有価証券報告書-第74期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/29 9:26
【資料】
PDFをみる
【項目】
67項目

対処すべき課題

(1)対処すべき課題
エプソンは、2016年度から2025年度の10年間において目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」およびこの実現に向けた2016年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」を2016年3月に制定しました。
今後、以下の諸施策を着実に進めることにより、持続的成長および中長期的な企業価値の向上の実現に取り組んでまいります。
① 長期ビジョン「Epson 25」
エプソンは、事業環境の変化やメガトレンドなどを踏まえ、長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)のビジョンステートメントとして、『「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する』と定めました。
このうち、「省・小・精の価値」とは、独自の強みである「省・小・精の技術」に基づいて生み出し、エプソンがお客様にご提供する価値であり、「スマート」「環境」「パフォーマンス」に分けられます。
・「スマート」は、「省・小・精の技術」で先鋭化した製品を核に、ソフトウェア技術を極め、いつでもどこでも簡単・便利で安心して製品を使える世界を創ります。
・「環境」は、革新的な「省・小・精の技術」で、製品・サービスのライフサイクルにわたる環境負荷低減をお客様価値として提供し、持続的な発展をもたらします。
・「パフォーマンス」は、「省・小・精の技術」を極めて、高いパフォーマンスの生産性、正確さ、創造性をお客様に提供することで、より高い、新たな価値を創造します。
「人やモノと情報がつながる」とは、今後、情報通信技術の進展により、あらゆる情報がインターネット上でつながるようになることで、サイバー空間はとどまることなく増大していくなか、エプソンは、リアル世界で実体のある究極のものづくり企業として、「省・小・精の技術」で先鋭化した製品を求心力に、このサイバー空間にいるIT企業と協業し、人やモノと情報をつないで、お客様に「省・小・精の価値」をより高めてご提供するものです。
「新しい時代を創造する」とは、エプソンは、人々を単純作業や時間とエネルギーの浪費から解放し、お客様がクリエイティブな知の生産性を高め、健康で安心な生活を楽しんだりすることのできる、持続可能で豊かな社会を創り出していくものです。
今後、このビジョンに基づき、以下の「インクジェットイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ウエアラブルイノベーション」「ロボティクスイノベーション」という4つのイノベーション領域において、「スマート」「環境」「パフォーマンス」という価値をお客様に提供し、各事業領域のビジョンを実現することを通じて4つのイノベーションを起こしていきます。また、各事業を横串にする「人財」「技術」「生産」「販売」「環境」の事業基盤を情報技術の活用を含め一層強化し、Epson 25の実現を支えます。
これにより、Epson 25における2025年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆7,000億円、事業利益:2,000億円、ROS(事業利益※/売上収益):12%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分):15%を目指してまいります。
※事業利益とは、国際会計基準(IFRS)の適用にあたり、エプソンが独自に開示する利益であり、日本基準の営業利益とほぼ同じ概念の利益です。
(各事業領域のビジョン)
<プリンティング領域[インクジェットイノベーション]>独自のマイクロピエゾ技術を磨き上げ、より高生産性領域へ飛躍します。また、高い環境性能と、循環型の印刷環境をお客様へ提供します。
<ビジュアルコミュニケーション領域[ビジュアルイノベーション]>独自のマイクロディスプレイ技術とプロジェクション技術を極め、ビジネスと生活のあらゆる場面で感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーション環境を創造し続けます。
<ウエアラブル領域[ウエアラブルイノベーション]>ウオッチのDNAを基盤に、正確な時間とセンシングに磨きをかけ、個性あふれる製品群を創り出し、さまざまなお客様に着ける・使う喜びを提供します。
<ロボティクス領域[ロボティクスイノベーション]>「省・小・精の技術」に加え、センシングとスマートを融合させたコア技術を製造領域で磨き上げ、それらの技術を広げて、あらゆる領域でロボットが人々を支える未来を実現します。
<マイクロデバイス領域[4つのイノベーションを支える]>エプソン独自のデバイス技術をコアに、水晶の「精」を極めたタイミングソリューション・センシングソリューションと、半導体の「省」を極めた省電力ソリューションにより、通信、電力、交通、製造がスマート化する社会をけん引するとともに、エプソン完成品の価値創造に貢献します。
② 「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」
Epson 25の実現に向けた第1段階である「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)では、これまで実行してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備していきます。
このための基本方針として、前中期計画において「転換と開拓」を実現した事業領域は、その優位性をさらに強化し成長を継続するとともに、「転換と開拓」が遅れている事業領域は、すみやかに課題に対応し成長軌道を確立します。また、Epson 25において目指す「スマート、環境、パフォーマンス」のお客様価値を、製品やサービスの形に創り上げ、成長を確実なものとします。加えて、Epson 25を実現するために、短期的な利益成長を勘案しつつも、必要な経営資源はタイムリーかつ着実に投下するとともに、新しいビジネスモデルを早期に確立し、お客様にお届けする仕組みの充実を図ります。そして、以下の各事業の取り組みや事業基盤強化などにより、将来の成長に向けた事業基盤を創り上げていきます。
これにより、第1期中期計画の最終年度である2018年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆2,000億円、事業利益:960億円、ROS:8%、ROE:継続的に10%以上を目指してまいります。
(各事業の取り組み)
・プリンター事業では、製品の魅力度向上でホーム市場での競争優位を確立するとともに、ラインヘッド搭載機種でオフィス市場開拓を軌道に乗せることを目指します。
・プロフェッショナルプリンティング事業では、ハードウェアで競争優位を確立するとともに、サービスなどの組織基盤を整備し、新規領域での確かな成長を実現します。
