有価証券報告書-第160期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/23 9:09
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【項目】
174項目
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、企業理念として、『PURPOSE』『PROMISE』『VALUES』を定めております。
また、当社は、未来に向かってステークホルダーの皆さまと共に価値創造を進めていくべく、2030年時点の当社のありたい姿を「2030 VISION」として定めております。
企業理念
PURPOSE:前向きに今日を生きる人の輪を広げる
PROMISE:いきいきとする体験をお届けする
人の頭、身体、心を活性化する
コミュニティと共に
VALUES :ひと中心 / 飽くなき挑戦 / おもてなしの心
2030 VISION
「走る歓び」で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる。
1. マルチソリューションで温暖化抑制に取り組み、持続可能な地球の未来に貢献する。
2. 心と身体を見守る技術で、誰もが安全・安心・自由に移動できる社会に貢献する。
3. 日常に動くことへの感動や心のときめきを創造し、一人ひとりの「生きる歓び」に貢献する。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
① 2030年に向けた経営方針(2030経営方針)
各国の環境規制動向、社会インフラ整備をはじめ、電源構成の変化、そして消費者の価値観の多様化など、経営を取り巻く環境の不確実性が高まっていることを受け、2030年までの視点で世界の潮流を想定した経営方針と主要な取り組みを以下のとおり定めております。
経営基本方針
1. 地域特性と環境ニーズに適した電動化戦略で、地球温暖化抑制という社会的課題の解決に貢献すること
2. 人を深く知り、人とクルマの関係性を解き明かす研究を進め、安全・安心なクルマ社会の実現に貢献すること
3. ブランド価値経営を貫き、マツダらしい独自価値をご提供し、お客様に支持され続けること
未来を拓く主な取り組み
1. カーボンニュートラルに向けた取り組み
当社が目標とする2050年のカーボンニュートラル(*1)(以下、「CN」)実現に向けては、まず自社のCO2排出について、「2035年にグローバル自社工場のCN実現」と中間目標を定め、省エネ、再エネ、CN燃料活用の3本柱で取り組みを進めてまいります。加えて、サプライチェーン(*2)への対応も必要であり、輸送会社様や購買お取引先様と共にCO2排出量を削減する活動を段階的に進めてまいります。国内においては、サプライチェーンの構造改革に取り組むほか、CN燃料の活用拡大を進めてまいります。
2. 各フェーズにおける電動化の取り組み
電動化時代への移行期間には、地域の電源事情に応じて、適材適所で内燃機関、電動化技術、代替燃料など様々な組み合わせとソリューションを提供していく「マルチソリューション」のアプローチが有効と考えており、当社は各国の電動化政策や規制強化の動向を踏まえ、パートナー企業と共に段階的に電動化を進めてまいります。
■ 第1フェーズ(2022–2024年):蓄積した資産を活用したビジネス基盤強化
既存の技術資産であるマルチ電動化技術をフル活用して魅力的な商品を投入し、市場の規制に対応してまいります。ラージ商品群を投入し、プラグインハイブリッド車やディーゼルのマイルドハイブリッド車など、環境と走りを両立する商品で収益力を向上させつつ、バッテリーEV専用車の技術開発を本格化させます。
(*1)地球上の炭素(カーボン)の総量に変動をきたさない、二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロになるようなエネルギー利用のあり方やシステム。
(*2)商品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れ。
■ 第2フェーズ(2025–2027年):電動化へのトランジション
