有価証券報告書-第80期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 9:56
【資料】
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【項目】
135項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(経営環境)
当社グループは、これまで石油製品販売等の石油関連事業を中心として、不動産等の事業にも取り組み、国内の石油製品需要が減少する中で着実に収益を重ねてまいりました。石油関連事業では、直営SSの運営強化や販売店SSの経営支援、メーカーや電力会社等に対するエネルギーの安定供給及び顧客ニーズに合わせた高付加価値サービスの提供に取組んでおります。不動産事業では、社宅・SS跡地の不動産有効活用等を行ってきました。また、近年では再生可能エネルギー関連事業や、発電設備のコンサルティング営業や発電所運営、バイオマス発電燃料の販売等に注力しています。
しかしながら、当社グループを取り巻く環境は、国内の石油製品需要減退に加え、業界再編の進展、国内人口の減少や市場構造の変化など、日々大きく変化しています。新型コロナウイルス感染症からの社会経済活動の正常化が進みながらも、燃料油等の消費低迷や為替の変動、地政学リスクの高まりに伴う資源価格高騰等の影響が残っており、引き続き財政状態及び経営成績に悪影響を与えることが想定されます。当社グループは石油関連事業の付加価値を向上させるとともに、再生可能エネルギー関連事業等の新規分野を今後さらに拡大し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、事業の選択と集中により事業効率を向上させるとともに、サステナビリティを意識し、脱炭素化、人的資本重視・多様化への取組みを強化してまいります。
このような環境のなか、当社グループでは、企業理念を最上位とし、経営戦略としての長期ビジョン及び中期経営計画を体系化し、企業価値の向上に取組んでまいります。
(企業理念)
私たちは、エネルギーが持つ“ものを動かす力”を信じて、暮らしや社会の“つながり”を支えてきました。時代の変化に応じてカタチを変え、新たな価値を創り出す存在へ。関わるすべての人の心に寄り添い、ともに笑顔になる未来をめざします。
(対処すべき課題)
当社グループは、長期ビジョン「nissin Vision 2030」及び中期経営計画を策定しております。長期ビジョン「nissin Vision 2030」では、エネルギー企業としての強固な地位の確立をビジョンに掲げ、経営方針として事業構造改革の次なるステージ移行や石油関連事業の収益依存からの脱却、グローバル展開強化等を定めております。
そのフェーズⅡである、2025年3月期からの3ヵ年を実施期間とする中期経営計画では、①企業価値向上経営の進展、②サステナビリティ経営の推進、の2点を基本戦略としております。
中期経営計画の基本戦略の詳細は次のとおりです。
① 企業価値向上経営の進展
新規ビジネスの拡大、基盤事業収益の維持と周辺事業の取込み、コスト構造の見直しにより当社の稼ぐ力をさらに高め、エネルギー企業としてステークホルダーに持続的価値を提供していくとともに、資本構造の改善を進めることによって企業価値を向上させます。
重点目標及び具体的戦略は以下のとおりです。
ア.再生可能エネルギー関連事業の成長
再生可能エネルギー関連事業の拡大を推進し、バイオマス燃料販売をはじめとする新規ビジネスを主要ビジネスへと昇華させてまいります。太陽光発電や産業用商材開発と、再生可能エネルギーを中心とした研究開発に注力してまいります。
イ.コア事業の強化
石油関連事業において、産業用エネルギーとルブリカンツ、LPガスや石油由来の製品などこれまで当社がメイン商材として取り扱ってきた商品・サービスについては、今後も当社の使命として、お客様にとっての価値をより高めながら提供してまいります。また安定ビジネスである不動産事業についても、物件ポートフォリオを適宜見直し、機動的に入替えを行うことで事業全体の価値向上を図ります。
ウ.モビリティ事業の進化
SSを自動車向けエネルギー供給拠点に加えて、トータルカーケアを行うカーメンテセンター設置のほか、地域と協力してシェアサイクル事業を拡大させ、自動車だけでなく他の移動手段も含めたビジネスを展開することによりモビリティ事業へと進化させ、新たな事業として確立してまいります。
② サステナビリティ経営の推進
社会と当社の双方の面からサステナビリティを意識した事業や経営を推進し、脱炭素化、人的資本重視・多様化への取組みを強化してまいります。
(戦略を支える持続可能な経営体制)
① コーポレート・ガバナンス
当社グループは、経営の効率化及び健全化を確保するため、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要課題であると認識しております。また、株主の皆様や取引先、地域住民、従業員等のステークホルダーから信頼される経営をすることが、企業価値を最大化する必須条件と考え、これらの取組みにより、近年の社会的な要請の高まりに応え、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を図ってまいります。
② サステナビリティ
当社グループは、サステナビリティ方針のもと、マテリアリティを特定し、「持続可能なエネルギーの提供」、「地球環境への責任」、「コミュニティとの繋がりの深化」、「信頼されるガバナンス・職場環境」の4つに分類しております。そして、これらのマテリアリティに沿って定めた具体的な取組みを推進してまいります。
③ 気候変動に関連した情報開示
当社グループは、エネルギーを取り扱う企業の責務として、気候変動が当社グループの事業活動に与える影響の分析をおこない、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示推奨項目であるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4項目に区分して開示いたします。
④ 人材育成・多様化への対応
当社グループは、年齢性別を問わず、従業員一人ひとりの適性・成長に鑑みた教育機会の提供、公的資格取得制度の整備等を通じて、従業員が自主的に能力開発を進めることのできる体制を強化しております。
また、多様な人材が多様な働き方を選択できるよう、2024年4月より複線型コース制度を採用した人事制度を開始しました。今後も男性女性区別のない登用を推進するとともに、女性管理職比率をはじめ、他の指標についても当社の実情や社会的な要請を踏まえた目標を設定していく方針です。
以上の課題に取り組み、企業理念である「関わるすべての人の心に寄り添い、ともに笑顔になる未来」を目指し、鋭意努力してまいる所存です。