有価証券報告書-第124期(2025/04/01-2026/03/31)
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針・企業理念・行動方針
当社グループを取り巻く事業環境の変化は日増しに加速しており、事業は複雑性を増しています。こうした状況下で、当社グループはさまざまな社会課題を解決し、商用車業界をリードしていくために、自らの存在意義、そしてお客様・社会に対する提供価値を問い直すことが必要とされています。
このような課題認識のもと、当社グループは、従業員一人ひとりが高い視座に立ち、同じ価値観を共有し、一丸となって社会課題の解決に取り組むことが必要と考え、2023年5月に新経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。
「ISUZU ID」の概要は以下のとおりです。
◆PURPOSE(使命):地球の「運ぶ」を創造する
お客様、そしてパートナーの皆さまと地球上のすべてのモノ・ヒトの「運ぶ」を主体的に創造するとともに、カーボンニュートラルへの対応や、進化する物流への貢献など、新たな「運ぶ」の価値を提供し、社会を豊かにしていきたい、という決意を表しています。
◆VISION(将来像):「安心×斬新」で世界を進化させるイノベーションリーダー
あらゆる社会課題の解決に貢献していくために、従来大切にしてきた「安心」に、「斬新」を掛け合わせ、イノベーションリーダーを目指します。
◆MISSION(任務):あなたと共に「運ぶ」の課題を解決する
すべての人々と共に社会を前進させるという意志を込め、4つの分野(お客様満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でNo.1を目指します。
◆CORE VALUE(コア・バリュー):相互成長
イノベーションリーダーとして、一人ひとりが挑戦・変化・貢献する意欲を持ち、集団として尊重・信頼・刺激し合うことで、成長していきます。
今後、当社グループは「ISUZU ID」を起点に、既存事業の更なる強化と新事業への挑戦を通じて社会課題の解決に貢献し、世界を進化させるイノベーションリーダーを目指します。
(2)対処すべき課題
「地球の『運ぶ』を創造する」をPURPOSE(使命)として、「運ぶ」に関わるさまざまな社会課題を解決するためには、多様化するお客様ニーズや不確実性の高い事業環境にもしなやかに対応し、絶えず柔軟に変革し続けることが不可欠です。
変革の実現に向け、当社グループでは2024年4月に、中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030」(以下「IX」という。)を公表しました。「IX」は「ISUZU ID」のVISION(将来像)とMISSION(任務)を、足元からのフォーキャストと「ISUZU ID」からのバックキャストで、2030年目線で具体化し策定したものです。当社グループは2030年に向けて、創造・提供する価値を従来の商品軸から、新たにソリューションへと広げ、ビジネスモデルを変革します。現在の収益拡大と、未来の収益への投資を両輪として、お客様・社会をはじめ、あらゆるステークホルダーが抱える課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、「商用モビリティソリューションカンパニー」を目指していきます。
次に挙げる課題は、「ISUZU ID」及び「IX」の実現のみならず、自動車業界・商用車業界におけるお客様のご期待や技術的変革に対応するため中長期的な観点から抽出したものです。
「運ぶ」を創造する新事業への挑戦
物流業界を取り巻く環境は、カーボンニュートラル(以下「CN」という。)社会の実現が急がれるなか、昨今の慢性的なドライバー不足等の課題を抱えています。こうしたお客様・社会課題の解決に貢献し、未来の新たな収益へと成長させるため、従来培ってきた当社の強みである「安心」を活かし、「自動運転ソリューション」、「コネクテッドサービス」、「カーボンニュートラルソリューション」の3領域を軸に、「安心×斬新」でお客様と社会の課題を解決する新事業に挑戦します。これら新事業への挑戦に向け、総額1兆円規模のイノベーション投資を着実に実行します。
(当連結会計年度の取組み)
「自動運転ソリューション」については、2027年度までの「自動運転レベル4技術」を活用したトラック・バス事業の開始に向け、技術獲得の推進及び複数の実証事業を実施しました。2025年10月には、経済産業省及び国土交通省が推進する「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」の「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み(テーマ3)」の集大成として、国内商用車メーカー4社合同で新東名高速道路における総合走行実証を開始しました。また、同じく2025年10月に、神奈川県平塚市で実施された自動運転バス実証実験事業に当社が開発・製造した「エルガEV自動運転バス」を提供したほか、2026年1月には栃木県・愛知県間を結ぶ自社部品物流ルート内において自動運転大型トラックの公道実証を開始しました。さらに、2026年3月からは、自動運転用ソフトウェアスタック技術に強みを持つ株式会社ティアフォー及びAIコンピューティング技術に長けたNVIDIA Corporationと共同で、自動運転レベル4バスの社会実装に向けた取組みを開始しています。
