有価証券報告書-第103期(2025/04/01-2026/03/31)
③ 戦略
当社国内事業所を対象にScope1とScope2の分析を行っています。国内および海外子会社グループ企業のGHG排出量については、今後モニタリングを進めながら順次対応していく予定です。Scope3については、排出量が大きいと予測されるカテゴリ1*1とカテゴリ11*2の把握を進めてきました。2025年より他のカテゴリの把握を進めています。
*1:自社が購入した製品・サービスに伴うCO2排出量
*2:自社が販売した製品の使用に伴うCO2排出量
(気候変動のリスク及び機会)
シナリオ分析は将来予測の不確実性を考慮し、複数のシナリオを参照して検討を行いました。2℃未満シナリオの下での対応では不十分との国際的な世論が形成されつつあり、1.5℃シナリオを用いて分析を実施しています。一方、1.5 ℃シナリオへの対応では、物理的リスクへの意識が希薄化することから、現状の経済活動を継続した場合に気温が上昇する4℃シナリオでの事業環境を想定しました。
また、環境リスク・機会の再分析を行い、中期・長期で取り組むアクションを以下のように見直しました。
・気候変動に対する全体像の整理と取組方針
・新規事業領域模索
・気候変動対応を起点としたBCPの強化
・LCA・Scope3(顧客・サプライヤとの連携含む)
※参照したシナリオ
1.5℃シナリオ:(IEA) NZE 、 1.5℃ 特別報告書 (IPCC) SSP1-1.9
4℃シナリオ:(IEA) STEPS (IPCC) SSP2-4.5 、 SSP3‐7.0
(リスク機会と事業インパクトの分析)
凡例 財務インパクト:▲▲▲ 大、▲▲ 中、▲ 小 発現時期:短期2022~2024、中期2025~2029、長期2030~
(グループ企業(国内および海外子会社)のGHG排出量のモニタリング)
当社グループ企業のうち生産拠点におけるScope1とScope2のGHG排出量の調査を開始しました。
(Scope3の開示に向けた取り組み)
当社のほとんどの製品は、部品・部材を調達し、自社で製造・販売、お客さまの現場で稼働しています。そのため、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量を把握することが重要であると考えています。
2024年度より新たにScope3対応プロジェクトを発足し、カテゴリ1~カテゴリ15の把握を進めています。
(機会に対する戦略)
1.気候変動に関連する半導体製造装置事業の機会
世界各国がカーボンニュートラルを目指す過程では、あらゆる産業分野において、
・生産活動の効率化・省エネルギー化 (主にデジタル化による施策)
・脱炭素エネルギーへの転換 (主に電化による施策)
が追求されると予想されます。
需要急拡大に応える、高精度な半導体製造装置
これらに伴いデジタル・情報通信技術の適用範囲は広がり、社会全体で活用される電子機器・電子部品などの数量は急速に増加。構成要素である半導体デバイスの需要も持続的に増大し、当社が提供する半導体製造装置のニーズは今後も飛躍的に高まっていくことが見込まれます。
また、電子機器・電子部品などは、高機能化に伴い設計も複雑化し、製造工程に対する新たな課題解決ニーズも高まります。当社は、このようなニーズに対応した製品群を開発・提供しています。例えば、高精度の温度制御や加工を実現する装置は、AI/HPC向けロジック・メモリ需要やSAWフィルターやセンサの高度化に応え、高難易度化が進む製造工程をサポートします。
次世代パワー半導体対応製品
一方、デジタル化・電化が進むことにより、
・IoT機器・AIの普及に伴うデータセンターの拡充、データ量・計算量の拡大 と消費電力の増大
・電気自動車(EV)向け電気モータの利用拡大による損失電力の増大
といった課題も同時に発生するため、半導体自体の省エネルギー化も両輪で推進する必要があります。高いエネルギー効率を実現する次世代パワー半導体(GaN、SiCなど)の普及が期待されており、当社も関連する技術・製品開発を推進しています。
新たに生まれるニーズと当社の提供価値
