有価証券報告書-第121期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/19 15:55
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業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度(注)における当社グループの業績の概要は以下のとおりです。日本市場の上期における自動車販売の低迷ならびに輸出の減速もあり、日本事業は減収となりました。一方、海外においては、北米での受注が引き続き好調に推移していることや中国での受注の増加、欧州での高性能量販車向けビジネスの本格化もあり、日本を除くすべての地域において現地通貨ベースでは増収となりましたが、円高の影響(△234億円)が大きく、売上高は2,661億円と、前期に比べ5.4%の減収となりました。利益面においては、北米の生産混乱による影響(労務費・輸送費などの追加費用)が一部継続しましたが、国内での合理化効果や北米事業の立て直しに向けた各施策(下記②北米セグメント参照)が計画以上に早く効果を出すことができ、加えて中国での受注増加などもあり、営業利益は42億円(前期は営業損失38億円)となりました。支払利息は減少したものの為替差損の発生などもあり経常利益は8億円(前期は経常損失68億円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の一部を売却したことや補助金収入(ふくしま産業復興企業立地補助金)などの特別利益を計上したこともあり、3.5億円の利益(前期は親会社株主に帰属する当期純損失195億円)となりました。
セグメントごとの業績は次のとおりです。
①日本
新規受注の増加や海外からの生産移管、補修品売上の増加もありましたが、輸出用小型トラックの減産、産業機械製品の輸出販売の減少などの影響により受注が減少し、売上高は809億円(前期比2.7%減)となりました。利益面では、生産・調達の合理化や経費削減、海外グループ企業の開発費の見直しなどの効果があり、営業利益は41億円(前期比26.5%増)となりました。
②北米
北米事業立て直しに向けた諸施策は、計画を上回る早いペースで成果を上げてきており、またお客様からの新規の引き合いも生産混乱時の落ち込みから順次回復してきております。受注は依然として高い水準で推移しており、売上高については現地通貨ベースでは1.3%の増収となりましたが、円高の影響(△160億円)があり、1,531億円(前期比8.2%減)となりました。また、前年度、多額の損失を計上する原因となった生産混乱は、各施策の実行により収束しつつあること、その他諸施策の実行の成果が現れてきたことから収支は大きく改善し、営業利益は32億円の損失(前期は営業損失112億円)となりました。
北米事業での重点施策の進捗状況は以下のとおりです。
1.組織・管理体制の抜本的な改革
CEOやCFOをはじめ、工場長や営業・生産・調達部門の責任者を新規に採用するなど、経営層や組織の中核となる人財を刷新し、組織・管理体制の強化を図ってまいりました。また、社員の意識改革とともに、就労環境の改善を図っており、当連結会計年度においては、これらの効果が現れ、大きく収益を改善することができました。平成29年2月には人事部門の責任者を新たに採用し、組織・管理体制の再構築は完了しております。今後さらにグループ内での連携の強化を図り、akebonoの「モノづくり」の原点である人間性の尊重に戻った生産性の改善と生産能力の増強を中心とした北米事業の生産体制再構築、オペレーションの安定化にグループ一丸となって取り組み、さらなる収益改善につなげてまいります。
2.生産負荷軽減による生産性改善
当社グループ内各生産拠点の稼働状況やロジスティクスコストの再精査を行い、摩擦材など一部の生産品目を他の生産拠点(日本・タイ)に移管するなど、グローバルでの生産最適化を推進してまいりました。旺盛な需要を背景に長期にわたり3直7日稼動の体制を強いられてきましたが、これら生産の最適化により、一部のラインを除き3直6日稼働や2直稼働へと生産体制が改善し、計画的な設備の保守や保全活動の実施が可能となってまいりました。その結果、生産遅れにより発生した緊急輸送費が大幅に削減されるなど、収益改善の効果が実現してきております。今後さらなる生産の最適化及び安定化を図ってまいります。
3.生産能力の増強
欧米地域を中心に高まるアルミ製キャリパーの需要に対応するため、日米間が連携を取りつつ、平成28年4月にアルミキャリパー生産工場であるサウスカロライナ州コロンビア工場の生産能力を増強しました。新ラインは同年10月から本格的な稼動を開始しました。また、ケンタッキー州グラスゴー工場についても、利益率が高く、強い需要が見込まれる補修品市場向けの摩擦材生産設備を平成29年2月に増強いたしました。引き続き、市場の動向を見ながら、ピックアップトラックやSUV(スポーツ用多目的車)向け製品など、お客様から必要とされる製品群の生産能力の増強を図ってまいります。