「コネクテッドサービス」では、かねてより運行管理・ドライバー支援サービス「MIMAMORI」、高度純正整備サービス「PREISM」等の先進的なサービスを、業界に先駆けて導入してきました。2025年12月には、これらに加え、商用BEV(※)向けのエネルギーマネジメントサービス「SmartEVer」の提供を開始しました。同サービスを通じ、1拠点で複数台のBEVを導入・運用する際の充電管理や電気料金の抑制を実現することで、お客様のBEV導入によるメリットを最大限に引き出すことが可能となりました。また、「MIMAMORI」への荷待ち自動判定機能や作業時間集計機能等の追加、「PREISM」への故障予兆検知機能の追加等、既存のサービスの性能向上及び機能追加も実施しました。
「カーボンニュートラルソリューション」では、多様な動力源での技術開発・商品提供及びBEVの普及と市場競争力向上にむけた実証実験の推進に取り組みました。2025年9月には、株式会社ファミリーマート及び伊藤忠商事株式会社と連携し、バッテリー交換式EVトラックを使用した配送実証を横浜市で開始しました。本実証実験では、左右両側からのバッテリー同時交換を可能とした国内初の仕様の車両を使用し、バッテリー交換時間をディーゼル車の燃料給油と同程度まで短縮することに寄与しました。さらに、NGV(天然ガス車)トラックへのバイオメタン充填実証への参画や空港におけるEVトラック活用検証も、パートナー連携を通じて実施しました。
(※)BEV:Battery Electric Vehicle
(今後の計画)
「自動運転ソリューション」では、2027年度までに、日本及び北米を皮切りに自動運転レベル4技術を活用したトラック・バスの事業化を目指します。この実現に向けて、当連結会計年度に開始した当社グループ独自の公道実証を引き続き推進するほか、北海道むかわ町に新設した国内商用車メーカー初の自動運転専用テストコースも、2027年9月に本格的な稼働開始を計画しています。これらの取組みによるノウハウの蓄積と、当社が従来培ってきた「通常時、緊急時の車両制御技術」、「お客様による使われ方の熟知」を掛け合わせることで、2027年度より順次、高速道路・ハブ間での輸送や、市街地をはじめとする路線バスの自動運転ソリューションを提供していきます。
「コネクテッドサービス」では、国内においては運送事業者・荷主の輸配送効率を高めるサービスを提供するほか、業界を超えたさまざまなデータを商用車情報基盤「GATEX」と連携させることで、新たなサービスの創出や既存サービスの高度化・効率化を推進します。さらに、北米より高度純正整備サービス「PREISM」とEVトータルソリューションプログラム「EVision」を展開し、2028年までに北米以外の主要地域へも対象エリアを拡大します。
「カーボンニュートラルソリューション」では、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づき、マルチパスウェイで技術開発を進め、各国の使われ方・地域状況・社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。具体的には、2030年までに全車種でCN商品をラインアップに加える予定です。また、CN商品の開発加速のため、藤沢工場内に電動開発実験棟「The EARTH lab.」を新設し、2026年6月の稼働開始を目指しています。
さらに、2030年代のEV普及期を見据え、価格競争力のあるBEVの投入や、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」をはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進し、社会のCN化を牽引します。2026年度には、トヨタ自動車株式会社と共同開発を進めている次世代燃料電池路線バス(次世代FC路線バス)の生産を開始します。同取組みを皮切りに、FCV(※)については、実用性・需要を見極めながら、路線バス及び小型車を足掛かりに展開することを計画しています。
(※)FCV:Fuel Cell Vehicle
「運ぶ」を支える既存事業の強化
