有価証券報告書-第64期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 14:57
【資料】
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【項目】
134項目
文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1) 経営環境
当社グループを取り巻く環境は、世界規模での業界の垣根を超えた新たなビジネスモデル創出の動きやIoT・AI(人工知能)の活用といった新しい技術の台頭など、環境変化が激しい状況となっております。現況では、新型コロナウイルス感染症の影響により、世界ならびに日本経済の先行きは非常に不透明でありますが、当社グループにおきましては、主要顧客を中心に次世代のモビリティ社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズは引き続き伸長していくものと想定され、デバイス事業、ソリューション事業ともに、これまで以上に付加価値やスピード感を伴った対応が求められる環境となっております。
なお、提出日現在、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が経営環境に大きな影響を及ぼしておりますが、詳細につきましては「2 事業等のリスク (3)」に記載しております。
(デバイス事業)
当社グループのデバイス事業は、トヨタグループを主体とした自動車関連企業を中心にルネサスエレクトロニクス株式会社製品を主体とした半導体や電子部品等の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウェアを中心とした受託開発事業を行っております。
当社グループの主要顧客の属する自動車業界は、「100年に一度の大変革の時代」に突入し、「コネクテッド」「自動化」「シェアリング」「電動化」などの技術革新が急速に進んでおり、その実現に向かって、自動車の電動化や電子化、サービスの情報化がより一層進み、市場が活性化していくことが予測される中、当社グループの取り扱う半導体や電子部品は必要不可欠な製品であり、今後も需要拡大とビジネス機会増大が期待されます。
このような環境の中で、当社グループの主要顧客である自動車関連企業におきましては、高機能、高品質、高信頼のシステムをいかに低コストに、効率的に開発、生産するかという課題を抱えております。当社グループは長年にわたる自動車関連企業とのビジネスの中で培った開発力、ノウハウを活かし、顧客の企画段階より参画し、より顧客のニーズに合ったシステム提案を行うとともに、その実現のため、開発サポートも行っております。
また、近年は車載組込ソフトウェアの重要性がますます高まる中、検証や開発支援をはじめとしたソフトウェア支援に対するニーズも強くなっており、当社グループにおける事業も拡大しております。そのようなビジネス機会の増大に対し、適切な人的投資やサービスの強化を図りながら、事業の更なる拡大を目指しております。
海外での事業展開におきましては、当社グループでは、従来から主要顧客の海外生産をサポートしておりますが、近年はビジネスの現地化が進み、エレクトロニクスの高度化や現地開発に伴う顧客の技術支援のニーズは一段と高まっております。そのような事業機会の変化に対して、日本で培ったナレッジと各拠点で得た有益な情報を活かして、その土地に合う確かな商品とサービスを展開するとともに、各拠点での開発や設計支援の間口を広げながら、事業の拡大を目指しております。
(ソリューション事業)
当社グループのソリューション事業は、顧客社内で使用されるIT機器の販売からITプラットフォーム基盤構築の提案に加え、FA(ファクトリーオートメーション)システムや特殊計測システムの設計・製造・販売及び顧客の製品に組み込まれる組込コンピュータをはじめとする産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。
近年、「第4次産業革命」とも呼ばれるIoT、AI、ビッグデータを活用した産業分野のデジタル化が急速に進むなか、当社グループが得意とするセキュリティ分野やFA分野でもそれらのIT技術を中心に市場が拡大しております。当社グループの主要顧客においても、IoTをはじめ最新技術や新製品を取り入れたITインフラ整備や工場内のデジタル化が進められ、さらにはIT技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスモデル変革やイノベーション創出への期待が高まり、ソリューション事業におきましては、今後も需要拡大とビジネス機会増大が期待されます。
