有価証券報告書-第16期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 15:52
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【項目】
159項目

対処すべき課題


文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当行が判断したものであります。
(1) 経営方針
わが国は少子高齢化や人口減少等の課題を抱え、世界的にも低成長が常態化しつつあります。また、足元では新型コロナウイルス感染症の影響や環境・社会課題への意識の高まり、デジタル技術進展に伴う異業種の金融事業への新規参入等、当行を取り巻く経営環境は過去に例を見ない速さで大きく変化しています。
MUFGグループは、この変化を正しく読み解いたうえでそれを飛躍のチャンスに変え、新しい時代において社会をリードする存在でありたいと考えています。このたび、「世界が進むチカラになる。」を存在意義(パーパス)として設定し、2021年度からの3年間において、金融とデジタルを活用して「世界(全てのステークホルダー)」に対し「どのようにチカラになるか」を中期経営計画にてまとめました。
これからの3年を「挑戦と変革の3年間」と位置付け、環境変化に応じたビジネスモデルを作り上げ、また、その結果として収益力向上およびROEの改善を実現することを通じて、お客さま・社員をはじめとする全てのステークホルダーの期待に応えてまいります。
今年度から始まる中期経営計画では、3年後のめざす姿として「金融とデジタルの力で未来を切り拓くNo.1ビジネスパートナー」を掲げました。そこには変化の激しい時代において、「全てのステークホルダーが次へ、前へ進むためのチカラになりたい」という思いを込めております。「デジタル」、「サステナビリティ経営」、「挑戦・スピード」をテーマに変革を進め、お客さまと社会の課題に徹底的に向き合い、課題解決に努めてまいります。
これらの取組みを通じた経営方針のキーワードは3つ、「デジタルトランスフォーメーション」、「強靭性」、「エンゲージメント」です。
一つ目は、「会社のあり方をデジタル化する」。実際にはリアルとのバランスではありますが、社会のデジタルシフトに対応するために、第一に掲げました。
二つ目は、「事業としての強靭性の重視」です。今回の危機で、MUFGはどんな環境においても信頼され続ける存在でなければならないと、改めて考えさせられました。金融機関としての健全性を確保して、経営資源をMUFGグループの有する強みのある領域へと重点配置いたします。
最後が、「エンゲージメント重視の経営」です。これは、大きな変化が会社ひいては社員一人ひとりに求められるなか、変革の方向性に対する共感性を大切にし、社員間や組織間、お客さまとの間、また社会とも共感できる、皆が参画意識を感じられる、魅力的な会社にしていきたいと考えるものです。
(2) 経営環境
当年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、新型コロナウイルス感染症拡大という未曾有の危機の中、感染拡大抑止のための経済活動制限が大きな下押し圧力となる1年となりました。第1四半期には感染第1波に伴い導入された行動制限を受けて、我が国や米国、欧州等の先進国を中心に数多くの国が大幅かつ急激な景気悪化を経験しました。その後、各国で大規模な金融緩和や財政支出が行われるとともに、第1波が下火となるに連れて各種措置が緩和され、第2四半期には前期の落ち込みからの反動もあり世界的に経済は大きくリバウンドしました。第3四半期以降は各地で感染が再拡大し、我が国も含め各国で行動制限の強化が景気回復の重石となる状況が続きましたが、一部の国でワクチン接種が本格化するなど前向きな動きも見られました。こうした中、欧州ではEUと英国の貿易協定が合意に至り、米国では大統領選挙の勝利を経て発足した民主党バイデン政権が大規模な追加経済対策を成立させるなど、政治・政策に係わる不透明感が一部払拭されました。
金融情勢に目を転じますと、日米株価は、コロナ禍を受け昨年度末に大きく落ち込みましたが、その後は、各種政策効果やワクチン普及による早期経済正常化への期待などを背景に持ち直しを続け、年度末時点で米国株価は歴史的な高値圏に、日本株価もバブル期以来となる高値圏にあるなど、コロナ禍前を上回る水準まで回復しました。他方、ドル円相場は、第3四半期までは総じて円高方向となり、2021年年初には一時1ドル102円台となりました。その後は、米国の追加経済対策成立による同国景気の早期回復期待から、金融市場でリスクオンの流れが強まる中、ドルが買われる展開となりました。金利については、各国が大規模な金融緩和策を講じたことで、第3四半期までは我が国を含め総じて低位で推移しましたが、第4四半期になると米国において景気回復期待から長期金利の上昇がみられました。
(3) 対処すべき課題
MUFGグループは、3年後のめざす姿「金融とデジタルの力で未来を切り拓くNo.1ビジネスパートナー」を実現するために、主たる戦略の柱として「企業変革」、「成長戦略」、「構造改革」を掲げます。
「企業変革」では、会社のありようを変える、変革を進めていくという観点から、「デジタルトランスフォーメーション」、「環境・社会課題への貢献」に取り組むとともに、スピードと挑戦をキーワードに「カルチャー改革」を推進します。特に「環境・社会課題への貢献」では、世界が直面している最も深刻な問題である気候変動への対応を牽引するため、2021年5月に公表した「MUFGカーボンニュートラル宣言」に基づき、お客さまの脱炭素化に向けた取り組みやイノベーション技術への支援を一層拡大してまいります。
MUFGカーボンニュートラル宣言の概要

