有価証券報告書-第77期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/27 15:08
【資料】
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【項目】
93項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。
そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。
経営理念
お客様を大切に、地球を友に、個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。
EXCEED YOUR VISION
私たちエプソン社員は、常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。
(2)中長期的な経営戦略および対処すべき課題
エプソンは、将来の目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)の実現に向けて、2019年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第2期中期経営計画(2019年度~2021年度)」(以下「第2期中期計画」という。)を2019年3月に策定しました。
エプソンを取り巻く経営環境は、予断を許さない厳しい状況が継続する見通しではありますが、今後、以下の諸施策を着実に推進することにより、持続的成長および中長期的な企業価値の向上の実現に取り組んでまいります。
①第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)の振り返り
2016年に策定した「Epson 25」においては、2025年に向けたエプソンが進むべき方向性として、“「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する”を掲げ、私たちの強みを生かせる4つの領域でイノベーションを起こし、持続可能で豊かな社会をつくり出すことを目指しています。
この「Epson 25」の実現に向けた、第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)の3カ年では、将来成長に向けて大きく進展した取り組みがあった一方で、計画に対する遅れや十分な成果に結びついていない取り組みなどもありました。さらに想定を上回る外部環境の変化にも影響を受け、最終年度の業績は第1期中期経営計画で掲げた目標に対して未達となりました。
(第1期中期経営計画における主な成果と課題)
・コア技術の強化や生産能力の増強、将来成長の核となる商品の投入などは成果があったものの、スピード感を持った取り組みに課題
・販売面で、日本・西欧の販売体制整備や顧客知見の蓄積は進展するも、その他の地域での販売体制整備の遅れや、顧客知見を生かした商品・サービスの提供と提案手法の確立に遅れ
・経営資源は、成長分野での積極的な設備投資や研究開発を実施した一方、全体としてのメリハリが不十分
②第2期中期計画の基本的な考え方
上記の振り返りを踏まえ、第2期中期計画では、引き続き「Epson 25」で目指す姿は堅持し、環境変化や社会課題に対応したメリハリのある経営により、高い収益を生み出す事業運営に改革します。
(第2期中期計画の基本方針)
1)資産の最大活用と協業・オープンイノベーションによる成長加速
・ソリューション提案型ビジネスの強化
・協業も含め商品ラインアップの迅速な強化
・コアデバイスを用いた外販ビジネスとオープンイノベーションの強化
・ロボティクスへ経営資源を投下し主柱事業化に向け成長を加速
2)本社からのコントロールによる、グローバルオペレーションの強化
・強化すべき事業領域・地域の選択と集中
・提案型 BtoB 営業力強化に向けた組織整備と人材投入
・全社統合IT基盤の整備
3)経済環境、戦略の実効性を踏まえた規律ある経営資源の投入
・メリハリをつけた商品ポートフォリオの再構築
・財務規律の強化
③第2期中期計画および「Epson 25」業績目標
項 目2021年度目標2025年度目標
売上収益1兆2,000億円1兆7,000億円
事業セグメントプリンティングソリューションズ7,800億円-
ビジュアルコミュニケーション2,250億円-
ウエアラブル・産業プロダクツ1,950億円-
事業利益(※1)960億円2,000億円
ROS(売上収益事業利益率)8%12%
ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)継続的に10%以上15%
為替レート USD/EUR/他通貨(※2)110円/125円/92115円/125円/100

※1 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費および一般管理費を控除して算出
※2 その他通貨の各レートを為替ボリュームに応じて加重平均した値について、2025年度目標を100とした指数
④今後の取り組み
(4つのイノベーションに向けた取り組み)
<インクジェットイノベーション>・ホーム・SOHO/オフィス共有(※)分野では、大容量インクタンクモデルや高速ラインインクジェット複合機など、大容量インクモデルのインクジェットプリンターにより、レーザープリンターやインクカートリッジモデルからの置き換えを加速させ、消耗品に依存したビジネスモデルからの転換を進める。
※当社分類カテゴリーの1つ。高プリントボリュームオフィス向けプリンター。
・商業・産業分野では、プラットフォーム化と協業により高生産性商品のラインアップを一気に拡大する。
さらに、プリントヘッド外販とオープンイノベーションで多種多様なニーズに対応し、ビジネスを拡大する。
・社会の急速なデジタル化によって生まれるニーズをとらえ、協業・オープンイノベーションにより、新たなプリンティングサービスを創出する。
<ビジュアルイノベーション>・レーザー光源エンジンを核としたプラットフォームのさらなる進化により、高光束モデルをはじめとしたラインアップを効率的に拡大し、プロジェクターの提供価値を向上させる。
・ライティングモデルによる空間演出需要の創出や、小型プロジェクターの商品化などにより、新市場の開拓を進める。
・スマートグラスは、PCやスマートフォンとの接続を可能とするインターフェースモデルの拡充や、光学エンジンモジュールの外販により、オープンイノベーションを加速させ用途拡大を図る。
<ウエアラブルイノベーション>・独創の技術を生かした付加価値の高いアナログウオッチ領域に経営資源集中を継続する。
<ロボティクスイノベーション>・エプソンの技術基盤を土台として、積極的に協業も行うことで、商品力とソリューション提案力をさらに強化し、将来の主柱事業とするべく成長を加速させる。
・AI活用によるさらなる使い勝手向上や、ヒト協調市場への参入を実現する。
(営業機能の強化)
・グローバル視点での販売戦略の実行と、管理機能を強化するために、本社による統制力を強化すると同時に、BtoB ビジネスへのシフトに向け、顧客密着型・ソリューション提案型の営業への転換を進める。
(持続可能な社会の実現に向けて)
・持続可能な社会の実現に対する期待の高まりをビジネスチャンスと捉え、印刷性能・環境性能・インク対応性などに強みを持つインクジェット技術によるイノベーションを加速させ、持続可能な社会の実現に貢献する。
⑤第2期中期計画財務目標
1)キャッシュ・フロー
・着実な利益成長、効率的なオペレーションを実現し、キャッシュ・フロー創出力を回復します。
・創出したキャッシュは、メリハリを付け成長投資へ優先配分したうえで、健全な財務構造を維持しながら、株主還元を実施します。
項目第1期中期経営計画(実績)第2期中期経営計画
営業キャッシュ・フロー3年間累計:2,581億円3年間累計:3,700億円程度
フリー・キャッシュ・フロー3年間累計:249億円3年間累計:1,700億円程度