IT分野では、製造業を中心に広い業種の顧客を持ち、情報システム部門や生産技術・開発部門を中心に、パソコン、サーバーやストレージをはじめとするIT機器の販売やアプリケーション開発やプラットフォーム開発などのSIサービスを提供しており、近年はネットワークサイバーセキュリティ対策、AIやRPA(Robotic Process Automation)を活用した業務オペレーションの自動化、エッジ、IoTシステムや生産管理システムなどのインフラ整備やシステム開発の需要が高まっております。製造現場の効率化などITインフラ構築に多くの実績を持つ当社グループは、中部地区トップクラスの契約数となる大手SⅠerやITベンダとのパートナー契約も活かし、多種多様に広がりを見せるITニーズに対して、豊富なアイテムと最新の技術トレンドから、最適なITソリューション提案を進めております。
組込分野では、工作機械、半導体製造装置、産業機械、物流搬送装置などの製造業を中心とした顧客の製品に組み込まれる制御コントローラや表示デバイスなどの情報機器や産業機器や、自社製造の産業用コンピュータを提供しております。今後は、新技術の台頭を背景に、半導体装置をはじめとする機器やシステムの刷新がよりいっそう進むものと見込まれ、好調な物流搬送装置の需要や半導体製造装置の5Gの立ち上がりも期待されます。長年にわたるFA業界への対応、自社ブランドによる産業用コンピュータの開発、生産の経験を活かし、長寿命、FA耐環境性能をもつ高信頼性能製品を国内生産による長期供給できることを強みに、安定したモノづくりを支援し、高度化が望まれる生産現場のニーズに対して付加価値を高める活動を行っております。
計測分野では、自動車関連企業の技術部門や研究開発部門へ、性能検査や機能評価をはじめとした計測機器、検査装置やシステムを納入しております。自動車業界のCASEへの取り組みを背景に性能・機能評価の需要が高まっており、今後は、機器やシステムの高性能化のニーズ拡大、レガシーシステムの刷新の需要も予想され、中部圏はもとより関東や関西での活動機会の増加が見込まれます。当社グループでは、電波計測設備、FA機器、モデルベース開発ツールを扱う商社機能と、特殊計測機器など内製システムを手掛けるメーカー機能を合わせ持ち、製品の機能検討、試作、量産など各段階の用途やニーズに応じた幅広い対応をしております。内製システムは、計測・制御モジュールのトップメーカーからアライアンスパートナーの認定を受け、システム設計やコード作成、他社製ソフトウェア・ハードウェアの統合、実装にいたるまで、顧客の個々のニーズに合わせたシステムを構築しており、自動車業界の高い品質基準を満たしながら成長市場での領域拡大を目指しております。
(2) 経営の基本方針
当社グループは、「創造と挑戦」を経営理念として掲げ、全従業員が変化に適応し、新たな価値を「創造」し続けるとともに、現状に満足することなく、更なる成長に「挑戦」し続けてまいります。
2050年には世界の人口が95億人を突破すると予測されており、今後、近未来に向かって、エネルギー、衣食住、交通手段、通信手段など人々の生活に密着した領域は、多様な価値観や様々な技術革新を伴いながら発展していきます。ますます広がりを見せる領域に、当社グループの得意とするエレクトロニクスソリューションは必要不可欠です。今後も自動車業界をはじめとした製造業や、ありとあらゆる産業の黒子となりお客様の期待に応えていくことで、世界中の人々の生活をより快適により豊かにすることこそ、当社グループにできる社会貢献だと考え、グループ一丸となって「創造と挑戦」を実践し、すべてのステークホルダーから選ばれる企業グループに成長していくことを目指してまいります。
(3) 前中期経営計画の振り返り
2019年3月期から2021年3月期までの3年間を対象とした前中期経営計画の振り返りは次のとおりです。
① 定量目標の振り返り
2018年4月以降中期経営計画の着実な実行と、当社グループ顧客の堅調な生産や投資を背景に、最終年度である2021年3月期の目標達成に向け、2020年3月期までは着実に実績を積み上げることができましたが、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、お客様の生産が想定を下回るとともに、設備投資、情報化投資においても慎重な動きとなり、各指標におきまして目標水準を下回る結果となりました。
