有価証券報告書-第156期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/29 17:00
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【項目】
157項目

研究開発活動

当社グループの研究開発活動は主に当社が行っており、環境問題や多様化するお客様のニーズに対応し独創的で競
争力のある商品を提供することを目指し、積極的に取り組んでいます。
生産、技術、購買、ITが一体で、「中期経営計画(2021年4月~2026年3月)~「小・少・軽・短・美」~」の基
本理念「世界の生活の足を守り抜く」を主眼に、お客様に価値ある製品・サービスの提供をすべくAIを活用した品質
向上・保証とデータ活用基盤の強化に挑戦しています。また、世界的なカーボンニュートラルに向けた製品の電動
化・CASE対応は、組織を新設し製品開発の加速と製造技術構築に取り組んでいます。製造分野のCO2排出削減は、省エネや生産効率向上の推進によるエネルギー削減とともに再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,607億円であり、セグメントごとの活動状況は以下のとおり
です。
(1)四輪事業
四輪事業では、世界のお客様の生活の足を守り抜くため、お客様の立場になって、「小・少・軽・短・美」によ
る価値ある製品・サービスの提供に挑戦し、「小さなクルマ、大きな未来。」のスローガンとともに商品をお届け
してきました。当社は自動車を取り巻く環境の変化を踏まえ、カーボンニュートラルに向けた電動化などの環境技
術、安全・安心につながる技術、そして情報通信技術の大きく3つの技術分野の開発を積極的に進めています。
① 新商品の開発状況
国内においては、2021年9月に新型「ワゴンRスマイル」を発売しました。「高いデザイン性とスライドドアの
使い勝手を融合させた、新しい軽ワゴン」をコンセプトとして開発したワゴンRの新モデルです。
ワゴンRの特長である広い室内空間と高い機能性に加え、スライドドアの利便性と個性的なデザインを兼ね備え
たモデルとして、幅広い世代のお客様に提案しています。
また、12月には新型「アルト」を発売しました。「アルト」は、1979年5月に運転のしやすさ、使い勝手のよ
さ、経済性の高さなどを兼ね備えた実用的な軽自動車として発売して以来、時代にあわせて機能や性能を進化させ
てきました。今回9代目となる新型「アルト」は、誰もが気軽に安心して乗れる、世代を超えて親しみやすく愛着
のわくデザインに内外装を一新しました。従来の「R06A型エンジン」と「エネチャージ」の組み合わせに加え、
「R06D型エンジン」とマイルドハイブリッド※1の組み合わせを設定し、WLTCモード燃費では軽自動車トップクラ
ス※2の27.7km/Lという優れた燃費性能を実現しました。安全面では、ガラスエリアを拡大し視界を広くしたほか、夜間の歩行者も検知する「デュアルカメラブレーキサポート」などを搭載する「スズキ セーフティ サポート」と
6エアバッグ※3を全車に標準装備しました。装備面では、スズキ国内初となる7インチのディスプレイオーディ
オ※4を採用し、バックアイカメラや全方位モニター※5の映像を表示できるほか、様々な車両情報の確認や、ヘッド
アップディスプレイ※5への交差点案内※6などの表示も可能としました。
海外においては、2021年11月にインドで新型「CELERIO(セレリオ)」を発売しました。燃焼効率の良いデュアル
ジェットエンジンを軽量で高剛性のプラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」に搭載することで軽量化と燃費
向上を図るとともに、足回りの空間を広げ、さらに快適性を向上させつつ十分な荷室容量を確保しました。
2021年12月には欧州で新型「S-CROSS(エスクロス)」を発売しました。SUVらしいスタイリング、快適性、様々
な情報を表示するディスプレイオーディオ、スズキ独自の四輪制御システム「ALLGRIP(オールグリップ)」による
走行性能と安全性を兼ね備えています。
また、2022年2月にインドで新型「バレーノ」を発売しました。好評なパッケージングを維持しながら、全高を
抑え、全幅を広くとったスタイリングを更に強調した外観デザインや、上質感のある内装、ヘッドアップディスプ
レイなどの先進装備を採用したほか、後席快適性を向上させるなど、全方位で進化させました。


