有価証券報告書-第23期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/03/26 14:35
【資料】
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【項目】
140項目
③ 戦略
気候変動は、当社グループにとって重要な課題であります。当社グループは、気候関連のリスクと機会が当社グループの事業、戦略および財務計画に及ぼす影響の把握、ならびにそれに対する対応策を検討するために、シナリオ分析を実施しております。
このシナリオ分析により、当社グループにとっての主要なリスクと機会、その対応策は以下のとおりであります。
(a) リスク
· 事業を行っている各国でカーボンプライシングが導入されることにより生じる可能性のある対応のためのコストの増加、炭素集約度の高い原材料コスト・生産委託料の上昇などのリスク
· 省エネが要求される市場や製品で開発遅延が発生した場合や、顧客から求められる脱炭素への要求に十分に応えられなかった場合において生じる可能性のある販売機会の損失や売上減少リスク
· 異常気象の増加により製造拠点や物流網が影響を受けた場合において生じる可能性のある売上高減少や復旧費用の発生リスク
(b) 機会
· 脱炭素・低炭素化に対応した製品・ソリューションの需要が大幅に増加する機会。特に、自動車向け事業では、EV(Electric Vehicle)の市場拡大に伴う関連製品の需要拡大、産業・インフラ・IoT向け事業では、低炭素・脱炭素技術関連(風力・FA (Factory Automation) など)の需要拡大が見込まれる。
· 気候変動に伴う顧客の嗜好や関心の変化に対応することで新たな市場を獲得する機会
(c) 対応策
· 温室効果ガス排出量削減目標の達成に向けた施策の着実な実施およびサプライヤの温室効果ガス排出量の把握や削減施策の働きかけにより炭素税増加リスクへ対応する。
· 各国の省エネ基準変更の事前察知を通じた開発着手の前倒しや柔軟に機能変更を可能とする開発手法の導入によりタイムリーな市場投入を可能にする。
· 顧客や投資家が要求する脱炭素の取り組みに応えるよう環境活動の推進・加速およびコミュニケーションを促進する環境情報を積極的に開示する。
· 製品およびソリューションのラインアップの拡充や高速・高機能・高効率化などを実現する次世代技術獲得など、エネルギー効率の高い製品の開発を加速する。
· ビジネスの多様化、消費者の嗜好の変化など、新市場拡大機会への対応に向けた研究開発へ継続的に投資を実施する。
■分析・対応策の詳細
各リスクと機会が発現する時期について、シナリオ分析などを基に想定し、2022年から2030年までの9年間を「短期」、「中期」および「長期」に分類し、開示しています。「短期」は3年以内、「中期」は3年超~6年以内、「長期」は6年超を想定しています。
<リスク要因に対する財務影響評価および対応策>
カテゴリ想定される財務影響期間対応策
移行リスク法規制の強化脱炭素化に向けて各種法規制が強化され、対応のためのコストが増加する。短中期・中長期の温室効果ガス削減目標達成に向けた計画的な施策の実施
・サプライヤによる排出量の把握、削減施策の働きかけ
・グローバルでの継続的な3R(削減、再利用、再資源化)への取り組み
テクノロジー・市場の変化省エネが要求される市場・製品での開発遅延により、販売機会が損失し、当社利益が減少する。短中期・省エネ基準変更の事前察知、開発着手の前倒し
・柔軟な機能変更を可能とする技術の導入
・研究開発への継続的な投資
・ICE用途からxEV、ADAS用途IC、ディスクリートへの開発資源の集中およびクロスドメイン対応MCUの開発
当社のサプライヤに課せられた炭素税が部材単価に反映されると、生産コストの増大が想定される。中期・サプライヤによる温室効果ガス排出量の把握、モニタリング
・サプライヤとの目標共有、削減施策推進の働き掛け
ステークホルダー評価の変化顧客からのサプライチェーンにおける脱炭素要求に当社が応えられなかった場合に売上が減少する。また、ESG投資の拡大による資金調達への影響が想定される。中期・顧客の環境調達規程を充足する当社の環境活動の推進・加速
・ステークホルダーへの積極的な環境情報開示と、相互理解のためにコミュニケーション促進
・環境目標への達成進捗を役員の評価に追加
物理リスク異常気象による災害の増加異常気象による災害の増加により、自社拠点およびサプライヤ拠点が罹災する。復旧までの期間の売上が減少し、復旧費用が必要となる。中長期・BCMに基づき、拠点別のリスク評価および対応策を実施済み
・現在ハザードマップ外にある拠点を含めた継続的な情報収集
・継続した分散調達および代替品の検討・準備

<機会に対する財務影響および対応策>
カテゴリ想定される財務影響期間対応策
資源の効率利用事業所、生産拠点における資源(エネルギー、水)の効率利用が進みコストが削減される。短期・投資効果を考慮した計画的な省エネ施策の実施
・水リサイクル率35%を目標とした水の効率的使用の推進
・PPAの活用拠点の拡大
低炭素排出商品・サービスxEV用ソリューション市場拡大自動車部門での脱炭素化が進展し、xEV用ソリューション市場が拡大する。短中期・BMS向け製品の開発加速・低電力化
・製品レパートリーの拡充
・顧客の開発期間を短縮する開発キットの提供
・製品ポートフォリオの充実
・AD/ADAS向け製品の開発加速、高機能・高性能化
産業用
ソリューション
市場拡大
産業・インフラ・IoT部門での脱炭素化が進展し、関連する産業用ソリューション市場が拡大する。短中期・DDR5と以降のDDRメモリ規格に準拠した製品の開発加速、低電力・低負荷化
・5G向けミリ波ビームフォーマー・ソリューションの開発加速、低消費電力・高効率化
・FA向け製品、BA向け製品の開発加速、高機能化、RF機能強化
・IGBTの開発加速と先端プロセスによる高効率化および生産能力増強
・次世代パワー半導体の採用の加速
顧客の嗜好、関心の変化への対応気候変動に伴う顧客の関心の変化(エネルギー効率化、IoT、センサ、高度気象予報など)に対応することで売上が拡大する。短中長期・低消費電力製品やエネルギー効率を改善するソリューション提供に向けた製品開発の促進、及び研究開発への注力
・製品レパートリーの拡充、高速・高機能・高効率化
新市場
への進出
新規事業既存事業で培った技術の低炭素社会における新産業への転用短中期・自動車/産業・IoT分野製品のセキュリティ強化
新興国市場脱炭素ニーズの広がりによりIGBT、5G向けミリ波ビームフォーマー・ソリューションの新興国向け売上げが拡大する。短中期・新興国市場への拡販推進、IGBTの高性能・高効率

シナリオ分析の前提や対応策の詳細については、当社サステナビリティサイト/TCFD提言への対応(https://www.renesas.com/jp/ja/about/company/sustainability/tcfd)をご参照ください。