有価証券報告書-第74期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 15:08
【資料】
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【項目】
130項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、すべての人にとってクルマが、より便利で快適に、安全に、そして楽しい存在であるように、一人ひとりのお客様に最適なカーライフを提案・提供することを目指し、豊かで健全な車社会の創造に寄与し続けます。それが、当社およびフランチャイズチェン加盟法人を含むオートバックスチェンの使命であります。この考えを「オートバックスチェン経営理念」としてまとめ、お客様、フランチャイズチェン加盟法人、従業員、取引先、株主、社会などのステークホルダーに対して、継続的な価値の提供に努めております。
オートバックスチェン経営理念
オートバックスは、常にお客様に最適なカーライフを提案し
豊かで健全な車社会を創造することを使命とします。

また、当社は100年企業の実現に向けた長期ビジョンとして「2050未来共創」を掲げました。当社は創業から70 余年、常に車社会の発展とお客様のカーライフを豊かにするために活動してまいりました。これから先も、社会や自動車技術の進展、人びとの価値観の変化を捉え、人の暮らしに寄り添い、時流に合わせた価値を提案し続けます。そこにグループ全員が力を合わせて尽力し、2050年を目指し、より豊かで健全な車社会の創造に貢献していきたいという願いが、このビジョンには込められております。
オートバックスセブン ビジョン
2050未来共創
社会・クルマ・人のくらしと向き合い、明るく元気な未来をつくります。
私たちの元気の源泉はお客様の声。
一日一日を積み重ね、個人も企業も成長し、輝きつづけます。

(2) 経営環境
消費全般を取り巻く環境は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、経済活動の停滞や個人消費の低迷が続くなど厳しい状況となりました。また景気の先行きにつきましては、各種政策効果などにより持ち直しが期待されるものの、感染の再拡大の懸念もあり、依然として不透明な状況が続いております。
自動車関連市場におきましては、脱炭素化に向けたガソリン車への環境規制が強まりを見せ、次世代自動車への関心の高まりや、自動運転、運転支援機能といった先進安全技術の開発・普及が進んでいます。当社においては、それらの整備技術の対応が必須となります。また、大きな変革期を迎える自動車業界においては、当社グループが強みとする国内の自動車用品市場(カーアフター市場)のみならず、自動車整備、車検、中古車販売といった領域をはじめ業種・業態を越えた競争が激化していくものと考えられます。
なお、当社が加盟する自動車用品小売業協会(APARA)発表の2020年4月から2021年3月までの協会加盟企業4社の店舗売上高合計は、4,021億75百万円で、前年比0.4%増加いたしました。また、同期間の中古車登録台数(普通乗用車・小型乗用車)※1は、約336万台(前年比0.9%増)となりました。2020年1月から12月までの自動車整備に関わる総売上(市場)※2は、5兆6,561億円(前年比0.6%増)と微増であるものの、4年連続で増加となりました。
※1 日本自動車販売協会連合会 発表 ※2 日本自動車整備振興会連合会 発表
今後は、次世代自動車の整備制度への対応に加え、シェアリングサービスやサブスクリプションなど、新たなサービスの急速な拡大とそれに伴うITプラットフォームの整備が求められます。さらに、同業他社やディーラー、ネット販売関連企業など異業種との競争が激化するだけでなく、個人間売買といった取引形態の領域も拡大していきます。他にも、少子高齢化による顧客構成の変化、ニーズの多様化など、市場は今後も大きく、急速に変化するものと予想されます。
2022年3月期におきましても、新型コロナウイルス感染拡大の収束の見通しは未だ不透明であり、この状況がさらに長期化すれば経済に与える影響は甚大であり、消費も減退する可能性もございます。
一方、クルマは生活するうえで重要なインフラであり、お客様の安心・安全な生活を守るためにも、クルマのメンテナンスは必要なものと考えております。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営環境を踏まえ、当社は持続的な成長を図り、株主価値の最大化を達成するため、新しいカーライフ文化を創造し続けることを使命に、以下の課題に取り組んでまいります。
① 事業基盤の整備
日本国内でも新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が開始され、ワクチン接種による景気回復への期待感が高まっておりますが、新型コロナウイルス感染拡大は依然として経済に大きな影響を与えており、今後も不透明な経営環境が続くと予想されます。コロナ禍でクルマの価値が見直され、クルマやカー用品に対するニーズも変化いたしましたが、こうした環境にあっても、引き続き、お客様へ「安心・安全」や「新しい価値」を提供することが当社の使命であると、改めて認識しております。この使命を果たしつつ、お客様の健康を守るためにも、お客様と従業員の接触機会を最小限にするなど、感染拡大防止にあらゆる対策を講じてまいります。