当社グループは150カ国以上で事業を展開し、うち35カ国以上でシェア第1位、グローバル販売台数は57万台以上と、世界中のお客様・社会の「運ぶ」を支えてきました。今後も業界を牽引するとともに、お客様・社会の「運ぶ」を支え続けるためには、既存事業の商品力・販売力を強化し、グループの事業基盤を一層強固にする必要があります。当社グループは、商用車市場のグローバルリーディングカンパニーとして、2030年度に新車販売85万台(トラック45万台及びピックアップトラック40万台)以上の販売を目指します。
(当連結会計年度の取組み)
当連結会計年度も引き続き、各国の使われ方、地域状況、社会動向に適した商品の開発、展開に取り組みました。
日本においては、小型トラック「ELF 4WD」のフルモデルチェンジと「ELF mio4WD」の追加、中型トラック「フォワード」に対する先進安全装備や軽量・低燃費エンジンの搭載、大型トラック「ギガ」の安全・運転支援機能及びコネクテッド機能強化等、幅広い商品の性能向上を実現しました。また、海外においては、1トン積みピックアップトラック「D-MAX」のバッテリーEVモデルにあたる「D-MAX EV」をタイで生産開始し、2025年夏より欧州主要国で発売しています。
加えて、当連結会計年度においては、「トータルライフサイクルで稼働を支えるサービス」の提供に向け、アフターセールス事業の強化及び海外展開に向けた取組みを加速しました。日本においては、首都圏・東海・近畿を中心に、アフターセールス拠点の新設や拠点更新投資を進めてまいります。また、海外ではグループ初となるリース会社Isuzu Financial Services Australia Pty Ltd.(以下「IFSA」という。)を豪州に設立し、2025年10月より営業を開始しています。
(今後の計画)
日本においては、当社とUDトラックスの連携を重視した車両の生産及び販売体制の再構築を推進します。具体的には、大型トラックの共通プラットフォーム共同開発及び市場投入を見据え、生産機能を藤沢工場からUDトラックス上尾工場へ移管し、2028年の稼働開始を目指しています。また、いすゞ連結販売会社とUDトラックスの地域販売拠点の統合を2027年4月までに完了し、ブランド横断でのサービス提供によるお客様の利便性向上と同時に、業務フローやシステムの統一による効率的な運営を目指します。さらに、国内のアフターセールス事業についても拠点新設や拠点更新を継続し、2030年までに2,050億円規模の新規投資を行うことを計画しています。
海外においては、日本国内で先行してフルモデルチェンジした先進装備搭載の小型・中型トラックを、北米を皮切りに順次、豪州や欧州などの市場に投入します。生産機能やサプライチェーンの強靭化に向けた取組みとして、米国においては、サウスカロライナ州の新生産拠点の2027年中の稼働開始を目指すとともに、北米市場での需要増加が見込まれるBEV部材の現地調達化を推進します。また、タイにおいても、LCV旗艦工場の自動化・ライン統合等を通じた競争力強化を目的とした設備投資を行い、2027年の稼働開始を目指します。さらに、アフターセールス事業の海外展開を加速することで、「稼働を守るバリュープロバイダー」としての海外市場での地位確立を目指します。特に、メンテナンスリース事業については、当連結会計年度のIFSA設立を皮切りとして、北米や南アフリカ、東南アジアなどの地域に順次展開・強化します。
「ISUZU ID」を基軸とした経営基盤の確立
「ISUZU ID」で示すVISION(将来像)・MISSION(任務)、「IX」で示す「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を実現するためには、人的資本経営やグローバル視点でのグループ経営を支える経営基盤の確立が必要不可欠です。当社グループではグローバル基準の人財マネジメント基盤の整備、「安心×斬新」を実現する人財への投資を加速し、更なる事業成長を目指していきます。
(当連結会計年度の取組み)
執行体制の強化と社内意思決定の迅速化を企図し、CTO・CLO・CDXOの新設と、部門数を15から11に集約する組織再編を決定し、2026年4月より実施しました。(詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」中の「(3)人的資本・多様性」を参照ください。)
さらに、DXケイパビリティの充実に向け、グループ横断的な生成AIの展開及びデジタル人材育成推進に向けた取組みを加速しました。これらの取組みを通じ、開発データ・ツールの一元化により、国内外のグループ会社を横断したグローバルな開発体制の構築を実現しています。
(今後の計画)