② 環境技術の開発
当社はカーボンニュートラルに向けた様々な技術開発を積極的に進めており、ハイブリッドシステムの性能向上
はもちろん、プラグインハイブリッド車、EVの開発・製品化に向けた電動化技術開発に力を入れています。
ハイブリッド車としては、コンパクトSUV「ビターラ」にスズキ独自の新しいハイブリッドシステムを搭載し、
2021年11月よりハンガリー子会社のMagyar Suzuki Corporation Ltd.で生産を開始しました。ハイブリッドシステ
ムの電圧、リチウムイオンバッテリーの容量、モーターの最大出力・トルクの変更により、EV走行が可能な時間や
速度の範囲を拡大※7しています。また、ブレーキをかけた際に効率よくバッテリーが充電できる回生協調ブレーキ
及び後退時のEV走行※8をスズキで初採用しました。パワートレインでは、優れた熱効率がもたらす燃費性能と力強
さを兼ね備えた「K15Cデュアルジェットエンジン」、効率的な動力伝達とダイレクト感のある加速フィーリングを
実現した6AGSのトランスミッションを採用したほか、出力・トルクが向上※7した高出力のモーターを採用しまし
た。
また、電気自動車の開発では、2022年3月より、プロトタイプ車を用いて一般のドライバーに通勤や休日に使用
していただく中でデータを収集するテストを開始しています。インド・グジャラート州への投資など、インドでの
EV生産の準備を進めており、これらのテスト結果を、現在トヨタ自動車株式会社と共同で開発しているEVにもフィ
ードバックしていきます。
③ 安全・安心技術の開発
当社は、小さなクルマで大きな安心をお届けするため、誰もが安心して乗れる運転のしやすさを考えた基本安全
技術、事故そのものを未然に防ぐ予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」、万一の衝突被害を軽減する衝突
安全技術を培い続けています。安心して楽しく車に乗っていただくために、事故の無い未来に向けてさらなる技術
の進化と普及に努めていきます。
新型「ワゴンRスマイル」では、夜間の歩行者も検知する「デュアルカメラブレーキサポート」を搭載した「スズ
キ セーフティ サポート」を全車に標準装備しました。全方位モニター用カメラ装着車には、狭路でのすれ違い時
の接触防止をサポートするすれ違い支援機能をスズキとして初採用しました。また、運転に必要な情報をカラーで
見やすく表示するヘッドアップディスプレイ、車両情報をカラー表示するマルチインフォメーションディスプレ
イ、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)、標識認識機能などを「セーフティプラスパ
ッケージ」※9としてメーカーオプション設定しました。
④ 情報通信技術の開発
2021年12月開始の国内向け新型「スペーシア」、2022年2月開始のインド向け新型「バレーノ」へコネクテッド
機能を搭載し、「スズキコネクト」※10サービスの提供を開始しました。コネクテッド技術を活用して、緊急時の迅
速かつきめ細やかなお客様サポートや、離れた場所で車両の状態確認や操作を可能とするリモート機能など、より
安心・快適・便利なカーライフをお客様へ提供しています。今後は、欧州地域への展開や他モデルへの搭載を順次
進めるとともに、コネクテッドデータを活用した品質向上や設計支援の促進や、次世代の通信技術を採用した新た
なコネクテッド機能の開発を進めていきます。
また、2016年より進めている「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」では、浜松市内での第3回目の実証実験
を迎えました。前回に比べ自動走行可能な領域を広げることができ、技術レベルが向上しています。今後も地域と
のつながりを深めてニーズを確実にフィードバックし、自動運転の開発に取り組んでいきます。
トヨタ自動車株式会社とのアライアンスについては、電動車の協業、アフリカでの協業、商品ユニット補完など
提携を深化させ、新たなフィールドでともにチャレンジしていきます。
当連結会計年度における四輪事業の研究開発費は1,446億円です。

