有価証券報告書-第36期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 9:55
【資料】
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【項目】
146項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、経営理念を「我々は信用を第一とし、情報の具現化によって、相互の利益を追求する」と定め、自らの意思で情報を具体的なビジネスへと形にし、今までにないマーケットを創出することを目指しています。
当社グループが運営するBESS事業においては、『「住む」より「楽しむ」』をブランドスローガンに、ログハウスなど自然材をふんだんに使った個性的な木の家の提供を通じて、「ユーザー・ハピネス」の実現を目指します。家がモノとして完成した際の満足=カスタマー・サティスファクションよりも、ユーザーが暮らしてからの満足=“楽しい暮らし”を大切にし、日本人の暮らし文化の「明日」を造っていきます。
(2)経営環境
わが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により景況感が急速に悪化し、感染症の収束時期の見通しや、経済回復などへの先行きは依然として不透明な状況にあります。
住宅市場においては、持家、貸家及び分譲住宅が減少したため、2020年4月~2021年3月の新設住宅着工数が前年同期比8.1%減、うち新設戸建持家木造住宅着工数は同6.1%減となり、今後も弱含みで推移していくと考えられます。
一方で、近年の消費者のマインドにおいて、「コト消費」といった言葉に代表されるように、感性や体験を重視する「感性市場」は拡大傾向にあると捉えています。また、コロナ禍が人々の価値観の変容を加速させ、さらにライフスタイルの多様化が進んでいくと思われます。
当社グループは、BESS事業において『「住む」より「楽しむ」』というスローガンの下、心豊かな暮らしを実現する自然派個性住宅を一貫して提供し続けており、これまで築き上げたBESSブランドで「感性市場」に働きかけることで、住宅シェアの拡大を目指してまいります。
(3)経営戦略等
当社は、当期より新たな中期3ヵ年計画をスタートさせました。「世の中の常識では曲がった道に見えても、当社が向かう本質価値への真直ぐの道ならば迷わず進むことが、暮らしから日本を豊かにする『BESSの道』である」という思いを込めて、「曲がり真直ぐ、BESSの道」というスローガンを掲げ、BESSのブランドミッションである「ユーザー・ハピネス」を拡散させていくものであります。経営数値目標としては最終年度の2023年3月期に連結売上高240億円、営業利益率8%の達成を目指しておりましたが、コロナ禍の影響が長期化するなかで、当初の目標値を見直さざるを得ず、連結売上高200億円、連結営業利益率5%にそれぞれ修正したうえで、引き続き以下4点を重点施策として取組んでまいります。
①「LOGWAY戦略」のベストサイクル追求
LOGWAYのクラブ制度やコーチャー制度など、BESSオリジナルの施策によりBESSファンづくりを推進し、BESSの暮らしの実現化に向けてサポートしていきます。
②「梺(ふもと)ぐらし」の本格化 ~地方を真の主役に
コロナ禍で加速する人々の価値観の変容と生活様式の多様化を追風にしながら、これまで直販部門において実績を積み重ねてきた梺ぐらし用地の開発・供給を、さらに全国展開させていきます。
③「ブランドパートナー型FC制度」の確立
ブランド価値を共有し、BESSファンづくりを共に推進していくパートナーとして、個々の拠点成長を目指します。また、BP社が承継した拠点においても、本部による経営指導強化を通じて全拠点の収益改善及び経営自立化を促進していきます。
④ 長寿企業を目指す「収益構造改革」
粗利益率改善(2020年3月期から6pt以上)、売上の回転率向上及び平準化などの課題に取組みながら体質改善を図り、外部環境変化等への耐性を高め、ブランド企業の責務としてしっかりユーザーをサポートしてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するために客観的な指標等
当社グループでは、新中期3ヵ年計画における最終年度の2023年度に連結売上高200億円、連結営業利益率5%の達成を目標に掲げているほか、成長性、収益性(営業効率)の観点から、売上高の先行指標としてBESS LOGWAY数、全国LOGWAYにおける新規来場件数及びLOGWAYクラブ入会者数、契約(受注)高及び件数、また、資本効率及び株主価値創造の尺度としてROE(自己資本当期純利益率)、加えてDOE(純資産配当率)を重要な経営指標と認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
① 中期経営計画における事業戦略
イ 「LOGWAY戦略のベストサイクル追求」
「LOGWAY戦略」を更に加速させ、BESSファンと共に、「ユーザー・ハピネス」を拡散させていきます。「LOGWAY戦略」成功の決め手は、LOGWAYコーチャー(BESSの暮らしの伝道師、すでにBESSでの暮らしを楽しんでいる先輩ユーザー)の活動とLOGWAYクラブ会員(会費制BESSファンクラブ、建設時期は未定でも、いつかはBESSの家に暮らす選択をすると意思表明された方)の会員数です。
LOGWAYクラブ会員数については、コロナ禍でLOGWAYへの新規来場者数が減少しているにもかかわらず、当連結会計年度末における未契約のクラブ入会者数が943組(前年同期比55.6%増)と順調に増加しております。この会員数が将来の成約にスムーズに繋がるフローを確立させ、安定的に売上計上を確保できるよう引き続き取組んでまいります。
