有価証券報告書-第107期(2023/04/01-2024/03/31)
MS&ADインシュアランスグループは、「グローバルな保険・金融サービス事業を通じて安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支える」ことを経営理念に掲げるとともに、「MS&ADインシュアランスグループのサステナビリティ」の考え方を定め、取組みを進めております。
MS&ADインシュアランスグループは、経営理念の実現に向け「価値創造ストーリー」を紡ぐ企業活動を通じて、社会との共通価値を創造し、「レジリエントでサステナブルな社会」を目指します。
信頼と期待に応える最高の品質を追求し、ステークホルダーとともに、地球環境と社会の持続可能性を守りながら、誰もが安定した生活と活発な事業活動にチャレンジできる社会に貢献し続けます。
-以下、略-
また、MS&ADインシュアランスグループでは「パーパスは経営理念と同一である」と定めております。なお、本項に記載した将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
MS&ADインシュアランスグループの「価値創造ストーリー」とビジネスモデル
・MS&ADインシュアランスグループは、保険事業という公共性の高い事業を中心に、社会課題を解決し社会への価値を提供するとともに、我々自身も売上や利益といった価値を享受するという、ビジネスモデル「価値創造ストーリー」を掲げております。
・MS&ADインシュアランスグループは「サステナビリティの考え方」に基づき、保険・金融サービス事業者として、事故や災害をはじめ様々なリスクを引き受け、万一の際の補償を提供します。また、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」、この取組みにより、企業活動を通じた社会との共通価値の創造を実現してまいります。これがMS&ADインシュアランスグループのビジネスモデルであります。
めざす姿「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」
・中期経営計画(2022-2025)では、価値創造ストーリーを実践し、リスクソリューションのプラットフォーマーとして社会課題の解決へ貢献し社会とともに成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざす姿としました。
・MS&ADインシュアランスグループの経営理念の実現に向けて、社会課題に向き合い、当社のビジネスモデルを通じた商品・サービスを提供することで、お客さまが安心して生活や事業活動を行うことのできる環境づくりをサポートしてまいります。
重点課題の特定
・MS&ADインシュアランスグループでは、重点課題(マテリアリティ)の特定にあたり、世界共通の目標や国際的なガイドライン・フレームワーク等を踏まえ、解決が望まれる社会課題を洗い出した上で、ステークホルダーの評価や意思決定に対する影響と、MS&ADインシュアランスグループの事業における影響を評価し、双方にとって重要度の高いものを選択しております。
・具体的な特定プロセスとグループの重点課題は、MS&ADホールディングスのサステナビリティレポートを参照ください。
https://www.ms-ad-hd.com/ja/csr/report/main/00/teaserItems1/00/linkList/00/link/csr_report2023_default_03.pdf
・当社では、グループの重点課題を踏まえ、当社が取り組むべき主な社会課題を特定し、地域・社会課題の解決を通じて、社会のサステナビリティと当社の持続的成長の同時実現を目指してまいります。
(1) サステナビリティに関する取組み
①ガバナンス
当社は、中期経営計画において、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX、当社のサステナビリティ(稼ぐ力の持続性・成長性)と社会のサステナビリティを同時実現する)を成長ビジョンに掲げ、サステナビリティ課題に対する取組みについて、課題別委員会であるサステナビリティ委員会及びERM委員会で論議のうえ取締役会、経営会議へ報告しております。
a.取締役会
・法令・定款に定める事項のほか、経営方針、経営戦略、資本政策等、経営戦略上の重要なサステナビリティ関連事項及び会社経営上の重要な事項の論議・決定を行うとともに、取締役、執行役員の職務の執行を監督しております。
・取締役会では、気候関連を含むリスク・リターン・資本をバランスよくコントロールするため、リスク選好に基づいて経営資源の配分を行い、健全性を基盤に「成長の持続」と「収益性・資本効率の向上」を実現し、中長期的な企業価値の拡大を目指しております。
b.経営会議
・経営方針、経営戦略等、経営に関する重要な事項について協議するとともに、執行役員による決裁事項の一部について報告を受けることにより、具体的な業務執行のモニタリングを行っております。
c.課題別委員会
・業務執行にかかる会社経営上の重要事項に関する論議及び関係部門の意見の相互調整を図ることを目的として設置しております。サステナビリティ関連の課題や取組みは、主として、課題別委員会のサステナビリティ委員会及びERM委員会での論議を経て、取締役会と経営会議の双方に報告し、決定します。
(a) サステナビリティ委員会
・サステナビリティ担当役員が運営責任者となり、営業部門、損害サポート部門、商品・サービス部門、資産運用部門、海外部門、人事部門、リスク管理部門の担当役員等で構成し、サステナビリティ課題の取組方針・計画・戦略等の論議を行っております。2023年度は5回開催し、主な論議テーマは、気候変動や自然資本・生物多様性への対応、人権尊重取組、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、「DE&I」という。)取組等です。なお、各議論の内容は取締役会及び経営会議に報告しております。
(b) ERM委員会
・経営企画部担当役員とリスク管理部担当役員が運営責任者となり、ERMに関する重要事項の協議・調整等を行うとともに、リスク・リターン・資本の状況や気候関連を含むリスク管理の状況等について、モニタリング等を行っております。
②戦略
・当社は、MS&ADインシュアランスグループの重点課題(マテリアリティ)を踏まえ、中期経営計画(2022-2025)において「地球環境との共生(Planetary Health)」「革新的テクノロジー(Innovative Technology)」「強靭性・回復力(Resilience)」「包摂的社会(Social Inclusion)」の4つを、当社が取り組むべき主な社会課題と位置づけております。
・解決が求められている様々な社会課題は、当社の事業活動へのリスクとなる一方で、これらの課題解決につながる商品・サービスの提供を通じて社会との共通価値を創造する取組みは新たな事業機会となり得ます。
・当社は、このようなリスクと機会を踏まえ、社会との共通価値を創造するCSV取組みを進めております。
・当社では、経営が管理すべき重要なリスク事象を「重要リスク」として選定し、重要リスク管理取組計画を策定した上で、リスク対策の実行や各リスクの状況を定期的にモニタリングしております。各重要リスクについて「主な想定シナリオ」を策定しており、この策定においては「気候変動」に留意しております。当社のリスク管理については、第2 事業の状況・3 事業等のリスクを参照ください。
a.地球環境との共生(Planetary Health)
(a) 気候関連のリスク及び機会
・気候変動は、自然災害の激甚化や気象条件の物理的な変化をもたらすほか、脱炭素社会への移行過程で社会や経済の急激な変化をもたらします。保険ビジネスの存続を左右するリスクであり、当社が最優先で取り組むべき課題です。
・気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TCFD」)は、気候関連のリスクを物理的リスクと移行リスクの2つに分類しており、これに基づき当社事業におけるリスクを特定しております。
・一方で、脱炭素社会への移行による社会や経済の変化は、新たな保険商品・サービスの需要の喚起や、新しい産業の勃興、技術革新に伴う顧客企業の業績向上など、MS&ADインシュアランスグループの成長につながる機会をもたらすと考えております。
・TCFDの分類に沿った当社の事業活動におけるリスク及び機会は以下のとおりです。
(b) 自然関連のリスク及び機会
・自然資本の持続可能性向上は、気候変動と同様に、脱炭素社会への移行過程で当社の事業活動に影響を与える重要な課題です。
・自然関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TNFD」)は、自然関連のリスクを物理的リスクと移行リスクの2つに分類しており、これに基づき当社事業におけるリスクを特定しております。
