有価証券報告書-第63期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 14:27
【資料】
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【項目】
147項目
文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「創造と挑戦」を経営理念として掲げ、全従業員が変化に適応し、新たな価値を「創造」し続けるとともに、現状に満足することなく、更なる成長に「挑戦」し続けてまいります。
2050年には世界の人口が95億人を突破すると予測されており、今後、近未来に向かって、エネルギー、衣食住、交通手段、通信手段など人々の生活に密着した領域は、多様な価値観や様々な技術革新を伴いながら発展していきます。ますます広がりを見せる領域に、当社グループの得意とするエレクトロニクスソリューションは必要不可欠です。今後も自動車業界をはじめとした製造業や、ありとあらゆる産業の黒子となりお客様の期待に応えていくことで、世界中の人々の生活をより快適により豊かにすることこそ、当社グループにできる社会貢献だと考え、グループ一丸となって「創造と挑戦」を実践し、すべてのステークホルダーから選ばれる企業グループに成長していくことを目指してまいります。
(2) 経営戦略
当社グループは、主要領域であるエレクトロニクス業界やIT業界における事業環境の変革期のなかで、得意先のニーズやステークホルダーの期待に応え、当社グループの継続的な発展を維持していくため、2018年度を初年度とする「2018年度中期経営計画(2018年度~2020年度)」を掲げております。
2018年度中期経営計画(2018年度~2020年度)
■経営ビジョン
○ 先進エレクトロニクスのワンストップソリューション・グローバルサプライヤー
■注力する事業領域
○ 萩原エレクトロニクス株式会社はCASE関連領域
※CASE=Connectivity(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared&Service(シェアリング)、Electric(電動化)
○ 萩原テクノソリューションズ株式会社はIoT領域(特にファクトリーIoT領域)
※IoT=Internet of Things(モノのインターネット化)
■経営方針 ○ コア事業は自動車関連事業
○ 萩原エレクトロニクスは集中戦略、萩原テクノソリューションズはポートフォリオ戦略
○ 新規事業の拡大
○ ソフトウェア事業の拡大
○ 技術部門主導による事業会社間のリレーション強化とシナジー創出
○ 海外事業の拡大
○ グループ経営基盤の強化による中長期的企業価値の向上
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、2018年度中期経営計画(2018年度~2020年度)を達成するために、最終年度となる2021年3月期の重要経営指標を以下の通り定め、目標としております。
なお、目標値の達成状況等は、「3[経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](2)④」に記載しております。
指標2021年3月期 目標値
連結売上高1,300億円
連結営業利益43億円
ROE8.5%

(4) 経営環境
当社グループを取り巻く環境は、世界規模での業界の垣根を超えた新たなビジネスモデル創出の動きやIoT・AI(人工知能)の活用といった新しい技術の台頭など、環境変化が激しい状況となっております。現況では、新型コロナウイルス感染症の影響により、世界ならびに日本経済の先行きは非常に不透明でありますが、当社グループにおきましては、主要顧客を中心に次世代の自動車社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズは引き続き伸長していくものと想定され、デバイス事業、ソリューション事業ともに、これまで以上に付加価値やスピード感を伴った対応が求められる環境となっております。
なお、提出日現在、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が経営環境に大きな影響を及ぼしておりますが、詳細につきましては「2[事業等のリスク](3)」に記載しております。
(デバイス事業)
当社グループのデバイス事業は、トヨタグループを主体とした自動車関連企業を中心にルネサスエレクトロニクス株式会社製品を主体とした半導体や電子部品等の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウェアを中心とした受託開発事業を行っております。
