有価証券報告書-第88期(2024/04/01-2025/03/31)

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2025/06/18 12:23
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216項目
(2)戦略
(気候変動)
2-1-1.気候関連のリスクと機会についての認識
当社グループでは、気候変動問題を解決すべき喫緊の課題であると同時にビジネスチャンスと捉え、事業に影響を与えると見込まれる気候関連のリスク(移行リスク/物理的リスク)を整理するとともに、脱炭素社会の実現に向けて、本業である金融商品・サービスの開発・提供を通じたビジネス機会を整理しています。このようなリスクと機会の認識に基づく対応方針を検討の上、気候レジリエンスを高めるための戦略的な取組みを推進していきます。
2-1-2.気候関連リスク
当社グループでは、気候シナリオに基づく分析を行い、事業に負の影響を与えると見込まれるリスクを整理しています。
主な移行リスクの例として、カーボンプライシング等の政策の変化による投資・運用先等におけるコスト増加及びこれに伴う収益悪化(政策/法律)、エネルギー関連技術の変化による投資・運用先等のコスト増加及びこれに伴う収益悪化(技術)、脱炭素社会への移行に伴うファンド保有資産の価値低下や残高減少(市場)、気候変動対策の取組み不足や環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う評判悪化(レピュテーション)等が挙げられます。
主な物理的リスクの例として、豪雨や巨大台風の被災による太陽光/風力発電設備等の投資物件の価値低下や売却機会の減少及びこれらに伴う収益悪化(急性/慢性)、自然災害の激甚化による金融システム障害及び当社グループの各事業拠点やデータセンター等の被災による事業中断(急性/慢性)等が挙げられます。
これらの気候関連リスクの認識とともに、リスクが事業に及ぼす影響や発生頻度等を踏まえた対応策を検討の上、戦略的な取組みを進めています。
気候関連リスクの例
リスクタイプ気候関連リスク時間軸戦略的な取組み例
移行政策/
法律
カーボンプライシング等の政策の変化による、投資・運用先等におけるコスト増加、及びこれに伴う収益悪化中~長期①サステナブルファイナンスの推進
④サステナビリティを意識したソーシング・投資推進
⑤サステナビリティ関連のソリューション提供
⑥自社のカーボンニュートラル実現
カーボンプライシングや情報開示義務化等への対応に伴う、当社グループのコスト増加短~長期
技術エネルギー関連技術の変化による、投資・運用先等のコスト増加、及びこれに伴う収益悪化短~長期
新技術や代替技術の導入に伴う、当社グループのコスト増加中~長期
市場脱炭素社会への移行に伴う、ファンド保有資産の価値低下や残高減少中~長期③サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資の推進
⑦ステークホルダーとのエンゲージメント強化
経済及び産業の停滞・収縮や金融市場の変化による、当社グループの保有する炭素関連資産の価値低下や売却機会の減少短~長期
レピュテーション気候変動対策の取組み不足や、環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う評判悪化短~長期⑥自社のカーボンニュートラル実現
物理的急性/
慢性
異常気象や風水害による、取引先や投資・運用先等の復旧費用の増加、及びこれらに伴うファンド保有資産の価値低下や残高減少中~長期①サステナブルファイナンスの推進
④サステナビリティを意識したソーシング・投資推進
⑦ステークホルダーとのエンゲージメント強化
豪雨や巨大台風の被災による、太陽光/風力発電設備等の投資物件の価値低下や売却機会の減少、及びこれらに伴う収益悪化短~長期
猛暑や異常気象による、お客様の健康被害の増加や就労の制約、及びこれらに伴う収益機会の減少短~長期
異常気象の発生による、当社グループ役職員の健康被害の増加、就労の制約、及びこれらに伴う収益悪化中~長期減災対策やBCPの策定
自然災害の激甚化による金融システム障害及び当社グループの各事業拠点やデータセンター等の被災による事業中断短~長期

時間軸については、当社グループの経営計画やグローバルの基準との整合性に鑑みて定義しています。具体的には、中期経営計画期間が3年であることを勘案し、それぞれ短期を3年未満、中期を3年以上5年未満、長期を5年以上としています。
2-1-3.気候関連リスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価
当社グループは、気候関連リスクが事業に及ぼす影響を認識するとともに、将来の気候関連の変化や進展及び不確実性に対するレジリエンス評価として、シナリオ分析を行っています。シナリオの詳細と分析にあたっての前提は以下の通りです。
