有価証券報告書-第105期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2021年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスの提供を通じて、お客様の豊かな人生をサポートすること」を企業理念として掲げております。企業理念を実現するうえでは、優位性のある顧客体験価値を提供することが何より重要だと考えており、お客様の投資や資産形成をサポートするべく、個人投資家の様々なニーズを満たすための金融商品・サービスを提供することに努めます。
(2) 目標とする経営指標
当社は、限られた経営資源を有効活用することで、利益の最大化・株主価値の極大化を図ることを経営目標として掲げており、目標とする経営指標としては、資本の効率性(経営資源の有効活用度)を示すROE(自己資本当期純利益率)が最適と考えております。また、当社は、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と位置付けており、中長期的に株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成することを経営目標としております。
当事業年度のROEは12.9%となり、株式等委託売買代金や信用取引残高の増加等を背景に、前事業年度の7.0%から上昇しました。上記の目標値を達成しており、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
(3) 経営環境
当社は、経営資源をオンラインベースのブローキング事業に集中し、効率的なオペレーション体制を維持しております。また、①オンライン証券会社のパイオニアとしてのブランド・知名度及びそれに基づく信頼性、②お得感のある分かりやすい手数料体系、③シンプルで使い勝手を追求した取引ツール、④店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえて構築された充実のサポート体制を背景として、顧客からの安定した支持を受けていると考えております。コロナ禍において、オンライン中心のコミュニケーションが広がっており、オンラインベースの事業については、そのオペレーションの効率性のみならず、事業としての優位性は高まっていると認識しております。この傾向は加速化されるものと考え、オンラインベースのビジネスモデルに集中する方針を堅持し、そのサービスを磨いていく方針です。
株式のオンライン取引サービスは、1998年に当社が国内で初めて開始しました。それ以降、個人の株式等委託売買代金に占めるオンライン証券会社顧客の比率は年々上昇を続け、現在では9割を超えております。一方、個人の株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は、未だ3割程度に留まっておりますが、その比率は年々拡大しております。対面型の証券会社からオンライン証券会社への株式資産の流入は継続しており、今後も、オンライン証券会社を通じた個人株式等委託売買代金の拡大余地があるものと考えます。
オンライン証券業界においては、個人の株式等委託売買代金は当社を含む主要7社(当社、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券、GMOクリック証券、岡三オンライン証券)による寡占状態が続いており、個人の株式等委託売買代金における各社のシェアは、取引手数料の水準に応じて固定化されつつあります。業界における取引手数料は、最低水準にまで低下しているため、この数年、顧客の争奪に係る取引手数料の引き下げ競争は落ちついておりました。しかし、2019年9月下旬以降、米国のオンライン証券業界において、大手各社が株式委託手数料の無料化を相次いで発表したことを受けて、日本のオンライン証券業界においても、株式委託手数料の一部を無料とする動きや、既に無料としている取引の対象を拡大する動き等が広がりました。ただし、米国のオンライン証券会社とは事業環境や収益構造が大きく異なることから、日本では、信用取引金利の引き上げを組み合わせた信用取引手数料の無料化や収益への影響が小さい部分的な手数料の引き下げに留まっており、主要各社の市場シェアにもほとんど変化は見られません。
このような動きを受けて、競合各社においては、収益構造の見直しを掲げており、FX(外国為替証拠金取引)・投資信託、ホールセール事業、運用業等への事業拡大に注力するとともに、預かり資産からの収益拡大に向けたサービスの強化、株式委託手数料の収益に対する依存度を低下させるべく、これまで以上の収益源の多様化が進められるものと考えます。