当社グループの主要顧客の属する自動車業界は、「100年に一度の大変革の時代」に突入し、「コネクテッド」「自動化」「シェアリング」「電動化」などの技術革新が急速に進んでおり、その実現に向かって、自動車の電動化や電子化、サービスの情報化がより一層進み、市場が活性化していくことが予測される中、当社グループの取り扱う半導体や電子部品は必要不可欠な製品であり、今後も需要拡大とビジネス機会増大が期待されます。
このような環境の中で、当社グループの主要顧客である自動車関連企業におきましては、高機能、高品質、高信頼のシステムをいかに低コストに、効率的に開発、生産するかという課題を抱えております。当社グループは長年にわたる自動車関連企業とのビジネスの中で培った開発力、ノウハウを活かし、顧客の企画段階より参画し、より顧客のニーズに合ったシステム提案を行うとともに、その実現のため、開発サポートも行っております。
また、近年は車載組込ソフトウェアの重要性がますます高まる中、検証や開発支援をはじめとしたソフトウェア支援に対するニーズも強くなっており、当社グループにおける事業も拡大しております。そのようなビジネス機会の増大に対し、適切な人的投資やサービスの強化を図りながら、事業の更なる拡大を目指しております。
海外での事業展開におきましては、当社グループでは、従来から主要顧客の海外生産をサポートしておりますが、近年はビジネスの現地化が進み、エレクトロニクスの高度化や現地開発に伴う顧客の技術支援のニーズは一段と高まっております。そのような事業機会の変化に対して、日本で培ったナレッジと各拠点で得た有益な情報を活かして、その土地に合う確かな商品とサービスを展開するとともに、各拠点での開発や設計支援の間口を広げながら、事業の拡大を目指しております。
(ソリューション事業)
当社グループのソリューション事業は、顧客社内で使用されるIT機器の販売からITプラットフォーム基盤構築の提案に加え、FA(ファクトリーオートメーション)システムや特殊計測システムの設計・製造・販売及び顧客の製品に組み込まれる組込コンピュータをはじめとする産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。
近年、「第4次産業革命」とも呼ばれるIoTを活用した産業分野のデジタル化が急速に進んでおります。当社グループが得意とするセキュリティ分野やFA分野でもIoTを中心に市場が拡大し、当社グループの主要顧客においても、IoTをはじめ新技術や新製品を取り入れたITインフラ整備や工場内のデジタル化が進められており、ソリューション事業におきましては、今後も需要拡大とビジネス機会増大が期待されます。
IT分野では、製造業を中心に広い業種の顧客を持ち、情報システム部門や生産技術・開発部門を中心に、パソコン、サーバーやストレージをはじめとするIT機器の販売やアプリケーション開発やプラットフォーム開発などのSIサービスを提供しており、近年はネットワークサイバーセキュリティ対策、AIやRPA(Robotic Process Automation)を活用した業務オペレーションの自動化、エッジ、IoTシステムや生産管理システムなどのインフラ整備やシステム開発の需要が高まっております。製造現場の効率化などITインフラ構築に多くの実績を持つ当社グループは、中部地区トップクラスの契約数となる大手SⅠerやITベンダとのパートナー契約も活かし、多種多様に広がりを見せるITニーズに対して、豊富なアイテムと最新の技術トレンドから、最適なITソリューション提案を進めております。
組込分野では、工作機械、半導体製造装置、産業機械、物流搬送装置などの製造業を中心とした顧客の製品に組み込まれる制御コントローラや表示デバイスなどの情報機器や産業機器や、自社製造の産業用コンピュータを提供しております。今後は、新技術の台頭を背景に、半導体装置をはじめとする機器やシステムの刷新がよりいっそう進むものと見込まれ、好調な物流搬送装置の需要や半導体製造装置の5Gの立ち上がりも期待されます。長年にわたるFA業界への対応、自社ブランドによる産業用コンピュータの開発、生産の経験を活かし、長寿命、FA耐環境性能をもつ高信頼性能製品を国内生産による長期供給できることを強みに、安定したモノづくりを支援し、高度化が望まれる生産現場のニーズに対して付加価値を高める活動を行っております。
計測分野では、自動車関連企業の技術部門や研究開発部門へ、性能検査や機能評価をはじめとした計測機器、検査装置やシステムを納入しております。自動車業界のCASEへの取り組みを背景に性能・機能評価の需要が高まっており、今後は、機器やシステムの高性能化のニーズ拡大、レガシーシステムの刷新の需要も予想され、中部圏はもとより関東や関西での活動機会の増加が見込まれます。当社グループでは、電波計測設備、FA機器、モデルベース開発ツールを扱う商社機能と、特殊計測機器など内製システムを手掛けるメーカー機能を合わせ持ち、製品の機能検討、試作、量産など各段階の用途やニーズに応じた幅広い対応をしております。内製システムは、計測・制御モジュールのトップメーカーからアライアンスパートナーの認定を受け、システム設計やコード作成、他社製ソフトウェア・ハードウェアの統合、実装にいたるまで、顧客の個々のニーズに合わせたシステムを構築しており、自動車業界の高い品質基準を満たしながら成長市場での領域拡大を目指しております。