電動化への移行期間における燃費向上によるCO2削減を目指し、新しいハイブリッドシステムを導入するなど、これまで培ってきたマルチ電動化技術をさらに磨きます。電動化が先行する中国市場においてバッテリーEVを導入するほか、グローバルにバッテリーEVの導入を開始します。また、内燃機関における再生可能燃料の利用可能性を踏まえ、熱効率の更なる改善技術の適用等により、内燃機関の性能についても極限まで進化させてまいります。
■ 第3フェーズ(2028–2030年):バッテリーEV本格導入
バッテリーEV専用車の本格導入を進めるとともに、外部環境の変化や財務基盤強化の進捗を踏まえ、電池生産への投資なども視野に入れた本格的電動化に軸足を移してまいります。
3. 人とITの共創による価値創造への取り組み
自動車技術の改良を進め、クルマを取り巻く様々な人々や社会の声に耳を傾けつつ、人の幸せを第一に、事故のない安全・安心な社会づくりに貢献していくことは私たちの重要な責務です。安全技術開発に加え、地域や社会と連携し「死亡事故ゼロ」を目指し取り組んでまいります。安全技術開発については、独自の安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY」のもと、これまで大事にしてきた「ひと」を中心としたものづくりに、デジタル技術を掛け合わせた高度運転支援技術の開発を継続し、運転者も同乗者も周囲の人も安全・安心なクルマづくりを進め、2040年を目途に自動車技術で対策が可能なものについては、自社の新車が原因となる死亡事故ゼロを目指します。
4.原価低減とサプライチェーンの強靭化
原価低減は、従来の商品原価や、製造原価だけにとどまらず、その範囲を拡大し、サプライチェーンとバリューチェーン(*3)全体を鳥瞰し、商品ラインアップの見直し等による投資効率・在庫回転率の向上を図るなどムリ・ムラ・ムダを徹底的に取り除く取り組みを通じて原価の作りこみを行うよう変えてまいります。
サプライチェーンについては、材料調達からお客様へのデリバリーに至るまでの全ての工程における個々の改善にとどまらず、モノがよどみなく流れ、しかもそのスピードが最大化される「全体最適の工程」を実現するよう取り組みます。また、材料・部品調達の階層を浅くし、種類を産む場所を近場に寄せていくなどの調達構造の変革や、汎用性の高い材料や半導体の活用拡大に取り組み、地政学的リスク、地震といった大規模災害などの外部環境の変化に対する影響も最小限にとどめてまいります。
② 企業価値向上に向けた「ライトアセット戦略」
電動化を取り巻く環境は、インフレによる投資コストの増加や地域毎の電動化進度の違いなど多くの不確実性を抱えています。当社は2030年までを「電動化の黎明期」と捉え、2030経営方針のもと、多様化するお客様ニーズや環境規制に柔軟に対応すべくマルチソリューションで電動化を進めます。その具現化に向け、2025年3月、既存資産の活用度を高めることで、スモールプレーヤーとしての企業価値を向上させる実行戦略として「ライトアセット戦略」(*4)を公表しました。その主な内容は以下のとおりです。
■ ものづくり領域では、独自の開発・生産プロセス革新を展開し、開発領域においては、より複雑な開発に対し、既存リソース水準を維持しつつ、生産性を3倍に向上させて対応してまいります。
■ バッテリーEVについては、協業・パートナーシップによって、従来と比較し開発にかかる投資と工数を大幅に低減させる見通しです。
■ 電池投資については、当初見込みにインフレ影響を加味した投資総額から、協業を活用することにより、半減できる見込みです。
■ 生産においては、既存資産を活用してバッテリーEVとエンジン車を混流生産することにより、バッテリーEV専用工場新設と比較し、初期設備投資と量産準備期間を大幅に低減できる見通しです。
■ こうしたライトアセット戦略は、従来の自前主義から脱し、協調すべき領域ではパートナーの資産を積極的かつ柔軟に活用して資本効率を高める一方、マツダらしさを発揮すべき領域には自前の技術と経営資源を集中して投下することで、最小の投資で最大のマーケットカバレッジを実現する経営モデルであります。
■ 上記の取り組みを通じて、低投資で高い資産効率を確保の上、競争力ある技術・商品を提供し、資本コストを上回るリターンを創出することで、持続的な成長と企業価値向上を実現してまいります(*5)。
(*3)商品の付加価値を創出するための、商品企画、デザイン、開発、生産技術、製造、販売、サービスといった一連の事業活動の流れ。