業界における新たな潮流としては、近年、異業種やフィンテックベンチャーによる新規参入が相次いでおります。現在のオンライン証券会社のビジネスモデルは、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えるものの、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存している状況にあります。新規参入の動きは、顧客一人ひとりの資産規模は小さいながらも、数多くの顧客にアプローチすることで収益をあげるという、ロングテールのビジネスモデルを目指すものです。こうした新たなビジネスモデルへの挑戦は、新規参入業者に限らず、当社のような既存証券会社も含めた業界全体として取り組まれている共通の課題となっています。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
(a)株式ブローキング事業の強化
当社は、オンラインベースの株式ブローキング事業を主たる事業として注力しております。オンライン証券業界における個人の株式等委託売買代金シェアを維持・拡大するため、今後も顧客満足度の向上に資する付加価値の高い商品・サービスの開発・提供に取り組み、顧客基盤の強化を図ります。
当事業年度においては、「短期信用取引」を開始し、無期限信用取引では売建できない株主優待関連の銘柄の取引を可能としました。また、株主優待の権利取得や信用取引の返済期限の繰り越しを目的とした取引に利用される「クロス注文」をオンラインで受け付けるサービスを大手ネット証券で初めて導入したほか、「松井証券 株アプリ」の提供を開始し、取引の利便性向上に努めました。その他、個人投資家に人気のあるIPO銘柄においては、法人営業担当部署の組織を強化して引受件数の向上に努めた結果、前事業年度の2倍の銘柄を取り扱いました。
(b)商品・サービスの拡充
当社の主たる収益源である株式ブローキング事業は、取引頻度が高い一部の顧客に依存しており、その結果、株式市況と業績との連動性が高い状況にあります。長期的な事業環境の変化に対応するためには、業容の広がりが不可欠となっており、オンラインベースでの商品・サービスの拡充を積極的に進める方針です。また、当社にはない技術やノウハウを必要とする事業については、フィンテックベンチャー等の外部企業との提携を積極的に進める方針です。
具体的には、2016年11月より開始した投資信託事業について、継続的にサービスの拡充及び預かり資産残高の拡大に取り組んでおります。当事業年度においては、信託報酬の一部をお客様に現金で還元する日本初のサービス「投信毎月現金還元サービス」を開始し、投資信託の保有に伴うお客様のコスト負担削減に取り組みました。また、取扱銘柄を継続的に拡充し、近年注目を集めるESG・SDGs関連の銘柄も追加しました。投資信託事業への取り組みは、将来的なアセットサービス拡大に向けた布石と考えております。
FX事業では、2019年5月にサービスの全面的なリニューアルを行い、パソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新すると共に、取引通貨ペアの拡充、取引通貨単位の引き下げ等を実施しました。当事業年度においては、「初めての方でも少額から簡単に始められる“あんしんFX”」をコンセプトとする新ブランド「松井証券MATSUI FX」を開始しました。また、全取引通貨ペアのスプレッドを業界最狭水準に縮小したほか、最低取引単位を1通貨単位に引き下げました。今後も、取引規模の拡大に向けて、継続的に事業の強化を図ります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(4)に記載の、経営方針及び中長期経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
(a)認知度の向上
当社のコアとなる顧客層は50歳以上の個人投資家であり、口座数全体の半数、顧客の預かり資産残高全体の8割近くを占めております。このような状況は、オンライン証券業界のみならず、個人向けの金融サービスを提供する業界全体に共通する傾向と考えております。一方、当社における新規口座開設者の内訳をみると、30代以下の顧客が全体の4割超を占めており、若年層の流入もありますが、長期的な顧客層の維持・拡大のためには、特に現在の若年層における認知度の向上は重要な課題であり、継続的に当社のブランド・知名度の向上に取り組んでまいります。
当事業年度においては、テレビCMの配信や東京ドームのベンチ内に社名広告を掲出するなど、認知度向上に向けた取り組みを強化しました。また、引き続き、就職、転職、結婚、出産、育児、定年といったライフイベントを迎える顧客層に向け、プロモーションを強化しました。『不安はぜんぶ、松井にぶつけろ』をコンセプトとした「ライフと松井」特設サイトのコンテンツを拡充したほか、広告動画の配信、SNSを活用したキャンペーン等を実施しました。新たな取組みとして、結婚式準備の総合ポータルサイト『マイナビウエディング』や中高年の暮らしとキャリアを豊かにする情報サイト『ミドルシニアマガジン』と連携し、資産形成のヒントとなる情報を発信しました。
