有価証券報告書-第102期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/18 15:30
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188項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社、連結子会社および持分法適用会社(以下「当社グループ」という。)が判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、「人間尊重」と「三つの喜び」(買う喜び、売る喜び、創る喜び)を基本理念としています。「人間尊重」とは、自立した個性を尊重しあい、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで、共に喜びをわかちあうという理念であり、「三つの喜び」とは、この「人間尊重」に基づき、お客様の喜びを源として、企業活動に関わりをもつすべての人々と、共に喜びを実現していくという信念であります。
こうした基本理念に基づき、「わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす」という社是を実践し、株主の皆様をはじめとするすべての人々と喜びを分かち合い、企業価値の向上に努めていきます。
当社グループは、「夢」を原動力に、独創的な技術とアイデアによってモビリティを進化させ、より良い社会をリードする総合モビリティカンパニーでありたいと考えています。「環境」「安全」という二つの大きな社会課題を解決に導きつつ、総合モビリティカンパニーとして幅広いモビリティやサービスを通じ、2023年にグローバルブランドスローガンである、「The Power of Dreams」を再定義して明確に示しました。人々の「時間や空間の制約からの解放」、そして「人の能力と可能性の拡張」という価値を提供していきたいと考えています。当社グループは、これからも「夢」を原動力に、独創的な技術とアイデアを遺憾なく発揮して挑み続けていきます。

(2) 経営環境および対応の方向性
当社グループを取り巻く経営環境は、大きな転換期を迎えています。価値観の多様化や、高齢化の進展、都市化の加速、気候変動の深刻化、さらに電動化、自動運転化、IoTといった技術の進化による産業構造の変化が、グローバルレベルで進んでいます。また、ウクライナ、中東および南シナ海情勢等の国際情勢や各国の通商政策において不透明な状況が続くなど、地政学的リスクも顕在化しています。そのような中、将来の成長に向けては、提供価値の質の向上に継続的に取り組むとともに、企業活動に関わるすべてのステークホルダーと、長期的な社会課題を解決するための、積極的な関係構築が求められます。
四輪事業においては、長期的視点ではEV(電気自動車)が最適解であると考え、その普及に向けて大きく舵を切りましたが、米国での化石燃料に対する規制の緩和やEV補助金の見直しなどにより、EV市場の拡大スピードが鈍化しています。これらの事業環境の変化に柔軟に対応できなかったこと、関税影響によるICE(内燃機関)/ハイブリッド車の収益悪化など、さまざまな要因が重なり、当社グループの四輪事業は極めて厳しい収益状況に陥ることとなりました。急激な事業環境の変化にフレキシブルに対応すべく、戦略枠組みの再整理と競争力の再構築を進めています。生産体制について、米国オハイオ州の完成車工場では、余剰能力をすべてICE/ハイブリッド車に充てるとともに、北米の全工場でハイブリッド車が生産できるようにするなど、米国でのEV市場の拡大スピードの鈍化を踏まえてリソース配分を見直し、ハイブリッド車を強化していきます。国別には、当社グループの主要市場である日本や米国に加え、市場の拡大が見込まれるインドでの事業を強化するため、モデルラインアップ拡充やコスト競争力の強化を図ります。その他のアジア各国においても、次世代ハイブリッド車の発売やリソース配分の見直しによる競争力強化に取り組みます。また、カナダでの包括的バリューチェーン構築のプロジェクトは、無期限での凍結とし、今後の調達戦略を引き続き検討していきます。
二輪事業は、人口増加や経済成長を背景に、インドをはじめとするグローバルサウスを中心に需要拡大が続いています。長期的視点では、EVが最適解であると考えていますが、電動車需要が想定以上に拡大していない実態を踏まえ、各地域の実情やお客様のニーズに応じた形で、電動二輪車のラインアップ拡充に加え、ICE車においても燃費性能の向上や、フレックスフューエルモデル(注)の展開を推進しています。当社グループは、この成長市場のダイナミズムを確実に捉え、競争力ある商品の機動的な投入とお客様に寄り添った質の高いサービスの提供により、市場の成長をリードしていきます。
パワープロダクツ事業及びその他の事業においては、長期的には世界的なカーボンニュートラルに向けた動きは今後も変わらないと考えていますが、環境規制の緩和や通商政策の変更などにより、電動化の進展は一部の市場で緩やかになっています。市場環境の多面的な変化に対応するためにも、ICEと電動の両軸を戦略的に強化し、柔軟性の高い事業基盤を構築していく必要があります。当社グループは、今後ICE事業のさらなる体質強化によって安定的な収益基盤の確立を図るとともに、電動化および将来技術への資源投入を加速し、次世代を見据えた競争力の向上に取り組みます。
(注) ガソリンとエタノールを混合した複数種類の燃料(混合比の異なる燃料)を使用できる内燃機関車のこと。
(3) 財務戦略
企業価値の向上のためには、財務・非財務資本を活用し、キャッシュ・フローの持続的な成長と資本効率の向上を実現する必要があると認識しています。この実現のために、「中長期での戦略的な資源配分」「資本コストを意識した経営の強化」「積極的な対話による経営の質・透明性の向上」に取り組んでいきます。