(*4)ライトアセット戦略を説明したマツダ・マルチソリューション説明会2025の様子はこちらをご参照ください。https://www.mazda.com/ja/investors/policy/mid-term/
(*5)企業価値向上に向けた取り組みの全体像については、マツダ統合報告書2025「CEOメッセージ」及び「CFOメッセージ」をご参照ください。 https://www.mazda.com/ja/investors/library/integrated-report/
③ 2030経営方針の進捗
当社を取り巻く経営環境は、電動化・ソフトウェア化への移行という大きな産業構造の変化に加え、地政学リスクや経済安全保障といった要因が重層的に作用し、極めて不確実性の高い状況にあります。こうした環境の中、当社はビジネス環境に適応する経営から、外部環境変化に左右されにくい、安定的に利益を生み出せる事業構造への転換を進めております。「マルチソリューション戦略」、「ライトアセット・協業戦略」、「ブランド価値経営」の3つの対応方針のもと、将来の選択肢を持ち続けることを経営の最重要事項と位置づけ、主要な施策を着実に進捗させております。当連結会計年度が初年度となる第2フェーズでは、事業と資源の選択と集中を加速し、ブランド価値の向上を図ってまいりました。
当期の主な進捗
■ 期初に想定していた米国関税による2,300億円超の影響は、北米を最重要市場とする当社にとって極めて大きな逆風でありました。当社は、ステークホルダーの皆さまへの影響を最小限に抑え、雇用と事業を守り抜くべく、国内生産台数70万台の維持を掲げ、全社一丸となって構造的原価低減、固定費削減、価格戦略の見直し、市場別販売構成の最適化など、自らコントロールできる領域に重点的に取り組んでまいりました。その結果、短期間で黒字へと転換し、最終的には1,549億円の関税コストを吸収して、通期営業利益516億円を確保いたしました。
■ 価値創造と原価低減を両立させる「共創活動」として、新型「CX-5」の開発初期段階から日本製鉄株式会社に参画いただき、設計・生産・調達を含むサプライチェーン・バリューチェーン全体を見直し、最適な車体構造開発を短期間で実現いたしました。これにより、輸送コストやCO2排出量の削減、サプライチェーン上の在庫削減、地政学的リスクの低減、両社の間接的な生産コスト削減に貢献しております。こうした共創活動は、既に当社庫受け額の80%に当たる領域にまで拡大しており、平時からお取引先さまとの連携を深め、サプライチェーンの強靭化・再構築を推進しております。
■ 販売面では、北米市場においては、メキシコ工場からの「CX-30」や「MAZDA3」の米国向け輸出を抑制し、アラバマ工場で生産する「CX-50」、収益力の高い日本製の「CX-5」やラージ商品の販売を着実に積み上げるとともに、カナダ・メキシコでは「CX-30」などの増販により、前年並みの水準を達成しました。また、販売網の強化にも継続して取り組んでおり、米国ではこれまでに約550店舗のうち、350店舗以上が新世代店舗へ刷新し、ブランドの世界観を体感いただける環境づくりを進めるとともに、接客トレーニングや販売店との連携強化を図り、ブランドの魅力向上に努めております。
■ 日本市場では、2025年6月にビジネス基盤の強化と再成長を図る国内ビジネス構造変革の方針を公表しております。ビジネス構造改革のための3本柱を、「ブランド育成に向けた成長投資」、「優先地域の特定(都市圏戦略)」、「店舗体験の向上に向けた現場支援の徹底」とし、4つの重点施策(*6)を通じて、より多くのお客様に選ばれ続けるブランドとなることで、国内販売20万台を早期に実現できるビジネス基盤の構築を図ります。また、J.D. パワー 2025年日本自動車セールス顧客満足度調査でマスマーケット国産ブランド部門2年連続第1位を獲得しました。
■ 成長の土台となる市場戦略として、米国で成果を上げてきたブランド価値経営をアジア地域へ展開し、リテールオペレーションとマーケティングを強化しております。ASEAN、欧州、豪州では、長安汽車との共同開発による電動車を順次投入し、電動化への対応と市場適応を進めてまいります。また、タイで生産予定の次期「CX-3」(小型SUV)を来年市場導入し、ボリュームゾーンの獲得を着実に進めてまいります。
(*6)4つの重点施策の概要については、こちらをご参照ください。
https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2025/202506/250619a.html