2)研究開発費・設備投資
項目第1期中期経営計画(実績)第2期中期経営計画
研究開発費3年間累計:1,613億円Epson 25実現に必要な新商品・要素開発
などに積極的に投下
設備投資
(リース除く)
3年間累計:2,368億円3年間累計:2,000億円程度
(生産体制強化・新商品対応など)

(3)会社の支配に関する基本方針
当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を次のとおり定めております。
①基本方針の概要
当社は、当社の株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えます。したがって、当社の財務および事業の方針の決定を支配することが可能な数の株式を取得する買付提案に応じるか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご意思に委ねられるべきものと考えます。
当社は、企業価値や株主共同の利益を確保・向上させていくためには、役職員が一体となって価値創造に向けて取り組むことや、創業以来の風土を大切にしながら創造と挑戦を続けていくこと、お客様の信頼を維持・獲得していくことが不可欠と考えております。
しかし、株式の大量取得行為のなかには、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させることにならないものも存在します。当社は、このような不適切な株式の大量取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適当ではなく、このような者による大量取得行為に対しては必要かつ相当な手段をとることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えます。
②基本方針の実現に資する取組みの概要
1)基本方針の実現に資する特別な取組み
当社は、2016年3月に、2025年におけるエプソンの目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」を策定しました。
「Epson 25」の実現に向けた、第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)の3カ年では、将来成長に向けて大きく進展した取組みがあった一方で、計画に対する遅れや十分な成果に結びついていない取組みなどもありました。さらに想定を上回る外部環境の変化にも影響を受け、最終年度の業績は第1期中期経営計画で掲げた目標に対して未達となりました。
2019年3月に策定した第2期中期経営計画(2019年度~2021年度)では、引き続き「Epson 25」で目指す姿は堅持し、環境変化や社会課題に対応したメリハリのある経営により、高い収益を生み出す事業運営に改革します。
2)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2014年6月の定時株主総会において更新した当社株式の大量取得行為に関する対応策について、2017年6月28日の定時株主総会において、その適正性、客観性を一層高めるための修正をしたうえで更新することについて株主の皆様のご承認をいただきました(以下、更新後のプランを「本プラン」という。)。
本プランは、当社株券等に対する大量買付が行われた際に、当該買付に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案するために必要な時間および情報を確保するとともに、株主の皆様のために、大量買付者と協議交渉などを行うことを可能とすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益に反する大量買付を抑止することを目的としております。具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株券等の買付または公開買付けを実施しようとする買付者に、意向表明書ならびに株主の皆様の判断および特別委員会の評価・検討などのため必要かつ十分な情報を事前に当社取締役会へ提出すること、本プランに定める手続きを遵守することを求めております。そのうえで、当該買付行為が、本プランに従わない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると判断された場合は、対抗措置を発動するプランとなっております。
一方、当社取締役会は、対抗措置の発動について、取締役会の恣意的判断を排除するため、独立性の高い社外取締役のみから構成される特別委員会の判断を経ることとしております。特別委員会は、買付内容の検討、当社取締役会への代替案などの情報の請求、株主の皆様への情報開示、買付者との交渉などを行います。特別委員会は、対抗措置発動の要否を当社取締役会に勧告し、当社取締役会はその勧告に従い、対抗措置の発動または不発動に関する決議を速やかに行うこととしております(ただし、取締役の善管注意義務に違反するおそれがあると判断する場合を除く。)。
③具体的取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由
上記② 1)に記載した取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、基本方針の実現に資するものです。
また、本プランは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる目的をもって更新されたものであり、上記①に記載した基本方針に沿うものです。特に、本プランは、株主総会において株主の皆様のご承認を得たうえで更新されたものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社経営陣から独立性の高い社外取締役のみから構成される特別委員会が設置されており、対抗措置の発動に際しては必ず特別委員会の判断を経ることが必要とされていること、当社取締役会は、対抗措置発動に関する特別委員会の勧告に従うとされていること(ただし、取締役の善管注意義務に違反するおそれがあると判断する場合を除く。)、特別委員会は当社の費用で第三者専門家の助言を得ることができるとされていること、買付者等による買収意向表明後の各プロセスにおいて要する期間が特定されていること、非適格者から新株予約権を取得する場合、金銭等の経済的利益の交付は行わないことが明確になっていること、有効期間が更新から約3年と定められたうえ、取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その適正性・客観性が担保されており、高度の合理性を有し、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。