カーボンニュートラルの実現に向けては、新たな課題が生まれるとともに、お客さまからのニーズも絶えず変化していきます。当社は検査装置・加工装置に及ぶ広範な製品群で変わりゆくニーズに総合的に対応し、新たな価値を提供し続けます。
半導体製造装置事業の戦略と目標
気候変動関連の事業機会を的確に捉え、半導体製造装置事業を持続的に成長させるため、以下の戦略を実施します。
上記①・②・③の方針を踏まえ、半導体製造装置事業の売上を2027年度までに1,400億円まで伸長させることを目標とします(2025年度実績:1,279億円)。
また、業界で唯一「計測技術」を持つ半導体製造装置メーカーとして、両技術の融合にも取り組みます。半導体製造装置に計測機器をビルトインすることで、より高精度の検査・加工を可能とし、唯一無二の価値を提供します。
2.気候変動に関連する精密測定機器事業の機会
2050年のカーボンニュートラルを達成するためには、温室効果ガス排出量が大きい電力分野の脱炭素化だけでなく、非電力分野(民生・産業・運輸)においても、省エネルギー化や電化をはじめとする多種多様な取り組みが必要です。その中で重要な役割を果たす工業製品は、日々高精度化、高度化、複雑化しており、モノづくりを効率よく、安定して合理的に供給するには、形状や輪郭を管理し、長さや表面粗さを測定する精密測定機器事業が欠かせません。当社の計測技術は、電力・非電力分野にかかわらず、幅広い領域でカーボンニュートラル施策の根幹を担っています。
再生可能エネルギー分野の拡大に対応した、高機能精密測定機器事業
例えば再生可能エネルギーの主力電源化には、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどがあり、主力電源化するには複数の電源を組み合わせた安定的かつ効率的な電力供給の実現が求められます。太陽光以外の多くはエネルギーを取り出すために、大型で高精度、高効率なタービンやプロペラ、発電機などの回転体を必要とします。中でも洋上風力発電は、成長性や経済波及効果から注目度の高い電源で、その発電効率を左右する重要部品が、数メートル規模にもなる大型ベアリングやハウジング、プロペラなどです。真円度や円筒度、表面粗さ、内部の歪み・傾きの有無を高精度に測定できれば、発電効率の向上と信頼性確保に直結します。当社は、独自の高精度計測技術によってこれらの品質評価を実現し、風力発電の導入効果最大化に貢献。他の再生可能エネルギー分野でも、設備の長寿命化・発電効率向上に寄与する計測を実現しています。
蓄電池産業の拡大による高速高精度な充放電試験システム製品
蓄電池は、電気自動車や航空宇宙産業の動力源や、太陽光・風力などの再生可能エネルギーの出力変動調整に用いる定置用、5G通信基地局やデータセンターなどのバックアップ電源など、さまざまな用途で利用が拡大しています。短期的にはEV需要の停滞を受けて市場成長率は鈍化する見通しですが、PHEV/HEVの需要予測も上昇傾向にあり、着実に増加する成長市場であることには変わりありません。
当社はその二次電池の性能や信頼性を測定する「充放電試験システム」を開発・販売しています。当社の充放電試験システムは二次電池のエネルギー性能を正確に計測するために、高速制御、高精度を特長としています。
また、放電エネルギーを一次電源へ回生する機能に加え、チャネル間でエネルギーをシェアする電力変換機能を搭載。システム全体で、当社比最大30%の省エネルギーを実現しました。
充放電試験自体を受託する評価サービスも提供しており、電動車用バッテリーを中心とした二次電池の性能評価試験の需要拡大に対応するため、福島県と愛知県に二次電池評価センターを開設しています。
電気自動車・半導体製造装置における計測技術
非電力分野の脱炭素化においては、「電動化による脱炭素エネルギーへの転換」と「デジタル化による効率化」が大きな役割を果たします。
当社は三次元座標測定機やX線CT装置による計測技術を活用し、今後急速な市場拡大が見込まれる電気自動車の固有部品、駆動モータユニットやインバータ、バッテリーの高精度な計測を支援、新エネルギー車の普及に貢献します。
