有価証券報告書-第24期(2025/04/01-2026/03/31)
②戦略
気候変動は、グローバルな課題であるとともに、自然災害の激甚化をもたらす可能性があるものであり、保険引受や資産運用に大きな影響を及ぼします。東京海上グループは、気候変動対策を、本業である保険事業はもとより、機関投資家、そしてグローバルカンパニーとして真正面から取り組むべき最重要課題と位置付けています。
また、地球の環境を守るためには、気候変動対策だけでなく、自然資本や生物多様性の損失を止め、回復させるネイチャーポジティブの取組みが不可欠です。気候変動によって、植物の生育ができない環境となり、自然が失われるという影響が出ています。自然が失われることによって、吸収・固定される温室効果ガスが減少し、地球の温暖化が進行するという影響も出ています。このように気候変動と自然資本・生物多様性は相互に影響を与えるものであり、同時に取り組むべき課題と認識しています。以上を踏まえ、東京海上グループの気候変動および自然資本・生物多様性に関連するリスクならびに機会に関する情報を本有価証券報告書に記載しています。気候関連情報開示および自然関連情報開示の詳細については、東京海上グループのClimate & Natureレポートに記載しています。
戦略にはその前提となるリスク認識が重要です。東京海上グループは、気候変動リスクおよび自然関連リスクが高まることを想定し、事業への影響を特定・評価しています。気候変動リスクおよび自然関連リスクには気候変動および自然の損失に伴う自然災害の激甚化等によって生じる物理的リスクに加え、脱炭素社会や自然共生社会への移行が投融資先の企業価値や東京海上グループの保有資産価値に影響を及ぼすこと等によって生じる移行リスクがあります。
また、気候変動の緩和および気候変動への適応ならびに自然との共生に向けた対応から生まれるビジネス機会を認識し、保険商品・サービスの開発・提供を通じて、脱炭素社会および自然共生社会への移行に取り組んでいきます。
物理的リスク、移行リスクおよび機会について、事象例および東京海上グループの事業活動における具体例は以下のとおりです。
(注)中期経営計画の策定期間を考慮し、「短期」については3年未満と定義しています。また、現中期経営計画において2035年に「当社グループのありたい姿」を設定していることから、「中期」については10年未満とし、10年以上については「長期」と定義しています。
東京海上グループでは、特に以下を気候変動・自然関連の重要なリスク・機会と捉えています。リスクに関しては、リスクベース経営(ERM)に基づく定性リスク管理の中でグループとしての重要なリスクおよびエマージングリスクを特定しており、特定されたリスクのうち、気候・自然関連に関するものを抽出しています。機会に関しては、エネルギー源の変化やレジリエンス向上に向けた需要等を踏まえて重要と考えられる機会を特定しています。
(注)リスク・機会の詳細は次項を参照ください。
■ビジネスモデルおよびバリューチェーンに与える影響
気候変動・自然関連のリスクおよび機会は、東京海上グループのビジネスモデルおよびバリューチェーンにさまざまな影響を与えており、将来にその影響がさらに拡大する可能性があります。現在および将来における影響ならびに東京海上グループのビジネスモデルおよびバリューチェーンにおいて、気候変動・自然関連のリスクおよび機会が集中している部分は、以下のとおりです。
■財務的影響
気候変動・自然関連のリスクおよび機会が当年度および将来において東京海上グループの財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローに与える影響は以下のとおりです。なお、将来における定量的な影響については見積もるにあたり測定の不確実性の程度が非常に高いことから、定量的情報は開示していません。
[物理的リスク]a)巨大風水災・セカンダリーペリル、b)地球温暖化、自然資本・生物多様性の喪失
気候変動に起因する自然災害の増加に伴って、拠点ビル等が被災する可能性があります。被災した場合には、その復旧費用や営業停止期間の収益機会の喪失等が発生し、東京海上グループの連結財務諸表に影響が生じる場合があります。当事業年度において、自然災害に伴う拠点ビル等の被災は発生しておらず、東京海上グループの連結財務諸表に重要な影響を与えていません。また、自然災害の頻度の高まりや規模の拡大により、保険金の支払いが増加し、事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。当事業年度においては、日本国内では2025年8月の九州大雨をはじめとする自然災害に対して574億円、海外ではロサンゼルスの山火事や北米暴風雨等により396億円の保険金支払が発生しており、合計970億円(注)の正味発生保険金が発生しています。
将来的な気候変動に伴い、さらなる保険引受損益の悪化や、追加対応によるコスト増を含むオペレーションへの影響が拡大した場合、バリューチェーンを含めた東京海上グループのビジネスモデルに大きな影響を及ぼす可能性があると考えています。
