有価証券報告書-第109期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/30 9:14
【資料】
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【項目】
139項目
②戦略
a.MS&ADインシュアランスグループの気候関連のリスク・機会
・MS&ADインシュアランスグループは、保険業に関するSASBスタンダード(2023年12月最終改訂)を参照し、適用可能性を考慮したうえでサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別しました。この結果、現時点においてMS&ADインシュアランスグループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会は、以下のとおりであります。
・なお、②戦略及び④指標・目標では、評価が一定程度進展し、開示が可能であると判断した気候関連のリスク及び機会に限定して記載しておりますが、その他のサステナビリティテーマについては、MS&ADインシュアランスグループの見通しへの影響や発生可能性等を現在検討中であり、今後の検討を踏まえ、開示を行う予定であります。
(a)物理的リスク(※)
事象保険引受先・投融資先への主な影響の例MS&ADインシュアランスグループへの主な影響の例


風水災
(台風、ハリケーン、高潮、豪雨、洪水等)
・台風等の激甚化・頻発化によって、住宅や事業所に大きな被害をもたらす。進路によっては広域に被害が及ぶ。
・地上や海水の温度上昇により大気中の水蒸気量が増加し豪雨が発生する。土地利用や治水対策の状況により甚大な内水氾濫や外水氾濫が発生し、住宅や事業所、資産に大きな被害をもたらす。
・住宅や事業所、車両等多くの財物を中心に保険金支払が発生
・重要な事業拠点の大規模な被災によるリターンの悪化

(b)機会(※)
項目外部環境、背景機会の概要


気候関連のリスクに備える保険商品気候関連の物理的なリスクが上昇するなか、経済的な損失に備えるための保険の重要性及びそのニーズは高まっている。プロテクションギャップの是正は各国において課題となっている。従来の風水災への補償に加え、気候変動に適応するためのデリバティブやパラメトリック保険等の多様な補償手段の提供に関する要望がある。国際機関と連携した補償提供の機会も生まれている。
気候変動の適応、防災・減災サービス甚大な損失が頻発するなか、被害を未然に防ぐ、又は損失を抑制するニーズは高い。なお、自然を活用した防災・減災を含むNbS(Nature-based Solutions:自然を基盤とした解決策)は「欧州グリーン・ディール」等で重要な課題に位置付けられている。保険加入者への防災・減災サービスの提供に加え、防災・減災を推進する自治体等、サービス対象の拡大が期待できる。リスク分析を強みとする保険会社による革新的な適応ビジネスの創出が求められている。

※リスク・機会の識別においては、以下の企業を前提として検討しました。
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社/三井住友海上火災保険株式会社/あいおいニッセイ同和損害保険株式会社/三井ダイレクト損害保険株式会社/三井住友海上あいおい生命保険株式会社/三井住友海上プライマリー生命保険株式会社/MS&ADインターリスク総研株式会社/MS Amlin Underwriting Limited/MS Amlin AG/MSIG Europe SE/MS Amlin Holdings Limited/MS Amlin Corporate Member Limited/MS Amlin Corporate Services Limited

上記は、財務上の重要性(経常収益・費用・利益、総資産について、グループ全体に対するカバレッジが5%以上であること)や、グループ戦略上の重要性等を考慮して選定しております。
b.リスク・機会の識別の考え方
(a)重要性の評価基準、時間軸の考え方
・MS&ADインシュアランスグループは、グループ各社が直面するリスクを識別・評価する際、影響度、発生可能性を考慮し、リスク事象の中から重要度の高いものをグループ重要リスクとして選定しております。
・MS&ADインシュアランスグループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスクを識別するにあたり、グループ重要リスクの選定プロセスにおける考え方と整合させております。影響度、発生可能性はそれぞれ5段階評価を行っており、2つの要素の組み合わせにより、重要と評価するリスク事象を特定しました。影響度は、「経済的損失」「行政処分、業務の停止・停滞」「ブランド力・信用力への影響」「事業環境(法規制を含む)の変化」の4つの観点から総合的に評価し、発生可能性は当該リスクの発生頻度の観点から評価しました。機会の評価にも、この考え方を適用しております。
評価に際して設定した時間軸は以下のとおりであります。
短期1年単年度の経営計画を考慮
中期1年超~5年中間目標ターゲットイヤー(2030年)を考慮した時間軸で設定
長期5年超~25年程度2050年ネット・ゼロ目標を考慮した時間軸で設定

