有価証券報告書-第42期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 10:01
【資料】
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【項目】
63項目

対処すべき課題

当社グループでは、今後の世界経済やわが国経済の変化を先取りして、事業の転換を図っていくことが不可欠であるとの認識の下、特に、大きな経済成長が今後とも期待できるアジア地域において、事業を拡大するとともに、そのネットワーク化によるシナジー効果が最大限に発揮されるよう事業展開を図っていくことを今後の主要な課題としております。
今後も更なる経営基盤強化と持続的な成長を図るため、その実現に向けた取組みを行ってまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2018年6月28日)において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」のビジョンのもと、景気動向に業績が左右されない銀行業、債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスを目指してまいります。収益モデルにつきましては、特に韓国に代表されるように規制の影響が少なからずある中で、各国の規制の変更に柔軟に対応しつつ、持続的に事業拡大が望める銀行業からの利益貢献を中心とすることにより利益確保を図ってまいります。また、経済成長を遂げる東南アジアにおいてリテールファイナンスを制覇することを目標に掲げ、銀行業及びデポジット(預金)のとれるファイナンス事業を中心に積極的にM&Aを行ってまいります。さらには、コンプライアンスやガバナンスを第一に考えた経営を機軸におき、お客様に付加価値の高い金融サービスを提供するなど地域とともに共存共栄で発展していく企業体を目指してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
(国内金融事業)
信用保証業務では、前連結会計年度に引き続き、アパートローン、海外不動産担保ローン等の不動産担保ローンに対する保証事業を中心とした事業を展開しておりますが、さらに昨今の高齢者世帯が増加し、老後の安定した生活の困難さが社会問題化する中、リバースモーゲージ型商品等の保証事業にも注力してまいります。アパートローン保証では、空室発生や賃料低下のリスク懸念から、急増するアパートローンについて金融庁から問題視されている中で、東京・大阪・名古屋・福岡を中心とする大都市圏限定で、駅徒歩圏内、さらに優良なハウスメーカーを厳選するなど質の高い物件の保証を中心に残高の積み上げを図ってまいります。また、リバースモーゲージ型商品保証では、鉄道会社や不動産会社、金融機関等との連携による地域経済活性化を進め、対象となる案件の発掘に努めてまいります。債権回収業務では、市場規模が縮小する中で、当社グループの高い回収力をバックに高い値付けをすることにより安定的・継続的な仕入れを実現し事業拡大を図ってまいります。
(韓国金融事業)
韓国においては、既に総合金融サービスを展開する上でのインフラが整っており、JT親愛貯蓄銀行株式会社、JT貯蓄銀行株式会社、JTキャピタル株式会社、TA資産管理貸付株式会社の4社をそれぞれ有機的に展開させることにより、最大限のシナジー効果が得られるような事業展開を図っております。韓国では毎年のように規制強化が繰り返されており、直近では2018年1月から個人回生弁済期間が5年から3年に短縮され、さらに2018年2月に法定最高金利が27.9%から24.0%に引き下げられました。さらに貯蓄銀行業においては、家計貸付負債残高の総量規制や高金利債権(金利20%以上)の引当率50%追加ルールが継続され、貸倒引当金の設定率の引き上げも予定されています。キャピタル業においても割賦・リース債権の引当率がその他債権と同等水準に引き上げられ、高金利債権(金利20%以上)の引当率30%追加ルールも継続されております。また、貸付業務営為比率規制(30%ルール)における規制対象が、個人信用貸付のほか貸付業者に対する貸付も含む内容に規制強化されることも予定されています。
