有価証券報告書-第5期(平成27年1月1日-平成27年12月31日)

【提出】
2016/03/31 15:12
【資料】
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【項目】
65項目

対処すべき課題

当社グループは、『価値ある豊かさの創造』を経営理念に掲げ、当社グループが運営する店舗において、ひとりでも多くのお客様に、おいしい料理を手頃な値段と気持ちのよいサービスで、清潔な店舗で味わっていただくことを使命としています。従業員一丸となって、それぞれの地域で皆様に喜ばれ、なお一層必要とされる店舗作りを目指すため、顧客のニーズに柔軟に対応し、より強固な企業体制を整備し、市場競争力を向上させる必要があると認識し、以下の施策に重点的に取り組んでいく所存です。
(1)当社の強みと経営スタイルの特徴
日本最大のテーブルサービスレストランチェーンである当社グループは、下記のような強固な事業基盤を有していると考えております。
・外食市場を牽引する多彩なブランドポートフォリオを有していること
・外食市場におけるリーディングプレーヤーであり、優良な店舗立地を有していること
・商品開発から食材の調達、製造、物流、料理の提供まで一気通貫して当社のネットワークで行う「垂直統合プラットフォーム」を有しており、市場の変化に迅速に対応するスピードとスケールメリットを有していること
・卓越した分析能力を有しており、経営判断に活用していること
・先進的なデジタルマーケティングを有していること
・優れた実績を持つ強力且つ経験豊富な経営陣と定着率の高い優秀な店舗スタッフを有していること
この強固な事業基盤により、当社グループの経営は競合他社にはない以下の特徴を持っております。
①多様なブランドを展開し、手頃な価格でのメニューの提供
当社グループは、和食・洋食・中華・イタリアンなど複数のカテゴリーにおいて、主要なセグメントである低価格帯にて知名度の高い多様なブランドを展開しております。このお手頃な価格設定により、国内消費者の多数を占める幅広い層のお客様にご支持頂いております。
②外部環境の変化に対する迅速な戦略転換や成功確度の高い施策の実施
当社グループはこれまでにも、外部環境や消費者ニーズの変化を敏感に察知・把握し、その変化に合致する戦略の実行を速やかに行うことで、高収益をあげてまいりました。
2010年~2013年にはデフレ環境下において店舗配置やブランドポートフォリオの見直しを行いました。2014年~2015年にはインフレ環境下において高単価商品を積極的に開発・導入することにより、客単価上昇が牽引する既存店売上高増加を実現いたしました。
また、新業態をはじめとする当社グループの新たな施策の多くは、既存の事業基盤に基づく施策であるため、成功可能性が非常に高くなっております。
(2)当社グループがとらえる外部環境変化
当社グループでは、様々な外部環境変化のうち、業績に影響を与えるであろうトレンドを以下の7つと考えております。
①総需要の伸びの鈍化
人口は減少するものの、外食への1人あたり支出の増加により、2020年頃までは市場規模は横ばいに推移する。また、ファミリーレストラン市場の周辺には、朝食・カフェ・アルコール需要など、大規模な市場が存在している。
②需要の都市部への移動
利便性を求める層が都市部に移動し、併せて、様々なインフラ維持コストを削減するために政府や自治体も都市中心部への移動を促進する。これにより、人の動きが都市中心に移るとともに、それら中心部を繋ぐ幹線道路沿いの重要性も高まる。
③単身者・女性の社会進出、高齢者層の増加
相対的に外食への支出割合が高い、単身者や共働き世帯の割合が上昇する。また、資産を持つ高齢者世代は外食に慣れ親しんだ世代であり、食へのこだわりや食を通じたコミュニケーションへの欲求、調理の手間削減などのために今後も積極的に外食を利用する。
④食の嗜好の成熟化
多くの消費者の食への嗜好が成熟化し目的利用の割合が高まる。これにより、特定のカテゴリーで相対的に安価で質が高いメニューを提供できる専門店ニーズが高くなる。