(b)リスクの評価について
・グループ重要リスクのうち、想定シナリオにおいて、気候変動に関連するものは5つあります(大規模自然災害の発生、信用リスクの大幅な増加、グループの企業価値の著しい毀損や社会的信用の失墜につながる行為の発生、新型インフルエンザ等の感染症の大流行、保険市場の変化)。2025年度に実施した台風のシナリオ分析(※)の結果は、「大規模自然災害の発生」が、気候変動に関連するその他の4つのグループ重要リスクのシナリオよりも大きな財務的影響があることを示す結果となりました。
・大規模自然災害のうち、気候関連の自然災害として、ア.台風、ハリケーン、高潮、豪雨、洪水等による風水災、イ.雹・雪災、ウ.森林火災、エ.熱波・寒波等が挙げられます。これらの自然災害の性質、発生可能性及び規模は同一ではなく、合理的に見込み得る気候関連のリスクの判断において区別することが必要であります。
・自然災害を上記ア.~エ.に区分してその重要性を検討した結果、MS&ADインシュアランスグループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連の物理的リスクとして台風、ハリケーン、高潮、豪雨、洪水等による風水災を特定しました。
※レジリエンス評価のシナリオ分析とは異なります。
<風水災を特定した理由>
・台風、ハリケーン等は発生頻度及び規模の面で大きな影響を及ぼしており、被害が継続的に発生しております。近年は激甚化が進行しており、MS&ADインシュアランスグループでも国内元受発生保険金が6,000億円を上回った年度がありました。被害総額は増加傾向にあり、このような状況が短期間で大きく変わる可能性は低いと考えられます。
・一方、中長期的な見通しとして2050年時点を想定した台風の試算では、保険金支払が大きく変動する可能性があるという結果が得られました。詳しくはe.シナリオ分析を参照ください。台風の勢力、発生頻度が変化する前提において、保険金支払のさらなる増加や投融資先の重要拠点の水災被害による運用収益の悪化を招く可能性があり、財務的影響の大きいリスク事象と考えられます。