また、「デジタル化」を担う半導体デバイスメーカー、電子部品メーカー、半導体・電子部品製造装置メーカー、同検査装置メーカーの開発・生産活動に必要不可欠な精密測定機器を提供し、半導体デバイスの高度化や需要拡大を支えます。
温度変化に強い計測製品群
世界各国が2050年カーボンニュートラルに向け掲げる目標が達成されたとしても、世界の平均気温は0.5~1℃上昇する見通しで、気候変動対策が進展しなければ、4℃以上の平均気温上昇や極端な気象現象の発生確率が高まることが予想されます。
このようなリスクに対し、当社は測定環境の温度変化に強い計測製品群を提供しています。温度管理が困難な測定環境下では、従来の精度保証環境温度を上回る恒常的な気温上昇にも一定程度対応。工場内における計測・検査プロセスも柔軟に設計できるため、生産工程のより早い段階で計測・検査を行え、生産性向上にも貢献できます。
温度管理が可能な測定環境下であれば、保証環境温度の幅を広げ空調の設定温度を緩和することで、計測精度を保ちながら省エネ・コスト削減に貢献できます。単位時間当たりの温度変化にも強いため、高コストな精密空調ではなく一般空調環境下でも高精度な測定が可能です。保証環境温度の幅が広がると、人体への負荷は増加するため、当社の自動化技術を提案し解決していきます。
また、待機時には圧縮空気の供給を自動停止する機能(Air Saver機能)の搭載により、作業者の手間なく省エネに貢献。既存当社設備にこの機能を後付けすることもできます。
複雑なエンジン部品形状の計測技術
航空機分野では、さらなる軽量化とエネルギー効率の向上に向け、機体構造やエンジン設計そのものの高度化が重要な開発テーマとなっています。その代表例が、エンジンのブレードとローターディスクを一体化した「ブリスク」です。ブリスクは部品点数の削減、軽量化、空力性能向上に寄与しますが、複雑な三次元形状ゆえに製造精度の確保が難しく、精密な品質評価が不可欠とされています。
当社が取り扱うカール・ツァイス社の三次元座標測定機「PRISMO fortis Aero」は、航空宇宙産業向けに設計された高剛性構造と高精度スキャニング技術を備え、ブリスクをはじめとする複雑形状部品の詳細な輪郭・形状測定を短時間で実施可能です。接触式・非接触式センサを柔軟に組み合わせられるため、薄肉ブレードやエッジ部のような高難度領域に対しても、安定した精度での測定を実現します。
新たに生まれるニーズと当社の提供価値
絶えず変化していく社会環境やお客さまニーズに対応しカーボンニュートラルを実現するために、当社は多彩な計測技術・製品を通じ、社会の脱炭素への道のりを支援し続けます。
精密測定機器事業の戦略と目標
当社はカーボンニュートラル実現に向けた世界の動きを事業機会と捉え、精密測定機器事業の持続的な成長を実現するために、以下の戦略を実行していきます。
上記①・②・③の方針を踏まえ、精密測定機器事業の売上を2027年度までに450億円まで伸長させることを目標とします(2025年度実績:390億円)。
また、業界で唯一「計測技術」を持つ半導体製造装置メーカーとして、両技術の融合によるシナジーの発揮も目指します。
(リスクに対する戦略)
1.BCP・BCMS強化
気候変動による自然災害などのリスクの高まりに加え、経済安全保障などの観点からも、有事の事業継続ニーズが高まっています。そうした背景を受け、当社では事業継続計画(BCP)および事業継続マネジメントシステム(BCMS)の強化に取り組んでいます。
また、気候変動に伴う災害激甚化に備え、自社工場の操業停止、サプライヤーや協力会社の被災を想定し、以下の計画・マネジメントを実施しています。
自社工場の被災想定 :当社工場(八王子、土浦、飯能)の浸水リスクを自治体のハザードマップなどを基に評価し、浸水リスクが十分に小さいことを確認しています。
サプライヤー・協力会社:取引金額や代替不可能性など、当社事業への影響の大きさを考慮のうえ、自治体のハザードマップや世界資源研究所(WRI)「Aqueduct Floods」などの評価ツールを用いて浸水リスクを評価し、リスクが高いと判断したサプライヤーに対しては、対策の検討を順次進めています。
2.Scope3(カテゴリー11)に対する戦略
