有価証券報告書-第78期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 15:03
【資料】
PDFをみる
【項目】
93項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。
そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。
経営理念
お客様を大切に、地球を友に、個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。
EXCEED YOUR VISION
私たちエプソン社員は、常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。
(2)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
エプソンは、将来の目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)の実現に向
けて、2019年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第2期中期経営計画(2019年度~2021年
度)」(以下「第2期中期計画」という。)を2019年3月に策定しました。
第2期中期計画の初年度である2019年度を振り返ると、米中貿易摩擦影響による世界経済の停滞やユーロ・新興国通貨を中心とした円高進行などの厳しい外部環境により、売上収益は前期比減収となるとともに、事業利益もメリハリのある固定費削減に努めたものの、前期比減益となりました。このような状況のもと、将来成長に向けた戦略の進捗としては、国内スタートアップ企業などとの協業・オープンイノベーションの推進、商品ポートフォリオ見直しおよび経営資源の戦略分野への集中に取り組みました。
インクジェットイノベーション領域では、大容量インクタンクモデルはエマージング市場に加え先進国市場でも販売数量が増加し、また、オフィス共有インクジェットプリンターは欧州での大型案件獲得や日本でのアカデミックプランの展開などにより販売が伸長したものの、レーザープリンターからインクジェットプリンターへの置換えには時間を要しており、今後、BtoB ビジネスの営業体制拡充に向けて顧客接点の強化を図るために、サブスクリプション型サービスのグローバル展開などを加速してまいります。
ビジュアルイノベーション領域では、プロジェクターは高光束領域やOS付きホーム領域などの戦略分野でレーザー光源を搭載した新商品投入を進めましたが、フラットパネルディスプレイの低価格化などの影響を受け、既存市場は厳しい状況となりました。
ウエアラブルイノベーション領域では、低・中価格帯ウオッチは市場縮小などの影響を受けましたが、生産効率化や経営資源の絞込みを行うとともに、強化領域への経営資源集中を進めました。
ロボティクスイノベーション領域では、ロボットは新商品や各種アプリケーションによるソリューション提案で市場開拓に取り組みましたが、米中貿易摩擦影響などにより販売は軟調に推移しました。
2020年度においては厳しい外部環境が継続することを前提とし、経営資源のメリハリに基づく配分と転換を完遂し、将来成長に向けた安定収益基盤を確立する方針です。ただし、エプソンを取り巻く現下の経営環境としては、競争激化のほか、新型コロナウイルス感染拡大による影響や不安定な世界経済情勢など、外部環境の不透明感が継続していることから、今後のリスクに備えた効率的な費用執行に取り組みます。また、現状、財務の健全性は十分保たれていますが、金融機関とのコミットメントライン契約などにより、資金手当てに万全を期しております。
足元での喫緊の課題である新型コロナウイルス感染拡大については、従業員とその家族、お客様・株主様を含めたすべてのステークホルダーの皆様の安全・健康を最優先に取り組むとともに、生産・販売活動の正常化に向けた対応を迅速に進め、これらの混乱からより早期に脱却を図ります。また、新型コロナウイルス感染拡大による影響が継続する間はもとより、沈静化した後の社会においても、例えば移動や人との接触・対面などを必ずしも必要としない生活様式への変容など、様々な大きな社会の変化が進むことが予想されます。エプソンは、こうした社会の大きな変容に対して、これまで進めてきた「デジタル化」、「働きかた改革」、「環境負荷低減」などへの取り組みをより一層加速させて、予想される社会課題の解決に積極的に取り組んでまいります。加えて、今後さらに浮き彫りになるエプソンが取り組むべき社会課題の解決に向けて、「産業構造の革新」および「循環型経済の牽引」への対応を推進していく方針です。
エプソンは、以上の状況を踏まえ、引き続き社会課題の解決による将来成長の実現に向けて、規律ある経営資源の投入を進めつつ、第2期中期計画で掲げた以下の諸施策を環境変化に応じて迅速かつ着実に推進することにより、持続的成長および中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
①第2期中期計画の基本的な考え方