シナリオ分析の前提
項目内容
参照シナリオNGFSによる気候シナリオ
対象期間2050年まで
対象地域主に国内
分析範囲移行リスク・物理的リスクが当社グループに与える影響
分析時期2025年5月

想定シナリオ
(1)秩序ある移行(2)無秩序な移行(3)遅延・不十分(4)ホット・ハウス・ワールド
NGFSによる
気候シナリオ
Net Zero 2050Delayed TransitionFragmented WorldCurrent Policies
シナリオ概要厳格な排出削減政策とイノベーションにより、気温上昇を1.5℃未満に抑制し、2050年に世界のGHG排出量ネットゼロを目指す2030年までに排出量がほとんど減少しない。気温上昇を2℃に抑えるには強力な政策が必要。CO2除去は限定的2030年までに排出量がほとんど減少せず、それ以降の対策も足並み乱れて不十分。気温上昇を抑えられず現在実施されている政策のみが保持される想定。物理的リスクが高くなる
政策導入迅速かつ円滑遅延遅延かつ不十分現行政策のまま
マクロ経済
動向
比較的小幅な
GDP減少
比較的大幅な
GDP減少
比較的大幅な
GDP減少
比較的大幅な
GDP減少
エネルギー
の使用
比較的大幅に減少比較的大幅に減少(2030年代以降)比較的大幅に減少(2030年代以降)比較的大幅に増加
技術変化速い遅い/速い遅い/不十分遅い
気温上昇
(2050年)
約1.5℃約1.5℃約2.5℃約3℃
CO2排出削減(順調)削減(逆風有)削減(不十分)現状の削減維持
シナリオ特性移行
リスク
物理的
リスク
機会

※ NGFS Climate Scenarios Phase Vを参考に作成
① 分析結果
経済及び産業の停滞・収縮、金融市場の変化(株価下落、クレジットリスク増大等)、豪雨・水害等の被害、並びに異常高温による健康被害等が、相対的に懸念される要素として挙げられました。シナリオに当てはめると、移行リスクはCO2排出削減に伴い経済・社会が混乱する(2)無秩序な移行及び(3)遅延・不十分において、物理的リスクはCO2排出削減が遅れる(4)ホット・ハウス・ワールドにおいて、相対的に顕在化すると見込まれます。
一方で、エネルギー転換等が事業に及ぼす影響については、化石資源の削減に伴う既存事業への負の影響と、再エネ等の新エネルギーの増加に伴う新たな事業機会という正の影響が混在しており、全体では中立に近い要因と位置付けられます。なお、転換に伴う費用や税等の負担に応じて影響が変化すると見込まれます。また、CO2排出削減等の気候対策への取組みは企業のレピュテーションを左右する可能性があり、ビジネス全般に間接的に影響を及ぼすと見込まれます。
このように、当社グループは、エネルギー転換等、気候事象と関連の強い社会・経済的な要素について、事業への正の影響と負の影響を総合的に考慮した結果、一定の気候レジリエンスを有していると考えられます。さらに、負の影響を軽減するために、豪雨・水害等を直接被るリスクに対して減災対策や事業継続計画(BCP)を策定するとともに、気候対策を着実に実行してレピュテーションを維持することにより、マクロ経済等が停滞する場合でもその負の影響を抑えることが可能と考えられます。
② 今後の対応
今回のシナリオ分析は、現時点で得られる情報やデータをもとに仮定を設定し、分析対象を限定して検討したものです。例えば、分析範囲については、当社の事業特性上、気候関連リスク及び機会の大部分が集中する国内を主な対象としています。気候関連リスクの考慮対象は幅広く、金融市場(株価・クレジットリスク等)、政策/法律、ESG対応状況に対する評価等の急速な変化に伴い、リスクの発生時期と規模は多様なパターンが想定されます。今後は、より多くの情報と関連データを入手し、財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローへの中・長期的な影響を把握するとともに、気候レジリエンスを高めるためにも、分析手法の改良を図ります。
2-1-4.気候関連機会
当社グループでは、各事業部門にヒアリングの上、シナリオ分析を通じて把握した影響も加味しながら、気候関連リスクと併せて気候関連機会を特定し、その重要性を評価しています。
主な機会の例として、グリーンプロジェクト及び脱炭素社会への移行に要する資金調達等の引受増加(グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門)、新たな金融商品の提供機会の増加や市場の変化による収益機会の拡大(ウェルスマネジメント部門)、脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の増大(アセットマネジメント部門)、サステナビリティ関連のルールメイキングへの参画を通じた市場全体の活性化(グループ全体)等が挙げられます。これらの気候関連機会は、気候関連リスクやその対応と共に、サステナビリティ推進委員会又は執行役会等で議論した上で、適宜、取締役会に報告されています。