■ 技術面では、「マルチソリューション戦略」において、長期的な視点で段階的に電動化技術を積み上げ続けてまいります。130以上の国と地域で事業を展開してきた当社にとって、地域毎の電動化の多様性そのものが重要な経営アセットであり、電動化、ハイブリッド、内燃機関を組み合わせ、お客様に選択肢を提供することが最も合理的かつ実践的な戦略と考えております。バッテリーEVについては、浸透スピードの変化やハイブリッドなど複数の電動化ソリューションへの顧客受容性を踏まえ、「意志あるフォロワー」として、市場の実需を見極めながら投資規模・タイミングを慎重に判断してまいります。モデルベース開発を核に要素技術をビルディングブロックとして積み上げ、柔軟に電動化を実現するとともに、生産面では、変種変量を可能とするフレキシブル生産システムにより、専用ラインへの大規模投資に依存せず電動化に対応してまいります。スモールプレーヤーでありながら大規模投資を前提とせずにマルチソリューションを成立させる点が、当社の競争優位であります。2030年までの電動化投資総額は、2022年公表時には1.5兆円と見込み、一時はインフレの影響で2兆円規模となる可能性も想定されましたが、自社製バッテリーEVプログラムの徹底精査や電池投資を最適化するなど、限られた経営資源の中で選択と集中を徹底することで、現在では総額1.2兆円規模に最適化いたしました。
■ 自社製バッテリーEVの市場導入時期について見直しを行う一方、長安汽車との共同開発により4車種の電動車をスピーディかつ高い投資効率で開発・市場投入し、2030年時点で電動車20〜25万台程度、グローバル販売の約15%をカバーできる体制を構築してまいります。同時に、ハイブリッド車種を1車種から4車種へ拡大するとともに、ラージ商品のさらなる競争力強化や電動化時代における内燃機関への投資継続など、当社の独自ブランド価値を創出する領域には集中的に資源配分を行います。2027年には、理想の燃焼を追求した「SKYACTIV-Z」と当社独自のハイブリッドシステムを組み合わせて搭載した新型「CX-5」を導入する予定です。
■ バッテリーEV生産に向けても着実に取り組みを進めております。パナソニック エナジー株式会社と車載用円筒形リチウムイオン電池の供給に向けた合意書を締結し、2025年9月には岩国工場の新設に関し、山口県及び岩国市と建設協定に調印し、同年11月に着工しております。岩国工場は、車載用円筒形リチウムイオン電池セルのモジュール化とパック化を行い、安全・安心で働きやすく、地域の雇用や経済発展にも貢献することを目指します。
■ コスト構造改革については、第2フェーズ期間中に原価低減1,000億円、固定費削減1,000億円、合計2,000億円の構造改善を実行してまいります。モデルベース開発や開発・生産プロセスの革新、お取引先さまとの共創による構造的な原価低減を通じて、原価当たりの顧客価値を高め、営業利益率で4%相当の改善を実現することで、外部環境の変動を吸収できる収益構造へ転換してまいります。
■ ブランド価値経営が求める価値創造の主役は「人」であるとの考えのもと、一人ひとりがいきいきと力を発揮できる環境を整える人的資本経営にも注力しております。2023年から取り組んでいる組織風土改革プログラム「BLUEPRINT」は、2025年5月までに全従業員の参画が完了いたしました。当期は、浸透・定着フェーズに移行し、マネジメント層を中心として意識と行動変容を促進するフォローセッションや代表取締役社長と従業員が直接対話する「BLUEPRINT社長セッション」を開始しております。また、2025年9月には全社横断での生成AI活用専任組織を立ち上げており、引き続き「BLUEPRINT」による組織風土変革とDXによる業務構造改革の両輪で、生産性倍増と価値創造を加速させてまいります。
当社は、資本効率を高めながら独自価値を磨き続けるブランド価値経営を貫き、外部環境変化に左右されにくい、不確実性の中でも利益を生み出し、継続的な成長を実現する事業構造への転換を着実に進めてまいります。
※文中における将来に関する事項につきましては、本報告書提出時点において当社グループが判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

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