(b)顧客基盤の拡大
当社を含むオンライン証券会社は、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えますが、口座数全体に対する稼働口座数の比率は低く、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存しております。そのため、顧客の裾野拡大に継続して取り組むことが今後の課題となっております。
当事業年度においては、松井証券ポイントの交換対象にNTTドコモが提供する「dポイント」を追加しました。会員数7,900万人超、店舗やネットで利用できる提携店が約9万(店・サイト)にも上る異業種のサービスと連携することで、顧客の裾野拡大に取り組んでおります。
他方、対面型の証券会社に預けられている個人投資家の金融資産は継続的にオンライン証券業界に流入し、個人株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は年々拡大しております。そこで当社としては、取引頻度が高い顧客向けのトレーディングサービスとして株式、先物、FXを継続して強化するとともに、取引頻度は低いものの将来に向けて資産形成を目指す顧客に向けたアセットサービスである投資信託にも注力します。当事業年度にサービスを開始した投信毎月現金還元サービスを通じて、投資信託の分野においても、対面型の証券会社からオンライン証券会社への顧客及び資産の流入推進に取り組み、新たな顧客層の獲得を図ります。
(c)サービスクオリティの向上
オンライン証券各社が提供する金融商品には大きな差がないため、より利便性が高い取引ツールや有益な投資情報により、お客様にとって価値の高い証券会社と感じられる取組みが重要だと考えております。
当事業年度においては、「松井証券 株アプリ」の提供を開始し、よりシンプルで操作しやすい画面と充実した情報検索により、情報収集から取引まで一つのアプリで完結できるようにしました。また、新たな投資情報ツールとして、アクティビストを含む大口投資家の取引動向を把握し、株価チャートと組み合わせて利用できる「アクティビスト追跡ツール」の提供を開始しました。他にも、投資情報メディア「マネーサテライト」を新設し、これから投資を始める初心者から上級者まで、資産運用をサポートする投資情報の提供を強化しました。
(d)取引システムの安定性の確保及びセキュリティの強化
取引システムの安定性の確保は、オンライン証券会社の生命線です。顧客が安心して取引することができるよう、システム障害やサイバー攻撃、自然災害といった想定されるリスクへの対策を講じるとともに、取引量の増加に備えたキャパシティを確保し、取引システムの安定的な稼働に努めます。
当事業年度においては、セキュリティ強化を目的として、パスワードや取引暗証番号の設定をより複雑な条件としたほか、出金先銀行の登録・変更手続き時におけるSMS認証を導入しました。
当事業年度において、証券取引システムの開発・運用業務の委託先であるSCSK株式会社の元従業員が、当社のお客様になりすまして有価証券を売却し、その売却代金や別途お預かりしていた現金を不正に取得した事案を3月に公表しました。本件は、当社の監視態勢が十分でなかったことが原因であると認識しております。再発防止策として権限管理とモニタリングの強化を実行いたしました。今後においては、通信ネットワーク管理の強化等を通じて、委託先の管理態勢をさらに強化し、引き続き信頼回復に努めていく所存です。
(e)コンプライアンス体制の強化及び顧客サポート体制の充実
当社は、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制について、より一層の強化に努めます。また、商品・サービスの拡充に伴う業容拡大に対応するため、店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえ、コールセンターを通じた顧客サポート体制についても更なる充実を図ります。
