有価証券報告書-第102期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/18 15:09
【資料】
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【項目】
79項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「顧客中心主義」を企業理念として掲げ、「個人投資家にとって最高の取引環境を提供すること」を経営理念としております。「顧客中心主義」を実践するために、変化を恐れず、過去や業界の常識に執着せず、常に可能性を追求し、独自の発想に基づくイノベーティブな商品・サービスを先駆けて提供することに努め、顧客の期待に応えます。
(2) 目標とする経営指標
当社は、限られた経営資源を有効活用することで、利益の最大化・株主価値の極大化を図ることを経営目標として掲げており、目標とする経営指標としては、資本の効率性(経営資源の有効活用度)を示すROE(自己資本当期純利益率)が最適と考えております。また、当社は、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と位置付けており、中長期的に株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成することを経営目標としております。
当事業年度のROEは13.4%となり、株式等委託手数料率の上昇や、株式等委託売買代金及び信用取引平均残高の増加等を背景に、前事業年度の11.4%から上昇しました。上記の目標値を達成しており、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
(a) 株式ブローキング業務の強化
当社は、オンラインベースのブローキング業務を重視し、「選択と集中」を進めることで収益の最大化を図ります。当社のコア業務である株式ブローキング業務については、個人投資家の様々なニーズの中から絞込みを行い、最も合致した商品・サービスを開発・提供することで顧客満足度を高め、顧客基盤の強化を図る戦略が効果的であると認識しております。
当事業年度においては、PTS(私設取引システム)への注文の取次ぎを開始し、夜間取引の取扱いを開始したほか、ネットストック・ハイスピードを始めとする各種取引ツールを継続的に改善しました。今後も個人投資家のニーズに合致したサービスを開発・提供することで顧客満足度を高め、個人投資家から選ばれる証券会社になることを目指します。
(b) 商品・サービスの拡充
当社は、コア業務である株式ブローキング業務に加え、オンラインベースでの先物取引、外国為替保証金取引(FX)、投資信託等の各業務についても強化します。当事業年度においては、AIを活用したFX向け情報ツール「AIチャート・FX」の提供を開始したほか、ロボアドバイザーによるポートフォリオ提案サービス「投信工房」において、ポートフォリオ運用にかかる管理料が無料のアドバイス型サービスとしては日本初となる「自動リバランス」機能を追加するなど、サービスの拡充・改善に努めました。また、当社の取扱商品・サービスを補完するための取組みとして、フィンテック企業との提携を積極的に進め、不動産クラウドファンディング「OwnersBook」及び自動貯金サービス「finbee」とのサービス連携を実施しました。
(c) ブランドの確立
当社はこれまで、手数料の自由化以前に証券業界で横並びであった株式保護預かり料を無料化したことや、一日定額制の手数料体系「ボックスレート」を採用したこと、返済期限が実質無期限の「無期限信用取引」を導入したこと、信用取引の規制緩和にあわせて手数料及び金利・貸株料が原則として無料となるデイトレード限定の「一日信用取引」を導入したこと等、業界の慣習を打ち破る施策を率先して実施したことにより、個人投資家から支持されてきたと認識しております。
当事業年度においては、平成28年11月に取扱いを開始した投資信託について、「お客様の最善の利益の追求」、「利益相反の適切な管理」、「お客様にふさわしいサービスの提供」を担保する目的で、「投資信託の販売に係る基本方針」を公表し、その中で販売手数料を徴収しないこと、商品の仕組みが複雑な投資信託は取扱わないことを宣言しました。顧客本位のサービス提供に努める姿勢を示すことにより、他社との差別化を図ります。また、ロボアドバイザーを活用した当社独自のポートフォリオ提案サービス「投信工房」は、投資の初心者でも、国際分散投資による安定した資産運用を「いつでも」、「簡単」、「手軽に」、「低コストで」開始できるようなサービスを実現しており、これまで証券業界がアプローチしきれていなかった顧客層の獲得を図ります。当社は創業100周年を迎えますが、今後も新たな施策を顧客に提示し続けることで、「イノベーティブな証券会社」としてのブランドの確立・浸透に取り組みます。
