有価証券報告書-第86期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/29 15:08
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【項目】
184項目

対処すべき課題

2022年度は、個人消費の回復や企業業績の改善が見られましたが、世界的な物価上昇を受けたコストプッシュ型のインフレーションが進行するとともに、各国中央銀行の利上げ等に伴う金利上昇を受け、急激な円安が進行するなど、先行き不透明な環境となりました。また、米国の一部の金融機関の経営不安に端を発する預金者の取り付けが当該金融機関の経営破綻を引き起こす事象が発生する等、金融システム全体の不安定性に対する懸念が高まる局面もありました。
当社グループでは、収益構造や事業ポートフォリオの多様化を目的としたハイブリッド戦略を推し進め、このような不確実性の高い市場環境下においても、安定的な業績を確保できるよう目指しております。また、このように世界情勢における不透明さが増す中でも、当社グループとしては金融・資本市場を通じ、その課題解決に向けて尽力してまいります。
当社グループでは、2021年度より3ヵ年の中期経営計画~“Passion for the Best”2023~を掲げ、「未来を共に創るベストパートナー~Be with you~」をスローガンに、基本方針として「クライアントファーストとクオリティNo.1の実現」、「ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立」、「デジタルとリアルのベストミックスの追求」を掲げており、これまで中期経営計画の柱のひとつとなる資産管理型ビジネスモデルへの転換が着実に進捗してきたことに加え、ハイブリッド戦略の推進による付加価値の高い商品・サービスの創出や収益構造の多様化も進展し、「未来を共に創るベストパートナー~Be with you~」に向けて着実に前進してきています。
なお、中期経営計画における主な数値目標として、連結自己資本利益率(ROE)(2023年度において10%以上)、連結経常利益(2023年度において2,000億円以上)、リテール部門における残高ベース収益比率(2023年度第4四半期において50%以上)、ハイブリッド関連経常利益(2023年度において500億円以上)及び大和証券における預り資産(2023年度において90兆円以上)等を定めております。
また、2022年度の状況及び今般の情勢に鑑み、2023年度の大和証券グループ経営方針を下記のとおり定めております。
2023年度 大和証券グループ経営方針
2022年度は、ロシアのウクライナ侵攻と世界の分断、インフレ圧力の高まりと金融引き締めなど、グローバル経済が大きな転換点を迎える中、証券・金融市場は激しい変動に見舞われました。そのような厳しい環境の中、当社グループにおいては、中期経営計画~“Passion for the Best”2023~に掲げた各種施策を推し進め、一定の成果を残すことが出来た1年となりました。具体的には、資産管理型ビジネスモデルへの移行とハイブリッドビジネスの拡大による新たな商品・サービスの創出を通じて、収益構造の多様化・安定化が着実に進展しており、当社グループが目指す方向性が正しいことを改めて示す結果となりました。
中期経営計画の最終年度となる2023年度は、未だ先行きの不透明感は払拭されていないものの、我が国においてもコロナ禍が節目を迎えるとともに約30年にわたり続いてきたデフレからの脱却への転換点を迎えます。また、NISAの抜本的拡充やiDeCoの利便性の向上など、資産所得倍増プランに掲げる政府の取り組みは「貯蓄から投資へ」の流れを後押しするものとなります。当社グループとしては、環境変化にぶれることなく、「お客様の最善の利益」を追求した資産管理型ビジネスモデルへの移行を愚直に推し進めます。加えて、ハイブリッドビジネスの強化を通じて、幅広いお客様のニーズに適したオルタナティブ投資機会の拡充を図ります。更に、揺るぎ無いサステナビリティの潮流を踏まえ、トランジション・ファイナンスをはじめとした社会課題の解決に向けた取り組みをサポートします。
これらの取り組みを同時並行で推進することで、マーケット環境に左右されにくい収益構造を構築すると共にサステナブルで豊かな社会の実現に貢献していきます。
2023年度の各事業部門アクションプランは以下のとおりであります。
(1) リテール部門
① 資産管理型ビジネスモデルの確立
② 多様なお客様ニーズに応える商品・サービスの提供、総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大
③ 外部チャネルとの業務提携を活用したニュービジネス展開と収益化
④ マスマーケティング及びお客様対応のデジタルシフト、サステナビリティへの取り組み
(2) ホールセール部門
① お客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
② リテール部門との更なる連携強化によるビジネス基盤の拡大
③ 収支構造の改善に向けたグローバルビジネスの再構築
④ サステナブルファイナンスの促進による企業支援
⑤ デジタル人材拡充とデータ駆動型ビジネスの推進
(3) アセット・マネジメント部門
① 運用力・発掘力・商品アレンジ力強化による既存事業の拡大
② オルタナティブ資産を投資対象とした商品の開発等、新ビジネスの研究開発・事業化
③ 不動産アセット・マネジメント事業における資産運用力強化及び事業基盤の確立
④ グループ内連携による、不動産等オルタナティブ関連ビジネスの推進
(4) 投資部門
① 優良な投資機会の発掘、投資先のバリューアップ及びモニタリング体制の強化
② 再生可能エネルギー分野でのキャピタル・リサイクリングモデルの推進
③ 継続的なVCファンド運用ビジネスの確立
④ サステナビリティを意識した社会的意義のある投資対象の開拓
(5) その他(大和総研グループ)
① ITサービスのプラットフォーム化やAI・データサイエンスによる新たな価値の創出
② 高品質で安定的なサービスを低コストで提供することで、大和証券グループのコストダウンへ貢献
③ お客様企業の特性に応じた営業体制の更なる強化、お客様ニーズに沿ったコンサルティングからシステムまでトータルソリューションの提供、データサイエンスやサイバーセキュリティ等の高度な知見を要するソリューションによるビジネス基盤の拡大
④ 情報発信と情報収集・意見交換との好循環を起こしてリサーチクオリティの向上
(6) その他(大和ネクスト銀行)
① 預金量の拡大と収益性の両立
② グループ内連携の強化
③ 国内外の金利環境に応じた運用残高の拡大や、運用対象の多様化
④ 応援定期預金やESG投融資への継続的取り組み