当社グループは、「2050年に当社グループの関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現」という目標を定め、その実現に向けては、乗用車をはじめとする小型モビリティの領域において、長期的視点ではEVが最適解であると考え、その普及に向けて大きく舵を切りました。しかしながら、米国での関税政策の変更に伴うICE/ハイブリッド車の事業への影響や、EV開発へのリソースシフトの影響によるアジアでの商品競争力の低下、および新興EVメーカーの台頭による競争激化により、直近では四輪事業の収益性が悪化しています。加えて、米国では化石燃料に対する規制の緩和やEV補助金の見直しなどにより、EV市場の拡大スピードが鈍化しています。
このような市場環境変化を背景とした商品投入計画の見直しの一環として、当連結会計年度を通じて、一部のEVモデルの上市および開発中止、特定のアライアンス契約に基づき共同開発したEVモデルの製造終了や生産台数の減少を決定してきました。さらに、2026年3月12日に、四輪電動化戦略の見直しを行い、上記に加えて北米で生産予定であったEVモデルの上市および開発中止などを決定しました。また、ソニーグループ㈱との共同支配企業であるソニー・ホンダモビリティ㈱と共同開発し、当社の北米子会社が製造受託予定であったEVモデルはソニー・ホンダモビリティ㈱において上市および開発中止が決定されました。中国においては、EV市場の成長が継続する中、新興EVメーカーの台頭により競争が激化しています。こうした厳しい競争環境下において、EVモデルの商品投入計画の見直しを行いました。これにより、四輪事業では、当連結会計年度の連結損益計算書において1兆5,778億円の損失および費用を認識し、さらに追加的な費用または損失が2027年3月期以降に発生する可能性があります。
これらのEV関連損失の発生や、足元の急激な事業環境の変化にフレキシブルに対応すべく、戦略枠組みの再整理と競争力の再構築を進めています。今回のEVラインアップの縮小に伴うリソース配分の見直しにより、ハイブリッド車モデルのラインアップ拡充やコスト競争力の強化を図ります。


1.中長期での戦略的な資源配分
(原資創出)
足元3年間は上記の四輪事業体質の再構築に集中的に取り組み、その後の2年間は、この体質をベースに事業環境に応じて柔軟かつ機動的に商品投入し、四輪事業をさらなる成長軌道にのせていきます。EV関連損失の解消、体質改革の深化や注力地域を中心とした新商品ラインアップの拡充により、四輪事業の収益は飛躍的に改善する見込みとし、盤石な収益性を持つ二輪事業や金融事業のさらなる成長を積み上げることで、2029年3月期には、過去最高となる営業利益の達成、2031年3月期には従前からの目標であるROIC(投下資本利益率)(注1)10%の実現をめざします。
(注) 1 (親会社の所有者に帰属する当期利益+支払利息(金融サービス事業を除く事業会社))÷投下資本(注2)
2 親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債(金融サービス事業を除く事業会社)、期首期末平均により算出しています。
(資源投入)
2029年3月期までの3年間においては、投入資源を当初のEV向けからハイブリッド車へシフトしEV投資は3年間で0.8兆円規模にコントロールします。一方、ソフトウェアには1兆円、ICE/ハイブリッド車に4.4兆円を投入し、これら合計の3年間の資源投入額は合計6.2兆円とします。その稼ぎを示すR&D調整後営業CF(注)は、四輪事業の黒字化と二輪事業の強いキャッシュ創出力により、投資と株主還元を両立します。2030年3月期以降は、EVの需要動向を見極めながらEV投資の判断を行い、自前化にこだわらず外部リソースの積極的な活用により、投資効率のさらなる改善を図ります。
(注) 研究開発費控除後の営業キャッシュ・フロー(金融サービス事業を除く事業会社の営業キャッシュ・フロー+
研究開発支出-開発資産への振替額)
(株主還元)
成果の配分については、株主の皆様に対する利益還元を、経営の最重要課題の一つとして位置付けており、今後もDOE(調整後親会社所有者帰属持分配当率)(注)3%を目安として安定的・継続的な配当を実施します。
(注) DOE(調整後親会社所有者帰属持分配当率)のベースとなる「親会社の所有者に帰属する持分」は為替や市場環境の影響に
よる変動の大きい「その他の資本の構成要素」を除外した調整後の数値を基にします。
2.資本コストを意識した経営の強化
環境変化に柔軟かつ適切に対応し企業価値の向上を実現するため、資本コストを意識した経営の浸透を図るとともに、時間軸を踏まえた複数シナリオを持ち、柔軟な資源配分を行っていきます。変革期においては、将来に向けた投資が先行しますが、正味現在価値(NPV)を活用し資本コストを踏まえた投資判断を実施するとともに、経営の守るべきラインとして、資本コストを上回る全社ROICをめざします。
3.積極的な対話による経営の質・透明性の向上
投資家や個人株主をはじめとしたステークホルダーの皆様に、経営の方向性が正しく理解され評価いただけるよう、経営陣が主体となり、イベントや個別面談を通じて、これまで以上に積極的な対話を行っていきます。これらの対話を通じて、経営陣や各領域技術責任者から成長戦略に向けた想いをお伝えするとともに、資本市場が当社グループに求めていることを直接把握し、経営や事業戦略へ生かすことで、企業価値の継続的な向上を実現し、ステークホルダーの皆様からも存在を期待される企業であり続けていきたいと考えています。
(4) 優先的に対処すべき課題