LCAを元にScope3 カテゴリ1~カテゴリ15を算出した結果、半導体製造装置のカテゴリ1とカテゴリ11のインパクトが最も大きく、全体の70%を超えており、削減取り組みの重要度が高いことが分かりました。
半導体製造工程では、当社製品自体の電力消費に加えて、クリーンルームの維持や温度制御、半導体の洗浄に必要な超純水の製造でもエネルギーが消費されます。
当社としても、製品のフットプリント(専有面積)を削減することにより、製品あたりで必要な空調のエネルギー削減や、半導体の切削・加工をより少量の水(超純水)で行える製品開発などに取り組んでいます。
当社の新製品開発における設計原則には、「コンパクト化」「ライフサイクルでの省エネ設計」「省資源設計」が含まれ、製品開発時に間接排出量に関するCO2排出も含めたLCAの評価と目標値の設定を行っています。
当社国内事業所を対象にScope1とScope2の分析を行っています。国内および海外子会社グループ企業のGHG排出量については、今後モニタリングを進めながら順次対応していく予定です。Scope3については、排出量が大きいと予測されるカテゴリ1*1とカテゴリ11*2の把握を進めてきました。2025年より他のカテゴリの把握を進めています。
*1:自社が購入した製品・サービスに伴うCO2排出量
*2:自社が販売した製品の使用に伴うCO2排出量
(気候変動のリスク及び機会)
シナリオ分析は将来予測の不確実性を考慮し、複数のシナリオを参照して検討を行いました。2℃未満シナリオの下での対応では不十分との国際的な世論が形成されつつあり、1.5℃シナリオを用いて分析を実施しています。一方、1.5 ℃シナリオへの対応では、物理的リスクへの意識が希薄化することから、現状の経済活動を継続した場合に気温が上昇する4℃シナリオでの事業環境を想定しました。
また、環境リスク・機会の再分析を行い、中期・長期で取り組むアクションを以下のように見直しました。
・気候変動に対する全体像の整理と取組方針
・新規事業領域模索
・気候変動対応を起点としたBCPの強化
・LCA・Scope3(顧客・サプライヤとの連携含む)
※参照したシナリオ
1.5℃シナリオ:(IEA) NZE 、 1.5℃ 特別報告書 (IPCC) SSP1-1.9
4℃シナリオ:(IEA) STEPS (IPCC) SSP2-4.5 、 SSP3‐7.0
(リスク機会と事業インパクトの分析)
| シナリオ | リスク機会 | イベント | 内容 | 財務インパクト | 発生時期 | |
| 1.5℃ | リスク | 規制 | カーボンプライシング | ・炭素税導入による原材料・資機材・エネルギー・輸送費用等の上昇 ・国境炭素税の導入により製品輸出への制約 | ▲▲ | 中期 |
| 市場 | EV化 | ・従来の事業・製品(内燃機関関連部品向け計測器)の需要縮小 | ▲▲▲ | 短期 | ||
| 脱炭素化プレミアム | ・脱炭素化に伴う材料価格の高騰、調達難、代替品確保に伴うコスト発生 ・非化石エネルギーの調達難や調達コストの上昇 | ▲▲ | 中期 | |||
| 評判 | 脱炭素化対応の遅れ | ・気候変動対応をはじめとするESG対応の遅れは資金調達や取引関係に悪影響 | ▲▲ | 中期 | ||
| 機会 | 市場 | EV化、電化・デジタル化 | ・EVの新たな素材・部品への計測需要が拡大・半導体利用が増加し、生産能力が拡張 | ▲▲▲ | 中期 | |
| 再生可能エネルギー市場拡大 | ・再生可能エネルギー市場拡大に伴う計測機器需要の拡大 | ▲ | 長期 | |||
| 資源効率エネルギー | 生産設備 | ・工場内の省エネ対策(設備やプロセス)や資源の再利用により生産性向上と顧客の脱炭素化要望に対応 | ▲ | 短期 | ||
| 製品サービス | 低炭素製品・ サービス | ・LCA観点による環境負荷の低減により市場での製品評価や優位性が向上 ・顧客の軽量化ニーズを実現捕捉(計測製品需要拡大) | ▲▲ | 短期 | ||
| 4℃ | リスク | 物理(急性) | 激甚化災害の発現 | ・リスク対策費用(BCP対応)の増加 ・被災による物的損害と復旧費用の発生 ・被災による操業停止(自社・サプライヤー要因) | ▲▲▲ | 中期 |
