有価証券報告書-第79期(2022/11/21-2023/11/20)

【提出】
2024/02/19 9:15
【資料】
PDFをみる
【項目】
149項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループでは、企業理念を創業以来、経営の根底にある不変の価値観を表した「暮らしをつくる」と定め、経営方針として「BRAND INNOVATION(ブランド革新)~家庭用品ブランドの深化と「食」と「暮らし」のソリューションブランドへの進化~」を掲げております。
その背景には、国内における人口・世帯数の減少や少子高齢化の進行、海外新興国における生活水準の向上、デジタル化の急速な進展など、人々の暮らしが変化・多様化していくなかで、従来の家庭用品メーカーとしてのブランドを継続するだけでは持続的な成長が難しくなりつつあることが挙げられます。
将来にわたりお客様に支持され、持続的な成長を実現するためには、こうした環境の変化に適応し、生活者の食や暮らしに関する不満や負担を、商品やサービスを通じて解決(ソリューション)していく必要があり、ZOJIRUSHIブランドの革新が不可欠であると考えております。
(2) 中期経営計画の進捗状況
当社グループは2022年11月21日より、暮らしの課題、社会の課題を解決しながら持続的に成長するソリューションブランドへ着実に移行「シフト」するため、新たな中期3ヵ年計画『SHIFT』をスタートしました。
『SHIFT』では、ドメイン・シフト「新規領域の拡大と既存領域の深化」、グローバル・シフト「グローバル市場での成長加速」、デジタル・シフト「デジタル化の推進」、サステナビリティ・シフト「持続可能企業への体質転換」の4つの重点課題を掲げ、具体的施策の実行に向けて取り組んでまいりました。
ドメイン・シフト「新規領域の拡大と既存領域の深化」では、新規領域である電子レンジ事業の拡大をはかるため、国内では少人数世帯のニーズに応える23Lタイプのオーブンレンジ「EVERINO(エブリノ)」をラインアップに追加し、海外では台湾市場に新規参入いたしました。既存領域においては、かまどの炎のゆらぎを再現した最高級モデルの圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」シリーズの商品力強化や、“せん”と“パッキン”がひとつになった「シームレスせん」を採用したステンレスボトルのラインアップ拡大に加え、営業/物流体制の再構築を行いました。また、ごはんレストラン「象印食堂」を東京にもオープンし、遠く離れて暮らす親の毎日を電気ポットを通じてそっと見守る安否確認サービス「みまもりほっとライン」をリニューアルするなど、新規事業の育成やCSV事業の拡大をはかりました。
グローバル・シフト「グローバル市場での成長加速」では、北米をはじめとするEC販売の更なる強化や中国の業務用市場開拓に向けた専用炊飯ジャーの販売開始、韓国での加湿器の販売拡大など、海外事業の持続的な成長に向けた取り組みを推進いたしました。
デジタル・シフト「デジタル化の推進」では、データ分析基盤の構築・全社への展開やITリテラシー向上に向けた社内教育制度の整備など、業務変革DXの推進に向けた基礎作りを行いました。
サステナビリティ・シフト「持続可能企業への体質転換」では、再生可能エネルギーへの切り替えを中心とするカーボンニュートラルの推進や、ステンレスボトルの個装箱形状変更による紙使用量の削減及び粉体塗装を採用した環境配慮型商品の開発など、地球環境問題への対応を進めて参りました。持続的な顧客基盤づくりとして、直販ECサイト「象印ダイレクト」や「ZOJIRUSHI オーナーサービス」の拡充をはかりました。また、自然災害だけでなくパンデミックや地政学リスクも踏まえた事業継続計画を再整備すると共に、コールセンターを東日本に設置しアフターサービス業務を東西2拠点体制にするなど、リスクへの対応を進めております。ダイバーシティ&インクルージョンとして、キャリア/女性採用の拡大や女性活躍推進などに取り組みました。
その結果、連結売上高は『SHIFT』で掲げた2023年目標83,500百万円に対し、83,494百万円とわずかに届きませんでしたが、連結営業利益は価格競争力の強化や、円安による輸入コストの増加に対する価格転嫁を進めた結果、5,000百万円(利益率6.0%)と目標の3,900百万円(利益率4.7%)を上回りました。
(3) 経営環境及び対処すべき課題
世界経済は、依然として下振れリスクが高い傾向にあります。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化やイスラエル・ハマス紛争、2024年に相次ぐ主要国・地域での選挙結果次第では、先行きの不確実性が高まるなど、地政学リスクの顕在化が挙げられます。また日本における円安の長期化や、中国での不動産市場の低迷が続くなど、今後も不透明な経済情勢が続くと推測されます。
このような経営環境のなか、経営方針である「BRAND INNOVATION(ブランド革新)」を2030年までの期間とし、引き続き「領域の水平的拡大」、「領域の垂直的拡大」、「経営基盤の強化」の三次元的拡大に取り組みます。また「事業を通じた社会課題解決」及び「経営基盤の強化」の領域で、ESGにおける4つの重要課題を特定しました。
① 持続可能な地球環境への貢献
・脱炭素社会の実現
・環境負荷や生物多様性への配慮
② 社会課題に対応する商品・サービスの提供
・商品の安全性と品質の追求
・環境配慮型商品の開発
・CSV事業の拡大
・知的財産の保護
・持続可能なサプライチェーンの実現
・社会貢献活動の推進
③ 価値創造にチャレンジする人材/職場づくり
・人権の尊重/ダイバーシティ&インクルージョンの推進
・労働安全衛生・健康経営の推進
・経営目標の達成に必要な人材の育成・獲得
④ ステークホルダーに信頼されるガバナンス体制の確立
・公正かつ透明性・実効性の高いガバナンス体制の構築
・株主・投資家との信頼関係の構築
・お客様満足度の向上
「BRAND INNOVATION(ブランド革新)」とともに、社会課題の解決に向けたESGの取り組みを推進することにより、社会的価値、経済的価値、従業員価値の向上をはかります。
中期3ヵ年計画『SHIFT』の概要(2023年11月期~2025年11月期)
『SHIFT』では、ドメイン・シフト「新規領域の拡大と既存領域の深化」、グローバル・シフト「グローバル市場での成長加速」、デジタル・シフト「デジタル化の推進」、サステナビリティ・シフト「持続可能企業への体質転換」の4つの重点課題に取り組みます。各重点課題に対する施策は以下の通りです。
1.ドメイン・シフト「新規領域の拡大と既存領域の深化」
・電子レンジ事業の育成・拡大
・調理家電の国内トップブランド確立
・新規事業/商品の創出・育成
・CSV事業の拡大

2.グローバル・シフト「グローバル市場での成長加速」
・海外事業の持続的な成長
・グローバル生産・調達体制の最適化

3.デジタル・シフト「デジタル化の推進」
・業務変革DXの推進
・スマート化の推進

4.サステナビリティ・シフト「持続可能企業への体質転換」
・地球環境問題への対応
・持続的な顧客基盤づくり
・新たなリスクへの対応
・人的資本の最大化
・資本政策・株主還元の充実

上記の重点課題に取り組み、各施策を確実に実行することで、2025年11月期の業績目標である、連結売上高90,000百万円、連結営業利益7,200百万円(利益率8%)、ROE7%の達成を目指します。