(注)税引前・国際財務報告基準(IFRS)ベース
[移行リスク]c) 脱炭素・自然共生社会への不適切な対応
当該リスクに関する財務的影響については、当事業年度において、東京海上グループの不適切な対応に伴うレピュテーション低下や、産業・企業における不適切な対応に伴う当社資産価値の低下等は発生しておらず、東京海上グループの連結財務諸表に重要な影響を与えていません。
将来的には、上記リスクの発現に伴い、資産価値の低下等、財務諸表に影響を与える可能性があります。
[機会]d) 再生可能エネルギーや自然関連事業に関する保険ニーズの飛躍的増大
東京海上グループでは気候変動および自然関連の機会を捉えるべく、保険商品・ソリューションの開発・提供に力を入れています。気候変動においては、洋上風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギー事業者向けの保険等、脱炭素社会実現に直接的に貢献する保険を提供しています。さらなる価値提供拡大に向けて、2025年5月より新プロジェクト「Tokio Marine GX」(注)を始動しました。グループ一体となり保険商品・サービスラインナップの拡充、GX領域における新たなリスクへの対応、グループの強固な財務基盤を活用した保険引受キャパシティの提供等を通じて、より幅広いお客様のGX支援の取組みを推進することで、2026年度末時点における脱炭素関連保険料450億円の達成をめざすとともに、将来にわたる持続的な成長を実現してまいります。自然関連についても、2025年2月に東京海上グループに加わったID&Eグループが有する自然関連リスクの可視化・評価技術や自然共生型インフラの設計等の専門性を活かし、お客様の自然関連リスクへの対応やネイチャーポジティブ実現に向けた取組みを推進していきます。
これらの取組みは、将来の保険引受収益の増加をはじめとする財務業績およびキャッシュ・フローに好影響をもたらす可能性があります。
(注)再生可能エネルギー事業者向け保険の引受およびリスクマネジメントの専門性を有するTokio Marine GX社(旧GCube社)をGX支援の牽引役として、グループ一体でGX分野の保険商品・サービスのラインナップの拡充、GX領域における新たなリスクへの対応および当社グループの強固な財務基盤を活用した保険引受キャパシティの提供等を通じて、お客様のGX推進を支援するとともに、GX関連保険分野における最先端・リーディング保険グループとしてのブランド確立を目指すプロジェクト
■リスクおよび機会に対する戦略
東京海上グループは気候変動・自然関連のリスクおよび機会に対応するために様々な取組みを実施しています。リスクの観点では、保険引受や投融資における損失の増加、資産価値の変動等を通じて、将来的に財務状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、これらの変化は、顧客の脱炭素化やレジリエンス向上を支援する保険・ソリューションへの需要拡大といった新たな事業機会をもたらす可能性もあります。こうしたリスクと機会の両面を踏まえ、以下のような戦略を策定しています。
物理的リスクa)、b)への対応では、被害の未然防止や事故発生時の被害軽減、早期復旧のためのソリューションの提供に注力しています。具体的には、自然災害時の迅速な対応態勢の構築や、デジタル・AI等の技術を活用した保険金支払の高度化に取り組んでいます。また、防災コンソーシアムにおけるソリューション共創や、ID&Eグループや東京海上レジリエンス株式会社によるソリューション提供等を進めています。社会の災害レジリエンス向上に不可欠な火災保険制度を持続的に運営するとともに、防災・減災につながる保険商品開発、提供するソリューションの拡充、BCP(事業継続計画)策定支援の高度化等を通じて、支援提供先の拡大に取り組んでまいります。
移行リスクc) に対しては、気候変動に伴う温室効果ガス排出の管理・削減等に係るコストの増加が、投融資先の企業価値や東京海上グループの保有資産価値に影響を及ぼす可能性があります。東京海上グループでは、政策投資として保有している株式の保有ゼロに向けた取組み(非上場株式および資本業務提携による出資等は除く)や脱炭素化を目的とした取引先とのエンゲージメントに努めており、これらの取組みが上記の影響を軽減することにつながっています。具体的には、東京海上日動火災保険株式会社において、保険引受に伴う温室効果ガス排出量の約9割を占める大口顧客200社のうち160社について深度ある提案・対話を行うことを2030年目標として掲げ、取組みを進めています。
また、機会 d) については上述のとおり、洋上風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギー事業者等に対する保険商品・ソリューションの開発・提供等に力を入れています。