| 機会 | レジリエンス | 災害対応 | ・災害時における製品・サービスの安定供給により顧客生産体制の維持に貢献 | ▲▲ | 中期 |
凡例 財務インパクト:▲▲▲ 大、▲▲ 中、▲ 小 発現時期:短期2022~2024、中期2025~2029、長期2030~
(グループ企業(国内および海外子会社)のGHG排出量のモニタリング)
当社グループ企業のうち生産拠点におけるScope1とScope2のGHG排出量の調査を開始しました。
(Scope3の開示に向けた取り組み)
当社のほとんどの製品は、部品・部材を調達し、自社で製造・販売、お客さまの現場で稼働しています。そのため、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量を把握することが重要であると考えています。
2024年度より新たにScope3対応プロジェクトを発足し、カテゴリ1~カテゴリ15の把握を進めています。
(機会に対する戦略)
1.気候変動に関連する半導体製造装置事業の機会
世界各国がカーボンニュートラルを目指す過程では、あらゆる産業分野において、
・生産活動の効率化・省エネルギー化 (主にデジタル化による施策)
・脱炭素エネルギーへの転換 (主に電化による施策)
が追求されると予想されます。
需要急拡大に応える、高精度な半導体製造装置
これらに伴いデジタル・情報通信技術の適用範囲は広がり、社会全体で活用される電子機器・電子部品などの数量は急速に増加。構成要素である半導体デバイスの需要も持続的に増大し、当社が提供する半導体製造装置のニーズは今後も飛躍的に高まっていくことが見込まれます。
また、電子機器・電子部品などは、高機能化に伴い設計も複雑化し、製造工程に対する新たな課題解決ニーズも高まります。当社は、このようなニーズに対応した製品群を開発・提供しています。例えば、高精度の温度制御や加工を実現する装置は、AI/HPC向けロジック・メモリ需要やSAWフィルターやセンサの高度化に応え、高難易度化が進む製造工程をサポートします。
次世代パワー半導体対応製品
一方、デジタル化・電化が進むことにより、
・IoT機器・AIの普及に伴うデータセンターの拡充、データ量・計算量の拡大 と消費電力の増大
・電気自動車(EV)向け電気モータの利用拡大による損失電力の増大
といった課題も同時に発生するため、半導体自体の省エネルギー化も両輪で推進する必要があります。高いエネルギー効率を実現する次世代パワー半導体(GaN、SiCなど)の普及が期待されており、当社も関連する技術・製品開発を推進しています。
新たに生まれるニーズと当社の提供価値
カーボンニュートラルの実現に向けては、新たな課題が生まれるとともに、お客さまからのニーズも絶えず変化していきます。当社は検査装置・加工装置に及ぶ広範な製品群で変わりゆくニーズに総合的に対応し、新たな価値を提供し続けます。
| 予想される社会の変化 | 新たに生まれる課題 | 当社の提供価値(例) | |
| 1 | 半導体デバイスの生産量増加 | 検査時間の延伸 | プロービングマシンのスループット向上 |
| 半導体製造装置の増設 | 半導体製造装置の安定供給 | ||
| 2 | 半導体デバイス設計の複雑化 | 測定時の発熱量増加 | 高精度温度制御に対応したプロービングマシン |
| 加工精度の高度化 | 高精度な高剛性研削盤、アブレーションレーザダイシングマシン | ||
| 3 | 次世代パワー半導体の普及 | 難削材加工の需要増加 | 高精度な高剛性研削盤、エッジグラインダ、CMP装置 |
半導体製造装置事業の戦略と目標
気候変動関連の事業機会を的確に捉え、半導体製造装置事業を持続的に成長させるため、以下の戦略を実施します。
| ① 需要増加に見合う適切な設備投資 |
| 急速に増加する半導体デバイス需要に対応するため、半導体製造装置の生産体制を着実に強化します。2023年7月に飯能工場(埼玉県飯能市)が稼働を開始、2025年8月には名古屋工場(愛知県愛知郡)を竣工しました。2028年には、東京都八王子市での新工場建設に着工します。 |