気候関連機会の例
事業部門気候関連機会時間軸戦略的な取組み
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門グリーンプロジェクト及び脱炭素社会への移行に要する資金調達等の引受増加短~長期①サステナブルファイナンスの推進
再エネ分野のM&Aの増加短~長期②サステナビリティ分野のM&Aアドバイザリー強化
ウェルス
マネジメント部門
新たな金融商品の提供機会の増加や市場の変化による収益機会の拡大短~長期③サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資の推進
アセット
マネジメント部門
脱炭素技術を持つ企業を組入れた投資信託への資金流入短~長期
太陽光発電所等再エネへの投資と外部資本の導入を通じた投資機会の拡大短~長期④サステナビリティを意識したソーシング・投資推進
脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の増大短~長期
環境性能の高い不動産・実物資産を裏付け資産とする投資法人・私募ファンドの組成・運用短~長期
その他脱炭素社会への移行を支援するソリューションビジネス機会の拡大短~長期⑤サステナビリティ関連のソリューション提供
グループ全体ネットゼロに向けた取組みを通じたレピュテーション向上による事業機会の拡大短~長期⑥自社のカーボンニュートラル実現
発行体や投資家等とのエンゲージメントを通じた脱炭素社会への移行や気候変動対応の支援短~長期⑦ステークホルダーとのエンゲージメント強化
サステナビリティ関連のルールメイキングへの参画を通じた市場全体の活性化短~長期⑧ルールメイキングへの関与

2-1-5.気候変動に関連して推進する戦略的な取組み
当社グループでは、各事業部門で特定した気候関連のリスクと機会を踏まえ、戦略的な取組みを推進しています。移行リスク及び機会への対応策として、以下①から⑧の取組みを推進していきます。物理的リスクへの対応策としては、異常気象、風水害等による社会的インフラの停止によって本店(本社機能)、支店、データセンターが被災して機能できなくなった場合を想定し、BCPを策定しています。
また、役職員の気候変動を含むサステナビリティに関する専門性向上を目的とした研修を実施する等、人材育成も進めています。具体的には、2022年より、社員一人ひとりがサステナビリティに関する知識や意識を向上させ、一層ジブンゴト化することを目指し、全役職員を対象にVision研修を毎年実施しています。
① サステナブルファイナンスの推進
2015年のパリ協定締結以降、世界各国において脱炭素化への取組みが加速しています。当社グループは、グローバルな脱炭素化に向けた取組みを支援するため、本業として積極的にサステナブルファイナンスに取り組んでいます。従前より資金調達の支援はコアビジネスでしたが、SDGsの要素が加わることは、お客様に提供できる付加価値が増える新たなビジネスの機会とも捉えています。また、SDGs関連債リーグテーブルをサステナビリティKPIに設定し、定期的にモニタリングしています。
また、当社グループは、2024年1月31日に策定・公表したグリーンファイナンス・フレームワークに基づき、自社としても国内公募形式によるグリーンボンドを継続的に発行しており、その調達資金は、連結子会社を通じて行った再エネ発電プロジェクトへの投融資資金に係る社債償還資金に充当しました。
② サステナビリティ分野のM&Aアドバイザリー強化
当社グループでは、先行する欧州の有力企業と連携することで、再エネ分野のM&Aアドバイザリーも強化しています。具体的には、同分野に特化したフィナンシャル・アドバイザリー事業を行うGreen Giraffe等との資本業務提携を通じて、事業展開を加速しています。
③ サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資の推進
当社グループは、サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資を強化しています。大和アセットマネジメントでは、サステナブルな社会への移行に向けESGやSDGs目標達成等に取り組む企業を投資先とする投資信託を提供しています。
④ サステナビリティを意識したソーシング・投資推進
当社グループでは、再エネ分野を中心とするサステナビリティを意識したソーシング・投資を推進しています。2018年7月に大和エナジー・インフラを設立し、大和PIパートナーズにおいて取り組んでいたエネルギー投資機能を移管しました。従来は太陽光発電を中心に国内再エネ分野への投資を行っていましたが、現在では海外の再エネ及びインフラストラクチャーの分野へ投資領域を広げています。