・一方で、ネイチャーポジティブな社会の実現は、新たな保険商品・サービスの需要の喚起や、新しい産業の勃興、技術革新に伴う顧客企業の業績向上など、MS&ADインシュアランスグループの成長につながる機会をもたらすと考えております。
・TNFDの分類に沿った当社の事業活動におけるリスク及び機会は以下のとおりです。
(c) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
・脱炭素化への移行を支援するとともに、気候変動の影響を最小化、生物多様性の喪失等の自然資本の保全・回復に向けた取組みを進めております。
・2050年ネットゼロの実現に向け、商品・サービスの提供や投融資等を通じ、気候変動リスクを低減する新しい技術の発展や脱炭素社会への移行を支える取組みを進めるとともに、財務の健全性・収益の安定性を確保しつつ、台風や洪水等の自然災害によって生じた損害に対して保険金をお支払いすることで、レジリエントでサステナブルな社会を支えております。
・主な取組みは次のとおりです。
イ.気候変動への対応、自然資本・生物多様性の保全・回復に資する商品・サービスの提供
・お客さまの脱炭素化支援や、自然資本・生物多様性の保全・回復に資する商品・サービスの開発・提供に取り組んでおります。
ロ.脱炭素化につながる投融資の実行や、気候変動に対応した対話の実施
・投資や融資を通じて、温室効果ガス(以下「GHG」という。)を削減する技術開発に挑戦する企業を支えるとともに、建設的な対話を通じて、投融資先・保険引受先企業とともに脱炭素社会への移行に取り組んでおります。
ハ.自社事業のGHG排出量削減取組
・社員によるガソリン、電力、紙の使用量削減取組に加え、照明のLED化や空調設備の更新により、ソフト面・ハード面両方のアプローチで当社事業のGHG排出量削減を進めております。
ニ.官民連携の自然災害補償スキームへの参画による新興国の復興支援
・新興国の自然災害リスク軽減や災害後の早期復興の支援により、プロテクションギャップ縮小に取り組んでおります。
b. 革新的テクノロジー(Innovative Technology)
(a) リスク及び機会
・革新的テクノロジーはイノベーションの進展や産業構造の変化を引き起こすとともに、サイバーリスクによる情報インフラの機能停止など、新たなリスクへの対処に取り組むべき課題です。
・社会のIoT化・5G化や自動車のコネクティッド化の進展によるサイバーリスクの増加や、AI、宇宙開発、拡張・仮想現実などでの新たなリスクの発現への対処は、当社事業におけるリスクでもあり機会でもあると考えております。
(b) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
イ.サイバーセキュリティ・ソリューションの開発
・セキュリティ対策が十分でない中小企業に対し、低廉なコストでソリューション提供を行っていくため、米国インシュアテック企業との共同開発に取り組んでおります。
ロ.AIを活用した新サービスの開発・提供
・運送事業者向け安全運転ソリューションや、交通事故発生リスクの可視化サービスなど、AIを活用した新サービスを開発・提供しております。
ハ.宇宙マーケットへの取組強化
・宇宙旅行保険事業の開始や、月への航行・着陸を補償する「月保険」の開発など、宇宙マーケットの取組みを強化しております。
c. 強靭性・回復力(Resilience)
(a) リスク及び機会
・社会インフラの老朽化や多発・激甚化する自然災害によるサプライチェーンの寸断は、当社事業におけるリスクとなる一方で、被害の予知、防災・減災サービスは新たな機会にもつながると考えております。
・また、事故や災害からの生活再建や復旧の支援は、レジリエントで包摂的な地域社会づくりに貢献するとともに、損害発生の未然防止につながると考えております。
(b) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
イ.ドラレコ・ロードマネージャー
・ドライブレコーダーの道路映像データとAI画像分析技術を組み合わせ、道路損傷箇所を自動的に検出し、自治体等による道路点検・管理業務を支援する「ドラレコ・ロードマネージャー」を提供しております。
ロ.防災ダッシュボード
・気象や災害に関するデータをリアルタイムで可視化するとともに、水災リスクや災害発生後の被災規模をAIで予測するなど、災害時に必要な情報を一元化する自治体向けサービスを開発・提供しております。
ハ.罹災証明書発行手続き支援サービス
・水災時に当社が入手する損害調査情報を、お客さまの同意のもと自治体に提供することで、罹災証明書の発行を迅速にするサービスを行っており、全国の自治体で導入を拡大しております。
d. 包摂的社会(Social Inclusion)
(a) リスク及び機会
・少子高齢化や人口減少、地方の過疎化などの進行による国内市場の中長期的縮小は、当社事業においてマーケットや収益の縮小につながるリスクとなる一方で、自治体や地域企業、大学等と連携した地方創生取組は当社事業における機会になると考えております。
・また、企業による人権侵害リスクやジェンダー等に関する不平等・不公正は当社事業におけるリスクとなる一方で、人権デューディリジェンスの推進・支援や、女性、高齢者、障がい者、セクシュアルマイノリティのお客さまを考慮したDE&Iの推進は当社事業の中期的な成長実現につながる機会と考えております。
(b) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
イ.SDGs推進を通じた地方創生取組
・自治体や地域金融機関、商工団体等と連携し、地域企業のSDGs支援や災害対策支援の提供等、地方創生に資する取組みを推進し、多様化する地域課題の解決や地域の活性化に貢献しております。
ロ.「育休職場応援手当(祝い金)」の創設
・出産・育児を職場全体で祝い、快く受け入れて支える企業風土を醸成するため、育児休業取得者本人を除く職場全員に一時金を支給する「育休職場応援手当(祝い金)」を創設しました。
ハ.社員のリカレント教育費用を支援する「Re学(リガク)」制度の創設
・転居転勤の少ない社員の視野拡大やスキルアップを図るため、2023年4月から、大学等が開講しているリカレント教育プログラムの受講費用を支援する施策を開始しました。
③リスク管理
・当社は、サステナビリティに関連するものを含め、当社を取り巻くリスクについて、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を経営の最重要課題として取り組んでおります。当社のリスク管理については、第2 事業の状況・3 事業等のリスクを参照ください。
④指標・目標
・MS&ADインシュアランスグループは、リスクと機会に関する指標・目標を次のとおり定めております。
a.地球環境との共生~Planetary Health~
・MS&ADインシュアランスグループは、MS&ADインシュアランスグループやサプライチェーンを通じて排出するGHGの削減に向けて、次の(a)及び(b)を指標・目標として取り組んでおります。
(a)GHG排出量削減率
※1 スコープ1は社有車のガソリン等、MS&ADインシュアランスグループが直接排出するもの、スコープ2は電力などの使用により間接排出するもの。
※2 MS&ADインシュアランスグループの事業活動に伴って間接的に排出するもののうち、スコープ2以外のもの。カテゴリ1は購入した製品・サービス(対象:紙・郵送)、カテゴリ3はスコープ1、2以外の燃料及びエネルギー活動、カテゴリ5は事業から出る廃棄物、カテゴリ6は従業員の出張、カテゴリ7は従業員の通勤、カテゴリ13はリース資産
(b) 再生可能エネルギー導入率
・MS&ADインシュアランスグループは、脱炭素社会・環境汚染対策につながる循環型経済への移行に向けて、次の(c)を指標・目標として、技術革新と社会実装を支える商品・サービスの提供を行っております。
(c) 社会の脱炭素化、循環型経済に資する商品
b.安心・安全な社会~Resilience~
・MS&ADインシュアランスグループは、イノベーションの進展や産業構造の変化に伴う、サイバーリスクなど新たなリスクに対応するため、次の(a)を指標・目標として、商品・サービスの提供を行っております。
(a) 社会のレジリエンス向上に資する商品
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(b)を指標・目標として、自治体や商工団体等、地域を取り巻くステークホルダーと連携した社会課題解決の推進や、持続可能なインフラへの移行、地域産業の活性化、多様なモビリティサービスの実現等による地方創生の推進に取り組んでおります。
(b) 地域企業の課題解決支援数
c.多様な人々の幸福~Well-being~