| ② お客さま志向を徹底した営業活動 |
| 当社の強みは徹底したお客さま志向であり、製造・技術・サービス・営業が一体となって、日々お客さまの声に耳を傾けています。この取り組みにより、半導体製造装置の量的・質的なニーズをいち早く捉え、お客さまに満足いただける製品・サービスを探求することで、お客さまと当社が共に成長できる関係を目指します。 |
| ③ 業界団体および共同研究への参画 |
| 当社は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)の監事を務め、環境部会にて省エネルギー・省CO2の議論をリードしています。また、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)において、半導体気候関連コンソーシアムへ設立メンバーとして参画しています。さらに、次世代技術の開発にも積極的に取り組みます。産業部門・家庭部門の幅広い省エネに貢献するパワーエレクトロニクスの共同研究体であるつくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)の一員として、研究開発や人財育成の取り組みに参画。東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)との研究開発に参画、長岡パワーエレクトロニクス研究会にも参加しています。このような取り組みを通して、中長期的・シーズ視点での製品開発にも尽力し、技術的なブレイクスルーやそれに伴う業界変革を捉えます。 |
上記①・②・③の方針を踏まえ、半導体製造装置事業の売上を2027年度までに1,400億円まで伸長させることを目標とします(2025年度実績:1,279億円)。
また、業界で唯一「計測技術」を持つ半導体製造装置メーカーとして、両技術の融合にも取り組みます。半導体製造装置に計測機器をビルトインすることで、より高精度の検査・加工を可能とし、唯一無二の価値を提供します。
2.気候変動に関連する精密測定機器事業の機会
2050年のカーボンニュートラルを達成するためには、温室効果ガス排出量が大きい電力分野の脱炭素化だけでなく、非電力分野(民生・産業・運輸)においても、省エネルギー化や電化をはじめとする多種多様な取り組みが必要です。その中で重要な役割を果たす工業製品は、日々高精度化、高度化、複雑化しており、モノづくりを効率よく、安定して合理的に供給するには、形状や輪郭を管理し、長さや表面粗さを測定する精密測定機器事業が欠かせません。当社の計測技術は、電力・非電力分野にかかわらず、幅広い領域でカーボンニュートラル施策の根幹を担っています。
再生可能エネルギー分野の拡大に対応した、高機能精密測定機器事業
例えば再生可能エネルギーの主力電源化には、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどがあり、主力電源化するには複数の電源を組み合わせた安定的かつ効率的な電力供給の実現が求められます。太陽光以外の多くはエネルギーを取り出すために、大型で高精度、高効率なタービンやプロペラ、発電機などの回転体を必要とします。中でも洋上風力発電は、成長性や経済波及効果から注目度の高い電源で、その発電効率を左右する重要部品が、数メートル規模にもなる大型ベアリングやハウジング、プロペラなどです。真円度や円筒度、表面粗さ、内部の歪み・傾きの有無を高精度に測定できれば、発電効率の向上と信頼性確保に直結します。当社は、独自の高精度計測技術によってこれらの品質評価を実現し、風力発電の導入効果最大化に貢献。他の再生可能エネルギー分野でも、設備の長寿命化・発電効率向上に寄与する計測を実現しています。
蓄電池産業の拡大による高速高精度な充放電試験システム製品
蓄電池は、電気自動車や航空宇宙産業の動力源や、太陽光・風力などの再生可能エネルギーの出力変動調整に用いる定置用、5G通信基地局やデータセンターなどのバックアップ電源など、さまざまな用途で利用が拡大しています。短期的にはEV需要の停滞を受けて市場成長率は鈍化する見通しですが、PHEV/HEVの需要予測も上昇傾向にあり、着実に増加する成長市場であることには変わりありません。