さらに、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントでは、ESGに配慮した不動産等、オルタナティブ資産の運用機会を提供しています。同社が運用業務を受託している大和証券オフィス投資法人及び大和証券リビング投資法人では、サステナブルファイナンスによる資金調達を活用し投資を行うことで、環境性能の高いオフィスビルや優良で質の高いヘルスケア施設の供給促進に努めています。
⑤ サステナビリティ関連のソリューション提供
大和総研によるリサーチ、コンサルティング業務において、サステナビリティ関連のソリューション提供を強化していきます。気候変動による経済・社会への影響に関する情報発信や政策提言、気候変動対応をはじめ気候関連リスクに対する経営戦略の立案やプロジェクト支援等のコンサルティングを強化し、お客様の企業価値の向上に繋げていきます。
⑥ 自社のカーボンニュートラル実現
当社グループはカーボンニュートラル宣言を策定し、カーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。詳細は、「2-1-6.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画」をご参照ください。
⑦ ステークホルダーとのエンゲージメント強化
当社グループでは、お客様の脱炭素への移行を金融面で支援するため、発行体や投資家をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメントを強化しています。例えば、環境・社会関連ポリシーフレームワークを基に、環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に関するリスクを認識した上で、投融資先企業とのエンゲージメント等を通じた適切な対応に取り組んでいます。
また、大和アセットマネジメントでは、気候変動をマテリアリティの一つと位置付け、投資先企業とのエンゲージメントを行っています。
⑧ ルールメイキングへの関与
当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献すべく、国内外におけるさまざまな議論形成の場や各種イニシアティブへの参画を積極的に行っています。近年、サステナビリティ開示基準の策定に向けた取組みが進展するなか、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)等を傘下に持つ国際会計基準(IFRS)財団の評議員や、国内のサステナビリティ開示基準の策定を行うサステナビリティ基準委員会(SSBJ)の委員に当社グループの役職員が就任し、積極的な活動を行っています。
また、投融資等を通じたGHG排出量を計測・開示する手法を開発するPartnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)やGXリーグへの参画を通じて、各種ルールメイキングに貢献しています。
2-1-6.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画
① 2030年度までの自社のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロ
2030年度までのカーボンニュートラル実現に向けて、自社のGHG排出量(Scope1・2)のネットゼロを推進します。Scope1・2の推移は以下の通りです。具体的な取組みとしては、省エネ活動の継続及び使用電力の再エネ化等を進めていきます。
Scope1・2の推移
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Scope1・2ネットゼロ推進に向けた取組み例
これまでの取組み例今後の取組み例
エネルギー利用の効率化
設備の切替(空調、照明のLED化)、オペレーションの見直し等
トラッキング付非化石証書の活用等による再エネへの切り替え
大和証券(2024年1月~)・大和総研(2024年4月~)の国内全拠点の使用電力を再エネへ切り替え
エネルギー利用の効率化を継続的に実施
海外拠点等への再エネの導入を検討
カーボンオフセットの活用
Jクレジット等、カーボンクレジットの購入

② 2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量等(Scope3)ネットゼロ
脱炭素社会の実現に向け、自社の排出量だけでなくサプライチェーン全体での排出量の管理・削減が求められています。特に金融機関には、投融資ポートフォリオ排出量(Financed Emissions)の管理が求められています。
当社グループは、2021年12月にPCAF及びPCAF Japan coalitionに加盟し、PCAFの知見やデータベースを活用しながらGHG排出量の計測をしています。2023年度の実績は、従前に比べて対象範囲を拡大させ、高排出セクターに限定しない形で計測を行いました。また、投融資先のScope1・2に加えてScope3も計測しました。なお2023年度には、当社グループの投融資ポートフォリオ排出量において最も大きな割合を占める電力セクターのうち、プロジェクトファイナンスについて、2030年度までの中間目標を設定しました。詳細は、「(4)指標及び目標」をご参照ください。