⑤消費の二極化
外食を贅沢の対象とする高価格帯の消費者が一定数存在する一方で、実質賃金が減少傾向であることにより節約志向も底堅く、低価格でバリューを訴求するファミリーレストランが伸長する。
⑥インフレの進展
新興国における需要の拡大や為替影響により、卸売物価は継続的に上昇する。また、生産年齢人口の減少や景気回復に伴う求人の増加、社会保険の適用拡大によって、人材の維持獲得コストは上昇する。
⑦ファーストフード、コンビニエンスストアとの競争領域の重複
ファーストフードやコンビニエンスストアは手軽感だけでなく、カジュアルではあるがしっかりとした食事需要の積極的な取り込みを図り、低価格・少人数での利用シーンにおいてファミリーレストランと競合しつつある。
これらの環境変化を事業成長の好機ととらえ、上述した外部環境変化に対する迅速且つ的確な施策の実施を通じ、今後も成長を実現してまいりたいと考えております。
(3)当社グループの成長戦略
当社グループでは、前述した強固な事業基盤に基づき、以下の成長戦略を実施することにより、さらなる成長の実現を図ってまいります。
①既存の事業基盤を活用した成長(既存店の収益力強化、新規出店、コストの最適化)
②事業基盤の適用範囲の拡大による成長(海外展開、M&A)
(4)既存店の収益力強化
当社グループは、これまで、外食市場が成熟して拡大規模はその成長期に比べ限定的なものであることに鑑みて、収益の確保を過去のような大量新規出店に依存するのではなく、既存店の収益力強化が重要な成長の鍵となると考え、取り組んでまいりました。今後もこの方向性に大きな変更はありません。ただし、2015年までは、外部環境変化への対応を目的とした高単価メニューの開発・導入を中心とした客単価上昇戦略を主軸としておりましたが、さらなる成長の実現のために今後もっとも重要な位置づけとなるのは、客数の増加をいかにして実現するかという点であると考えています。
また、多目的型レストランではない目的利用の明確な専門店型ブランドにおいては、客単価をさらに上昇させることが可能であると考えています。
これらを踏まえ以下の各戦略・戦術を実施してまいります。
①コアメニュー強化による客数増
・拡大する新たな顧客ニーズの取り込み
・調達やプロモーション視点を導入した商品開発など
②バリュープロモーションによる客数増
・顧客ターゲット別の割引クーポンの発行
・モバイルアプリの複数ブランドの本格展開など
③価値を伴った客単価の上昇
・プレミアム食材を使用したフェアの拡大
・ドリンクバー、サイドメニューの併売強化など
④需要の変化に合わせたリモデル実施の加速
・顧客層変化に対応した店舗内外装刷新の実施
・分煙対応の促進
・お客様を自社グループ店舗へ誘導するためのリードサイン設置強化など
⑤市場動向に応じたブランド転換の実施
・消費者ニーズや競争環境の変化に合わせ、タイムリーに最適なブランドへ転換する
・食の嗜好の成熟化に合わせ、高い効果が見込まれる専門店ブランドへの転換を早期に実施 など
⑥店舗オペレーションの高度化
・お客様が集中するピーク時間帯における作業効率を改善し、座席回転率の上昇による客数増加を図る
⑦(朝食・カフェ・アルコール需要など)周辺市場の取り込み
・朝食需要、カフェ需要、アルコール需要の積極的な取り込み
⑧デリバリーサービス・テイクアウトサービスの拡大
・メニュー、店舗オペレーション改善による配達時間の短縮
・モバイルアプリを活用したプロモーションの促進
・高齢者や共働き世帯に向けた新規サービスの開発
・デリバリー実施店舗の拡大など
(5)新規出店
当社グループは、これまでロードサイドを中心とした出店戦略をとってきましたが、国内の人口動態の変化等を分析し、都市部への出店も実施し、ロードサイドと都市部とでバランスをとった出店を行っています。駅前やショッピングセンターへの新規出店に対応する新業態や新フォーマットの開発も積極的に行っており、今後もこれら地域への出店を加速してまいります。