上述のとおり、東京海上グループは、保険商品・サービスによる再生可能エネルギーの普及支援、脱炭素化を目的とした取引先とのエンゲージメント、保険引受・投融資方針の厳格化等を通じて、2050年ネットゼロの実現に取り組んでいます。また、自然共生社会の実現に向けて、自然共生サイトの認定に向けた取組みや、取引先企業との対話を通じた支援を実行しています。東京海上グループの移行に向けた計画は次のとおりです。

上記移行計画には不確実性が伴いますが、確実な実行・推進のために東京海上グループは様々な取組みを実施していきます。
例えば、脱炭素社会および自然共生社会の実現に向けては、保険引受先・投融資先との建設的なエンゲージメントを通じて、脱炭素計画のみならず、自然資本への依存・影響への対応状況をモニタリングするとともに、脱炭素関連保険や自然関連事業を支えるソリューションの提供を進めています。また、サステナビリティ・テーマ型投融資による資金提供も実行しています。2050年のネットゼロ達成および自然共生社会の実現は、再生可能エネルギーの普及や技術的発展、カーボン・クレジット市場の健全な発展に加え、ネイチャーポジティブに資する技術およびビジネスモデルの進展を前提としています。東京海上グループは再生可能エネルギー発電事業や関連設備に関する保険商品やカーボン・クレジット関連保険、自然関連リスクやネイチャーポジティブに資する商品・ソリューションの開発・提供等を進めてまいります。気候関連の中間目標の詳細は、「④指標と目標 ■気候関連の目標に関する開示」に記載のとおりです。
■気候レジリエンス
東京海上グループは、物理的リスクおよび移行リスクに関するシナリオ分析を行い、気候変動が保険金支払、投融資先の企業価値および東京海上グループの保有資産価値に及ぼす影響を評価しています。
リスクの観点では、シナリオ分析の結果、いずれのシナリオにおいても一定の影響が生じ得ると識別しています。一方で、損害保険事業は比較的短期の保険契約が多いことや、東京海上グループの運用資産は流動性の高い金融資産が中心であること、また、政策投資として保有している株式の保有ゼロに向けた取組みを進めていることから、これらの影響に柔軟に対応することが可能であると考えています。
また、気候関連の機会の観点からも、選択したシナリオに基づき将来的なビジネス機会を検討しています。脱炭素社会への移行が進行するシナリオにおいては、「■リスクおよび機会に対する戦略」に記載しているサステナビリティ戦略を着実に実行していくことで気候関連の機会を享受することが可能であると考えています。また、脱炭素社会への移行が進まない場合においても、自然災害の頻発化・激甚化に対する社会全体のレジリエンス向上に資するような商品やソリューションの開発等の取組みをより一層推進することで、保険金支払の増加による影響を相殺・軽減することが可能であると考えています。
今後も、上記の評価結果も踏まえ、「■リスクおよび機会に対する戦略」に記載しているサステナビリティ戦略を、気候関連のリスクに対応するとともに、気候関連の機会の獲得につながるよう充実させながら実践していきます。なお、気候関連のレジリエンス評価については、最新の研究結果をもとにシナリオ分析に用いるシナリオや定量化モデルの改修が図られる可能性があるなど、一定の不確実性があると考えています。
シナリオ分析の概要は、下表のとおりです。保険引受の物理的リスクのシナリオ分析に用いたシナリオは、IPCCのRCP8.5シナリオであり、強度の強いものであることから、東京海上グループの保険引受に係る自然災害の激甚化等に対するレジリエンス評価に関連するものであると考えています。また、運用資産のシナリオ分析では、移行リスクのシナリオとして、NGFSの2つのシナリオ(Orderly-Net Zero 2050、Disorderly-Delayed Transition)を使用しています。物理的リスクおよび移行リスクへの影響の大きさがシナリオによって異なる中、東京海上グループでは複数シナリオを以て多角的に分析していることから、運用資産に係る物理的リスクや移行リスクに対するレジリエンス評価に関連するものと考えています。なお、当該シナリオ分析は、気候レジリエンス評価の一環として実施しているものの、その定量的な結果については上記の不確実性を踏まえ、未だ高度化が必要な状況と認識しています。今後も、より適切な定量化モデルの活用に向けて研究・調査を進めていきます。
気候変動は、グローバルな課題であるとともに、自然災害の激甚化をもたらす可能性があるものであり、保険引受や資産運用に大きな影響を及ぼします。東京海上グループは、気候変動対策を、本業である保険事業はもとより、機関投資家、そしてグローバルカンパニーとして真正面から取り組むべき最重要課題と位置付けています。