(c)機会の評価について
・MS&ADインシュアランスグループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連の機会の検討にあたり、気候関連のリスクの増加を前提とし、保険に求められる役割の拡大に着目して評価しました。近年の自然災害の激甚化・頻発化により既存の保険に対するニーズは高まっております。また、気候変動の適応策への関心の高まりは、新たな保険商品・サービスへの需要を喚起するとともに、新産業の成長や技術革新を通じて企業業績の向上をもたらし、MS&ADインシュアランスグループの中長期的な企業価値創造につながると考えております。
・こうした点を踏まえ、「気候関連のリスクに備える保険商品」「気候変動の適応、防災・減災サービス」をMS&ADインシュアランスグループにとっての気候関連の機会として識別しました。機会の評価に際し、グループ重要リスクと同様に影響度、発生可能性の2軸でそれぞれ5段階評価を行い、2つの要素の組み合わせにより、重要と評価する機会を特定しました。
・気候関連のリスクに伴う財務的影響と比べて相対的に小さいものの、持続的な成長と収益の質の向上、並びにお客さま及び社会のレジリエンス強化に影響する重要な機会で、中長期的に継続して取り組むことで徐々に成果が顕在化するものであります。また、既存サービスの高度化、拡充に加え、リスク分析力を活かしたサービス対象を広げることで、社会のレジリエンス向上に結びつく適応ビジネス領域の一層の拡大が可能だと考えております。
c.リスク・機会のバリュー・チェーン、財務的影響
(a)風水災(物理的リスク)
ア.気候関連のリスクが現在のバリュー・チェーンに与えている影響
・MS&ADインシュアランスグループが重要と考える気候関連のリスクの影響は、主にバリュー・チェーンの下流活動において発生します。風水災は、保険引受先や投融資先の各拠点における有形固定資産、商品等の毀損をもたらすほか、操業停止、復旧費用の増加、損害率の悪化を踏まえた保険料の上昇、物流の寸断、納期遅延、売上機会の逸失、従業員の安全確保、出社困難等、直接・間接の影響が広範に及ぶ可能性があります。風水災の被害はグローバルに発生しており、防災・減災は特定の地域だけが対応していく課題ではありません。
・特に、台風等が発生した場合、進路次第では広域被害が発生し、港湾・空港・道路等の基幹インフラの機能低下に伴い、原材料の調達や製品の出荷が遅延することで、在庫逼迫やお客さま対応の遅れが生じるリスクがあります。沿岸域に立地する拠点では、高潮の発生により浸水や塩害が生じ、電気設備・機械装置の故障、操業停止期間の長期化、資産価値の低下につながる可能性があります。
・豪雨発生時には、MS&ADインシュアランスグループや保険引受先、投融資先の施設において大規模な浸水、設備損傷が発生するおそれがあります。さらに、土砂災害の発生リスクも高まります。これにより、復旧のための追加投資や代替調達の費用が発生し、収益性に負の影響を与える可能性があります。また、広域の豪雨及び土砂崩れ、斜面崩壊等は配送網の停滞と交通規制を誘発し、出荷遅延・キャンセル増加等の操業停止に係るコスト増が生じることが予測されます。
・風水災被害の拡大は発生保険金の増加につながり、当期利益が計画を下回る可能性があります。この結果、当期利益の積み上がりを通じた利益剰余金の増加が想定どおり進まない可能性があります。また、将来キャッシュアウト・フローの予想が増加することで、保険負債が増加する可能性があります。発生保険金の増加はキャッシュ・フローの減少に結びつきます。
イ.気候関連のリスクが将来のバリュー・チェーンに与えると予想される影響
・シナリオ分析の結果によると、2050年の台風の保険金支払は、勢力及び発生頻度が大きく変化する可能性があるという結果になり、保険引受先・投融資先の被害及びMS&ADインシュアランスグループの財務への影響は現在よりも大きくなるものと想定されます(シナリオ分析の詳細はe.シナリオ分析をご参照ください)。
・なお、風水災に関する将来の財務的影響については、影響を見積もる際の測定に伴う不確実性の程度があまりにも高いために、もたらされる定量的情報が有用でないと考えることから、定量的情報を開示しておりません。
(b)機会
気候関連の機会が現在及び将来のバリュー・チェーンに与えていると予想される影響
・MS&ADインシュアランスグループでは、リスクコンサルティング並びにデータ及びデジタル技術を活用した防災・減災の取組みを推進しており、保険の本来機能である損失の補填にとどまらず、損失の未然防止や早期回復の支援までを包含することを目指しております。この結果、ビジネスモデル及びバリュー・チェーンに様々な影響を与えます。