「ISUZU ID」のビジョン・ミッションを起点とした人的資本経営への進化に向け、グローバル基準の人財マネジメント基盤を整備し「安心×斬新」を実現する人財への投資を継続し、社員一人ひとりの成長を更なる事業成長へ繋げていきます。従来の職能型を改め、職務型を採用した人事制度については、2024年4月に管理職者を対象に開始、2025年4月より非管理職者にも適用を開始しました。今後、それぞれの特性を踏まえながらグループ各社へ人的資本経営への進化に向けた仕組みや取組みの浸透を図っていきます。職務(ジョブ)の明確化とそれに基づいた適所適財の人財配置、公正な評価・報酬を実現することで、対話と育成の文化を醸成し、従業員の更なる成長を支援します。また、社員が失敗を恐れず積極的に挑戦することで相互成長し、またメンバー間で刺激し合い相互価値を創出する集団へ進化を目指すべく、マネジメント層の負荷軽減等の職場改善の取組みを通じ、エンゲージメントに関する肯定的回答率を2030年までに70%に高めることを目指します。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」中の「(3)人的資本・多様性」を参照ください。
また、当社と100%子会社であるUDトラックスの2027年度中の合併に向けた検討を開始します。この取組みは、両社の人財やインフラなどの経営資源の一体化による、高い付加価値の創出と意思決定の迅速化を目指しています。
さらに、物流に関する課題解決に向け、外部機関と連携した人財育成も強化します。引き続き、2025年2月に東京大学と開設した「トランスポートイノベーション研究センター」に当社グループより毎年3名の技術者を派遣し、物流・交通分野の社会課題解決を推進します。
「IX」を達成するための経営基盤を確固たるものにするべく、迅速かつ適切な意思決定を実現するガバナンス体制及びリスクマネジメントをはじめとした内部統制の強化にも引き続き注力していきます。
強固な収益基盤・財務基盤の確立及び成長投資と株主還元の両立
当社グループは、企業価値の持続的な向上を目指し、事業継続及び将来成長に必要な投資を優先に実行していきます。グループ全体での既存事業の強化を軸に、新事業を強力に推進することで、2030年度には売上収益6兆円、営業利益率10%以上を目指します。
(当連結会計年度の取組み)
当連結会計年度は、国内では市場の堅調な推移により車両販売台数が増加し、海外でもホルムズ海峡封鎖の影響による中近東向けの出荷停止や米国関税影響・市況悪化等に伴うCV(商用車(トラック及びバス))の北米向け販売台数の減少、タイを中心とした厳しい市況の継続といった下押し要因はあったものの、CVは中近東・アフリカ・中南米を中心に、LCV(ピックアップトラック及び派生車)はアフリカ・オセアニアを中心に車両販売台数が増加し、総車両販売台数は前連結会計年度に比べ42,625台(8.1%)増加し565,858台に、売上収益は3兆4,791億円となりました。他方で、米国関税影響・資材費等の上昇・為替影響・成長関連費用の増加の影響により、売上収益営業利益率は5.9%、ROEは9.5%となりました。
投資については、当連結会計年度においてもイノベーション投資としてCN対応や自動運転関連、既存事業投資として販売・サービスインフラ強化に向けた投資を実施し、設備投資及び研究開発支出は合わせて3,092億円となりました。株主還元では、1株当たり配当金を前連結会計年度から据え置き、配当金は638億円となる予定です。また、自己株式取得は500億円と、適正な自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)を維持した、機動的な自己株式取得に取り組みました。財務健全性としては、各格付にてA格を取得しています。
(今後の計画)
企業価値の持続的な向上を目指し、事業により得られた収益をもとに、将来成長に必要な投資を優先して実行するとともに、株主還元と財務健全性を両立していきます。
収益面は、2027年度に売上収益3兆7,000億円、営業利益率7.0%、2030年度には売上収益6兆円、営業利益率10%以上、ROE15%以上を目指します。
投資については既存事業投資とイノベーション投資を積極的かつバランスを見ながら実行することで、長期にわたる持続的な成長の実現を目指します。具体的には、2031年3月期までにイノベーション投資1兆円、既存事業投資1.6兆円、合わせて2.6兆円規模の投資を計画しています。2027年3月期までは既存事業投資として国内販売拠点整備・北米CV新工場・大型トラックのUD上尾工場への生産集約などを実行し、イノベーション投資として自動運転関連の研究開発費などを計画していますが、2031年3月期にかけてはイノベーション投資のウエイトを徐々に増やしていく予定です。このように積極的なイノベーション投資を推進しつつ、既存事業ではDXを活用することで業務効率化を図り、収益を確保します。
株主還元は、配当性向は平均で40%を維持し、着実な配当成長を目指します。2027年3月期の配当金については、2026年3月期から2円増配の1株当たり94円を下限とし、配当性向40%以上の方針に基づき決定します。また、固定資産と自己資本(親会社の所有者に帰属する持分)のバランスを考慮しつつ、適正な自己資本水準を意識しながら、機動的に自己株式取得を継続します。また、財務健全性は、各格付でのA格を維持しつつ、有利子負債(社債及び借入金、リース負債の合計)も活用していきます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針・企業理念・行動方針