4.販売価格と仕入れ価格の精査
北米事業の収益構造改善のため、生産コスト改善と同時に、販売価格及び仕入れ価格の適正化も含めた見直しを実施いたしました。これらの効果は、今年度はもとより次年度以降も北米事業の業績に寄与してまいります。
③欧州
市販向けの摩擦材ビジネスが減少しましたが、グローバルプラットフォーム(全世界での車台共通化)車向け製品のビジネス拡大や高性能量販車向けディスクブレーキ製品販売の本格化もあり、売上高は116億円(前期比6.5%増)となりました。利益面では、経費削減などの効果があったものの、スロバキア工場での増産に向けた一時的費用が増加していることや、利益率の高い摩擦材ビジネスが減少したことにより、13億円の営業損失(前期は営業損失9億円)となりました。
④中国
SUV及び減税措置による小型車の販売好調により当社への受注も増加し、売上高は200億円(前期比2.8%増)となりました。利益面では、労務費増に加え、ライン増加に伴う減価償却費や環境規制への対応コストが増加しているものの、摩擦材ビジネスの受注増加による売上構成変化及びコスト削減努力により、営業利益は26億円(前期比1.7%増)となりました。
⑤タイ
輸出用小型車の増産や、新規受注製品の生産開始、グループ内生産最適化のための北米からの生産移管品などによる受注増加があり、売上高は66億円(前期比10.1%増)となりました。利益面では、売上増による利益増加があったものの、小型車向け新規ビジネスの立ち上げに伴う減価償却費の増加や労務費上昇の影響および11月より操業を開始した鋳物工場の立ち上げ費用負担が発生し、営業利益は4億円(前期比9.5%減)となりました。
⑥インドネシア
政府が推進するローコストグリーンカー(LCGC)対応のMPV(多目的乗用車)向け新規ビジネスの受注に加え、欧州向けグローバルプラットフォーム車向け製品の出荷が引き続き好調なことなどもあり現地通貨ベースでは増収となりましたが、円高の影響(△18億円)が大きく、売上高は163億円(前期比1.3%減)となりました。利益面では、インドネシアルピア安による輸入材料費の高騰や労務費の増加などもあり、営業利益は14億円(前期比17.9%減)となりました。
為替変動の業績への影響について
昨今の為替変動が大きくなっている状況下、当社グループは為替リスクの回避に向けて対応しておりましたが、当連結会計年度においては、以下の影響が出ております。
1)売上高:為替の影響により前期比で234.1億円減少しております。
2)営業利益:為替の影響により前期比で1.5億円減少しております。
3)営業外費用:当期において11.6億円の為替差損が発生しております。
売上、仕入の計上時と決済時の為替レートの差以外の原因で発生した為替差損の主な原因は、下記2点となります。
①日本本社から海外子会社(北米・欧州)への外貨建て貸付金の為替換算差額で4.7億円
②メキシコの海外子会社が現地で米ドルでの借入を行っていたことによる為替換算差額で3.0億円
近年の当社グループのグローバルでのオペレーション拡大と為替の激しい乱高下の影響を受け、従来米ドルのみの事案が多かったものが、ユーロ、メキシコペソなど多くの通貨間で決済するケースが拡大しており、日本国内での外貨借入れ、海外での現地通貨による借入れなど為替リスクをヘッジし、為替変動の影響を可能な限り低減すべく尽力しております。
(注)当連結会計年度とは
(1)北米・中国・タイ・インドネシア:平成28年1月~平成28年12月
(2)日本・欧州 :平成28年4月~平成29年3月 となります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比48億円減少の156億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
141億円の収入(前期比66億円の収入増加)となりました。主な要因は、法人税等の支払額23億円があったものの、税金等調整前当期純利益26億円や減価償却費119億円などにより資金が増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
159億円の支出(前期比58億円の支出増加)となりました。主な要因は、投資有価証券の売却による収入11億円や国庫補助金等による収入12億円があった一方で、日米を中心とした設備投資及び北米でのリース物件の一部買い取り(38億円)を実施したこともあり、有形固定資産の取得による支出は183億円となり、資金が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
28億円の支出(前期は112億円の収入)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入147億円があった一方で、約定返済に伴う長期借入金の返済による支出161億円などにより、資金が減少したことによるものです。