当事業年度においては、お客様一人ひとりのご希望や投資スタンスに寄り添い、銘柄探しや取引タイミング等の意思決定をサポートする「株の取引相談窓口」を開設しました。また、FXでは夜間も利用可能な無料の電話相談窓口「MATSUI FX あんしんサポート」を開設し、安心して取引いただける顧客サポート体制を整備しました。なお、当社のコールセンターは、第三者評価機関であるHDI-Japan(ヘルプデスク協会)が主催する「2020年度問合せ窓口格付け(証券業界)」において、最高評価の「三つ星」を10年連続で獲得しております。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスの提供を通じて、お客様の豊かな人生をサポートすること」を企業理念として掲げております。企業理念を実現するうえでは、優位性のある顧客体験価値を提供することが何より重要だと考えており、お客様の投資や資産形成をサポートするべく、個人投資家の様々なニーズを満たすための金融商品・サービスを提供することに努めます。
(2) 目標とする経営指標
当社は、限られた経営資源を有効活用することで、利益の最大化・株主価値の極大化を図ることを経営目標として掲げており、目標とする経営指標としては、資本の効率性(経営資源の有効活用度)を示すROE(自己資本当期純利益率)が最適と考えております。また、当社は、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と位置付けており、中長期的に株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成することを経営目標としております。
当事業年度のROEは12.9%となり、株式等委託売買代金や信用取引残高の増加等を背景に、前事業年度の7.0%から上昇しました。上記の目標値を達成しており、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
(3) 経営環境
当社は、経営資源をオンラインベースのブローキング事業に集中し、効率的なオペレーション体制を維持しております。また、①オンライン証券会社のパイオニアとしてのブランド・知名度及びそれに基づく信頼性、②お得感のある分かりやすい手数料体系、③シンプルで使い勝手を追求した取引ツール、④店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえて構築された充実のサポート体制を背景として、顧客からの安定した支持を受けていると考えております。コロナ禍において、オンライン中心のコミュニケーションが広がっており、オンラインベースの事業については、そのオペレーションの効率性のみならず、事業としての優位性は高まっていると認識しております。この傾向は加速化されるものと考え、オンラインベースのビジネスモデルに集中する方針を堅持し、そのサービスを磨いていく方針です。
株式のオンライン取引サービスは、1998年に当社が国内で初めて開始しました。それ以降、個人の株式等委託売買代金に占めるオンライン証券会社顧客の比率は年々上昇を続け、現在では9割を超えております。一方、個人の株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は、未だ3割程度に留まっておりますが、その比率は年々拡大しております。対面型の証券会社からオンライン証券会社への株式資産の流入は継続しており、今後も、オンライン証券会社を通じた個人株式等委託売買代金の拡大余地があるものと考えます。
オンライン証券業界においては、個人の株式等委託売買代金は当社を含む主要7社(当社、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券、GMOクリック証券、岡三オンライン証券)による寡占状態が続いており、個人の株式等委託売買代金における各社のシェアは、取引手数料の水準に応じて固定化されつつあります。業界における取引手数料は、最低水準にまで低下しているため、この数年、顧客の争奪に係る取引手数料の引き下げ競争は落ちついておりました。しかし、2019年9月下旬以降、米国のオンライン証券業界において、大手各社が株式委託手数料の無料化を相次いで発表したことを受けて、日本のオンライン証券業界においても、株式委託手数料の一部を無料とする動きや、既に無料としている取引の対象を拡大する動き等が広がりました。ただし、米国のオンライン証券会社とは事業環境や収益構造が大きく異なることから、日本では、信用取引金利の引き上げを組み合わせた信用取引手数料の無料化や収益への影響が小さい部分的な手数料の引き下げに留まっており、主要各社の市場シェアにもほとんど変化は見られません。
このような動きを受けて、競合各社においては、収益構造の見直しを掲げており、FX(外国為替証拠金取引)・投資信託、ホールセール事業、運用業等への事業拡大に注力するとともに、預かり資産からの収益拡大に向けたサービスの強化、株式委託手数料の収益に対する依存度を低下させるべく、これまで以上の収益源の多様化が進められるものと考えます。