国内各地域での競争環境の分析、各ブランドの特徴を踏まえたブランドごとの新規出店戦略の策定、新規出店に係る社内のプロセスや担当チームの効率化等により、ブランドごとに明確な新規出店計画を適用してまいります。当連結会計年度末現在において、将来的に十分な新規出店余地があるものと考えており、ガストを約半数とする新規出店を計画しております。
(6)コストの最適化
今後、最低賃金の上昇や社会保障適用拡大など、特に人件費の上昇等が想定されております。当社グループについて、これらインフレの影響を受けやすいと考えられる費用項目は、当社グループのコスト環境に大きな影響を与えると考えております。
係る状況に鑑みて、当社グループは、以下の施策を通じてコストの最適化を図ってまいります。
①原材料調達
当社グループは、全国に約3,000店舗を有する国内最大のテーブルサービスレストランチェーンですが、原材料については原則として本社で一括調達することにより、スケールメリットを生かして調達コスト競争力をより高めてまいります。
また、複数のブランド間でメニューレシピ及び調達先を継続的に見直して、モジュール化・共通化も含めて改善することにより、食材調達に係るコストの削減に努めてまいります。
そのほか、メニューの開発にあたっては購買や生産の視点を付加しコスト最適化を図ります。常に食材価格のトレンドを把握し、高品質且つ安価な食材を使用したメニュー開発を行います。
②サプライチェーンの最適化
当社グループは、全国10ヶ所にあるマーチャンダイジングセンター及び工場で集中的に加工及び調理を行い、各ブランドの店舗へ、自社配送システムを利用して配送しておりますが、係るマーチャンダイジングセンターの最適化や配送ネットワークの効率性の改善等により、垂直統合型のサプライチェーンを更に強化し、サプライチェーン全体に係るコストの削減を目指してまいります。ブランド横断での地域別配送の実施や常温配送の頻度見直しなども実施いたします。
マーチャンダイジングセンターにおいては、需要変動に合わせた労働時間コントロールを強化し、また、生産工程での原材料廃棄ロスの低減を図るなど、原価低減に向けた取り組みを実施いたします。
③人件費等
当社グループでは、店舗オペレーションの効率化や従業員の教育、標準化による生産性向上、一部の店舗における深夜営業の縮小等により、人件費の削減に取り組んでまいります。
また、水道光熱費、本社費及びマーケティング費用についても、継続的に見直しを行って改善に努めてまいります。これらについては、購買部門が全社横断的にコスト削減を支援する仕組みを作り、また、全部門に対して明確な数値目標を設定し最適化を図ります。
(7)事業基盤の適用範囲拡大による成長
①台湾事業の拡大
台湾の外食市場は成長を継続しており、たいへん魅力的な市場ととらえております。当社グループでは、日本国内で着実な成長を遂げてきましたが、成長を通じて得られた様々なノウハウを活用して、台湾における既存店収益のさらなる向上を図ります。また、2015年6月に初出店した「しゃぶ葉」の業績は好調に推移しており、今後も台湾において新規出店やブランド転換による拡大を実施してまいります。
②M&A機会の積極的な追求
当社グループの強みを補強する資産やノウハウを有している企業、または当社グループの事業基盤と親和性があり当社の強みを活かして新たな価値を創造できる企業に対するM&A機会を追求してまいります。
(8)食の安全・安心に向けた取組み
当社グループでは、食材の調達から加工・流通・店舗での調理保管に至るまで、全ての工程で厳格な管理基準を設け、品質管理及び衛生管理を行っております。また、全国8ヶ所にある、マーチャンダイジングセンター内の検査室では、定期的な食品検査を実施し、商品の品質を担保しております。
このように、当社グループは、食中毒事故の発生防止は継続して推進していますが、今後も更に徹底してまいります。2011年以降取り組んだ対策をもとに改定・整備された「安全・衛生に関するマニュアル」を全従業員が常に実行できる体制の継続により、食を扱う企業としての社会的責任を再認識し、お客様に信頼いただけるよう安全・安心に向けた取組みを更に強化してまいります。