当社グループを取り巻く事業環境の変化は日増しに加速しており、事業は複雑性を増しています。こうした状況下で、当社グループはさまざまな社会課題を解決し、商用車業界をリードしていくために、自らの存在意義、そしてお客様・社会に対する提供価値を問い直すことが必要とされています。
このような課題認識のもと、当社グループは、従業員一人ひとりが高い視座に立ち、同じ価値観を共有し、一丸となって社会課題の解決に取り組むことが必要と考え、2023年5月に新経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。
「ISUZU ID」の概要は以下のとおりです。
◆PURPOSE(使命):地球の「運ぶ」を創造する
お客様、そしてパートナーの皆さまと地球上のすべてのモノ・ヒトの「運ぶ」を主体的に創造するとともに、カーボンニュートラルへの対応や、進化する物流への貢献など、新たな「運ぶ」の価値を提供し、社会を豊かにしていきたい、という決意を表しています。
◆VISION(将来像):「安心×斬新」で世界を進化させるイノベーションリーダー
あらゆる社会課題の解決に貢献していくために、従来大切にしてきた「安心」に、「斬新」を掛け合わせ、イノベーションリーダーを目指します。
◆MISSION(任務):あなたと共に「運ぶ」の課題を解決する
すべての人々と共に社会を前進させるという意志を込め、4つの分野(お客様満足度・地球へのやさしさ・働きがい・社会への影響力)でNo.1を目指します。
◆CORE VALUE(コア・バリュー):相互成長
イノベーションリーダーとして、一人ひとりが挑戦・変化・貢献する意欲を持ち、集団として尊重・信頼・刺激し合うことで、成長していきます。
今後、当社グループは「ISUZU ID」を起点に、既存事業の更なる強化と新事業への挑戦を通じて社会課題の解決に貢献し、世界を進化させるイノベーションリーダーを目指します。
(2)対処すべき課題
「地球の『運ぶ』を創造する」をPURPOSE(使命)として、「運ぶ」に関わるさまざまな社会課題を解決するためには、多様化するお客様ニーズや不確実性の高い事業環境にもしなやかに対応し、絶えず柔軟に変革し続けることが不可欠です。
変革の実現に向け、当社グループでは2024年4月に、中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030」(以下「IX」という。)を公表しました。「IX」は「ISUZU ID」のVISION(将来像)とMISSION(任務)を、足元からのフォーキャストと「ISUZU ID」からのバックキャストで、2030年目線で具体化し策定したものです。当社グループは2030年に向けて、創造・提供する価値を従来の商品軸から、新たにソリューションへと広げ、ビジネスモデルを変革します。現在の収益拡大と、未来の収益への投資を両輪として、お客様・社会をはじめ、あらゆるステークホルダーが抱える課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、「商用モビリティソリューションカンパニー」を目指していきます。
次に挙げる課題は、「ISUZU ID」及び「IX」の実現のみならず、自動車業界・商用車業界におけるお客様のご期待や技術的変革に対応するため中長期的な観点から抽出したものです。
「運ぶ」を創造する新事業への挑戦
物流業界を取り巻く環境は、カーボンニュートラル(以下「CN」という。)社会の実現が急がれるなか、昨今の慢性的なドライバー不足等の課題を抱えています。こうしたお客様・社会課題の解決に貢献し、未来の新たな収益へと成長させるため、従来培ってきた当社の強みである「安心」を活かし、「自動運転ソリューション」、「コネクテッドサービス」、「カーボンニュートラルソリューション」の3領域を軸に、「安心×斬新」でお客様と社会の課題を解決する新事業に挑戦します。これら新事業への挑戦に向け、総額1兆円規模のイノベーション投資を着実に実行します。
(当連結会計年度の取組み)
「自動運転ソリューション」については、2027年度までの「自動運転レベル4技術」を活用したトラック・バス事業の開始に向け、技術獲得の推進及び複数の実証事業を実施しました。2025年10月には、経済産業省及び国土交通省が推進する「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」の「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み(テーマ3)」の集大成として、国内商用車メーカー4社合同で新東名高速道路における総合走行実証を開始しました。また、同じく2025年10月に、神奈川県平塚市で実施された自動運転バス実証実験事業に当社が開発・製造した「エルガEV自動運転バス」を提供したほか、2026年1月には栃木県・愛知県間を結ぶ自社部品物流ルート内において自動運転大型トラックの公道実証を開始しました。さらに、2026年3月からは、自動運転用ソフトウェアスタック技術に強みを持つ株式会社ティアフォー及びAIコンピューティング技術に長けたNVIDIA Corporationと共同で、自動運転レベル4バスの社会実装に向けた取組みを開始しています。