業界における新たな潮流としては、近年、異業種やフィンテックベンチャーによる新規参入が相次いでおります。現在のオンライン証券会社のビジネスモデルは、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えるものの、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存している状況にあります。新規参入の動きは、顧客一人ひとりの資産規模は小さいながらも、数多くの顧客にアプローチすることで収益をあげるという、ロングテールのビジネスモデルを目指すものです。こうした新たなビジネスモデルへの挑戦は、新規参入業者に限らず、当社のような既存証券会社も含めた業界全体として取り組まれている共通の課題となっています。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
(a)株式ブローキング事業の強化
当社は、オンラインベースの株式ブローキング事業を主たる事業として注力しております。オンライン証券業界における個人の株式等委託売買代金シェアを維持・拡大するため、今後も顧客満足度の向上に資する付加価値の高い商品・サービスの開発・提供に取り組み、顧客基盤の強化を図ります。
当事業年度においては、「短期信用取引」を開始し、無期限信用取引では売建できない株主優待関連の銘柄の取引を可能としました。また、株主優待の権利取得や信用取引の返済期限の繰り越しを目的とした取引に利用される「クロス注文」をオンラインで受け付けるサービスを大手ネット証券で初めて導入したほか、「松井証券 株アプリ」の提供を開始し、取引の利便性向上に努めました。その他、個人投資家に人気のあるIPO銘柄においては、法人営業担当部署の組織を強化して引受件数の向上に努めた結果、前事業年度の2倍の銘柄を取り扱いました。
(b)商品・サービスの拡充
当社の主たる収益源である株式ブローキング事業は、取引頻度が高い一部の顧客に依存しており、その結果、株式市況と業績との連動性が高い状況にあります。長期的な事業環境の変化に対応するためには、業容の広がりが不可欠となっており、オンラインベースでの商品・サービスの拡充を積極的に進める方針です。また、当社にはない技術やノウハウを必要とする事業については、フィンテックベンチャー等の外部企業との提携を積極的に進める方針です。
具体的には、2016年11月より開始した投資信託事業について、継続的にサービスの拡充及び預かり資産残高の拡大に取り組んでおります。当事業年度においては、信託報酬の一部をお客様に現金で還元する日本初のサービス「投信毎月現金還元サービス」を開始し、投資信託の保有に伴うお客様のコスト負担削減に取り組みました。また、取扱銘柄を継続的に拡充し、近年注目を集めるESG・SDGs関連の銘柄も追加しました。投資信託事業への取り組みは、将来的なアセットサービス拡大に向けた布石と考えております。
FX事業では、2019年5月にサービスの全面的なリニューアルを行い、パソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新すると共に、取引通貨ペアの拡充、取引通貨単位の引き下げ等を実施しました。当事業年度においては、「初めての方でも少額から簡単に始められる“あんしんFX”」をコンセプトとする新ブランド「松井証券MATSUI FX」を開始しました。また、全取引通貨ペアのスプレッドを業界最狭水準に縮小したほか、最低取引単位を1通貨単位に引き下げました。今後も、取引規模の拡大に向けて、継続的に事業の強化を図ります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(4)に記載の、経営方針及び中長期経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
(a)認知度の向上
当社のコアとなる顧客層は50歳以上の個人投資家であり、口座数全体の半数、顧客の預かり資産残高全体の8割近くを占めております。このような状況は、オンライン証券業界のみならず、個人向けの金融サービスを提供する業界全体に共通する傾向と考えております。一方、当社における新規口座開設者の内訳をみると、30代以下の顧客が全体の4割超を占めており、若年層の流入もありますが、長期的な顧客層の維持・拡大のためには、特に現在の若年層における認知度の向上は重要な課題であり、継続的に当社のブランド・知名度の向上に取り組んでまいります。
当事業年度においては、テレビCMの配信や東京ドームのベンチ内に社名広告を掲出するなど、認知度向上に向けた取り組みを強化しました。また、引き続き、就職、転職、結婚、出産、育児、定年といったライフイベントを迎える顧客層に向け、プロモーションを強化しました。『不安はぜんぶ、松井にぶつけろ』をコンセプトとした「ライフと松井」特設サイトのコンテンツを拡充したほか、広告動画の配信、SNSを活用したキャンペーン等を実施しました。新たな取組みとして、結婚式準備の総合ポータルサイト『マイナビウエディング』や中高年の暮らしとキャリアを豊かにする情報サイト『ミドルシニアマガジン』と連携し、資産形成のヒントとなる情報を発信しました。