当社はその二次電池の性能や信頼性を測定する「充放電試験システム」を開発・販売しています。当社の充放電試験システムは二次電池のエネルギー性能を正確に計測するために、高速制御、高精度を特長としています。
また、放電エネルギーを一次電源へ回生する機能に加え、チャネル間でエネルギーをシェアする電力変換機能を搭載。システム全体で、当社比最大30%の省エネルギーを実現しました。
充放電試験自体を受託する評価サービスも提供しており、電動車用バッテリーを中心とした二次電池の性能評価試験の需要拡大に対応するため、福島県と愛知県に二次電池評価センターを開設しています。
電気自動車・半導体製造装置における計測技術
非電力分野の脱炭素化においては、「電動化による脱炭素エネルギーへの転換」と「デジタル化による効率化」が大きな役割を果たします。
当社は三次元座標測定機やX線CT装置による計測技術を活用し、今後急速な市場拡大が見込まれる電気自動車の固有部品、駆動モータユニットやインバータ、バッテリーの高精度な計測を支援、新エネルギー車の普及に貢献します。
また、「デジタル化」を担う半導体デバイスメーカー、電子部品メーカー、半導体・電子部品製造装置メーカー、同検査装置メーカーの開発・生産活動に必要不可欠な精密測定機器を提供し、半導体デバイスの高度化や需要拡大を支えます。
温度変化に強い計測製品群
世界各国が2050年カーボンニュートラルに向け掲げる目標が達成されたとしても、世界の平均気温は0.5~1℃上昇する見通しで、気候変動対策が進展しなければ、4℃以上の平均気温上昇や極端な気象現象の発生確率が高まることが予想されます。
このようなリスクに対し、当社は測定環境の温度変化に強い計測製品群を提供しています。温度管理が困難な測定環境下では、従来の精度保証環境温度を上回る恒常的な気温上昇にも一定程度対応。工場内における計測・検査プロセスも柔軟に設計できるため、生産工程のより早い段階で計測・検査を行え、生産性向上にも貢献できます。
温度管理が可能な測定環境下であれば、保証環境温度の幅を広げ空調の設定温度を緩和することで、計測精度を保ちながら省エネ・コスト削減に貢献できます。単位時間当たりの温度変化にも強いため、高コストな精密空調ではなく一般空調環境下でも高精度な測定が可能です。保証環境温度の幅が広がると、人体への負荷は増加するため、当社の自動化技術を提案し解決していきます。
また、待機時には圧縮空気の供給を自動停止する機能(Air Saver機能)の搭載により、作業者の手間なく省エネに貢献。既存当社設備にこの機能を後付けすることもできます。
複雑なエンジン部品形状の計測技術
航空機分野では、さらなる軽量化とエネルギー効率の向上に向け、機体構造やエンジン設計そのものの高度化が重要な開発テーマとなっています。その代表例が、エンジンのブレードとローターディスクを一体化した「ブリスク」です。ブリスクは部品点数の削減、軽量化、空力性能向上に寄与しますが、複雑な三次元形状ゆえに製造精度の確保が難しく、精密な品質評価が不可欠とされています。
当社が取り扱うカール・ツァイス社の三次元座標測定機「PRISMO fortis Aero」は、航空宇宙産業向けに設計された高剛性構造と高精度スキャニング技術を備え、ブリスクをはじめとする複雑形状部品の詳細な輪郭・形状測定を短時間で実施可能です。接触式・非接触式センサを柔軟に組み合わせられるため、薄肉ブレードやエッジ部のような高難度領域に対しても、安定した精度での測定を実現します。
新たに生まれるニーズと当社の提供価値
絶えず変化していく社会環境やお客さまニーズに対応しカーボンニュートラルを実現するために、当社は多彩な計測技術・製品を通じ、社会の脱炭素への道のりを支援し続けます。
| 予想される社会の変化 | 新たに生まれる課題 | 当社の提供価値(例) | |
| 1 | 再生可能エネルギーの主力電源化 | 大型ベアリングの歪み・傾き | 高精度計測技術で品質評価 |
| 2 | 蓄電池の普及と増加 | 電池の性能や信頼性 | 充放電試験システムによる性能評価試験 |