③ 金融ビジネスを通じた脱炭素社会へのスムーズな移行の支援
総合証券グループとして、金融ビジネスを通じたお客様の脱炭素化に向けた取組みへの支援にも引き続き取り組んでいます。
(人的資本)
2-2-1.人的資本経営に対する考え方
当社グループは、企業理念の一つに「人材の重視」を掲げ、競争力の源泉が人材にあることを明文化しています。この企業理念の下、人事戦略を経営戦略の一環と位置付け、競争力の強化に向けて、社員一人ひとりが多様性・専門性を発揮し、成長や働きがいを感じられる組織を目指しています。
中期経営計画における人的資本経営・人事戦略では、「採用」、「育成」、「人財ポートフォリオ」、「評価・処遇」の進化・深化により、社員のエンゲージメントを高め、人的資本が創出する付加価値を最大限に引き出していくことで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上につなげていきます。
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2-2-2.ポテンシャル人材の「採用」
当社グループは、労働人口の減少や人材の外部流出等に伴う人的リソースの不足が持続的な成長や企業価値向上へ与える影響の重要性に鑑み、積極的な人材の採用を実施しています。
高いポテンシャルを持つ人材の発掘・採用をすべく、グループ各社の特性に応じた採用活動を実施しています。大和証券では、新卒採用(通年)において、応募者が作成した「自分史」をもとに本人の価値観・行動に影響を与えた経験などを共有・把握した上で、現場の部室店長など、複数の目で採用対象者を選出することで、入社後、本人のキャリアパスに沿ったポテンシャルの伸長へとつなげています。
応募者に対しては、様々な部門・部署の社員について、自ら話を聞きたい社員を選択して面談することができる「ジョブサポーター制度」を導入しています。各部門で働く社員の考えや職場の雰囲気、キャリアプラン等について理解を深められることでミスマッチの減少に寄与しています。
また、実務に近く細分化・専門化したインターンシップの実施や高度な専門性をビジネスで活かすことができる人材を評価する人事制度「エキスパート・コース」の導入によって、部門別採用の応募者増加と高いポテンシャルを有する人材の採用強化へとつなげています。
さらに、多様な知識・経験をもつ人材を迎え入れることが企業の持続的な成長につながるという確信から、2022年度からキャリア採用※を積極的に進めています。(新卒を含む年間採用人数764名のうち37.3%)。採用者の多様性を包摂しながら、当社グループに定着し活躍できる環境を整備するためのオンボーディング施策として、入社式やメンター制度、キャリア入社社員との交流チャネルの整備、経営トップを含む懇親会等を実施しています。
※ 正社員としての就業経験があり、当社グループが事業を行っている業界への知見や特定の職種での勤務経験のある方を募集する採用形態。
2-2-3.人材育成方針
「高付加価値人財への『育成』」
「人材」に投資をすることにより、その価値を高め、「人財」へと磨き上げることで、企業の成長へと繋げていくこと、これが当社グループの目指している姿です。変化し続けるビジネス環境においては、必要とされる「人財」の定義も様々です。人材育成においては、社員一人ひとりがパフォーマンス向上やキャリア実現のために何が必要かを考え、自律して学び続けられる環境の整備が不可欠です。大和証券では、これまでの知見やノウハウを活用してカスタマイズされた教育研修プログラムに加えて、全社員を対象に個別最適化された学びを提供することが可能なオンライン動画学習プラットフォーム「Udemy Business※」を導入しています。マネジメントやデータ分析、マーケティングなどをはじめとした最新かつ評価の高いビジネス講座の中から、必要な知識・スキルを選択、習得できるようにすることで、主体的なキャリア形成をサポートしています。
また、お客様ニーズの多様化を受け、質の高いソリューション提案の実現につながるよう、社員の資格取得のサポートとして、試験対策講座受講料・受験料の補助や社内コミュニティによる交流支援等も行っており、2025年3月末時点において、CFP資格取得者数は金融業界最多の水準となっています。
さらに、デジタル・イノベーションの追求に向けて、高度なデジタル技術を活用してビジネス変革を担う人材を育成する「デジタルITマスター認定制度」や全社員を対象にデジタルスキルの向上を図る「Daiwa Digital College」の導入等、デジタル人材の育成にも注力しています。
※ 「Udemy Business」は、Udemyで公開されている世界約25万の講座から、厳選した約30,000講座(2024年12月末時点)を、定額で利用できるオンライン動画学習プラットフォーム。