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(a)及び(b)を指標・目標として、企業の健康経営の支援、健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスの提供、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスの提供を行っております。
(a) 健康関連の社会課題解決につながる商品
(b) 長寿に備える資産形成型商品
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(c)を指標・目標として、企業の人権関連対応の支援を行っております。
(c) 企業の人権関連対応の支援数
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(d)を指標・目標として、グループ一体感の醸成と社員がいきいきと活躍できる企業文化を目指し、社員が参加できるグループ横断活動に取り組んでおります。
(d) 社員意識調査
※ 経営理念(ミッション)、経営ビジョン、行動指針(バリュー)
・MS&ADインシュアランスグループの指標・目標とは別に、当社では気候変動対応の進捗状況を「MS Green Index」として設定しております。2050年ネットゼロの実現に向け、保険引受、資産運用、自社事業の各領域における取組みを可視化し、推進しております。
※1 社会やお客さまの脱炭素化、自然資本・生物多様性の保全・回復に資する商品・サービス
※2 「グリーン商品」+「再生可能エネルギー発電設備」+「EV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)等」
※3 スコープ1、2、3(カテゴリ1、3、5、6、7、13)
※4 東洋大学情報連携学部(INIAD)と提携した当社専用研修プログラム「MS&ADデジタルアカデミー」の「気候変動ビジネスデザインコース」の受講者。
(2) 人的資本
「人的資本」に関する指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属するすべての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する及び実績は当社のものを記載しております。
①人財育成方針
a. 基本方針
・当社には、国内外の連結会社に約2万人の社員がおり、グループの最大の財産は人財と考えております。人財はグループの企業価値向上の原動力であり、人財育成に積極的に投資してまいります。
・当社グループが目指す人財像は、「自律的に行動し、変革にチャレンジし、新たな価値を創造する人財」であります。このような人財を継続的に輩出するよう、人財育成に取り組んでまいります。
・当社グループの強みである多様性を活かして組織を牽引することができる、多様なリーダーの育成に取り組んでまいります。経営をリードする人財、女性リーダーなどの育成を、グループ共同で進めてまいります。
b. 中期経営計画を踏まえた人財育成方針
・経営戦略を実現するのは人財であり、戦略実現のために必要なスキルを明確化し、リスキリングやアップスキルなどの人的資本への投資により社員の自律的な成長機会を拡充するとともに、外部人財を含めた専門人財の確保・活躍を推進し、最適な人財ポートフォリオを構築してまいります。
・特に、CSV×DXのグローバルな展開や、事業・リスクポートフォリオの変革などを担う「デジタル人財」「海外人財」については、KPIを設定し、人財育成の進捗を確認しながら、重点的に育成に注力してまいります。
・併せて、社員のコンプライアンス知識・意識の向上・徹底に取り組みます。
(a) デジタル人財の育成
・デジタルを活用した社会課題の解決につなげるアイデアを募集する「ビジネスイノベーションチャレンジプログラム」を通じて、全社員にデジタルの基本的な考え方やスキルを身につけさせ、また、社会課題への当社の貢献を「自ら考える」機運を醸成しております。
(2023年度 当社応募総数318件、グループ応募総数468件)
・全ての社員がベーシックなデジタルスキルを身につけることに加えて、大学等との連携育成プログラムなどを活用し、ビジネスサイド、データ分析サイドの両面からデジタル人財の育成を進めており、昨年より大幅に増加しております。
イ.ビジネスサイド :DXを活用してビジネスを創造・拡大することのできる人財
ロ.データ分析サイド:高度なデータ分析等、ビジネスを実現するための高いスキル・専門性を有し発揮できる人財
2025年度3,600人(上記イ.とロ.合計)
・ビジネスサイドの取組み
デジタルスキルに関するオンライン教育ツールの拡充や、デジタル人財認定制度、大学等(※)との連携講座などを活用して体系的に進めることで、多くの社員がスキルを身につけ、向上するよう取り組んでおります。
・データ分析サイドの取組み
大学等との連携講座や、データサイエンスに関する高度なスキルの認定制度を活用して育成に取り組んでおります。また、ジョブ型の社員区分を設け、外部専門人財の確保・活躍に適した環境を整備・活用しております。
(※)MS&ADデジタルアカデミー(INIAD:東洋大学情報連携学部)
累計参加人数 当社742人 グループ計935人(2018年度~2023年度)
MS&ADデジタルカレッジfrom京都(KUAS:京都先端科学大学)
累計参加人数 当社441人 グループ計582人(2020年度~2023年度)
(b) 海外人財の育成
海外事業を担う人財を、ポストに対して質・人数ともに十分に確保することを必要としております。世代交代を進めながら持続的に人財を育成・確保するためのプログラムに取り組んでおります。
2025年度730人
具体的には、海外事業に必要な「経営人財」や「専門人財(経理・財務、IT、リスク管理等)」について、次のような取組みを実施しており、多面的・計画的に人財を育成しております。
イ.指名型研修の実施
・経営人財育成:グローバルリーダー養成プログラム 2014~2023年度累計参加人数64人
・専門人財育成:グローバルエキスパート養成プログラム 2014~2023年度累計参加人数88人
・海外雇用社員の経営人財育成:グローバルマネジメント研修 2021~2023年度累計参加80人
ロ.海外派遣研修制度:2014~2023年度累計参加人数321人
・公募による海外派遣研修制度。派遣期間は原則1年以上で、海外事業展開を支える人財を中長期的視点で育成する取組み。
ハ.グローバルトレーニー制度:2014~2023年度累計参加人数1,119人
・1週間程度の外国人との協働プログラムを通じてグローバルビジネスを疑似体験することで、海外人財に求められるスキル・要素の習得を目指す取組み。
上記の他にも、海外駐在経験者への本社部門やマネジメント経験の付与、若手の海外赴任、海外雇用社員の日本での勤務など、グローバルな人財相互交流などにより、人財育成を進めております。
②社内環境整備方針
a. 基本方針
・経営戦略を実行するのは、社員一人ひとりであります。社員の能力・スキル・意欲を最大限発揮できる職場環境を整備することで、エンゲージメントを高め、経営戦略の実効性を高めてまいります。
・中期経営計画の目指す姿である「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」の実現にあたっては、多様な人財の意見やアイデアを引き出し、活かすことが重要であります。
DE&Iを推進し、意思決定層の多様性を確保することで、当社グループの特長である多様性のメリットを最大化してまいります。
b. 中期経営計画を踏まえた社内環境整備方針
・人財戦略の特に重要な要素にKPIを設定して取組みを進め、社員がいきいきと活躍し、グループの多様性を企業価値向上に結びつける環境を整えてまいります。
(a) 魅力ある職場環境の整備
社員のエンゲージメントを向上させるためには、自律的なキャリア形成機会、柔軟で効率的・効果的な働き方、チャレンジを後押しする企業文化といった職場環境の整備が重要であり、それぞれ次のような取組みを進めております。
イ.自律的なキャリア形成機会の提供
自らが希望するポスト・部門に異動し、活躍のステージを広げるための公募制度(ポストチャレンジ)の活用を拡大し、部門間での人事異動、人財育成、キャリア形成取組みを活性化しております。また、自身を即戦力として、これまで培ってきた能力・スキル等を自ら指定する部署にアピールできる制度(フリーエージェント)の活用や、社員が既存組織の枠を超えて会社施策に参画する仕組みなど、自律的なキャリア形成機会の提供を拡充しております。
ポストチャレンジ応募実績:2023年度:227人
ロ.多様で柔軟な働き方の推進
・在宅勤務と出社を効率的に組み合わせ、リモートワークを活用した業務運営を進めております。また、ジョブ型雇用の導入や、副業・兼業の緩和により、スキル向上・活用の機会を拡大しております。