| 3 | 電動化・デジタル化・自動化 | 高速制御、高精度、低消費電力、多機能化 | 精密測定機器による高精度な計測 |
| 4 | 地球温暖化による気温上昇 | 測定環境の温度変化の拡大 | 測定環境の温度変化に強い計測製品群 |
| 5 | 航空機の機体構造・エンジン設計の高度化 | 複雑な三次元形状ゆえに製造精度の確保が困難 | 高難度領域に対する安定した精度での測定 |
精密測定機器事業の戦略と目標
当社はカーボンニュートラル実現に向けた世界の動きを事業機会と捉え、精密測定機器事業の持続的な成長を実現するために、以下の戦略を実行していきます。
| ① 電動化・デジタル化に貢献できる拠点拡充・設備増強 |
| 必然性を増す地球温暖化対策に応え、社会の電動化・デジタル化に貢献していくために、精密測定機器事業の拠点の拡充および設備増強も視野に入れ、事業機会を逃さない投資を行っていきます。 |
| ② 製品のみならずソリューションを提供 |
| 当社の強みである精密測定技術を十全に活かすために、福島県石川郡や愛知県春日井市に設けた「二次電池評価センター」で電池評価受託サービスを行うなど、製品提供にとどまらないソリューション展開を実施。より幅広いお客さまのご要望にお応えし、持続可能な社会の実現に貢献します。 |
| ③ 社内外とのコラボレーションを推進 |
| 半導体製造装置事業が手掛ける機器に当事業の精密測定技術を組み込み、より高効率な半導体製造装置を供給していくことで、カーボンニュートラルに不可欠な要素である電動化・デジタル化を加速していきます。またモノづくりの基準となるISO、JIS規格委員会への参加、大学や研究機関との共同開発、航空宇宙産業や自動車メーカーからの二次電池性能評価試験受託など、社外と手を携えた電動化・デジタル化を目指す取り組みも拡大。脱炭素化への一助を担います。 |
上記①・②・③の方針を踏まえ、精密測定機器事業の売上を2027年度までに450億円まで伸長させることを目標とします(2025年度実績:390億円)。
また、業界で唯一「計測技術」を持つ半導体製造装置メーカーとして、両技術の融合によるシナジーの発揮も目指します。
(リスクに対する戦略)
1.BCP・BCMS強化
気候変動による自然災害などのリスクの高まりに加え、経済安全保障などの観点からも、有事の事業継続ニーズが高まっています。そうした背景を受け、当社では事業継続計画(BCP)および事業継続マネジメントシステム(BCMS)の強化に取り組んでいます。
また、気候変動に伴う災害激甚化に備え、自社工場の操業停止、サプライヤーや協力会社の被災を想定し、以下の計画・マネジメントを実施しています。
自社工場の被災想定 :当社工場(八王子、土浦、飯能)の浸水リスクを自治体のハザードマップなどを基に評価し、浸水リスクが十分に小さいことを確認しています。
サプライヤー・協力会社:取引金額や代替不可能性など、当社事業への影響の大きさを考慮のうえ、自治体のハザードマップや世界資源研究所(WRI)「Aqueduct Floods」などの評価ツールを用いて浸水リスクを評価し、リスクが高いと判断したサプライヤーに対しては、対策の検討を順次進めています。
2.Scope3(カテゴリー11)に対する戦略
LCAを元にScope3 カテゴリ1~カテゴリ15を算出した結果、半導体製造装置のカテゴリ1とカテゴリ11のインパクトが最も大きく、全体の70%を超えており、削減取り組みの重要度が高いことが分かりました。
半導体製造工程では、当社製品自体の電力消費に加えて、クリーンルームの維持や温度制御、半導体の洗浄に必要な超純水の製造でもエネルギーが消費されます。
当社としても、製品のフットプリント(専有面積)を削減することにより、製品あたりで必要な空調のエネルギー削減や、半導体の切削・加工をより少量の水(超純水)で行える製品開発などに取り組んでいます。
当社の新製品開発における設計原則には、「コンパクト化」「ライフサイクルでの省エネ設計」「省資源設計」が含まれ、製品開発時に間接排出量に関するCO2排出も含めたLCAの評価と目標値の設定を行っています。