「コネクテッドサービス」では、かねてより運行管理・ドライバー支援サービス「MIMAMORI」、高度純正整備サービス「PREISM」等の先進的なサービスを、業界に先駆けて導入してきました。2025年12月には、これらに加え、商用BEV(※)向けのエネルギーマネジメントサービス「SmartEVer」の提供を開始しました。同サービスを通じ、1拠点で複数台のBEVを導入・運用する際の充電管理や電気料金の抑制を実現することで、お客様のBEV導入によるメリットを最大限に引き出すことが可能となりました。また、「MIMAMORI」への荷待ち自動判定機能や作業時間集計機能等の追加、「PREISM」への故障予兆検知機能の追加等、既存のサービスの性能向上及び機能追加も実施しました。
「カーボンニュートラルソリューション」では、多様な動力源での技術開発・商品提供及びBEVの普及と市場競争力向上にむけた実証実験の推進に取り組みました。2025年9月には、株式会社ファミリーマート及び伊藤忠商事株式会社と連携し、バッテリー交換式EVトラックを使用した配送実証を横浜市で開始しました。本実証実験では、左右両側からのバッテリー同時交換を可能とした国内初の仕様の車両を使用し、バッテリー交換時間をディーゼル車の燃料給油と同程度まで短縮することに寄与しました。さらに、NGV(天然ガス車)トラックへのバイオメタン充填実証への参画や空港におけるEVトラック活用検証も、パートナー連携を通じて実施しました。
(※)BEV:Battery Electric Vehicle
(今後の計画)
「自動運転ソリューション」では、2027年度までに、日本及び北米を皮切りに自動運転レベル4技術を活用したトラック・バスの事業化を目指します。この実現に向けて、当連結会計年度に開始した当社グループ独自の公道実証を引き続き推進するほか、北海道むかわ町に新設した国内商用車メーカー初の自動運転専用テストコースも、2027年9月に本格的な稼働開始を計画しています。これらの取組みによるノウハウの蓄積と、当社が従来培ってきた「通常時、緊急時の車両制御技術」、「お客様による使われ方の熟知」を掛け合わせることで、2027年度より順次、高速道路・ハブ間での輸送や、市街地をはじめとする路線バスの自動運転ソリューションを提供していきます。
「コネクテッドサービス」では、国内においては運送事業者・荷主の輸配送効率を高めるサービスを提供するほか、業界を超えたさまざまなデータを商用車情報基盤「GATEX」と連携させることで、新たなサービスの創出や既存サービスの高度化・効率化を推進します。さらに、北米より高度純正整備サービス「PREISM」とEVトータルソリューションプログラム「EVision」を展開し、2028年までに北米以外の主要地域へも対象エリアを拡大します。
「カーボンニュートラルソリューション」では、「いすゞ環境長期ビジョン2050」に基づき、マルチパスウェイで技術開発を進め、各国の使われ方・地域状況・社会動向に適した商品を展開することで、CN社会実現に貢献します。具体的には、2030年までに全車種でCN商品をラインアップに加える予定です。また、CN商品の開発加速のため、藤沢工場内に電動開発実験棟「The EARTH lab.」を新設し、2026年6月の稼働開始を目指しています。
さらに、2030年代のEV普及期を見据え、価格競争力のあるBEVの投入や、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」をはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進し、社会のCN化を牽引します。2026年度には、トヨタ自動車株式会社と共同開発を進めている次世代燃料電池路線バス(次世代FC路線バス)の生産を開始します。同取組みを皮切りに、FCV(※)については、実用性・需要を見極めながら、路線バス及び小型車を足掛かりに展開することを計画しています。
(※)FCV:Fuel Cell Vehicle
「運ぶ」を支える既存事業の強化
当社グループは150カ国以上で事業を展開し、うち35カ国以上でシェア第1位、グローバル販売台数は57万台以上と、世界中のお客様・社会の「運ぶ」を支えてきました。今後も業界を牽引するとともに、お客様・社会の「運ぶ」を支え続けるためには、既存事業の商品力・販売力を強化し、グループの事業基盤を一層強固にする必要があります。当社グループは、商用車市場のグローバルリーディングカンパニーとして、2030年度に新車販売85万台(トラック45万台及びピックアップトラック40万台)以上の販売を目指します。