「国内オートバックス事業」におきましては、不確実性の高い事業環境に能動的に対応し、成熟化しているカー用品市場において競合との差別化を図ってまいります。若年層やファミリー層などの顧客層を開拓するために、好きなクルマでもっと自分らしくというニーズには「自己表現」、クルマを快適に使いたいというニーズには「安心・安全」、クルマで出かけて楽しみたいというニーズには「体験・発見」という3つの価値を提供いたします。具体的には、新商品開発や新業態の開発を推進するとともに、引き続き、お客様が快適にご利用いただけるよう、店舗リノベーションや運営オペレーションの改善、整備士を始めとした人材育成に注力することで、市場における競争力を高めてまいります。
0102010_001.pngまた、国内オートバックス事業以外の各事業につきましては、これまで取り組んでまいりました「海外事業」、「ディーラー事業」、「BtoB事業」、「オンラインアライアンス事業(旧:ネットワーク事業)」に加えて、「ライフスタイル事業」と「拡張事業(保険・金融)」の2つの事業も推進いたします。
「海外事業」におきましては、市場に合わせて小売事業のビジネスモデルを精査し、収益性の高い卸売事業へ注力するとともに、現地企業とのパートナーシップを強化し、スピード感を持った事業展開により収益を拡大させてまいります。
「ディーラー事業」におきましては、サービス構成比を拡大するとともに、各拠点間の連携により資産効率を向上させ、運営会社の業務改善や人材育成を通じて、さらなる収益の拡大を図ってまいります。
「BtoB事業」におきましては、新規取引先の開拓により商品卸事業の収益を拡大するとともに、次世代整備の早期対応など、新たなサービスの提供を推進いたします。
「オンラインアライアンス事業」におきましては、既存のEC事業を強化するとともに、グループ内外に関わらず、あらゆる企業や組織と連携し、急速に拡大するインターネット市場への参入スピードを高めてまいります。
「ライフスタイル事業」におきましては、ライフスタイルブランドの「JACK & MARIE」および「GORDON MILLER」の認知をより拡大し、クルマを中心とした独自の世界観やライススタイル提案を確立させ、店舗展開を軸にした新たなマーケットを創造してまいります。
「拡張事業(保険・金融)」におきましては、保険事業やローン・クレジット事業を通して、オートバックスグループ内に向けて新たなサービスを提供することによりお客様との接点を持ち続け、さらにグループ外に対してもサービス提供を行っていくことで、新たなお客様の獲得も目指してまいります。
また、当社は、社会・クルマ・人の暮らしの変化をいち早く捉えて適応することで市場競争力を高めるという目的から、今後の当社グループが向かうべき方向性を示す「5ヵ年ローリングプラン」を策定し、引き続き6つのネットワークの確立と連携を図ってまいります。
0102010_002.png「マルチディーラーネットワーク」におきましては、カーライフの入り口ともいえる「自動車の購入」を通してお客様と繋がることを目的として、自らがディーラー事業に取り組むだけでなく、国内外を含む主要ブランドを獲得することで、ブランド横断的に車両やメンテナンス情報・ディーラー事業のノウハウを取得し、オートバックスチェンの市場競争力の強化にもつなげていく考えです。
また、「サービスピットネットワーク」におきましては、カー用品のインターネット販売市場の拡大によって高まる取付需要に対する受け皿として、オートバックスチェン外の整備事業者、ガソリンスタンド事業者や、他のカー用品販売店とも連携を図ってまいります。
「次世代整備ネットワーク」におきましては、次世代技術を要するクルマの整備に対応できる整備事業者と連携し、整備や設備に関する情報、整備オペレーションのノウハウなどの集約を図り、安定的な整備とサービスの提供に努めてまいります。
「カー用品販売ネットワーク」におきましては、オートバックスチェンのさらなる強化に努めながら、ホームセンター、ガソリンスタンド等のカー用品販売店を含め、あらゆる事業者と連携し、それぞれが有するリソースを相互に活用することにより、市場競争力を高めてまいります。
「海外アライアンスネットワーク」におきましては、各国・地域において競争力を有する企業や、独自の革新技術を有する企業との連携により、新たなビジネスモデルを構築するとともに、国内外のサプライチェーンとも連携させることにより収益の拡大を図ってまいります。
これらのネットワークを通じて、事業者間の垣根を越えて、車両やメンテナンス情報、お客様のニーズの変化、そして法令や環境といった社会の変化に関する情報を統合し、各事業の競争力強化の源泉となる情報を整備・集約する「オンラインネットワーク」の構築を目指してまいります。
これら6つのネットワークの確立およびネットワーク間の連携に注力する一方、5つの事業基盤の整備にも努めてまいります。ネットワークから生み出される新たな価値を事業基盤に取り込み、7つの事業に寄与させ、それぞれの事業がさらに発展することを目指してまいります。特に、IT基盤や物流基盤の再構築、育成を中心とした人材基盤の強化を図ってまいります。
また、推進体制の整備とモニタリングの強化など、戦略推進の実効性とスピードを高める仕組みの導入や体制の構築にも引き続き努めてまいります。
② 財務上の課題
財務戦略としましては、投資収益管理を強化して事業ポートフォリオを見直し、各事業単位で見える化を図り、資本効率を高めてまいります。株主還元では計画期間である5年間の累計総還元性向を100%として、安定的かつ機動的な株主還元を図ってまいります。