(4) 会社の対処すべき課題
(a) 顧客基盤の拡大
当社を含むオンライン証券会社は、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えますが、口座数全体に対する稼働口座数の比率は低く、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存している状況にあります。そのため、顧客層の裾野拡大に継続して取り組むことが今後の課題となっております。当事業年度においては、SNSを活用した広告宣伝や、WEB上で口座開設申込手続きが完了するよう口座開設申込画面の刷新を行ったほか、WEBサイトにおいて新規顧客の獲得や潜在顧客を取引へつなげるための導線を改善するなど、引き続きデジタルマーケティングの強化に取り組んでおります。
他方、対面証券に預けられている個人投資家の金融資産は継続的にオンライン証券業界に流入し、個人株式保有額に占めるオンライン証券の割合は年々拡大しております。そこで当社としては、取引頻度が高い顧客向けのトレーディング・サービスを継続して強化するとともに、取引頻度は低いものの将来に向けて資産形成を目指す顧客に向けたアセット・サービスである投資信託にも注力します。投資信託の分野においても、株式と同様に、対面証券からオンライン証券への顧客及び資産の流入推進に取り組み、新たな顧客層の獲得を図ります。
(b) 取引システムの安定性の確保及び取引ツールの拡充
取引システムの安定性の確保は、オンライン証券会社の生命線です。顧客が安心して取引することができるよう、システム障害やサイバー攻撃、自然災害といった想定されるリスクへの対策を講じるとともに、取引量の増加に備えたキャパシティを確保し、取引システムの安定的な稼働に努めます。また、個人投資家にとって最高の取引環境を提供することは当社の経営理念であり、他社との差別化に資するため、顧客向け取引ツールについてもIT技術の進化・普及等を踏まえて拡充し、個人投資家の取引スタイルの変化に応じた取引環境の提供に努めます。当事業年度においては、AIを活用したFX向け情報ツール「AIチャート・FX」や「投信工房」のスマートフォン向けアプリの提供を開始するなど、引き続き取引環境の改善に取り組んでおります。
(c) コンプライアンス体制の強化及び顧客サポート体制の充実
当社では、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制について、より一層の強化に努めます。また、新商品や新サービス提供等の業容拡大に対応するため、店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえ、コールセンターを通じた顧客サポート体制についても更なる充実を図ります。当事業年度においては、iDeCo(個人型確定拠出年金)の取扱い開始に合わせて、コールセンターに「iDeCoサポート」を設け、専門のオペレーターが対応する体制を整えております。
(d) 低コスト体制の維持
証券業の業績は、株式市況の動向に大きく左右されるため、当社の主たる収益源である株式等委託手数料収入や金利収入の振れ幅は比較的大きいといえます。また、業界における各種取引手数料は、諸外国と比較して最低水準にまで低下しております。この数年、顧客の争奪に係る手数料引き下げ競争は落ちついておりますが、米国においてフィンテックベンチャーの参入を契機にオンライン証券業界における手数料引き下げ競争が再燃していること、日本においても新規参入企業の発表が相次いでいることを踏まえると、再び価格競争が生じる可能性は否定できません。そのような中で継続的に利益を生み出すためには、低コスト体制の維持が不可欠です。効率的な事業オペレーションは当社の競争優位性にも資するものと考えており、引き続きコスト管理について厳格に取り組むことで、低コスト体制を維持します。
(e)株主への利益還元
当社は、株主への利益還元を重要な経営課題として位置付けております。業績に応じた株主利益還元策の実施を基本方針とし、新たな成長に資する戦略的な投資による企業価値拡大の追求と併せて、株主の期待に応えます。配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。