・保険料増収に加え、補償前後のソリューションをはじめとした、最先端のソリューションの普及により損害率上昇の抑制が見込まれます。また、助言、データ、復旧支援等のサービス収入が新たな収益源となり、収益構造の分散が進む可能性があります。さらに、保険金支払の迅速化を実現することで、お客さまが早期に平常の生活に戻ることをサポートし、お客さまの満足度向上につながる可能性があります。一方、データ基盤整備をはじめとするシステム投資により、短期的に事業費率が上昇する可能性があります。
・この他、物理的リスクの顕在化に伴う補償ニーズの拡大を原動力として、長期的にデリバティブやパラメトリック保険の普及が進むと、保険金支払の迅速化、損害調査費の削減、支払いの予見可能性が向上し、財務の安定性を高めます。
・なお、当該機会に係る将来の財務的影響については、影響を見積もる際の測定に伴う不確実性の程度があまりにも高いために、もたらされる定量的情報が有用でないと考えることから、定量的情報を開示しておりません。
d.戦略及び意思決定に与える影響
(a)風水災(物理的リスク)
MS&ADインシュアランスグループでは、風水災リスクに関する評価の結果を経営判断に反映させ、自然災害リスク管理、事業継続態勢の整備、アンダーライティング強化等の取組みを通じて、グループ全体の財務健全性の維持及び保険引受の安定化を図っております。
ア.自然災害リスクの管理
MS&ADインシュアランスグループでは、主に気象学や建築学といった工学的な知見を取り入れたモデルを使用して、保険の補償対象となる自然災害について地域別・災害別にリスク量を計測・把握することで、自然災害リスクを管理しております。
(ア)グループ全体のリスクのコントロール
グループとして自然災害リスクの正味保有に関する基本的な方針を策定し、その方針に基づいてグループ各社が適切な保険引受に努めるとともに、再保険調達を行うことで、グループ全体の自然災害リスクのコントロールに取り組んでおります。加えて、適正な保険料率の設定と運営を行うことで、グループ全体での財務健全性・期間損益の安定性の維持、向上に努めております。
(イ)リスク量の上限の設定
大規模自然災害のストレステストの実施に加えて、リスク量の大きい国内風水災リスク及び米国風水災リスクに対しては、200年に一度の確率で発生する保険金支払を基準に、グループ及び各社別にリスク量の上限(リスクリミット)を設定して、財務健全性の維持を図っております。
(ウ)外部機関との連携とモデルの高度化
自然災害リスクに関する知見を持つ外部機関とも連携して、直近の学術的知見や自然災害の発生状況を踏まえてモデルを高度化する取組みを進めております。さらに、これまで蓄積してきた知見等を活用して、気候の影響をストレステストに織り込むことや気候に係る不確実性をMS&ADインシュアランスグループ全体のリスク量に反映すること等にも取り組んでおります。
イ.事業継続計画
MS&ADインシュアランスグループは、社会的使命の遂行及びステークホルダーへの責任を果たすため、MS&ADインシュアランスグループの危機管理マニュアル及び再建計画に従い、グループ全体の危機管理態勢及び事業継続態勢を構築し、危機がもたらす被害、ダメージを最小化するために必要な体制を整備しております。
ウ. 保険引受を通じた今後の対応
保険金額の見直しやリスクサーベイの高度化、適切な補償範囲の設定等、アンダーライティング力の強化によってお客さまに適正な保険料を提示するとともに、リスク対応に向けた最先端のソリューションを推進することで、収支の安定化に取り組んでおります。また、企業として強固な財務体力を維持するためには、自然災害リスクを含むポートフォリオの分散も重要であり、海外事業や国内生命保険事業、新たなビジネス領域の拡大によりポートフォリオの変革を進めております。
(b)機会
・MS&ADインシュアランスグループは、特定した気候関連のリスクを踏まえ、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」という取組みにより、企業活動を通じた社会との共通価値創造の実現を目指しております。
・大規模災害や複数災害時においても平時と同等の迅速性・適切性を確保し、お客さまに保険金をお支払いする体制を構築してきました。また、自然環境の保全・再生や環境負荷の軽減等に取り組むMS&ADグリーンアースプロジェクトを通じ、洪水被害の防災・減災、脱炭素、水循環の健全化の各テーマに対する産官学連携の取組みを継続実施しております。これらの活動はMS&ADインシュアランスグループの商品・サービス開発、地域・顧客セグメントの優先付け、並びに長期的な顧客基盤の維持・拡大に資すると考えております。
e.シナリオ分析
(a)保険引受における物理的リスクの分析
・物理的リスクのシナリオ分析として、地球温暖化に伴う台風の変化が保険金支払に与える影響について分析しました。
・MS&ADインシュアランスグループは、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が立ち上げたプロジェクトにおいて、保険引受に与える影響が大きい台風やハリケーンの分析を行うグループに参画し、将来、地球温暖化が進展した際に、台風やハリケーンがもたらすリスク量等への影響について検討しました。
