有価証券報告書-第96期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 11:29
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【項目】
139項目

対処すべき課題

当社グループは、2025年(第100期事業年度)を見据え、グループビジョン「YAMADA toward 2025」を掲げ、企業価値向上のための取り組みを推進しております。2021年3月期は、中期経営計画「Step!!2021」の3年目でしたが、新型コロナウイルス禍という外部環境の激変にさらされ続けた1年でありました。そのような中、当社の相模原工場のリニューアルプロジェクト、基幹システムのリプレイスや、営業組織の大幅な改編など、積極的な改革の手を緩めることなく推進し、さらに2021年4月からは新中期経営計画「Jump!!2024」を展開して、企業価値の向上に取り組み続けております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「堅実で公正な企業活動を通じて、お客様のニーズ、社員の喜び、株主の期待、産業と社会の発展に誠実に取り組む」ことを企業理念として掲げ、①ポンプ事業、②カーメンテナンス機器事業、③作業環境改善機器事業の三つの事業を核として、ものづくりの「品質へのこだわり」、販売からアフターサービスに至る徹底したお客様サービス「トータルサポート」でグローバルリーディングカンパニーを目指します。
(2) 目標とする経営指標
・サステナブルな成長のためには持続的かつコンスタントな投資が不可欠であるという認識から、投資の原資となる収益を重視し、営業利益率の適正なマネジメントに努めます。2022年3月期は当社の相模原工場のリニューアルプロジェクトが進行中であり、この大きな投資・償却を担いながら適切な利益を確保する必要性を認識しております。
・株主を重視する経営の観点から、株主資本に対する利益率(ROE)の向上を目指します。当社の将来へ向けた成長戦略とその着実な推進がそれを実現すると考えております。
・これらの実現のため並びに中長期的にサステナブルな事業運営を可能とするため、人材と生産能力の質的向上に注力していきます。人材について特に「IT融合人材」の獲得に重点を置きます。生産能力の質的向上については海外からの調達や、海外でのアッセンブリーによってコスト競争力を高めること、すなわち原価低減を軸とし、これらへのチャレンジと投資を更に積極化します。
(3) 経営環境
国内市場において安定的な推移を続けているオートモティブ部門は、今後もEV化の流れが強まる中ながら底堅いニーズを見込んでおります。
海外市場においては、米中冷戦とも表現される地政学上の転換期の最中、先行きの不透明感を増していますが、市場の内外を問わず、新型コロナウイルス禍による経営への影響は、その深さも長さも一切の予断を許しません。しかしながら弱含み一辺倒ではなく、十二分な需要を回復している地域も散見され、これまで以上にマーケットをつぶさに見ていく必要性が増しております。そうした中で当社は主力製品のダイアフラムポンプを中心に、海外売上高の比率が約5割となっており、今後もさらなる拡大を見込んでいると共に、さらにこのダイアフラムポンプの拡販に力を集中して参ります。市場伸長の潜在力等を鑑みても、この難局を乗り越えさらに海外市場における当社グループの業容拡大を実現すべく、グローバルカンパニーとしての組織機能・能力の開発が急務であると認識しております。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
・全世界への拡販
当社の製品があらゆる地域で利用していただけることを願い、常にお客様目線を念頭に市場把握力を強化する「ニーズに応えるマーケティング戦略」を推進し、境界のないグローバルな経営を推し進めます。その中でも現下の新型コロナウイルス禍においては、マーケットの成長率とアクセシビリティ、更には地政学的な環境などの総合評価からASEAN地域でのシェア拡大に注力します。
・技術開発
新製品の開発と新商品の探索を最優先課題として取り組み、「価格」と「価値」のベストバランスを実現した競争力の高い製品を市場に投入すべく、「ニーズに応えるものづくり品質向上戦略」を推進することで、業容拡大と生産性の向上へのチャレンジに継続的に取り組みます。同時に新型コロナウイルス禍においては収益性の健全化を重視し、開発投資においてはROI等の指標により管理を徹底いたします。
・お客様への対応力向上
製造から販売、さらにはメンテナンスに至るまで徹底したお客様への「トータルサポート」の実現を目指し、「トータルサポート向上戦略」を推し進めます。
・人材力強化
中期経営計画「Jump!!2024」によっても、当社グループは引き続き大きな改革実現を目指しておりますが、その要諦はやはり、人材力と組織力の改革です。新型コロナウイルス禍への対応を奇貨としてテレワークが制度として導入されるなど、目に見える働き方の改革もありましたが、それはとりもなおさず優秀な人材を惹きつけ、人材を活性化し、組織力においてシナジーを醸し出すために他なりません。そのために当社は“開かれた組織”を目指してまいります。社員一人ひとりが組織の壁の向こう側、会社の外に目を向けて、我々を取り巻く世の中とその変化をしっかりと捉えることが肝要だと考えております。加えて、当社グループの改革に寄与する人材を広く社外に求め、かつ旧来の正社員採用にこだわるのではなく多様な働き方の選択肢を用意することによって人材を惹きつけたいと考えます。特に中長期的な成長を見据えたとき、従来は当社のビジネスを考える上で顧みられることの少なかったITの活用を重要なファクターとして企業変革を推進できる、「IT融合人材」の必要性が提唱されています。この「IT融合人材」の獲得と育成に取り組んでまいります。
・情報力向上
激動する時代の変化を敏感かつ確実に捉え、よりよい意思決定と、最適な情報発信をすべく、「マネジメント基盤強化戦略」を推進し、IT基盤の強化を中心に情報力の強化を推し進めます。これは新型コロナウイルス禍を契機として働き方の変革がダイナミックに進行していることを受けて、テレワークの推進やその際必要になる情報セキュリティの向上も含めて進めてまいります。
(5) 中期経営計画「Jump!!2024」の基本方針
大方針 : 『収益性の回復』
コロナショックの波に抗い、成り行き任せではなく、利益を確保するために、これまでの仕事の仕方を変える。
<三大戦略>・マーケティング戦略
国内外ともダイアフラムポンプの売上拡大に最大注力する。市況の成り行きに抗う。
・生産戦略
ダイアフラムポンプを中心に原価低減を更に推し進める。売上拡大による量産効果だけでなく、全局面で原価低減し、利益を確保する。
・人材戦略
売上拡大、原価低減を支える人材戦略を迅速に実行する。
<共通戦略基盤>・BCP、DR(事業継続計画、災害復旧計画)
収益性の回復の前提として、感染症から命を守り、事業を継続することで、社員と取引先の生活と安心を維持する。
・ABW(機能に応じた働き方、働く場の実現)
これまでの仕事の仕方を変えていくため、働く「場」も変えていく。
<財務戦略>外部負債の圧縮、資金コストの削減。
大方針である収益性の回復によって生み出されるキャッシュ・フローを重点施策へと成長領域に再投資していくことによって、サステナブルな利益成長を図りながら安定的な株主還元を実現していきます。
収益管理の観点では売上高営業利益率を、資本効率の観点ではROEを重要指標とする。
<重点施策目標>・売上高総利益率向上(営業)×製造原価率の低減(工場)
<コロナ後を見据えた仕込み>・ITを積極活用した「見える化」すなわち当社グループにとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進。