(当連結会計年度の取組み)
当連結会計年度も引き続き、各国の使われ方、地域状況、社会動向に適した商品の開発、展開に取り組みました。
日本においては、小型トラック「ELF 4WD」のフルモデルチェンジと「ELF mio4WD」の追加、中型トラック「フォワード」に対する先進安全装備や軽量・低燃費エンジンの搭載、大型トラック「ギガ」の安全・運転支援機能及びコネクテッド機能強化等、幅広い商品の性能向上を実現しました。また、海外においては、1トン積みピックアップトラック「D-MAX」のバッテリーEVモデルにあたる「D-MAX EV」をタイで生産開始し、2025年夏より欧州主要国で発売しています。
加えて、当連結会計年度においては、「トータルライフサイクルで稼働を支えるサービス」の提供に向け、アフターセールス事業の強化及び海外展開に向けた取組みを加速しました。日本においては、首都圏・東海・近畿を中心に、アフターセールス拠点の新設や拠点更新投資を進めてまいります。また、海外ではグループ初となるリース会社Isuzu Financial Services Australia Pty Ltd.(以下「IFSA」という。)を豪州に設立し、2025年10月より営業を開始しています。
(今後の計画)
日本においては、当社とUDトラックスの連携を重視した車両の生産及び販売体制の再構築を推進します。具体的には、大型トラックの共通プラットフォーム共同開発及び市場投入を見据え、生産機能を藤沢工場からUDトラックス上尾工場へ移管し、2028年の稼働開始を目指しています。また、いすゞ連結販売会社とUDトラックスの地域販売拠点の統合を2027年4月までに完了し、ブランド横断でのサービス提供によるお客様の利便性向上と同時に、業務フローやシステムの統一による効率的な運営を目指します。さらに、国内のアフターセールス事業についても拠点新設や拠点更新を継続し、2030年までに2,050億円規模の新規投資を行うことを計画しています。
海外においては、日本国内で先行してフルモデルチェンジした先進装備搭載の小型・中型トラックを、北米を皮切りに順次、豪州や欧州などの市場に投入します。生産機能やサプライチェーンの強靭化に向けた取組みとして、米国においては、サウスカロライナ州の新生産拠点の2027年中の稼働開始を目指すとともに、北米市場での需要増加が見込まれるBEV部材の現地調達化を推進します。また、タイにおいても、LCV旗艦工場の自動化・ライン統合等を通じた競争力強化を目的とした設備投資を行い、2027年の稼働開始を目指します。さらに、アフターセールス事業の海外展開を加速することで、「稼働を守るバリュープロバイダー」としての海外市場での地位確立を目指します。特に、メンテナンスリース事業については、当連結会計年度のIFSA設立を皮切りとして、北米や南アフリカ、東南アジアなどの地域に順次展開・強化します。
「ISUZU ID」を基軸とした経営基盤の確立
「ISUZU ID」で示すVISION(将来像)・MISSION(任務)、「IX」で示す「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を実現するためには、人的資本経営やグローバル視点でのグループ経営を支える経営基盤の確立が必要不可欠です。当社グループではグローバル基準の人財マネジメント基盤の整備、「安心×斬新」を実現する人財への投資を加速し、更なる事業成長を目指していきます。
(当連結会計年度の取組み)
執行体制の強化と社内意思決定の迅速化を企図し、CTO・CLO・CDXOの新設と、部門数を15から11に集約する組織再編を決定し、2026年4月より実施しました。(詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」中の「(3)人的資本・多様性」を参照ください。)
さらに、DXケイパビリティの充実に向け、グループ横断的な生成AIの展開及びデジタル人材育成推進に向けた取組みを加速しました。これらの取組みを通じ、開発データ・ツールの一元化により、国内外のグループ会社を横断したグローバルな開発体制の構築を実現しています。
(今後の計画)