・ビジュアルコミュニケーション事業では、プロジェクター市場でのプレゼンスをさらに強化するとともに、レーザー光源により新市場での飛躍の道筋をつけることに取り組みます。
・ウエアラブル機器事業では、ウオッチの事業基盤を磨き上げ、センシング技術を融合し個性豊かな製品群を創出し続け、主柱事業としての礎を築きます。
・ロボティクスソリューションズ事業では、エプソンが保有する技術基盤をベースに、成長に向けた骨格となる事業基盤を創り上げます。
・マイクロデバイス事業では、水晶は競争力の強化により、安定的な事業基盤を創るとともに、半導体は新たなコア技術・コアデバイスを創出します。
(事業基盤強化)
・技術では、「省・小・精の技術」を磨き、アクチュエーター・光制御・センサー技術を極め、情報通信技術を取り込むことで、新たなお客様価値を創出し続けます。
・生産では、他社が簡単に真似できない製品を、高い競争力のあるコストと品質で、タイムリーに提供し続けます。
・販売では、オフィス・産業領域を強化してエリアに最適な販売体制を整備し、マーケットインの考え方で企画品質を向上させ、ブランドイメージを変革します。
・環境では、製品・サービスのライフサイクル、サプライチェーン全般にわたる環境負荷低減への取り組みを拡大します。
(2)会社の支配に関する基本方針
当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を次のとおり定めております。
①基本方針の概要
当社は、当社の株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えます。したがって、当社の財務および事業の方針の決定を支配することが可能な数の株式を取得する買付提案に応じるか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご意思に委ねられるべきものと考えます。
当社は、企業価値や株主共同の利益を確保・向上させていくためには、役職員が一体となって価値創造に向けて取り組むことや、創業以来の風土を大切にしながら創造と挑戦を続けていくこと、お客様の信頼を維持・獲得していくことが不可欠と考えております。
しかし、株式の大量取得行為のなかには、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させることにならないものも存在します。当社は、このような不適切な株式の大量取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適当ではなく、このような者による大量取得行為に対しては必要かつ相当な手段をとることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えます。
②基本方針の実現に資する取組みの概要
1)基本方針の実現に資する特別な取組み
当社は、2016年度から2025年度の10年間において目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)と、当該ビジョンの実現に向けた2016年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)を2016年3月に制定いたしました。
Epson 25の実現に向けた第1段階である第1期中期計画では、これまで実現してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備してまいります。
2)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2008年6月の定時株主総会において導入し、2011年6月の定時株主総会において更新した当社株式の大量取得行為に関する対応策について、2014年6月24日の定時株主総会において、旧対応策を形式的な文言の修正をしたうえで更新することについて株主の皆様のご承認をいただきました(以下、更新後のプランを「本プラン」という。)。
本プランは、当社株券等に対する大量買付が行われた際に、当該買付に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案するために必要な時間および情報を確保するとともに、株主の皆様のために、大量買付者と協議交渉などを行うことを可能とすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益に反する大量買付を抑止することを目的としております。具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株券等の買付または公開買付けを実施しようとする買付者に、意向表明書ならびに株主の皆様の判断および特別委員会の評価・検討などのため必要かつ十分な情報を事前に当社取締役会へ提出すること、本プランに定める手続きを遵守することを求めております。そのうえで、当該買付行為が、本プランに従わない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると判断された場合は、当該買付行為を阻止するための対抗措置を発動するプランとなっております。
一方、当社取締役会は、対抗措置の発動について、取締役会の恣意的判断を排除するため、独立性の高い社外者などから構成される特別委員会の判断を経ることとしております。特別委員会は、買付内容の検討、当社取締役会への代替案などの情報の請求、株主の皆様への情報開示、買付者との交渉などを行います。特別委員会は、対抗措置発動の要否を当社取締役会に勧告し、当社取締役会はその勧告を最大限尊重し、対抗措置の発動または不発動に関する決議を速やかに行うこととしております。
③具体的取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由
上記② 1)に記載した取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、基本方針の実現に資するものです。
また、本プランは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる目的をもって導入(更新)されたものであり、上記①に記載した基本方針に沿うものです。特に、本プランは、株主総会において株主の皆様のご承認を得たうえで導入(更新)されたものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社経営陣から独立性の高い者のみから構成される特別委員会が設置されており、対抗措置の発動に際しては必ず特別委員会の判断を経ることが必要とされていること、特別委員会は当社の費用で第三者専門家の助言を得ることができるとされていること、有効期間が導入(更新)から約3年と定められたうえ、取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その公正性・客観性が担保されており、高度の合理性を有し、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。