このような規制強化の中、貯蓄銀行2行では、貸付債権のポートフォリオの入れ替えによる質の向上を目指し、審査基準の見直しによる信用等級の高い優良案件を中心とした新規貸付の獲得や企業向け貸付の増加を図ってまいります。また譲渡債権に対する保証や新たな保証モデルの取り組み、各社に適した新商品の開発など収益源の確保に向けた検討や導入を行ってまいります。さらに、2019年3月期からの国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」の適用に合わせて貸倒引当基準変更による貸倒引当金の積み増しが想定されるなど厳しい収益環境にありますが、与信コストの低下と優良資産の増加により収益拡大を図ってまいります。また、キャピタル業においても、今後も割賦・リースなどキャピタル業の本業とされる分野の商品開発・改良や、営業強化、保証業務提携を推進してまいります。そして、債権回収業においては、韓国の家計貸付負債はここ数年顕著に増加し、NPL債権(不良債権)も増加していることから、貯蓄銀行やキャピタル会社におけるBIS比率の維持や利益確保のためのNPL債権の売却規模は今後も大きくなるものと予想されます。TA資産管理貸付株式会社にとっては大きな好機にあると考えており、今後、高い回収力と遵法性を背景に債権残高を積み増してまいります。
さらに、韓国金融グループとして、イメージキャラクター「jumpy」を活用した身近で信頼感のあるイメージの醸成に向けたマーケティング活動等によりブランド価値を向上させることで、更なる残高積み上げを図ってまいります。
(東南アジア金融事業)
2017年のインドネシアの銀行全体の貸出残高の伸びは平均8~10%程度でしたが、不良債権処理に一定の目処をつけた銀行が積極的貸出攻勢に転換したため競争は激化しており、2018年は全体として12%~14%程度の伸びになると予想されます。また、2017年は銀行業界のデジタル化が進展し、加えて今後は各種Fintech企業の伸びも予想され、銀行として積極的な対応が求められております。このような環境の中、PT Bank JTrust Indonesia Tbk.では収益基盤の強化に向けて貸出資産の量的拡大、不良債権処理の加速や、貸出資産の小口化、リテール化を目指してまいります。
経営戦略としては、貸出資産の拡大に向けて他行差別化戦略を打ち出し、貸出プロセスや審査プロセスの迅速化、商品性の多様化、ジャパンブランド力の訴求や関連マーケットの開拓、貸出拡大のための営業拠点となるビジネスセンターの設置等を実施するほか、人事面では評価主義の徹底、適正配置等、営業社員の能力向上に向けた戦略や、コンプライアンス体制の強化等も行ってまいります。また、貸出資産の質の向上を図るため、旧経営陣時代の非効率なコーポレートローン(大口法人向け、1,000億ルピア以上)は残高縮小方針とし、コマーシャル(法人向け、250億ルピアから1,000億ルピア)、SME(中堅・中小企業向け、250億ルピアまで)、コンシューマー(個人向け)、マルチファイナンス(ファイナンス会社及び仲介されたエンドユーザー向け、財閥グループ系・銀行系若しくは日系中心)に注力するなど小口化、リテール化を推進し、貸出ポートフォリオの入れ替えを行ってまいります。そして、コアバンキングシステムの入れ替えが終了したことから、今後は個人向けインターネットバンキングの充実を図ってまいります。同時に、Fintech業者との協業や提携、インドネシアに進出した又は進出を予定している日系中堅・中小企業を対象とするマーケットとの取引推進による貸出資産の拡大も図ってまいります。さらに、貸倒リスク管理については、債務者の信用状況のモニタリングを強化し、PT JTRUST INVESTMENTS INDONESIAとの連携強化により積極的な債権管理回収活動を行ってまいります。また、2018年4月に、マルチファイナンス会社であるPT.OLYMPINDO MULTI FINANCEの株式60%の取得を決議いたしました。これにより、韓国に続きインドネシアでも、銀行、債権回収会社、ファイナンスカンパニーの三位一体の事業セグメントが構築され、幅広いエリアにおける多様なニーズに応えられる体制が整うことになります。今後も、効果的なマーケティング戦略を展開し、グループのネットワークを活かした付加価値の高い金融サービスを提供するなど積極的な事業展開を通じて、事業基盤の強化を図ってまいります。