「ISUZU ID」のビジョン・ミッションを起点とした人的資本経営への進化に向け、グローバル基準の人財マネジメント基盤を整備し「安心×斬新」を実現する人財への投資を継続し、社員一人ひとりの成長を更なる事業成長へ繋げていきます。従来の職能型を改め、職務型を採用した人事制度については、2024年4月に管理職者を対象に開始、2025年4月より非管理職者にも適用を開始しました。今後、それぞれの特性を踏まえながらグループ各社へ人的資本経営への進化に向けた仕組みや取組みの浸透を図っていきます。職務(ジョブ)の明確化とそれに基づいた適所適財の人財配置、公正な評価・報酬を実現することで、対話と育成の文化を醸成し、従業員の更なる成長を支援します。また、社員が失敗を恐れず積極的に挑戦することで相互成長し、またメンバー間で刺激し合い相互価値を創出する集団へ進化を目指すべく、マネジメント層の負荷軽減等の職場改善の取組みを通じ、エンゲージメントに関する肯定的回答率を2030年までに70%に高めることを目指します。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」中の「(3)人的資本・多様性」を参照ください。
また、当社と100%子会社であるUDトラックスの2027年度中の合併に向けた検討を開始します。この取組みは、両社の人財やインフラなどの経営資源の一体化による、高い付加価値の創出と意思決定の迅速化を目指しています。
さらに、物流に関する課題解決に向け、外部機関と連携した人財育成も強化します。引き続き、2025年2月に東京大学と開設した「トランスポートイノベーション研究センター」に当社グループより毎年3名の技術者を派遣し、物流・交通分野の社会課題解決を推進します。
「IX」を達成するための経営基盤を確固たるものにするべく、迅速かつ適切な意思決定を実現するガバナンス体制及びリスクマネジメントをはじめとした内部統制の強化にも引き続き注力していきます。
強固な収益基盤・財務基盤の確立及び成長投資と株主還元の両立
当社グループは、企業価値の持続的な向上を目指し、事業継続及び将来成長に必要な投資を優先に実行していきます。グループ全体での既存事業の強化を軸に、新事業を強力に推進することで、2030年度には売上収益6兆円、営業利益率10%以上を目指します。
(当連結会計年度の取組み)
当連結会計年度は、国内では市場の堅調な推移により車両販売台数が増加し、海外でもホルムズ海峡封鎖の影響による中近東向けの出荷停止や米国関税影響・市況悪化等に伴うCV(商用車(トラック及びバス))の北米向け販売台数の減少、タイを中心とした厳しい市況の継続といった下押し要因はあったものの、CVは中近東・アフリカ・中南米を中心に、LCV(ピックアップトラック及び派生車)はアフリカ・オセアニアを中心に車両販売台数が増加し、総車両販売台数は前連結会計年度に比べ42,625台(8.1%)増加し565,858台に、売上収益は3兆4,791億円となりました。他方で、米国関税影響・資材費等の上昇・為替影響・成長関連費用の増加の影響により、売上収益営業利益率は5.9%、ROEは9.5%となりました。
投資については、当連結会計年度においてもイノベーション投資としてCN対応や自動運転関連、既存事業投資として販売・サービスインフラ強化に向けた投資を実施し、設備投資及び研究開発支出は合わせて3,092億円となりました。株主還元では、1株当たり配当金を前連結会計年度から据え置き、配当金は638億円となる予定です。また、自己株式取得は500億円と、適正な自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)を維持した、機動的な自己株式取得に取り組みました。財務健全性としては、各格付にてA格を取得しています。
(今後の計画)
企業価値の持続的な向上を目指し、事業により得られた収益をもとに、将来成長に必要な投資を優先して実行するとともに、株主還元と財務健全性を両立していきます。
収益面は、2027年度に売上収益3兆7,000億円、営業利益率7.0%、2030年度には売上収益6兆円、営業利益率10%以上、ROE15%以上を目指します。
投資については既存事業投資とイノベーション投資を積極的かつバランスを見ながら実行することで、長期にわたる持続的な成長の実現を目指します。具体的には、2031年3月期までにイノベーション投資1兆円、既存事業投資1.6兆円、合わせて2.6兆円規模の投資を計画しています。2027年3月期までは既存事業投資として国内販売拠点整備・北米CV新工場・大型トラックのUD上尾工場への生産集約などを実行し、イノベーション投資として自動運転関連の研究開発費などを計画していますが、2031年3月期にかけてはイノベーション投資のウエイトを徐々に増やしていく予定です。このように積極的なイノベーション投資を推進しつつ、既存事業ではDXを活用することで業務効率化を図り、収益を確保します。
株主還元は、配当性向は平均で40%を維持し、着実な配当成長を目指します。2027年3月期の配当金については、2026年3月期から2円増配の1株当たり94円を下限とし、配当性向40%以上の方針に基づき決定します。また、固定資産と自己資本(親会社の所有者に帰属する持分)のバランスを考慮しつつ、適正な自己資本水準を意識しながら、機動的に自己株式取得を継続します。また、財務健全性は、各格付でのA格を維持しつつ、有利子負債(社債及び借入金、リース負債の合計)も活用していきます。