また、LOGWAYコーチャーについては、すでに1,600組超のコーチャーに活動いただいておりますが、この中期計画においては、コーチャーの活動を更に盛り上げ、クラブ会員の増加へと繋げ、BESSの暮らしをより広く世の中に伝えていくとともに、こうしたファン同士の繋がりを通じて、クラブ会員へのサービスの充実を図ってまいります。さらに、ユーザーとの関係を強化し、コーチャーになっていただけるユーザーを拡げていきます。これらにより、「BESSファンづくりサイクル」をより効率的に循環させていきます。
ロ 「『梺ぐらし』の本格化~地方を真の主役に」
自然を身近に感じながら、おおらかに。そんなメッセージを込めた新しい暮らし方「梺ぐらし」を先の中期計画で創出し、直販部門で着実に成功実績を積み上げながら、今後はその開発・供給エリアを首都圏から全国の地方都市へと拡大していく予定です。
この中期計画では、地方の良さを活かした「梺ぐらし」を更に本格化させ、開発案件数の拡大を図るとともに、住替え・移住・再販等、BESS元来の強みが発揮できる企画も推進します。また、全国展開するBESSグループの強みを活かし、地区販社での企画・開発も推進します。
ハ 「ブランドパートナー型フランチャイズ制度の確立」
先の中期計画においても取り組んできたBESS事業の「価値観の統一」を更に進め、ブランド価値を共有するファンづくりパートナー関係を強化していきます。
また、元販社の一部から拠点を引き継いだBP社については、本部による経営指導強化を通じて拠点ごとの収益性を高めてまいります。当連結会計年度は、複数の新拠点承継による先行投資が生じている状況ではありましたが、営業損益の黒字化転換を果たしております。今後も引き続き経営強化を図りながら、BESSブランドを担ぐパートナーとしての独立、のれん分けの道筋を作っていきます。
ニ 「長寿企業を目指す収益構造改革」
先の中期計画においては、ブランド力が収益性に結びつかず課題が残りました。また、昨今では、新型コロナウイルス感染症拡大をはじめ自然災害発生などによる外部環境の急激な変化が、企業業績に多大な影響を及ぼすことが少なくありません。長寿企業を目指すためにはそうした外部要因による業績影響への耐性を高めていくことが必須であり、そのためにも収益性の高い筋肉質な企業体質にすべく継続的に取組んでまいります。この中期計画においては、受注平準化と着工/引渡平準化、ログ構法における施工・収益力改善、生産・物流コスト削減等に、BESS本部・地区販社一体となった組織力で取り組むことにより、収益性の向上を目指していきます。
② 新型コロナウイルス感染症への対応
・当社は社員の安全確保のため、リモートワーク・WEB会議を活用した在宅勤務を導入し、また、出社する場合は、外出前の検温、マスクの着用、手指の消毒、換気・相互の離隔による「3密」防止を実施し感染防止に努めております。BESS事業に従事する全国拠点スタッフにおきましても同様の防止策を徹底しております。施工現場におきましては、毎朝の検温と異常時の報告、手洗い・うがいの徹底、マスクの着用、十分な換気、密集を避ける工程管理等により、感染防止を徹底した上で工事を実施しております。
・全国の営業拠点「LOGWAY」の運営におきましては、必要なお客様への「予約制」にて運営し、お客様の安全を確保しながら商談を進めております。また、BESS単独で運営するLOGWAYならではの営業活動として、モデルハウスでの「貸切り暮らし体験」をお勧めしております。また、お客様との個別商談をはじめ各種セミナー等のイベントについてもWEBを最大限に活用しながら3密を避けるよう努めてまいります。当面は、新規来場客の減少など営業活動への影響は避けられない見通しですが、このように、十分な対策を施していることをご理解いただきつつ、これまで築き上げてきたBESS事業の特長を活かして運営していくことで、この未曽有の難局に対処してまいります。
・工事進捗におきましては、資材調達や公的手続き、お客様との打合せの進捗の遅延等により、売上計上が遅れるケースが想定されます。特に、コロナ禍でグローバルな需給バランスが大きく変化したことなどによる木材の調達難及び急激な資材価格高騰(ウッドショック)が生じているため、仕入購買先の複数化や部材の汎用化等、対応樹種の拡大によるサプライチェーンの強化等を通じて対策を講じてまいります。
③ 財務戦略
イ 「財務の健全性確保」
・当社グループは、積極的な事業拡大を財務面から支えるために、取引金融機関との間でシンジケート方式によるコミットメントライン契約を締結し、資金調達の機動性及び効率性を高めております。また、当連結会計期間には、コロナ影響による経済状況の急速な悪化に備えてコミットメントラインに参加する主要行から20億円の短期運転資金の借入れを実行するなど、金融機関との良好な関係性を維持しております。コミットメントライン契約については、当連結会計年度末に、コロナ対応の短期運転資金と併せて、複数の主要行によるシンジケート・ローンによる一括借換えを実行する新規契約を締結し、2021年4月に調達実行済みであり、これらによって当該契約の財務制限条項に抵触していた状況が解消されるとともに、中期的な資金計画を見据えて当社グループの財務健全化を図っております。
・しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響は長期に及んでおり、依然警戒が必要な状況にあります。当社グループの財務の健全性を確保するために、既存取引金融機関との連携をこれまで以上に密にしながら新規の資金調達等に継続的に取り組み、手元流動性資金の残高維持(月商の3ヵ月分以上)に努めてまいります。
ロ 「資本効率の向上」
・当社は、地区販社とのパートナーシップ(フランチャイズシステム)により、本部(当社)の陣容拡大を抑えながら売上成長を可能にする高効率の収益構造を目指しております。これにより、事業成長局面でも最小限の設備投資・在庫でフリーキャッシュ・フローを増大させるビジネスモデルを確立しています。
・金融機関からの資金調達により経営環境の変化に対して機動的かつ柔軟に対応しつつ、販社の営業拠点拡大等による少資本型事業のメリットを最大限に活かして更なる資本効率の向上を目指し、株主資本比率の改善及び財務体質強化を図ってまいります。