・キャリアビジョンやライフイベント等に応じた転居転勤の可否選択を柔軟に認めております。
ハ.新たなチャレンジを後押しするマネジメント
チャレンジを奨励し、社員の意欲を引き出し活かす意識改革・風土醸成につながるマネジメントを展開しております。
(b) ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
イ.意思決定層の多様化
(イ)女性の登用について、役員や管理職への登用のためのパイプライン整備の取組みを強化しております。また、2025年度末までのKPIとして、女性管理職比率を23%以上、組織の長となる「女性ライン長」の比率を20%以上と設定し、意思決定者の多様性を促進しております。
女性管理職比率 23%以上 (2025年度末)
女性ライン長比率20%以上 (2025年度末)
女性の管理職の割合は着実に増加しております。
当社におけるパイプライン整備の取組例は次のとおりであります。
・副部長・副支店長ポストへの女性の配置 (2023年4月時点 33名 2024年4月時点 35名)
(ロ)DX/CX分野をはじめとする高度専門領域や、当社経営の根幹を支える営業・損害サポート部門での採用(キャリア採用)を積極的に行っています。また、管理職の多様性の確保を進めるため、社外経験者を積極的に登用しています。
数値目標の設定は行っていませんが、実績は以下のとおりであります。
(注) 社外カルチャー経験者比率は、管理職に占める「キャリア採用者+社外出向等経験者」の比率であります。
ロ.社外カルチャー経験者の拡大
キャリア採用、副業・兼業、アルムナイの経験者比率を拡大し、多様な社外の知見を取り入れたイノベーション創出や他業の経験を踏まえたビジネス協業に取り組んでまいります。
ハ.男性労働者の育児休業
男性労働者の育児休業の促進は、企業の社会的責任・社会への貢献であるとともに、男性が育児や育児休業への理解を深める機会であります。多様な価値観を受け容れる職場環境整備の一環として、KPIを設定して取組みを進めております。
2025年度男性育児休業 取得率100%、取得日数暦日28日
実績は以下のとおりであります。
(注)1 KPIの取得率は、以下の算式により算出しております。
取得日数暦日は、
「配偶者が出産した男性労働者による育児休業(有給)又は出生時育児休業(有給)計5日間及び有給休暇を含めた育児を目的とする休業・休暇日数(これらと連続する休日・祝日の日数を含む)」
であります。
2 育児・介護休業法で定められた基準に基づく2023年度の実績は、第1 企業の概況・5 従業員の状況・(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異・②男性労働者の育児休業取得率を参照ください。
ニ.意見やアイデアを積極的に引き出し活かすマネジメントノウハウの展開
当社グループの特長である多様性を活かすためには、様々な人財の知識・経験・価値観を引き出し、組織の意思決定に活かすインクルーシブな組織運営が不可欠であります。そのためのマネジメントノウハウである「インクルーシブ・リーダーシップ」の実践・浸透に取り組んでおります。
ホ.社員の交流・意見交換機会の提供
多様な人財が集まり、知識・経験の共有や、新たな気づきや価値観を創出する契機とするため、社員が部門横断で参加する交流・意見交換会などを実施し、多様性とインクルーシブな体験の機会を提供しております。
(c) 健康経営
社員が自律的にいきいきと働き、その能力を最大限発揮するためには、社員の「心身の健康」「働きがい」「働きやすさ」の維持・向上が不可欠であります。
労働時間や休暇等の時間管理の徹底、メンタル不調への対策強化・復帰支援などにより、社員の心身の健康を保持・増進するとともに、働きがいや働きやすさの向上につながる各種施策に取り組み、社員のWell-beingを推進しております。
イ.休暇取得を促進し、社員の心身の健康保持に取り組んでおります。
年次有給休暇取得日数:前年同水準以上(2023年度16.9日)
ロ.「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」の運動習慣のある社員の比率をKPIに設定し、健康保持・増進への意識を高めております。
運動習慣者比率:30%(2023年度29.8%)
ハ.上記のような環境整備を進め、以下の設問に対する回答スコアを社員のエンゲージメントを測る指標として、KPIを設定し、環境整備等の進捗を確認しております。
社員意識調査
・設問「私は、今の仕事に誇りと働きがいを持っている」
:スコア4.4以上(2023年度4.3)
・設問「私の職場は、年齢・経験・国籍・性別・障がいの有無等で差別することなく、多様な人財の多様な価値観や意見が受け入れられ、人権を尊重し、いきいきと活躍できる環境にある」
:スコア4.6以上(2023年度4.7)(6段階スコア)
信頼と期待に応える最高の品質を追求し、ステークホルダーとともに、地球環境と社会の持続可能性を守りながら、誰もが安定した生活と活発な事業活動にチャレンジできる社会に貢献し続けます。
-以下、略-
また、MS&ADインシュアランスグループでは「パーパスは経営理念と同一である」と定めております。なお、本項に記載した将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
MS&ADインシュアランスグループの「価値創造ストーリー」とビジネスモデル
・MS&ADインシュアランスグループは、保険事業という公共性の高い事業を中心に、社会課題を解決し社会への価値を提供するとともに、我々自身も売上や利益といった価値を享受するという、ビジネスモデル「価値創造ストーリー」を掲げております。
・MS&ADインシュアランスグループは「サステナビリティの考え方」に基づき、保険・金融サービス事業者として、事故や災害をはじめ様々なリスクを引き受け、万一の際の補償を提供します。また、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」、この取組みにより、企業活動を通じた社会との共通価値の創造を実現してまいります。これがMS&ADインシュアランスグループのビジネスモデルであります。
めざす姿「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」
・中期経営計画(2022-2025)では、価値創造ストーリーを実践し、リスクソリューションのプラットフォーマーとして社会課題の解決へ貢献し社会とともに成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざす姿としました。
・MS&ADインシュアランスグループの経営理念の実現に向けて、社会課題に向き合い、当社のビジネスモデルを通じた商品・サービスを提供することで、お客さまが安心して生活や事業活動を行うことのできる環境づくりをサポートしてまいります。
重点課題の特定
・MS&ADインシュアランスグループでは、重点課題(マテリアリティ)の特定にあたり、世界共通の目標や国際的なガイドライン・フレームワーク等を踏まえ、解決が望まれる社会課題を洗い出した上で、ステークホルダーの評価や意思決定に対する影響と、MS&ADインシュアランスグループの事業における影響を評価し、双方にとって重要度の高いものを選択しております。
・具体的な特定プロセスとグループの重点課題は、MS&ADホールディングスのサステナビリティレポートを参照ください。
https://www.ms-ad-hd.com/ja/csr/report/main/00/teaserItems1/00/linkList/00/link/csr_report2023_default_03.pdf
・当社では、グループの重点課題を踏まえ、当社が取り組むべき主な社会課題を特定し、地域・社会課題の解決を通じて、社会のサステナビリティと当社の持続的成長の同時実現を目指してまいります。
当社が取り組むべき主な社会課題 | |
地球環境との共生(Planetary Health) | ・地球温暖化の進行 ・自然資本の毀損・枯渇 ・環境汚染・非循環型経済 |
革新的テクノロジー(Innovative Technology) | ・サイバーリスクの増加 ・産業構造の変化に伴う新たなリスクの発現 |
強靭性・回復力(Resilience) | ・社会インフラの老朽化 ・自然災害からの生活再建・早期復旧 ・防災・減災の強化 |
包摂的社会(Social Inclusion) | ・少子・高齢化の進行 ・人権侵害・多様性の排除 ・経済格差の拡大 |
(1) サステナビリティに関する取組み
①ガバナンス