第2期中期計画では、第1期中期計画に引き続き「Epson 25」で目指す姿は堅持し、環境変化や社会課題に対応したメリハリのある経営により、高い収益を生み出す事業運営に改革します。
(第2期中期計画の基本方針)
1)資産の最大活用と協業・オープンイノベーションによる成長加速
・ソリューション提案型ビジネスの強化
・協業も含め商品ラインアップの迅速な強化
・コアデバイスを用いた外販ビジネスとオープンイノベーションの強化
・ロボティクスへ経営資源を投下し主柱事業化に向け成長を加速
2)本社からのコントロールによる、グローバルオペレーションの強化
・強化すべき事業領域・地域の選択と集中
・提案型 BtoB 営業力強化に向けた組織整備と人材投入
・全社統合IT基盤の整備
3)経済環境、戦略の実効性を踏まえた規律ある経営資源の投入
・メリハリをつけた商品ポートフォリオの再構築
・財務規律の強化
②第2期中期計画および「Epson 25」業績目標
項 目2021年度目標2025年度目標
売上収益1兆2,000億円1兆7,000億円
事業セグメントプリンティングソリューションズ7,800億円-
ビジュアルコミュニケーション2,250億円-
ウエアラブル・産業プロダクツ1,950億円-
事業利益(※1)960億円2,000億円
ROS(売上収益事業利益率)8%12%
ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)継続的に10%以上15%
為替レート USD/EUR/他通貨(※2)110円/125円/92115円/125円/100

※1 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費および一般管理費を控除して算出
※2 その他通貨の各レートを為替ボリュームに応じて加重平均した値について、2025年度目標を100とした指数
③今後の取り組み
(4つのイノベーションに向けた取り組み)
<インクジェットイノベーション>・ホーム・SOHO/オフィス共有(※)分野では、大容量インクタンクモデルや高速ラインインクジェット複合機など、大容量インクモデルのインクジェットプリンターにより、レーザープリンターやインクカートリッジモデルからの置き換えを加速させ、消耗品に依存したビジネスモデルからの転換を進める。
※当社分類カテゴリーの1つ。高プリントボリュームオフィス向けプリンター。
・商業・産業分野では、プラットフォーム化と協業により高生産性商品のラインアップを一気に拡大する。
さらに、プリントヘッド外販とオープンイノベーションで多種多様なニーズに対応し、ビジネスを拡大する。
・社会の急速なデジタル化によって生まれるニーズをとらえ、協業・オープンイノベーションにより、新たなプリンティングサービスを創出する。
<ビジュアルイノベーション>・レーザー光源エンジンを核としたプラットフォームのさらなる進化により、高光束モデルをはじめとしたラインアップを効率的に拡大し、プロジェクターの提供価値を向上させる。
・ライティングモデルによる空間演出需要の創出や、小型プロジェクターの商品化などにより、新市場の開拓を進める。
・スマートグラスは、PCやスマートフォンとの接続を可能とするインターフェースモデルの拡充や、光学エンジンモジュールの外販により、オープンイノベーションを加速させ用途拡大を図る。
<ウエアラブルイノベーション>・独創の技術を生かした付加価値の高いアナログウオッチ領域に経営資源集中を継続する。
<ロボティクスイノベーション>・エプソンの技術基盤を土台として、積極的に協業も行うことで、商品力とソリューション提案力をさらに強化し、将来の主柱事業とするべく成長を加速させる。
・AI活用によるさらなる使い勝手向上や、ヒト協調市場への参入を実現する。
(営業機能の強化)
・グローバル視点での販売戦略の実行と、管理機能を強化するために、本社による統制力を強化すると同時に、BtoB ビジネスへのシフトに向け、顧客密着型・ソリューション提案型の営業への転換を進める。
(持続可能な社会の実現に向けて)
・持続可能な社会の実現に対する期待の高まりをビジネスチャンスと捉え、印刷性能・環境性能・インク対応性などに強みを持つインクジェット技術によるイノベーションを加速させ、持続可能な社会の実現に貢献する。
④第2期中期計画財務目標
1)キャッシュ・フロー
・着実な利益成長、効率的なオペレーションを実現し、キャッシュ・フロー創出力を回復します。
・創出したキャッシュは、メリハリを付け成長投資へ優先配分したうえで、健全な財務構造を維持しながら、株主還元を実施します。
項目第1期中期経営計画(実績)第2期中期経営計画
営業キャッシュ・フロー3年間累計:2,581億円3年間累計:3,700億円程度
フリー・キャッシュ・フロー3年間累計:249億円3年間累計:1,700億円程度

2)研究開発費・設備投資
項目第1期中期経営計画(実績)第2期中期経営計画
研究開発費3年間累計:1,613億円Epson 25実現に必要な新商品・要素開発
などに積極的に投下
設備投資
(リース除く)
3年間累計:2,368億円3年間累計:2,000億円程度
(生産体制強化・新商品対応など)