持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を当社グループのめざす方向性に照らし、優先順位を付けた上で注力領域から特定し、「重要テーマ」を決定しています。具体的には「環境」と「安全」に加え、当社グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つです。こうした非財務領域の取り組みを財務戦略と連携させることで、社会的価値・経済的価値の創出を実現していきます。
<5つの重要テーマ>① 環境負荷ゼロ社会の実現
当社グループは、持続可能な企業活動をめざし、それぞれが連鎖している環境負荷を網羅的に低減する取り組みに向けて、全社の重要テーマの一つを「環境負荷ゼロ社会の実現」と設定しています。「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けて、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロ、カーボンフリーエネルギー活用率100%、サステナブルマテリアル使用率100%をめざす姿として、「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして、取り組んでいます。
詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
② 交通事故ゼロ社会の実現
当社グループは、2050年に全世界で、Hondaの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします(注1)。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者半減をめざします(注2)。これらは、新車だけでなく、登録・届出されたすべてのHondaの二輪車・四輪車が対象となります。
(注) 1 Hondaの二輪車・四輪車に乗車中に発生した交通事故(歩行者、自転車等の他者との衝突を含む)。
ただし、故意による悪質な交通ルール違反や、飲酒・薬物等の使用により自ら正常な運転能力を欠いた状態での事案は 除外する。
2 2020年比で2030年に全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する1万台当たりの交通事故死者数を半減。
詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
③ 人的資本経営の進化
当社グループの人的資本経営とは、全社の方針である「自由な移動の喜びをサステナブルに創造し、夢に向かって動き出そうとする人のパワーになる」の実現に向けて、人と組織の力を引き出し、お客様価値の創出を通じて、将来の競争力と企業価値向上につなげていく取り組みであり、中長期・短中期の観点から達成すべき二つの人材マテリアリティ(注)を設定しています。
(注) マテリアリティ: 持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を、当社グループのめざす方向性に照らし優先順位を 付けたうえで選定した「重要テーマ」において、特に注力していくべき課題。
詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
④ 独創的な技術の創出
モビリティの可能性の拡張と将来の環境負荷ゼロ、交通事故死者ゼロ社会の実現に向けて、注力領域を定めた上で、各領域のエキスパートが技術開発をリードしています。また、世界中のさまざまな研究機関と共同研究を行うことで、グローバルでの知の探究と結集を図っています。ベンチャリングなどを通じた社外との連携強化も技術創出の取り組みです。社内外の知識・経験・ノウハウを結集して企業の競争力を高めるべく、2021年にコーポレートデベロップメントを担う部門を立ち上げ、機能の強化を続けてきました。さらに当社グループは、従業員の持つ独創的なアイデアや技術を起点としたボトムアップ式の新規事業創出にも力を入れており、社会課題の解決と新しい価値の創造に挑戦しています。
⑤ ブランド価値の向上
Hondaのブランドは、創業時よりお客様とともに歩み続けたあらゆる企業活動の積み重ねによって形づくられてきました。100年に一度ともいわれる大きな変革期を迎えている中で、Hondaブランドをさらに輝かせ、将来にわたってその価値を高め続けていくことは、極めて重要な課題の一つです。そのために当社グループは、2001年に策定されたグローバルブランドスローガン(GBS)「The Power of Dreams」を2023年に再定義し、改めて「全てのブランドマネジメントの起点」として位置付けました。当社グループは今後もGBSをブランドマネジメントの基軸に、さまざまな製品・サービス、企業活動を通じて、それぞれが持つブランドの個性と当社グループとしての価値ある一貫性を融合させ、Hondaブランド全体のさらなる価値向上を図っていきます。ブランドマネジメントにおいては、Hondaブランド独自の個性に基づき、「企業として共通する価値観や思想」と「商品・サービスの多様性・独自性」との間に相乗効果を生み出すことが重要と考えています。この一環として、グローバルでブランドに価値ある共通性をもたらすために、さまざまな発信・ブランディングを実践する際の指針となる「ブランドアセット」の整備・拡充に取り組んでおり、当社グループに関わるすべての仲間が自律的にブランドの質を高めていける環境の構築をめざしていきます。
以上のような企業活動全体を通した取り組みを行い、株主、投資家、お客様をはじめ、広く社会から「存在を期待される企業」となることをめざしていく所存でございます。

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