当社は、中期経営計画において、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX、当社のサステナビリティ(稼ぐ力の持続性・成長性)と社会のサステナビリティを同時実現する)を成長ビジョンに掲げ、サステナビリティ課題に対する取組みについて、課題別委員会であるサステナビリティ委員会及びERM委員会で論議のうえ取締役会、経営会議へ報告しております。
a.取締役会
・法令・定款に定める事項のほか、経営方針、経営戦略、資本政策等、経営戦略上の重要なサステナビリティ関連事項及び会社経営上の重要な事項の論議・決定を行うとともに、取締役、執行役員の職務の執行を監督しております。
・取締役会では、気候関連を含むリスク・リターン・資本をバランスよくコントロールするため、リスク選好に基づいて経営資源の配分を行い、健全性を基盤に「成長の持続」と「収益性・資本効率の向上」を実現し、中長期的な企業価値の拡大を目指しております。
b.経営会議
・経営方針、経営戦略等、経営に関する重要な事項について協議するとともに、執行役員による決裁事項の一部について報告を受けることにより、具体的な業務執行のモニタリングを行っております。
c.課題別委員会
・業務執行にかかる会社経営上の重要事項に関する論議及び関係部門の意見の相互調整を図ることを目的として設置しております。サステナビリティ関連の課題や取組みは、主として、課題別委員会のサステナビリティ委員会及びERM委員会での論議を経て、取締役会と経営会議の双方に報告し、決定します。
(a) サステナビリティ委員会
・サステナビリティ担当役員が運営責任者となり、営業部門、損害サポート部門、商品・サービス部門、資産運用部門、海外部門、人事部門、リスク管理部門の担当役員等で構成し、サステナビリティ課題の取組方針・計画・戦略等の論議を行っております。2023年度は5回開催し、主な論議テーマは、気候変動や自然資本・生物多様性への対応、人権尊重取組、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、「DE&I」という。)取組等です。なお、各議論の内容は取締役会及び経営会議に報告しております。
(b) ERM委員会
・経営企画部担当役員とリスク管理部担当役員が運営責任者となり、ERMに関する重要事項の協議・調整等を行うとともに、リスク・リターン・資本の状況や気候関連を含むリスク管理の状況等について、モニタリング等を行っております。
②戦略
・当社は、MS&ADインシュアランスグループの重点課題(マテリアリティ)を踏まえ、中期経営計画(2022-2025)において「地球環境との共生(Planetary Health)」「革新的テクノロジー(Innovative Technology)」「強靭性・回復力(Resilience)」「包摂的社会(Social Inclusion)」の4つを、当社が取り組むべき主な社会課題と位置づけております。
・解決が求められている様々な社会課題は、当社の事業活動へのリスクとなる一方で、これらの課題解決につながる商品・サービスの提供を通じて社会との共通価値を創造する取組みは新たな事業機会となり得ます。
・当社は、このようなリスクと機会を踏まえ、社会との共通価値を創造するCSV取組みを進めております。
・当社では、経営が管理すべき重要なリスク事象を「重要リスク」として選定し、重要リスク管理取組計画を策定した上で、リスク対策の実行や各リスクの状況を定期的にモニタリングしております。各重要リスクについて「主な想定シナリオ」を策定しており、この策定においては「気候変動」に留意しております。当社のリスク管理については、第2 事業の状況・3 事業等のリスクを参照ください。
a.地球環境との共生(Planetary Health)
(a) 気候関連のリスク及び機会
・気候変動は、自然災害の激甚化や気象条件の物理的な変化をもたらすほか、脱炭素社会への移行過程で社会や経済の急激な変化をもたらします。保険ビジネスの存続を左右するリスクであり、当社が最優先で取り組むべき課題です。
・気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TCFD」)は、気候関連のリスクを物理的リスクと移行リスクの2つに分類しており、これに基づき当社事業におけるリスクを特定しております。
・一方で、脱炭素社会への移行による社会や経済の変化は、新たな保険商品・サービスの需要の喚起や、新しい産業の勃興、技術革新に伴う顧客企業の業績向上など、MS&ADインシュアランスグループの成長につながる機会をもたらすと考えております。
・TCFDの分類に沿った当社の事業活動におけるリスク及び機会は以下のとおりです。
気候関連リスクの分類 | 事象例 | 事業活動におけるリスク | |
物理的 リスク | 急性 | ・台風・洪水・高潮・豪雨・山火事 | ・自然災害の激甚化等による収支の悪化、利益のボラティリティ拡大による資本コストの増加 |
慢性 | ・海面や気温の上昇 ・少雨や干ばつ等の気象の変化 ・水等資源供給の減少 ・伝染病媒介生物の生息地の変化 ・熱中症の増加 | ||
移行 リスク | 政策・法規制 | ・炭素価格の上昇 ・環境関連の規制・基準の強化 ・エネルギー構成の変化 ・気候関連の訴訟の増加 | ・カーボンコストの増加による投資先企業の業績悪化がもたらす投資リターンの低下 |
技術 | ・脱炭素技術の進展 ・低炭素効率商品などの需要減少等による産業構造の変化 | ・脱炭素化により変化する市場を捕捉できないことによる収益の低下 | |
市場 | ・商品サービスに対する需要と供給の変化 | ||
評判 | ・気候変動対応の遅れによる非難 | ・不十分な情報開示や気候変動対応の遅れによるレピュテーションの低下 |
気候関連機会の分類 | 事象例 | 事業活動における機会の例 |
製品・サービス | ・低炭素商品・サービスの開発、拡大 ・進展する気候変動の影響への適応策 ・R&D、イノベーションによる新製品・サービスの開発 ・事業活動の多様化 ・消費者の嗜好の変化 | ・顧客企業のビジネスの変革による新たな補償ニーズの増加 ・脱炭素化や防災・減災に関するコンサルティングニーズの増加 ・気候変動に関する市場の拡大(情報開示、規制対応、緩和策・適応策の提供等) |
市場 | ・新規市場・新興市場の広がり ・新しい金融サービスを必要とする資産の発生 | |
レジリエンス | ・気候変動への適応能力の向上 | ・防災・減災ニーズの増加 |
資源の効率性 | ・モーダルシフト ・生産・流通の効率化 ・ビルの高効率化・高効率ビルへの移転 ・水使用量と消費量の削減 ・リサイクルの広まり | ・モビリティの電化、建物設備機械のAI化等による補償ニーズの増加等 |
エネルギー源 | ・再生可能エネルギー・低排出型エネルギーへの転換 ・気候変動対策の支援政策・インセンティブの活用 ・新技術の使用 ・炭素市場の活用 |
(b) 自然関連のリスク及び機会
・自然資本の持続可能性向上は、気候変動と同様に、脱炭素社会への移行過程で当社の事業活動に影響を与える重要な課題です。
・自然関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TNFD」)は、自然関連のリスクを物理的リスクと移行リスクの2つに分類しており、これに基づき当社事業におけるリスクを特定しております。
・一方で、ネイチャーポジティブな社会の実現は、新たな保険商品・サービスの需要の喚起や、新しい産業の勃興、技術革新に伴う顧客企業の業績向上など、MS&ADインシュアランスグループの成長につながる機会をもたらすと考えております。
・TNFDの分類に沿った当社の事業活動におけるリスク及び機会は以下のとおりです。
自然関連リスクの分類 | 事象例 | 社会や経済への影響例 | 事業活動における リスクの例 | |
物理的リスク | 急性 | ・台風・洪水・森林火災等による湿地や森林の荒廃 ・病虫害の発生 | ・自然災害被害の増大 ・農林水産物の収穫量の低下 | ・保険収支の悪化、利益のボラティリティ拡大による資本コストの増加 |
慢性 | ・少雨や干ばつ等の気象の変化等による湿地や森林の荒廃 ・水等資源供給の減少 | ・農林水産物の収穫量の低下 ・原材料の供給不足や調達コストの増加 ・受粉や水源涵養等の生態系サービスの低下 | ||
移行 リスク | 政策・法規制 | ・規制・基準の強化 ・訴訟の増加 ・生産量規制の強化 | ・規制対応コストの発生 ・訴訟対応コストの増加 | ・投資先企業の業績悪化による投資リターンの低下 |
技術 | ・自然資本への依存やインパクトが小さい技術の進展 | ・産業構造・需給の変化 | ・変化に対応できないことによる収益の低下 | |
市場 | ・商品・サービスに対する需要と供給の変化 | |||
評判 | ・自然資本のき損への関与や対応の遅れによる非難 | ・顧客や従業員等からの非難 | ・レピュテーションの低下 |
自然関連機会の分類 | 事象例 | 事業活動における機会の例 |