「適財適所の人財ポートフォリオ」
社員がそれぞれの個性を活かしてパフォーマンスを発揮するためには、自らキャリアを考え自己実現に向けて行動していくことが重要です。自律的なキャリア形成を目的として、1on1ミーティングを通じた上司とのキャリアビジョンや強み・課題の共有、自身の希望するキャリアや職場環境に対する考えを人事部門に直接伝えることができる「自己申告制度」、当社グループ内の様々な業務に自ら手を挙げて異動を実現する「グループ内公募制度」を設けています。
また、社員一人ひとりの考え・想いやスキルレベルなどをリアルタイムで可視化できる「タレントマネジメントシステム」を活用し、社員本人と上司が1on1ミーティングの際に入力・更新した情報を、社員ごとに引き継ぎ、新たな直属上司もこの情報を基にしたキャリアビジョンの共有・育成を行っています。競争力の源泉である人財のキャリア可視化と経営資本としての情報蓄積による、最適な人財ポートフォリオの実現に取り組んでいます。
「公正な評価・処遇体系の構築」
すべての社員がモチベーション高く働き続けるためには、公正で納得性の高い評価が行われることが重要です。当社グループでは、入社年次を問わず、すべての社員がより高いステージや責任の大きいポジションで活躍したいと思えるような評価体系を目指しています。処遇については、Pay for Performanceの考えに基づき、成果や実績をもとにあるべき水準と配分を常に模索しながら、競争力のある処遇制度を整備することで、パフォーマンスに応じた登用を進めています。
当社グループは、2022年度以降4年連続で給与水準の引き上げを実施しています。2025年度の処遇改定では、グループ全体で給与水準を5%程度引き上げることで、過去4年間の累計では20%以上の引き上げとなります。業績拡大に伴う賞与増とあわせ、平均年間給与は2021年度の1,220万円から2024年度の1,626万円に増加しており、3年間で33%増加しております。
また、定量面だけでなく定性面も加味した総合的な評価を行うとともに、複数の目線で評価の妥当性について精査しています。加えて、定期的に社内アンケートを実施し、社員の声をもとに評価や処遇の水準が適切であったか検討するなど、双方向のコミュニケーションを通じて納得性の向上に取り組んでいます。
2-2-4.社内環境整備方針
「エンゲージメントと生産性の向上」
当社グループでは、社員の働きがいを追求するため、各種人事制度の整備や働き方改革に取り組んでいます。社員の率直な意見を把握して継続的な改善活動につなげていくこと、また、企業業績と相関関係にあるエンゲージメントを包括的に計測し、生産性や業績の向上につなげるため、匿名形式の「エンゲージメントサーベイ」を定期的に実施しています。当該サーベイでは、当社グループにおける「企業理念」「中期経営計画」「2030Vision」等の要素を組み入れながら、エンゲージメントに影響を及ぼす要素を網羅的に把握するコンセプトのもと、設問を設計しています。当該サーベイにより、グループ各社がそれぞれの強みや課題を把握し、改善アクションを行うとともに、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に向けた活動を継続しています。なお、業績と相関性の高いサーベイスコア※1であるとされる「持続可能なエンゲージメント※2」をグループKPIに設定しており、2024年度の調査においてグループ全体でのスコアは81%となっています。これはWTW日本基準値※3を上回り、グローバル高業績企業基準値※4も射程距離に捉えた水準であると認識しています。グローバル高業績企業基準値の水準を意識し、現行の水準を向上すべく改善活動に取り組んでいます。
また、エンゲージメントサーベイの結果と財務指標、人事関連指標との相関分析を実施しています。過去4回の結果より、グループKPIに設定している「持続可能なエンゲージメント」のスコア及び一部設問のスコアが生産性(収益/労働時間)や離職率と統計有意に相関することが確認されました。
「生産性の向上」においては、人への直接的な投資のみならず、人が使うシステムも含め「人的資本投資」と考えています。基本的なシステムインフラの整備を行うことで従業員が価値創出できる時間を増やし、「デジタルIT人材」の積極的な育成や、デジタルツールを駆使した、蓄積したデータの分析・研究・活用を行うことで、効率的なビジネスの仕組みづくりに取り組むと同時に、社員一人ひとりがより一層イノベーティブな業務に取り組めるよう環境を整備しています。
※1 数値及び分析資料はサーベイパートナーであるウイリス・タワーズワトソンより提供。数値は、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計のうえ、当該カテゴリーの全設問における当該割合の平均値を算出したもの。