「成長戦略」では、収益力を強化すべく、「ウェルスマネジメント」、「経営課題解決型アプローチ」、「アジアビジネス」、「GCIB & Global Markets」、「グローバルAM(アセットマネジメント)/IS(インベスターサービス)」を推進します。
「構造改革」では、強靭性の確保に向け、「経費・RWAコントロール」、「基盤・プラットフォーム改革」および低採算事業の見直しや新規ビジネスへの挑戦といった「事業ポートフォリオ見直し」を推進します。
なお、一部の施策では、足元の新型コロナウイルス感染症への対応の影響等により進捗に遅れが生じる可能性もございますが、今後影響については慎重に見極めてまいります。
MUFGグループは、お客さま、社員等、ステークホルダーの安全確保を最優先とし、社会機能の維持に不可欠な金融インフラとして、事業者の資金繰り支援等の施策を通じ、お客さま・社員をはじめとする全てのステークホルダーの皆さまの期待に応えてまいります。

(A) 企業変革
① デジタルトランスフォーメーション
あらゆるお客さまに対するデジタルサービス接点の強化、商品・サービスのデジタル化を推進します。デジタルを活用した業務量削減に取り組んでまいります。
② 環境・社会課題への貢献
「気候変動」、「少子・高齢化」、「インクルージョン&ダイバーシティ」を優先課題とし、事業戦略、リスク管理、社会貢献施策を展開します。
③ カルチャー改革(スピード・挑戦する文化)
存在意義(パーパス)起点での行動を促し、自由闊達な企業風土を醸成し、戦略のスピードアップや社員の自律的な挑戦を促進します。
(B) 成長戦略
④ ウェルスマネジメント
総合的な資産運用を支援するためのインフラ整備や人材投入、法人オーナーへのソリューション提供を通じてビジネスを強化してまいります。
⑤ 経営課題解決型アプローチ
法人のお客さまの経営課題に向き合い、リスクテイク力を強化し、グループ一体で課題解決に取り組んでまいります。
⑥ アジアビジネス
連結子会社のアユタヤ銀行(タイ)、バンクダナモン(インドネシア)を中心に、アジアを面で捉え成長を取込みつつ、デジタル化を推進します。
⑦ GCIB & Global Markets
機関投資家との取引拡大を通じ、資産回転・フロービジネス(O&D/OtoD※、クロスセル)を強化してまいります。
※Origination & Distribution/Origination to Distributionの略称
ファイナンスを組成し、投資家に販売する業務施策。「O&D」は当該業務施策全般を指す総称であるのに対し、特に、投資家ニーズを起点に案件を組成する取り組みを「OtoD」という。
⑧ グローバルAM/IS
業界成長が望める海外資産運用・管理領域において、MUFGグループの強みを活かした受託ビジネスを推進します。
(C) 構造改革
⑨ 経費・RWAコントロール
成長に必要な投資は行いつつ、ベース経費の削減を徹底します。RWAは、高採算案件への張り返しにより、コントロールします。
⑩ 基盤・プラットフォーム改革
デジタルシフトに必要な投資を効率的・効果的に実施します。改革に必要な手続・ルールの簡素化、意思決定プロセスの見直しに取り組んでまいります。
⑪ 事業ポートフォリオ見直し
低採算事業の見直しによりROE向上に取り組んでまいります。異業種を含めた他社との連携により事業力を強化します。
(4) 目標とする経営指標
当行の親会社である三菱UFJフィナンシャル・グループの本中期経営計画では、中期経営計画の最終年度である2023年度の財務目標の水準を以下の通り設定しております(2021年5月公表)。
[ROE目標・資本運営のターゲット]

[ROE目標達成に向けての3つのドライバー]

*1 バーゼルⅢ規制見直しの最終化によるリスク・アセット増加影響を反映させた試算値。その他有価証券評価差額金を除く
*2 親会社株主に帰属する当期純利益
*3 中長期の経費率目標(60%程度)は不変