(単位:百万円)
2019年3月期2020年3月期2021年3月期
実績値実績値目標値実績値
連結売上高119,021128,206130,000127,830
連結営業利益4,3194,1734,3003,468
ROE9.3%8.4%8.5%6.8%

② 前中期経営計画の成果
a.新規事業の拡大
デバイス事業、ソリューション事業ともに、当社グループの強みを活かした新規事業の拡大に取り組んでまいりました。
(デバイス事業)
当社グループが車載ビジネスにおいて培った画像処理AI技術などを活かし、建設機械、産業用車両の「安心・安全」の実現に貢献するソリューションを開発いたしました。また、自動運転開発の評価に必要となる高品質な走行テスト・検証データ提供ビジネスも着実に進捗しました。
(ソリューション事業)
AI関連企業との資本・業務提携を行い、当社グループの強みであるFA領域のシステムおよびプラットフォームビジネスを一層進化させ、IoTデータの取得からAI・機械学習の実施、さらに運用までのデータ活用領域におけるワンストップサービスの提供に向けた取り組みを進めました。
b.ソフトウェア事業の拡大
(デバイス事業)
近年一層重要性の高まっております車載ソフトウェア事業への対応として、2018年4月に萩原北都テクノ株式会社を設立いたしました。萩原エレクトロニクス株式会社内のソフトウェア部門と合わせ、体制強化とサービス領域の拡大を進めることによって、AUTOSAR関連、PoC受託関連、モデルベース開発等のビジネス拡大に対応してまいりました。
(ソリューション事業)
当社グループにとって新たな領域であるERP領域への取り組みを開始し、基幹システム構築を受注いたしました。今後も、実績の横展開を進め、ビジネス領域の拡大に取り組んでまいります。
c.海外事業の拡大
(デバイス事業)
2019年11月にインド現地法人の営業を開始し、日本を起点とした北米・欧州・アジアの世界4極でのネットワークを強化しております。従来通り、当社グループのお客様の海外拠点対応を中心とした活動を重視したうえで、エレクトロニクスの高度化や現地開発の増加に伴う技術支援の強化や、海外拠点独自の得意先、仕入先の拡大などサプライヤーの裾野を広げる活動も着実に進めてまいりました。
(ソリューション事業)
新たに中国(上海)に事業会社を設立し、2020年9月に営業を開始いたしました。今後はパートナー連携による中華圏の深耕を図ってまいります。
d.技術部門主導による事業会社間のリレーションシップ強化とシナジー創出
技術革新が進む事業環境において、戦略技術の重要度はますます高まっております。当社グループでは、技術関連の運営において3社(萩原電気ホールディングス株式会社・萩原エレクトロニクス株式会社・萩原テクノソリューションズ株式会社)の技術部門および企画部門の有識者で構成する戦略技術コミッティにて技術情報の共有や相互活用によるビジネスの発掘や協業機会の創出に積極的に取り組みました。
(4) 中期経営計画
当社グループは、今般2022年3月期を初年度とする新中期経営計画「Make New Value 2023」を策定いたしました。
本中期経営計画のもと、事業環境の変化に臨機応変に対応し、新たな価値を創造し提供できる企業グループへの変革を加速させ、お客様やパートナー様から選ばれる存在を目指すとともに、社員一人ひとりが自らの価値を高めて、個性ある輝く存在となることを目指してまいります。
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①経営ビジョン
新中期経営計画において経営ビジョンを「先進エレクトロニクスで未来を創造するソリューションデザインカンパニー」としております。
当社グループは本ビジョンのもと「モビリティ社会」の未来と「製造業のものづくり」の未来に対して、デジタルトランスフォーメーションで新しい価値をデザインし、持続可能な社会に貢献し、ステークホルダーから選ばれる企業グループを目指してまいります。
②経営方針と重点戦略
当社グループは経営ビジョンを実現するために以下の経営方針に基づいた戦略を展開してまいります。今後は持続的成長に不可欠なESGへの取り組みをよりいっそう重視するとともに、SDGsで示されている社会課題や環境課題の解決に積極的に取り組むことによって、持続可能な社会の実現に貢献し、継続的な企業価値の向上を目指すべく、コアとなる4つの方針を通じて、取り組みの推進を図ってまいります。
