有価証券報告書-第121期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/25 15:21
【資料】
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【項目】
171項目
b 戦略
気候関連リスクと機会は、事業活動に大きな影響を与える可能性があるため、当行では、気候変動シナリオ分析によるリスク量の把握に取り組んでいるほか、脱炭素社会への移行を新たなビジネスチャンスと捉えて、お客さまの気候変動への適応とその影響の緩和に資する金融商品ならびにサービスの開発・提供に取り組んでおります。
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(a)リスク
当行では、気候関連リスクとして、移行リスクと物理的リスクを認識しております。
移行リスクでは、脱炭素社会への移行にともなう気候関連の規制強化や消費者嗜好の変化等により、一部のお客さまの事業に対する信用リスクの増加等を想定しております。また、物理的リスクでは、気候変動によってもたらされる水害をはじめとする自然災害の増大により、担保毀損のほかお客さまの事業活動への影響および業況の変化等による信用リスクの増加に加え、当行営業店舗の損壊等によるオペレーショナルリスクの増大などを想定しております。2023年度においては、これらのリスクを定量的に把握し、リスク低減に対応していくために、次の内容でシナリオ分析を実施しております。
なお、シナリオは、多くの企業や国が目標として掲げる「2050年カーボンニュートラル」で想定される世界観の1.5℃シナリオ(移行リスク)と、現状予想される以上に気候変動対策が進まず、水害をはじめとする自然災害のリスクが顕在化する4℃シナリオ(物理的リスク)により分析を行っております。
〇移行リスク
移行リスクでは、脱炭素化による影響が特に大きいと考えられる「電力」、「石油・ガス」セクターのほか、当行のエクスポージャーや秋田県内への影響度等を踏まえて、食品製造業に関連する「食品・飲料」セクターを加えた3セクターに対する与信コスト増加額を推計しております。
<分析対象セクターの選定プロセス>0102010_008.png
<分析結果の概要>
シナリオNGFSによる「NetZero2050(1.5℃シナリオ)」
対象セクター電力、石油・ガス、食品・飲料
分析方法・選定したセクターに対して、事業に与えるリスク・機会要因を整理
・整理した内容を踏まえて、シナリオに基づき炭素税などコスト増加等にともなう将来の業績変化を予想し、与信コストへの影響を推計
分析期間2050年まで
分析結果与信コストの増加額:累計17億円程度

〇物理的リスク
物理的リスクでは、国内の法人を対象にIPCCの4℃シナリオに基づき、100年に1度の規模の洪水が発生した場合の当行の担保物件への被害額とお客さまの事業停止・停滞日数を算定し、お客さまの事業に及ぼす影響をもとに、当行の与信コスト増加額を推計しております。
<分析結果の概要>
シナリオIPCCよる「RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)」
対象セクター国内に本店を置く法人融資先
分析方法ハザードマップを利用して当行担保不動産の毀損額およびお客さまの事業停止日数を予想し、お客さまの事業への影響ならびに与信コストへの影響を推計
分析期間2050年まで
分析結果与信コストの増加額:最大41億円程度

(b)機会
脱炭素社会の実現に向けて、さまざまな気候関連リスクが想定される一方で、再生可能エネルギー分野への投融資の増加、お客さまの脱炭素への移行を支援する金融商品やサービスの提供など、当行にとってのビジネス機会は拡大していくものと認識しております。
〇再生可能エネルギー関連事業への取組み
秋田県は、日本海の恵まれた風況を背景に、洋上風力発電の整備を促進する区域として全国最多となる4海域の指定を受け、他地域に先駆けて事業開発が進められております。秋田県沖の洋上風力発電プロジェクトにかかる総事業費は、およそ1兆円規模と試算されており、脱炭素社会実現のほか、県内経済への波及効果にも注目が集まっております。
当行では、こうした再生可能エネルギー関連事業が、地域経済の発展や脱炭素への移行に資する重要な取組みであると捉え、2013年に設立した風力発電事業会社「A-WIND ENERGY」の主体的な運営をはじめ、脱炭素先行地域(大潟村)への人的支援など、ファイナンスにとどまらない取組みを多角的に進めております。
今後も積極的なファイナンスのほか、風力発電設備の建設やO&M業務における事業会社と地元企業とのマッチング、県内産業の活性化に向けた連携等を通じて、地域の経済効果の最大化に取り組んでまいります。
■ 再生可能エネルギー関連融資の累計実行額
電源別2021年3月末2022年3月末2023年3月末2024年3月末
風力270368491584
太陽光260315374456
バイオマス・地熱ほか34375767
合 計5647209221,107

〇森林資源・J-クレジットの活用
森林資源に対しては、世界的な人口増加にともなう木材需要の増加に加え、気候変動・生物多様性の観点から非常に大きな関心が寄せられております。全国有数の森林面積を誇る秋田県では、豊かな森林資源を活用したJ-クレジットの創出が進められており、当行では、こうした取組みが地域の脱炭素化をはじめ、地元林業の活性化や森林資源の保全につながる重要な取組みであると認識し、2023年度に大仙市および丸紅株式会社とJ-クレジット創出・販売に向けた連携協定を締結しております。同連携協定をはじめ、森林資源を起点とした新たなビジネスモデルの構築と地域経済・環境価値の域内循環に向けた取組みを進めてまいります。
(c)炭素関連資産
炭素関連資産は、一般的に直接的または間接的なGHG排出量が比較的高い資産または組織とされており、当行では次のセクターに関連する資産を炭素関連資産としております。
セクター主な業種貸出金(百万円)比率(%)
エネルギー・石油及びガス
・電力ユーティリティ
16,712
41,808
0.9
2.2
小 計58,5193.0
運輸・旅客空輸
・海上輸送
・鉄道輸送
・トラックサービス
・自動車及び部品
686
1,438
26,386
20,735
32,055
0.0
0.1
1.4
1.1
1.6
小 計81,3004.2
素材・建築物・金属・鉱業
・化学
・建設資材
・資本財
・不動産管理・開発
20,825
23,997
2,860
136,154
65,390
1.1
1.2
0.1
7.0
3.4
小 計249,22612.8
農業、食料、林産物・飲料
・農業
・加工食品・加工肉
・製紙・林業製品
6,647
5,185
20,270
24,592
0.3
0.3
1.0
1.3
小 計56,6942.9
上記セクター合計および貸出金に占める割合445,73922.9

(注)1.主な業種は、当行が取引先ごとに設定している主たる業種コードをGICS(世界産業分類基準)に読み替えて分類しています。
なお、再生可能エネルギー関連の事業は炭素関連資産に含めておりません。
2.貸出金は、2024年3月末時点において該当する法人の事業性貸出(割引手形、手形貸付、証書貸付、当座貸越)の残高としています。