(5) 会社の優先的に対処すべき課題
当社グループの優先的に対処すべき課題は、「2018年度中期経営計画(2018年度~2020年度)」の経営ビジョンを実現し、更なる企業価値の向上を果たすため経営方針に沿った活動を行っていくことと認識し、2018年4月から移行した持株会社体制のもと、各事業会社と持株会社それぞれがスピード感を持って施策実現や課題解決を進めております。
(デバイス事業)
■集中戦略の推進
次世代自動車動向、半導体や電子部品の将来動向を見極めたうえで、競争優位な得意先、仕入先、セット、商材を選択し、そこに経営リソースを集中する戦略をとりながら、CASEを中心としたクルマ社会の大変革期を支え、業績拡大を目指していくとともに、常に新しい領域を追求し事業拡大を進めてまいります。
■新規商材や新規事業の拡大
変化する事業環境と顧客ニーズを的確にとらえ、新規商材、新規事業の拡大に継続的に取り組んでまいります。車載ビジネスで培ってきた画像処理技術など応用技術開発の強みを活かした建機分野など他業界への事業展開や、自動運転システムを開発する企業向けに走行映像データサービスを開始するなど、新たな視点で事業領域の拡大を図っていくとともに、2018年8月に設立した株式会社クロスベースにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に対するAIやブロックチェーン技術の活用の取り組みなど、注目が高まる分野での活動も進めてまいります。
■ソフトウェア事業の拡大
今後さらに伸長が期待されるソフトウェア分野における、特にCASE関連領域での顧客ニーズの拡大に対しては、2018年4月に設立いたしました萩原北都テクノ株式会社の車載組込ソフトウェアの検証業務や開発サポート力を活かし、更なる体制強化とサービス領域の拡大に取り組み、旺盛な需要に応えてまいります。
■海外事業の拡大
海外事業におきましては、2019年11月にはインド拠点を現地法人化し、日本を起点に北米・欧州・アジアの世界4極でのネットワークを構築し、活動を展開しております。従来通り、当社グループのお客様の海外拠点対応を中心とした活動を基本とし、エレクトロニクスの高度化や現地開発の増加に伴う技術支援の強化や、海外拠点独自の得意先、仕入先の拡大などサプライヤーの裾野を広げる活動にも注力してまいります。
(ソリューション事業)
■ポートフォリオ戦略の推進
IT分野、組込分野、計測分野の各事業に投入する経営リソースを、外部環境に合わせて柔軟に組み替えながら、最適なバランスで事業を拡大させていくとともに、当社グループの強みである3事業が持つ豊富なITアセットを活かし、3事業を融合させることにより市場を牽引するIoT事業の拡大に取り組んでまいります。
また、従来から組込分野を中心に事業拡大を進めてきました関東、関西においても、IT分野、計測分野への積極的なリソース投入と体制整備を進めながら事業領域を拡大してまいります。
■新規商材や新規事業の拡大
変化する事業環境と顧客ニーズを的確にとらえ、新規商材、新規パートナーの拡大に引き続き取り組んでいくとともに、少子高齢化、働き方改革など社会の変化に伴う顧客が必要されるIT環境の実現を支え、事業を通じた社会貢献ができるよう、IoT、AI、機械学習、5G、DXなど今後の市場を牽引する先端技術のトレンドを探求してまいります。
■海外事業への取組み推進
更なる事業拡大に向かっては、国内の生産現場の環境構築や生産の効率化など多岐にわたる支援で培ってきたIT、IoT領域でのノウハウとパートナーとの連携も活かして、主要顧客をはじめとする日系企業の海外拠点への営業活動も視野に入れ活動を進めてまいります。
(グループ共通)
■事業会社間のリレーション強化とシナジー創出
技術革新が進む事業環境において、戦略技術の重要度はますます高まっております。当社グループでは、技術関連の運営において3社(萩原電気ホールディングス株式会社・萩原エレクトロニクス株式会社・萩原テクノソリューションズ株式会社)の技術部門および企画部門の有識者で構成する戦略技術コミッティにて活動を活性化しております。技術情報の共有や相互活用によるビジネスの発掘や協業機会の創出など、技術部門主導による事業会社間のリレーションシップの強化と技術連携の視点でのシナジー創出を図ってまいります。
■コンプライアンス・ガバナンスの強化
コンプライアンス遵守の徹底を最優先事項として継続するとともに、ガバナンス経営を強化し、内部統制・情報セキュリティ確保の徹底に取り組んでまいります。また、テレワークをはじめ従業員が働く環境やサプライチェーンマネジメントの整備と強化や、災害リスクなど有事の際にも事業活動が継続できる盤石な体制構築を進め、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。