※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康などによって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す、ウイリス・タワーズワトソンの概念。同社は、持続可能なエンゲージメントのスコアが高い企業は当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしている。当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。
※3 ウイリス・タワーズワトソンにて当該サーベイを実施している企業の中で、日本で働いている回答者のスコアの加重平均値。
※4 ウイリス・タワーズワトソンにて当該サーベイを実施している企業のうち、(i)純利益やROIC等、財務及び業績に関する所定の指標が過去3年間継続して当該企業が属する業界の全世界平均値を上回っており、かつ、(ⅱ)当該サーベイの中で、人事、人材及び組織に関連する質問への肯定的回答の割合が当該企業が属する業界の全世界平均値と比べて特に高い水準にある、という2つの条件を満たす企業の調査結果の加重平均値。
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「ウェルビーイングの向上と健康経営推進」
当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001や、厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を参考に、適正な労働条件や職場環境の整備をはじめ、社員が心身ともに健康で働き続けられるよう、労働安全衛生の確立に積極的に取り組んでいます。
社員のウェルビーイング向上により生産性を高め、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けることを目指し、CHO(最高健康責任者)に人事担当役員を選任している他、毎年、グループ全役職員の健康状態を分析した「健康白書」を作成し、CHO主催の「健康経営推進会議」を定期的にグループ横断で開催し、健康経営のための取組の評価・改善を行っています。
また、人事部・総合健康開発センター(医務室)・健康保険組合の3者が協働して健康施策に関する企画・発信を行う他、日常的に意見交換を実施することで実効性を高めており、健康経営によって解決を目指す経営課題への取組として、メンタル不全の未然防止のためのマインドフルネス研修の他、睡眠リテラシーの向上に関する施策、歯科の健康施策を導入し、社員のパフォーマンス向上に向けた取組を強化しています。
さらに、全国に勤務する社員がオンラインで医務室を利用できるオンライン診療を導入しており、婦人科を含む様々な科目の診察や薬の処方に加え、こころの健康に関する相談も行っています。また、女性特有の健康課題への対処として、月経・更年期による体調不良や不妊治療の際に取得できる「エル休暇」の導入や治療時間の確保等に加えて、2024年度にはフェムテックを活用したプログラムの導入やリテラシーの更なる向上によって女性の健康について包括的にサポートする「Daiwa ELLE Plan+」として拡充を行いました。
これらの結果をモニタリングするため、プレゼンティーイズム損失割合※1やアブセンティーイズム平均値※2に関する目標値を設定し、定期的に進捗状況の評価を行っております。
こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組む上場企業を選定する「健康経営銘柄」に当社グループは2025年3月に選定されました。2015年の制度開始以来、10回目の選定となります。
※1 プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態。プレゼンティーイズム損失割合は、病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い。
※2 アブセンティーイズムは、病欠、病気休業の状態。アブセンティーイズム平均値は、過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い。
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2-2-5.人権
グローバル化により世界経済が拡大する中、世界では、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大、紛争の勃発等の難題が数多く発生しています。人権侵害をめぐる問題はこれらと密接に関連しており、当社グループでは、企業活動が人権に及ぼす負の影響の拡大を防ぎ、企業活動による人権侵害に関する企業の責任を果たすため、2022年に「人権方針」を制定しました。「人権方針」は、2011年に国連にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2017年に日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国家アクションプラン」に準拠しており、具体的な取り組みについては、人事担当役員を委員長とする「人権啓発推進委員会」にて検討を行い推進しています。