※1 HYBRID S、HYBRID Xに搭載。
※2 軽自動車クラス。WLTCモード走行燃費(国土交通省審査値)に基づく。HYBRID S、HYBRID Xの2WD車。
2021年12月現在、スズキ調べ。
※3 6エアバッグは、運転席・助手席SRSエアバッグ、フロントシートSRSサイドエアバッグ、SRSカーテンエアバッグ。
※4 HYBRID X 全方位モニター付ディスプレイオーディオ装着車、A、L、HYBRID Sにバックアイカメラ付ディスプ レイオーディオ装着車としてメーカーオプション設定。
※5 新型アルトでは、HYBRID X 全方位モニター付ディスプレイオーディオ装着車、HYBRID X 全方位モニター用
カメラパッケージ装着車に装備。
※6 HYBRID X 全方位モニター付ディスプレイオーディオ装着車でスマートフォン連携をして対応する地図アプリ
を使用した場合とHYBRID X 全方位モニター用カメラパッケージ装着車に対応したナビゲーションを装着した
場合に表示されます。
※7 スイフト HYBRID SZに搭載されているハイブリッドシステムと比較。
※8 後退前にエンジンがかかっている場合やアクセルの踏み込み具合、バッテリーの残量等により、EV走行しない
場合があります。
※9 HYBRID X、HYBRID Sにメーカーオプションとして設定。
※10 メーカーオプションとして設定しています。スズキコネクトは別途ご契約が必要な有料サービスです。
(2)二輪事業
二輪事業では、カーボンニュートラル達成に向けた技術、そして「使いやすさ」、「楽しさ」、「驚き」をお客
様に感じていただける技術の開発に取り組んでいます。
カーボンニュートラルに向けて、より環境にやさしく利便性の高い電動二輪車の普及のため、電動二輪車の共通
仕様バッテリーのシェアリングサービス提供とシェアリングサービスのためのインフラ整備を目的とする「株式会
社Gachaco(ガチャコ)」に出資しました。共通バッテリーを活用した利便性の高い電動二輪車の開発・普及を行いま
す。
また、新型「GSX-S1000GT」向けに、新たにスマートフォン連携機能付きのフルカラーTFT液晶メーターを開発し
ました。お客様のスマートフォン内のアプリケーションとBluetooth®接続し、電話の発信や地図の表示、音楽の再
生などを可能とし利便性を向上しました。
当連結会計年度における二輪事業の研究開発費は121億円です。
(3)マリン事業
マリン事業では、マリン製品における環境や利便性向上に関わる技術開発を行っています。
主な成果として、新型船外機「DF140B」及び「DF115B」を開発しました。
環境面では、定評のあるリーンバーン(希薄燃焼)システムの採用に加え、高圧縮比化による熱効率向上、気
水分離性能と吸入空気温度上昇抑制を両立したエアインテークによる燃焼室内流入空気温度の低減を行い、優れた
出力特性と燃費の向上を実現しました。
利便性向上面では、オイルフィルターの配置を見直し、トップカバーを外すだけでオイルフィルター交換を可能
とし、さらに、オイルフィルター周りにオイル受けトレイを追加し、オイルフィルター交換の際のオイル垂れを防
ぐなど、優れたメンテナンス性を実現しました。また、新設計の換気システムとオルタネーターの改良により、ア
イドリング回転時のオルタネーター出力を3A向上し、大型の電子航海機器も余裕をもって使用できるようにしまし
た。
当連結会計年度におけるマリン事業の研究開発費は38億円です。


(4)その他の事業
その他代表的なものとして、小型電動モビリティ事業において高齢者の生活を支援する新たな商品と、電動車い
すの技術を応用した電動台車の技術開発に取り組んでいます。
具体的には、はままつフラワーパークで電動アシストカート「KUPO(クーポ)」の利便性を検証する試験運用を
実施しました。「KUPO」は、歩行を補助する電動アシストカートから、乗って移動できる電動車いすにもなり、生
活を支援し歩く嬉しさを提案する「歩く・広がるモビリティ」として開発を進めてきた活動支援モビリティです。
また、1974年から生産・販売しているモーターチェア(電動車いす)の動力部分を活用し、椅子を荷台に取り換
えた電動台車を福祉以外の農業などの分野で活用することを実証実験しています。
これら試験運用や実証実験を通して、幅広いお客様より直接ご意見を伺い、生活に密着した次世代モビリティの
開発に結びつけています。
当連結会計年度におけるその他事業の研究開発費は2億円です。