製品・サービス | ・自然へのポジティブな影響またはネガティブ影響の緩和効果を持つ商品・サービスの開発、拡大 ・グリーンインフラ関連の製品・サービスの開発・拡大 | ・新しい商品、サービスへの補償ニーズの増加 ・自然へのリスク・機会の分析や事業戦略の策定を支援するコンサルティングニーズの増加 |
市場 | ・新規市場・新興市場の広がり | |
資源の効率性 | ・環境負荷の低い原材料への変更等の生産プロセスの転換 ・自然に配慮した原材料の認証制度の広まり ・再生素材の活用とリサイクルの広まり ・水使用量と消費量の削減 ・多様な原材料の活用(未利用資源の活用) ・汚染防止や廃棄の削減 | ・新しい原材料や生産プロセスへの補償ニーズの増加や転換を促す金融サービスの開発 ・事故防止やリユース、リサイクルを推進するサービスのニーズ増加 ・汚染等のリスク評価や補償ニーズの発生 ・認証制度に関わるサービスやリスクへの補償ニーズの増加 |
資本フロー・資金調達 | ・自然関連のグリーン金融の広まり ・公的インセンティブの活用による環境保護 | ・新たな投融資機会の増加 |
評判資本 | ・地域、国、国際レベルでのステークホルダーとの協働の広まり ・地域における環境活動の増加 | ・自治体や地域団体、消費者との連携によるマーケットの拡大 |
自然の保護・修復・再生 | ・自然の保全・再生活動 ・地域におけるグリーンインフラの実装 ・希少生物の保護 | ・コンサルティングニーズや投融資機会の増加 |
(c) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
・脱炭素化への移行を支援するとともに、気候変動の影響を最小化、生物多様性の喪失等の自然資本の保全・回復に向けた取組みを進めております。
・2050年ネットゼロの実現に向け、商品・サービスの提供や投融資等を通じ、気候変動リスクを低減する新しい技術の発展や脱炭素社会への移行を支える取組みを進めるとともに、財務の健全性・収益の安定性を確保しつつ、台風や洪水等の自然災害によって生じた損害に対して保険金をお支払いすることで、レジリエントでサステナブルな社会を支えております。
・主な取組みは次のとおりです。
イ.気候変動への対応、自然資本・生物多様性の保全・回復に資する商品・サービスの提供
・お客さまの脱炭素化支援や、自然資本・生物多様性の保全・回復に資する商品・サービスの開発・提供に取り組んでおります。
ロ.脱炭素化につながる投融資の実行や、気候変動に対応した対話の実施
・投資や融資を通じて、温室効果ガス(以下「GHG」という。)を削減する技術開発に挑戦する企業を支えるとともに、建設的な対話を通じて、投融資先・保険引受先企業とともに脱炭素社会への移行に取り組んでおります。
ハ.自社事業のGHG排出量削減取組
・社員によるガソリン、電力、紙の使用量削減取組に加え、照明のLED化や空調設備の更新により、ソフト面・ハード面両方のアプローチで当社事業のGHG排出量削減を進めております。
ニ.官民連携の自然災害補償スキームへの参画による新興国の復興支援
・新興国の自然災害リスク軽減や災害後の早期復興の支援により、プロテクションギャップ縮小に取り組んでおります。
b. 革新的テクノロジー(Innovative Technology)
(a) リスク及び機会
・革新的テクノロジーはイノベーションの進展や産業構造の変化を引き起こすとともに、サイバーリスクによる情報インフラの機能停止など、新たなリスクへの対処に取り組むべき課題です。
・社会のIoT化・5G化や自動車のコネクティッド化の進展によるサイバーリスクの増加や、AI、宇宙開発、拡張・仮想現実などでの新たなリスクの発現への対処は、当社事業におけるリスクでもあり機会でもあると考えております。
(b) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
イ.サイバーセキュリティ・ソリューションの開発
・セキュリティ対策が十分でない中小企業に対し、低廉なコストでソリューション提供を行っていくため、米国インシュアテック企業との共同開発に取り組んでおります。
ロ.AIを活用した新サービスの開発・提供
・運送事業者向け安全運転ソリューションや、交通事故発生リスクの可視化サービスなど、AIを活用した新サービスを開発・提供しております。
ハ.宇宙マーケットへの取組強化
・宇宙旅行保険事業の開始や、月への航行・着陸を補償する「月保険」の開発など、宇宙マーケットの取組みを強化しております。
c. 強靭性・回復力(Resilience)
(a) リスク及び機会
・社会インフラの老朽化や多発・激甚化する自然災害によるサプライチェーンの寸断は、当社事業におけるリスクとなる一方で、被害の予知、防災・減災サービスは新たな機会にもつながると考えております。
・また、事故や災害からの生活再建や復旧の支援は、レジリエントで包摂的な地域社会づくりに貢献するとともに、損害発生の未然防止につながると考えております。
(b) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
イ.ドラレコ・ロードマネージャー
・ドライブレコーダーの道路映像データとAI画像分析技術を組み合わせ、道路損傷箇所を自動的に検出し、自治体等による道路点検・管理業務を支援する「ドラレコ・ロードマネージャー」を提供しております。
ロ.防災ダッシュボード
・気象や災害に関するデータをリアルタイムで可視化するとともに、水災リスクや災害発生後の被災規模をAIで予測するなど、災害時に必要な情報を一元化する自治体向けサービスを開発・提供しております。
ハ.罹災証明書発行手続き支援サービス
・水災時に当社が入手する損害調査情報を、お客さまの同意のもと自治体に提供することで、罹災証明書の発行を迅速にするサービスを行っており、全国の自治体で導入を拡大しております。
d. 包摂的社会(Social Inclusion)
(a) リスク及び機会
・少子高齢化や人口減少、地方の過疎化などの進行による国内市場の中長期的縮小は、当社事業においてマーケットや収益の縮小につながるリスクとなる一方で、自治体や地域企業、大学等と連携した地方創生取組は当社事業における機会になると考えております。
・また、企業による人権侵害リスクやジェンダー等に関する不平等・不公正は当社事業におけるリスクとなる一方で、人権デューディリジェンスの推進・支援や、女性、高齢者、障がい者、セクシュアルマイノリティのお客さまを考慮したDE&Iの推進は当社事業の中期的な成長実現につながる機会と考えております。
(b) リスクと機会を踏まえた当社の取組み
イ.SDGs推進を通じた地方創生取組
・自治体や地域金融機関、商工団体等と連携し、地域企業のSDGs支援や災害対策支援の提供等、地方創生に資する取組みを推進し、多様化する地域課題の解決や地域の活性化に貢献しております。
ロ.「育休職場応援手当(祝い金)」の創設
・出産・育児を職場全体で祝い、快く受け入れて支える企業風土を醸成するため、育児休業取得者本人を除く職場全員に一時金を支給する「育休職場応援手当(祝い金)」を創設しました。
ハ.社員のリカレント教育費用を支援する「Re学(リガク)」制度の創設
・転居転勤の少ない社員の視野拡大やスキルアップを図るため、2023年4月から、大学等が開講しているリカレント教育プログラムの受講費用を支援する施策を開始しました。
③リスク管理
・当社は、サステナビリティに関連するものを含め、当社を取り巻くリスクについて、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を経営の最重要課題として取り組んでおります。当社のリスク管理については、第2 事業の状況・3 事業等のリスクを参照ください。
④指標・目標
・MS&ADインシュアランスグループは、リスクと機会に関する指標・目標を次のとおり定めております。
a.地球環境との共生~Planetary Health~
・MS&ADインシュアランスグループは、MS&ADインシュアランスグループやサプライチェーンを通じて排出するGHGの削減に向けて、次の(a)及び(b)を指標・目標として取り組んでおります。
(a)GHG排出量削減率
指標・目標 | 進捗状況 |
・2030年度: ▲50%(2019年度対比) ・2050年度: ネットゼロ | <スコープ1・2(※1)>2022年度:▲26.8 % <スコープ3(※2)>2022年度:▲26.9 % *カテゴリ1、3、5、6、7、13 |
※1 スコープ1は社有車のガソリン等、MS&ADインシュアランスグループが直接排出するもの、スコープ2は電力などの使用により間接排出するもの。
※2 MS&ADインシュアランスグループの事業活動に伴って間接的に排出するもののうち、スコープ2以外のもの。カテゴリ1は購入した製品・サービス(対象:紙・郵送)、カテゴリ3はスコープ1、2以外の燃料及びエネルギー活動、カテゴリ5は事業から出る廃棄物、カテゴリ6は従業員の出張、カテゴリ7は従業員の通勤、カテゴリ13はリース資産