2-2-6.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、特に注力すべき重点分野の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、社員一人ひとりが強み・個性を活かして最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、ジェンダー・年齢・障がい・人権・LGBTQ+・採用ルート等、様々な観点からダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
代表執行役社長CEOを委員長とする「ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会」では、複数の経営幹部が、テーマに応じてアドバイザーとして任命した全国の部室店の役職員とともに幅広いテーマで議論を行い、取るべきアクションを具体化して、制度や施策の拡充につなげています。
また、各種制度等の浸透度等をモニタリングし状況に応じて改善を目指すべく、マネージャーに対する多面評価に「育児・介護等の各種両立支援制度やワーク・ライフ・バランスに関する諸制度を利用しやすい環境を整えている」「部下の意見や考えに公平に耳を傾け、心理的安全性が保たれた組織運営を行っている」等のダイバーシティ推進に関する項目を導入しています。
近年では、LGBTQ+に関する制度拡充や理解促進にも力を入れており、各自治体における「パートナーシップ制度」において、自治体より公式に認定されたパートナーを社内制度においても配偶者と同等と認める運用や社内外の相談窓口の設置、LGBTQ+を理解・支援する「Daiwa ALLYネットワーク」の構築などを進めてきました。この結果、2024年度には、一般社団法人work with Prideが主催し、職場におけるLGBTQ+などの性的マイノリティへの取り組みを評価する「PRIDE指標2024」において、最高評価である「ゴールド」を獲得しました。すべての社員が安心して業務に取り組むことができる職場環境の整備とともに、インクルーシブな文化の醸成を目指しています。
2-2-7.女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消に向けた取組
当社グループの社員に占める女性の割合は40.4%(2024年度末/提出会社及びすべての国内連結子会社、以下同じ)となっており、ダイバーシティ推進のなかでも女性活躍推進を重要課題と捉えて、アンコンシャスバイアスの解消をはじめ、可能性を引き出していくための様々な施策に取り組んでいます。
各社の事業特性や人員構成は異なりますが、グループ一体での推進を図るため、2014年度より四半期ごとに各社の人事担当役員が集う「女性活躍ミーティング」を実施し、各社の状況に応じた目標に関し、進捗状況や好事例等を共有することで連携を深めています。これまで連綿と続けてきたことが奏功し、女性管理職比率は20.4%となり、当社グループがサステナビリティKPIの1つとして、2026年度までの目標として定める女性管理職比率20%以上(連結)を達成しています。
こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍の推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に当社グループは2025年3月に選定されました。2012年の制度開始以来、10回目の選定となります。
2-2-8.ファイナンシャル ・ウェルネス
社員の金銭状態(家計)が悪化すると、ストレスや心理的な負担が増加し、生産性やモチベーションの低下に繋がるだけでなく、社員による不祥事等も発生しやすくなり、当社グループの信頼性にも悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、社員に対し適切な金銭管理を促すことで個人の経済的な健康度の維持・向上にも努めており、奨学金支払いの負担軽減に向けた「奨学金返済サポート貸付」や、「持株会」「職場つみたてNISA」に奨励金を付与する等、社員の経済的自立を支援しています。また、財形貯蓄制度、ストック・オプション制度、住宅取得のための融資制度を設けている他、退職後の資産形成に向けた確定拠出型年金(401K)制度等を導入することで、社員の幸福度・満足度の向上を図り、生産性を引き上げることを目指しています。

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