(b)顧客基盤の拡大
当社を含むオンライン証券会社は、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えますが、口座数全体に対する稼働口座数の比率は低く、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存しております。そのため、顧客の裾野拡大に継続して取り組むことが今後の課題となっております。
当事業年度においては、松井証券ポイントの交換対象にNTTドコモが提供する「dポイント」を追加しました。会員数7,900万人超、店舗やネットで利用できる提携店が約9万(店・サイト)にも上る異業種のサービスと連携することで、顧客の裾野拡大に取り組んでおります。
他方、対面型の証券会社に預けられている個人投資家の金融資産は継続的にオンライン証券業界に流入し、個人株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は年々拡大しております。そこで当社としては、取引頻度が高い顧客向けのトレーディングサービスとして株式、先物、FXを継続して強化するとともに、取引頻度は低いものの将来に向けて資産形成を目指す顧客に向けたアセットサービスである投資信託にも注力します。当事業年度にサービスを開始した投信毎月現金還元サービスを通じて、投資信託の分野においても、対面型の証券会社からオンライン証券会社への顧客及び資産の流入推進に取り組み、新たな顧客層の獲得を図ります。
(c)サービスクオリティの向上
オンライン証券各社が提供する金融商品には大きな差がないため、より利便性が高い取引ツールや有益な投資情報により、お客様にとって価値の高い証券会社と感じられる取組みが重要だと考えております。
当事業年度においては、「松井証券 株アプリ」の提供を開始し、よりシンプルで操作しやすい画面と充実した情報検索により、情報収集から取引まで一つのアプリで完結できるようにしました。また、新たな投資情報ツールとして、アクティビストを含む大口投資家の取引動向を把握し、株価チャートと組み合わせて利用できる「アクティビスト追跡ツール」の提供を開始しました。他にも、投資情報メディア「マネーサテライト」を新設し、これから投資を始める初心者から上級者まで、資産運用をサポートする投資情報の提供を強化しました。
(d)取引システムの安定性の確保及びセキュリティの強化
取引システムの安定性の確保は、オンライン証券会社の生命線です。顧客が安心して取引することができるよう、システム障害やサイバー攻撃、自然災害といった想定されるリスクへの対策を講じるとともに、取引量の増加に備えたキャパシティを確保し、取引システムの安定的な稼働に努めます。
当事業年度においては、セキュリティ強化を目的として、パスワードや取引暗証番号の設定をより複雑な条件としたほか、出金先銀行の登録・変更手続き時におけるSMS認証を導入しました。
当事業年度において、証券取引システムの開発・運用業務の委託先であるSCSK株式会社の元従業員が、当社のお客様になりすまして有価証券を売却し、その売却代金や別途お預かりしていた現金を不正に取得した事案を3月に公表しました。本件は、当社の監視態勢が十分でなかったことが原因であると認識しております。再発防止策として権限管理とモニタリングの強化を実行いたしました。今後においては、通信ネットワーク管理の強化等を通じて、委託先の管理態勢をさらに強化し、引き続き信頼回復に努めていく所存です。
(e)コンプライアンス体制の強化及び顧客サポート体制の充実
当社は、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制について、より一層の強化に努めます。また、商品・サービスの拡充に伴う業容拡大に対応するため、店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえ、コールセンターを通じた顧客サポート体制についても更なる充実を図ります。
当事業年度においては、お客様一人ひとりのご希望や投資スタンスに寄り添い、銘柄探しや取引タイミング等の意思決定をサポートする「株の取引相談窓口」を開設しました。また、FXでは夜間も利用可能な無料の電話相談窓口「MATSUI FX あんしんサポート」を開設し、安心して取引いただける顧客サポート体制を整備しました。なお、当社のコールセンターは、第三者評価機関であるHDI-Japan(ヘルプデスク協会)が主催する「2020年度問合せ窓口格付け(証券業界)」において、最高評価の「三つ星」を10年連続で獲得しております。