えております。
b.生産拠点以外の事業所及び営業拠点への影響
国内の事業所や拠点におきましては、日本国政府による緊急事態宣言の発出や不要不急の外出自粛要請に対応するため、国内グループ従業員について在宅勤務を拡大するとともに時差出勤の推進や公共交通機関以外の通勤手段利用を推奨いたしました。日本におきましては2020年5月25日に緊急事態宣言が解除されたことを受け、概ね宣言発出前の状況に戻しております。米国の販売子会社FUNAI CORPORATION,INC.におきましては、全土に発出された外出禁止令により在宅勤務の対応を行い、現在も継続しております。
c.市場への影響
マーケットの状況につきましては、当社グループの主要市場である米国では、2020年3月13日に国家非常事態が宣言されました。かかる中、主要取引先であるウォルマートは医療品や食料品も扱う販売店であったことから、ほぼ休業なく時短営業を継続いたしました。一方、ベストバイ等の家電販売店の多くが休業を余儀なくされました。この結果、テレビ販売につきましては、ウォルマートのシェアが拡大いたしました。当社の販売状況は、足元では第4四半期からの好調を持続しており、2020年上半期までは液晶テレビの販売についてはその勢いが維持される見通しであります。現在、米国におきましては州ごとに徐々に経済活動再開が進められておりますが、これが結果的に新型コロナウイルス感染症の再拡大をもたらしております。2020年5月末からは人種差別抗議デモが大規模化しており社会に混乱を生じさせております。抗議デモが感染を広げ、これが「新型コロナウイルス感染症の第二波」につながる恐れも指摘されております。今後は、これらの収束時期を見据えるとともに「失業率の動向と株価等の動向」「大統領選の行方と米中貿易摩擦の再燃」などに注視し対応していく必要があります。
日本国内における市場の状況につきましては、東京オリンピック・パラリンピックが2021年に延期されることが決定したことから、当社テレビの新モデルにつきましては、発売時期をオリンピック需要に応えるべく2020年4月発売としていたものを6月発売に延期いたしました。当社主要取引先である株式会社ヤマダ電機におきましては、緊急事態宣言が発出されていた状況下において一部の店舗を除き、休業なしの時短営業を継続しており、テレビ販売につきましては他の都市型家電量販店に比べ売上を維持しておりました。当社グループのテレビ販売は比較的好調に推移しております。今後につきましては「緊急事態宣言発出による経済活動停止の影響」「失業率の動向」「賞与の支給状況」「個人消費の動向」に加え「新型コロナウイルスの第二波の動向」について注視し対応していく必要があります。
d.新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえた対応策
これらの状況を受けた対応策は以下のとおりであります。
1)調達面での対応策
今回、中国への部材調達依存により、中国部品メーカーからの部品供給遅延が発生し影響が生じました。今後の最適なサプライチェーン構築に向けて、原産国の多様化を検討いたします。
2)生産面での対応策
新型コロナウイルス感染症の影響により、Funai Manufacturing,S.A.DE C.V.並びにFunai Electric Philippines Inc.において操業が停止する状況となりました。これを受け、グローバルな生産拠点を活用したバックアッププランの検討を進めてまいります。
3)事業面での2021年3月期における取り組み
北米市場では、当連結会計年度に引き続き32インチ及び65インチ、更に75インチの液晶テレビを戦略モデルとして取り組んでまいります。32インチモデルの積極展開によって販売数量増を図るとともに、65インチ及び75インチといった大型モデルを拡販することにより平均単価アップを図ります。国内市場に向けては、世界初のハードディスク内蔵有機EL Android TVをはじめとする、FUNAI 4K薄型テレビの新モデル全10機種を2020年6月より全国のヤマダ電機グループで発売を開始し、収益拡大を図ってまいります。