(b) 再生可能エネルギー導入率
指標・目標 | 進捗状況 |
・2030年度: 60% ・2050年度:100% | ・2022年度:21.1% |
・MS&ADインシュアランスグループは、脱炭素社会・環境汚染対策につながる循環型経済への移行に向けて、次の(c)を指標・目標として、技術革新と社会実装を支える商品・サービスの提供を行っております。
(c) 社会の脱炭素化、循環型経済に資する商品
指標・目標 | 進捗状況 |
・保険料増収率: 年平均18% | ・2023年度:24.5% |
b.安心・安全な社会~Resilience~
・MS&ADインシュアランスグループは、イノベーションの進展や産業構造の変化に伴う、サイバーリスクなど新たなリスクに対応するため、次の(a)を指標・目標として、商品・サービスの提供を行っております。
(a) 社会のレジリエンス向上に資する商品
指標・目標 | 進捗状況 |
・引受件数増加率:年平均20% | ・2023年度:17.6% |
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(b)を指標・目標として、自治体や商工団体等、地域を取り巻くステークホルダーと連携した社会課題解決の推進や、持続可能なインフラへの移行、地域産業の活性化、多様なモビリティサービスの実現等による地方創生の推進に取り組んでおります。
(b) 地域企業の課題解決支援数
指標・目標 | 進捗状況 |
・コンサルティングサービス、研修・セミナー等:2025年度1万件 | ・2023年度:11,892件 |
c.多様な人々の幸福~Well-being~
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(a)及び(b)を指標・目標として、企業の健康経営の支援、健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスの提供、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスの提供を行っております。
(a) 健康関連の社会課題解決につながる商品
指標・目標 | 進捗状況 |
・保有契約件数:260万件(2025年度末) | ・2023年度:222万件 |
(b) 長寿に備える資産形成型商品
指標・目標 | 進捗状況 |
・保有契約件数:10万件(2025年度末) | ・2023年度:7万件 |
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(c)を指標・目標として、企業の人権関連対応の支援を行っております。
(c) 企業の人権関連対応の支援数
指標・目標 | 進捗状況 |
・コンサルティングサービス、研修・セミナー等:2025年度1,000件 | ・2023年度:1,047件 |
・MS&ADインシュアランスグループは、次の(d)を指標・目標として、グループ一体感の醸成と社員がいきいきと活躍できる企業文化を目指し、社員が参加できるグループ横断活動に取り組んでおります。
(d) 社員意識調査
指標・目標 | 進捗状況 |
・CSVの実感:前年同水準以上 | ・2023年度:4.5 pt(2022年度:4.5 pt) |
・MVV※を常に意識:前年同水準以上 | ・2023年度:4.6 pt (2022年度:4.6 pt) |
※ 経営理念(ミッション)、経営ビジョン、行動指針(バリュー)
・MS&ADインシュアランスグループの指標・目標とは別に、当社では気候変動対応の進捗状況を「MS Green Index」として設定しております。2050年ネットゼロの実現に向け、保険引受、資産運用、自社事業の各領域における取組みを可視化し、推進しております。
指標(MS Green Index) | 指標・目標 |
①グリーン商品※1のラインアップ数 | 2021年度からの累計商品数 |
②グリーン引受※2による年平均増収率 | 2022年度から2025年度の年平均増収率18% |
③国内主要取引先のGHG排出量の削減 (保険引受・投融資) | 2030年度:▲37%削減(2019年度対比)、 2050年度:ネットゼロ |
④国内主要取引先との対話件数 | 2023年度からの累計件数 |
⑤気候変動や自然資本に関するコンサルティング提供件数 | 2023年度からの累計件数 |
⑥GHG排出量の削減(スコープ1・2、3※3) | 2030年度:▲50%削減(2019年度対比)、 2040年度:ネットゼロ |
⑦再生可能エネルギー導入率 | 2030年度:60%、2050年度:100% |
⑧社有車電動化 | 2025年度:100% |
⑨気候変動研修受講者数 | 2021年度からの累計受講者数(INIAD※4等) |
※1 社会やお客さまの脱炭素化、自然資本・生物多様性の保全・回復に資する商品・サービス
※2 「グリーン商品」+「再生可能エネルギー発電設備」+「EV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)等」
※3 スコープ1、2、3(カテゴリ1、3、5、6、7、13)
※4 東洋大学情報連携学部(INIAD)と提携した当社専用研修プログラム「MS&ADデジタルアカデミー」の「気候変動ビジネスデザインコース」の受講者。
(2) 人的資本
「人的資本」に関する指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属するすべての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する
①人財育成方針
a. 基本方針
・当社には、国内外の連結会社に約2万人の社員がおり、グループの最大の財産は人財と考えております。人財はグループの企業価値向上の原動力であり、人財育成に積極的に投資してまいります。
・当社グループが目指す人財像は、「自律的に行動し、変革にチャレンジし、新たな価値を創造する人財」であります。このような人財を継続的に輩出するよう、人財育成に取り組んでまいります。
・当社グループの強みである多様性を活かして組織を牽引することができる、多様なリーダーの育成に取り組んでまいります。経営をリードする人財、女性リーダーなどの育成を、グループ共同で進めてまいります。
b. 中期経営計画を踏まえた人財育成方針
・経営戦略を実現するのは人財であり、戦略実現のために必要なスキルを明確化し、リスキリングやアップスキルなどの人的資本への投資により社員の自律的な成長機会を拡充するとともに、外部人財を含めた専門人財の確保・活躍を推進し、最適な人財ポートフォリオを構築してまいります。
・特に、CSV×DXのグローバルな展開や、事業・リスクポートフォリオの変革などを担う「デジタル人財」「海外人財」については、KPIを設定し、人財育成の進捗を確認しながら、重点的に育成に注力してまいります。
・併せて、社員のコンプライアンス知識・意識の向上・徹底に取り組みます。
(a) デジタル人財の育成
・デジタルを活用した社会課題の解決につなげるアイデアを募集する「ビジネスイノベーションチャレンジプログラム」を通じて、全社員にデジタルの基本的な考え方やスキルを身につけさせ、また、社会課題への当社の貢献を「自ら考える」機運を醸成しております。
(2023年度 当社応募総数318件、グループ応募総数468件)
・全ての社員がベーシックなデジタルスキルを身につけることに加えて、大学等との連携育成プログラムなどを活用し、ビジネスサイド、データ分析サイドの両面からデジタル人財の育成を進めており、昨年より大幅に増加しております。
イ.ビジネスサイド :DXを活用してビジネスを創造・拡大することのできる人財
ロ.データ分析サイド:高度なデータ分析等、ビジネスを実現するための高いスキル・専門性を有し発揮できる人財
2023年4月 | 2024年4月 | |
デジタル人財 | 1,667人 | 4,057人 |
・ビジネスサイドの取組み
デジタルスキルに関するオンライン教育ツールの拡充や、デジタル人財認定制度、大学等(※)との連携講座などを活用して体系的に進めることで、多くの社員がスキルを身につけ、向上するよう取り組んでおります。
・データ分析サイドの取組み
大学等との連携講座や、データサイエンスに関する高度なスキルの認定制度を活用して育成に取り組んでおります。また、ジョブ型の社員区分を設け、外部専門人財の確保・活躍に適した環境を整備・活用しております。
(※)MS&ADデジタルアカデミー(INIAD:東洋大学情報連携学部)
累計参加人数 当社742人 グループ計935人(2018年度~2023年度)
MS&ADデジタルカレッジfrom京都(KUAS:京都先端科学大学)
累計参加人数 当社441人 グループ計582人(2020年度~2023年度)
(b) 海外人財の育成