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Ⅰ.「コア事業の拡大」により強固で持続的な成長を目指す
当社グループが持続的に成長するために、デバイス事業、ソリューション事業それぞれにおいて長年の取り組みの中で築き上げてきたコア事業を、強みを活かし着実に拡大してまいります。
Ⅰ-1(デバイス事業)
当社グループの主要顧客の属する自動車業界は、電動化、自動化、コネクテッドなど技術革新が急激に進んでおります。自動車の高度化におけるキーデバイスである車載SoCとともに、より重要性の高まる車載ソフトウェアに対して、適切な人的投資やサービスの強化を図りながら、ビジネスの拡大を目指してまいります。
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Ⅰ-2(ソリューション事業)
近年、日本の製造業は労働人口の減少に伴う人材不足や新型コロナウイルス感染症の拡大などの新たな環境変化への対応を求められており、あらゆる構造改革のドライバーとしてDXの導入が注目されております。
当社グループは、IT領域、組込領域、計測領域においてそれぞれ製造業向けのソリューションに強みをもっております。それぞれの強みを融合させることにより、データを活用したDXファクトリー統合サービス市場での新たな価値提供を図り、「ものづくりを支えるエンジニアリングパートナー」を目指してまいります。
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I-3(共通)
当社グループは従来から進めてきましたグローバルサプライヤーとしての取り組みをさらに進化させ、グローバルビジネスの拡大を目指してまいります。
成長著しいインド、中国市場に対してはローカル企業の発展にも貢献できるよう取り組みを進め、事業規模の拡大を見込む先進国のビジネスにおいてはサプライチェーンや開発サポート体制を日本も含めたグローバルで最適化すべく効率化を推進し、お客様の海外現地事業拡大やローカル企業の発展への貢献とグローバルでの価値提供を目指してまいります。
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Ⅱ.「新高付加価値事業の創出」で収益性向上を図る
近年、デジタル技術を駆使する新興企業が急速に成長し、従来の産業構造を根底からくつがえす破壊的なイノベーションが起こっております。また、DXの加速により業種や系列の垣根を超えた、新たな価値提供型のビジネスチャンスが生じております。
当社グループにおきましては、コア事業の強みを活かすとともに、従来の事業領域にとらわれることのないイノベーション活動を推進し、新たな高付加価値事業を創出し収益性の向上を目指してまいります。
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Ⅲ.ヒトと組織とシステムの高度化によって「事業基盤強化」を目指す
コア事業の拡大と新高付加価値事業の創出といった成長戦略を実現するためには、それを支えるための事業基盤を強化することが不可欠です。
全社プロジェクト活動によるDX推進、プロフェッショナル人材育成や従業員エンゲージメント向上への取り組みを進めてまいります。
Ⅳ.「企業価値の向上」によりステークホルダーから信頼され選ばれる企業グループを目指す
当社グループが持続的に成長するためには、ステークホルダーに価値を提供し、企業価値を継続的に高めることによって、信頼され選ばれる企業グループであることが不可欠です。
ESGへの取り組みを重視し、経営戦略を通してSDGsで示されているゴールの達成に貢献していくとともに、資本政策・財務戦略の強化、ステークホルダーエンゲージメントの充実への取り組みを進めてまいります。
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③2023年度(2024年3月期)定量計画
当社グループでは、新中期経営計画「Make New Value 2023」を達成するために、最終年度となる2024年3月期の重要経営指標を以下の通り定め、目標としております。
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