・4℃シナリオ(RCP8.5)の2050年において、台風による保険金支払は、勢力の変化によって約+5%~約+50%、また、発生頻度の変化によって約△30%~約+28%、各々変化する可能性があるという結果になりました。
・台風による高潮の変化では、2℃シナリオ(RCP4.5)、4℃シナリオ(RCP8.5)における2030年及び2050年の分析結果は、いずれの場合でも、保険金支払は数%程度増加する可能性があるという結果となりました。
・2021年度には、上記の分析とは別に、気候関連のリスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)で検討されているシナリオの前提等を参考として、日本銀行、金融庁と連携して、シナリオ分析のエクササイズを実施し、気候変動影響によって勢力が強まった自然災害による保険金支払について分析を行いました。また、上記に加えて、MS&ADインシュアランスグループでは、学術機関と連携した研究プロジェクト等により知見の向上に努めるとともに、気候変動による台風の勢力変化を反映した分析手法を構築する等、シナリオ分析の精度向上に取り組んでおります。
(b)投融資における物理的リスクの分析
・MS&ADインシュアランスグループでは、気候変動による投融資先の重要拠点における水災被害の増加が、運用収益の悪化につながる可能性があると考えております。そのため、主要な投資先の資産の物理的リスクの分析を行い、資産運用における気候関連のリスクを確認しております。
・MS&ADインシュアランスグループでは、お客さまとの取引を通じて気候関連のリスクと強い関係性を有しており、投融資(株式・社債・企業融資)ポートフォリオを対象に、気候変動シナリオ下での物理的リスクを定量的に評価しました。
・気候変動に起因して風水災等の物理的リスクが増大すると、投融資先の売上や資産に影響を与える可能性があります。そこで、MS&ADインシュアランスグループの投融資ポートフォリオ上位500社を選定し、気候変動による風水災リスクの影響について、株式・社債・企業融資ごとに、売上損害・資産損害の双方を分析しました。
・分析の結果、最もリスクが増大する株式の4℃超シナリオにおいて、2050年時点で売上損害、資産損害の影響がそれぞれ5.2%程度増大する可能性があることがわかりました。ただし、投融資先の売上対比では、投融資ポートフォリオ全体としての影響は限定的と考えられます。
f.リスク評価に対する不確実性の存在
シナリオ分析の結果には、一般的にモデル特性やシナリオ設定、観測データの精度等に起因する不確実性が内在しており、これらの不確実性を考慮する必要があります。<気候予測モデルの不確実性>国際的なプロジェクトのCMIP(Coupled Model Intercomparison Project)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書において、気候予測やシナリオ分析のためのデータを提供していますが、その気候予測モデルには以下のような不確実性が存在しております。
(a)モデルの構造的不確実性各モデルは異なるパラメータを使用しているため、モデル間で結果が異なることがあります。特に、温暖化に伴う雲の温室効果や日傘効果がモデルごとに異なり、これが気候変動予測の不確実性の最大の要因(※)となっております。
(b)外部強制力の不確実性太陽放射、火山活動、人為的な温室効果ガスの排出等、外部強制力の将来の変動に関する不確実性も存在します。
(c)内部変動の不確実性気候システムには自然の内部変動(エルニーニョ現象等)が存在し、これがモデルの予測に影響を与えることがあります。
(d)データの不確実性モデルの検証や初期条件の設定に使用される観測データの精度に不確実性が存在します。日本の短時間強雨発生回数の変化に関する気象庁のレポートにおいても、極端な大雨の発生頻度が少ないことやアメダスの観測時間が比較的短いことから、これらの長期変化傾向を確実に捉えるためには今後のデータの蓄積が必要であることが示唆されております。
(e)スケールの不確実性モデルはグリッドベースで計算を行うため、空間解像度に限界があります。これにより、地域的な気候変動の詳細な予測には限界が生じます。

※ Zelinka et al., Causes of Higher Climate Sensitivity in CMIP6 Models,
このように、IPCCの評価報告書に提供される気候モデルにおいても複数の不確実性が存在し、最も温暖化が進行するシナリオ(RCP8.5/SSP5-8.5)における分析結果においてもなお、その影響が上振れする可能性があることを認識しております。

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