海外事業を担う人財を、ポストに対して質・人数ともに十分に確保することを必要としております。世代交代を進めながら持続的に人財を育成・確保するためのプログラムに取り組んでおります。
2023年4月時点 | 2024年4月時点 | |
海外人財 | 694人 | 735人 |
具体的には、海外事業に必要な「経営人財」や「専門人財(経理・財務、IT、リスク管理等)」について、次のような取組みを実施しており、多面的・計画的に人財を育成しております。
イ.指名型研修の実施
・経営人財育成:グローバルリーダー養成プログラム 2014~2023年度累計参加人数64人
・専門人財育成:グローバルエキスパート養成プログラム 2014~2023年度累計参加人数88人
・海外雇用社員の経営人財育成:グローバルマネジメント研修 2021~2023年度累計参加80人
ロ.海外派遣研修制度:2014~2023年度累計参加人数321人
・公募による海外派遣研修制度。派遣期間は原則1年以上で、海外事業展開を支える人財を中長期的視点で育成する取組み。
ハ.グローバルトレーニー制度:2014~2023年度累計参加人数1,119人
・1週間程度の外国人との協働プログラムを通じてグローバルビジネスを疑似体験することで、海外人財に求められるスキル・要素の習得を目指す取組み。
上記の他にも、海外駐在経験者への本社部門やマネジメント経験の付与、若手の海外赴任、海外雇用社員の日本での勤務など、グローバルな人財相互交流などにより、人財育成を進めております。
②社内環境整備方針
a. 基本方針
・経営戦略を実行するのは、社員一人ひとりであります。社員の能力・スキル・意欲を最大限発揮できる職場環境を整備することで、エンゲージメントを高め、経営戦略の実効性を高めてまいります。
・中期経営計画の目指す姿である「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」の実現にあたっては、多様な人財の意見やアイデアを引き出し、活かすことが重要であります。
DE&Iを推進し、意思決定層の多様性を確保することで、当社グループの特長である多様性のメリットを最大化してまいります。
b. 中期経営計画を踏まえた社内環境整備方針
・人財戦略の特に重要な要素にKPIを設定して取組みを進め、社員がいきいきと活躍し、グループの多様性を企業価値向上に結びつける環境を整えてまいります。
(a) 魅力ある職場環境の整備
社員のエンゲージメントを向上させるためには、自律的なキャリア形成機会、柔軟で効率的・効果的な働き方、チャレンジを後押しする企業文化といった職場環境の整備が重要であり、それぞれ次のような取組みを進めております。
イ.自律的なキャリア形成機会の提供
自らが希望するポスト・部門に異動し、活躍のステージを広げるための公募制度(ポストチャレンジ)の活用を拡大し、部門間での人事異動、人財育成、キャリア形成取組みを活性化しております。また、自身を即戦力として、これまで培ってきた能力・スキル等を自ら指定する部署にアピールできる制度(フリーエージェント)の活用や、社員が既存組織の枠を超えて会社施策に参画する仕組みなど、自律的なキャリア形成機会の提供を拡充しております。
ポストチャレンジ応募実績:2023年度:227人
ロ.多様で柔軟な働き方の推進
・在宅勤務と出社を効率的に組み合わせ、リモートワークを活用した業務運営を進めております。また、ジョブ型雇用の導入や、副業・兼業の緩和により、スキル向上・活用の機会を拡大しております。
・キャリアビジョンやライフイベント等に応じた転居転勤の可否選択を柔軟に認めております。
ハ.新たなチャレンジを後押しするマネジメント
チャレンジを奨励し、社員の意欲を引き出し活かす意識改革・風土醸成につながるマネジメントを展開しております。
(b) ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
イ.意思決定層の多様化
(イ)女性の登用について、役員や管理職への登用のためのパイプライン整備の取組みを強化しております。また、2025年度末までのKPIとして、女性管理職比率を23%以上、組織の長となる「女性ライン長」の比率を20%以上と設定し、意思決定者の多様性を促進しております。
女性ライン長比率20%以上 (2025年度末)
女性の管理職の割合は着実に増加しております。
2023年4月時点 | 2024年4月時点 | |
女性管理職比率 | 21.4% | 23.7% |
女性ライン長比率 | 13.3% | 19.0% |
当社におけるパイプライン整備の取組例は次のとおりであります。
・副部長・副支店長ポストへの女性の配置 (2023年4月時点 33名 2024年4月時点 35名)
(ロ)DX/CX分野をはじめとする高度専門領域や、当社経営の根幹を支える営業・損害サポート部門での採用(キャリア採用)を積極的に行っています。また、管理職の多様性の確保を進めるため、社外経験者を積極的に登用しています。
数値目標の設定は行っていませんが、実績は以下のとおりであります。
2023年4月時点 | 2024年4月時点 | |
管理職に占める社外カルチャー経験者比率 | 26.8% | 28.1% |
(注) 社外カルチャー経験者比率は、管理職に占める「キャリア採用者+社外出向等経験者」の比率であります。
ロ.社外カルチャー経験者の拡大
キャリア採用、副業・兼業、アルムナイの経験者比率を拡大し、多様な社外の知見を取り入れたイノベーション創出や他業の経験を踏まえたビジネス協業に取り組んでまいります。
ハ.男性労働者の育児休業
男性労働者の育児休業の促進は、企業の社会的責任・社会への貢献であるとともに、男性が育児や育児休業への理解を深める機会であります。多様な価値観を受け容れる職場環境整備の一環として、KPIを設定して取組みを進めております。
実績は以下のとおりであります。
2023年3月時点 | 2024年3月時点 | |
男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% | 100.0% |
男性労働者の育児休業取得日数暦日 | 37日 | 37日 |
(注)1 KPIの取得率は、以下の算式により算出しております。
取得率= | 対象期間中に養育する子の出生日から1年を経過し その間に1日以上の育児休業を取得した男性労働者数 |
対象期間に養育する子の出生日から1年を経過した男性労働者数 |
取得日数暦日は、
「配偶者が出産した男性労働者による育児休業(有給)又は出生時育児休業(有給)計5日間及び有給休暇を含めた育児を目的とする休業・休暇日数(これらと連続する休日・祝日の日数を含む)」
であります。
2 育児・介護休業法で定められた基準に基づく2023年度の実績は、第1 企業の概況・5 従業員の状況・(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異・②男性労働者の育児休業取得率を参照ください。
ニ.意見やアイデアを積極的に引き出し活かすマネジメントノウハウの展開
当社グループの特長である多様性を活かすためには、様々な人財の知識・経験・価値観を引き出し、組織の意思決定に活かすインクルーシブな組織運営が不可欠であります。そのためのマネジメントノウハウである「インクルーシブ・リーダーシップ」の実践・浸透に取り組んでおります。
ホ.社員の交流・意見交換機会の提供
多様な人財が集まり、知識・経験の共有や、新たな気づきや価値観を創出する契機とするため、社員が部門横断で参加する交流・意見交換会などを実施し、多様性とインクルーシブな体験の機会を提供しております。
(c) 健康経営
社員が自律的にいきいきと働き、その能力を最大限発揮するためには、社員の「心身の健康」「働きがい」「働きやすさ」の維持・向上が不可欠であります。
労働時間や休暇等の時間管理の徹底、メンタル不調への対策強化・復帰支援などにより、社員の心身の健康を保持・増進するとともに、働きがいや働きやすさの向上につながる各種施策に取り組み、社員のWell-beingを推進しております。
イ.休暇取得を促進し、社員の心身の健康保持に取り組んでおります。
ロ.「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」の運動習慣のある社員の比率をKPIに設定し、健康保持・増進への意識を高めております。
ハ.上記のような環境整備を進め、以下の設問に対する回答スコアを社員のエンゲージメントを測る指標として、KPIを設定し、環境整備等の進捗を確認しております。
・設問「私は、今の仕事に誇りと働きがいを持っている」
:スコア4.4以上(2023年度4.3)
・設問「私の職場は、年齢・経験・国籍・性別・障がいの有無等で差別することなく、多様な人財の多様な価値観や意見が受け入れられ、人権を尊重し、いきいきと活躍できる環境にある」
:スコア4.6以上(2023年度4.7)(6段階スコア)