また、地球の環境を守るためには、気候変動対策だけでなく、自然資本や生物多様性の損失を止め、回復させるネイチャーポジティブの取組みが不可欠です。気候変動によって、植物の生育ができない環境となり、自然が失われるという影響が出ています。自然が失われることによって、吸収・固定される温室効果ガスが減少し、地球の温暖化が進行するという影響も出ています。このように気候変動と自然資本・生物多様性は相互に影響を与えるものであり、同時に取り組むべき課題と認識しています。以上を踏まえ、東京海上グループの気候変動および自然資本・生物多様性に関連するリスクならびに機会に関する情報を本有価証券報告書に記載しています。気候関連情報開示および自然関連情報開示の詳細については、東京海上グループのClimate & Natureレポートに記載しています。
戦略にはその前提となるリスク認識が重要です。東京海上グループは、気候変動リスクおよび自然関連リスクが高まることを想定し、事業への影響を特定・評価しています。気候変動リスクおよび自然関連リスクには気候変動および自然の損失に伴う自然災害の激甚化等によって生じる物理的リスクに加え、脱炭素社会や自然共生社会への移行が投融資先の企業価値や東京海上グループの保有資産価値に影響を及ぼすこと等によって生じる移行リスクがあります。
また、気候変動の緩和および気候変動への適応ならびに自然との共生に向けた対応から生まれるビジネス機会を認識し、保険商品・サービスの開発・提供を通じて、脱炭素社会および自然共生社会への移行に取り組んでいきます。
物理的リスク、移行リスクおよび機会について、事象例および東京海上グループの事業活動における具体例は以下のとおりです。
| 事象例 | 東京海上グループの事業活動における リスク・機会の例 | 時間軸(注) | ||
| 物理的リスク | 急性 | ・自然災害の激甚化の可能性 ・土壌の保水力低下や沿岸浸食による損害の発生・拡大 | ・保険収益の減少(保険金支払への影響等) ・拠点ビル等が被災することによる事業継続への影響 | 短期~ |
| 慢性 | ・気温の上昇 ・干ばつや熱波等、その他気象の変化 ・海面の上昇 ・節足動物媒介感染症への影響 | 中期・長期 | ||
| 移行リスク | 政策および法規制 | ・炭素価格の上昇 ・環境関連の規制・基準の強化 ・気候関連の訴訟の増加 | ・炭素価格上昇による投融資先企業の企業価値や東京海上グループの保有資産価値の下落 ・賠償責任保険に係る支払保険金の増加 | 中期・長期 |
| 技術 | ・脱炭素社会・自然共生社会への移行に向けた技術革新 | ・脱炭素社会・自然共生社会への移行が十分ではない投融資先企業の企業価値や東京海上グループの保有資産価値の下落 ・技術革新やお客様ニーズの変化を捕捉できないことによる収益の低下 | 中期・長期 | |
| 市場 | ・商品・サービスの需要と供給の変化 | 短期~ | ||
| 評判 | ・脱炭素社会・自然共生社会への移行の取組みに対するお客様や社会の認識の変化 | ・東京海上グループの取組みが不適切とみなされることに伴うレピュテーションの毀損 | 短期~ | |
| 機会 | 資源の効率性、エ ネルギー源、製品・サービス、市場、レジリエンス | ・エネルギー源の変化やレジリエンス向上に向けた製品・サービス需要や社会の認識の変化 | ・再生可能エネルギーや自然関連事業に関する保険ニーズの飛躍的増大 ・脱炭素社会・自然共生社会への移行に伴う企業の資金需要の増加による投融資機会の増大 ・災害レジリエンス向上に向けた防災・減災ニーズの増加 | 短期~ |
(注)中期経営計画の策定期間を考慮し、「短期」については3年未満と定義しています。また、現中期経営計画において2035年に「当社グループのありたい姿」を設定していることから、「中期」については10年未満とし、10年以上については「長期」と定義しています。
東京海上グループでは、特に以下を気候変動・自然関連の重要なリスク・機会と捉えています。リスクに関しては、リスクベース経営(ERM)に基づく定性リスク管理の中でグループとしての重要なリスクおよびエマージングリスクを特定しており、特定されたリスクのうち、気候・自然関連に関するものを抽出しています。機会に関しては、エネルギー源の変化やレジリエンス向上に向けた需要等を踏まえて重要と考えられる機会を特定しています。
| カテゴリー | 東京海上グループにおける重要なリスク・機会(注) | 時間軸 |
| 物理的リスク | a)巨大風水災・セカンダリーペリル b)地球温暖化、自然資本・生物多様性の喪失 | 短期~ 中期・長期 |
| 移行リスク | c)脱炭素・自然共生社会への不適切な対応 | 中期・長期 |
| 機会 | d)再生可能エネルギーや自然関連事業に関する保険ニーズの飛躍的増大 | 中期・長期 |
(注)リスク・機会の詳細は次項を参照ください。
■ビジネスモデルおよびバリューチェーンに与える影響
気候変動・自然関連のリスクおよび機会は、東京海上グループのビジネスモデルおよびバリューチェーンにさまざまな影響を与えており、将来にその影響がさらに拡大する可能性があります。現在および将来における影響ならびに東京海上グループのビジネスモデルおよびバリューチェーンにおいて、気候変動・自然関連のリスクおよび機会が集中している部分は、以下のとおりです。
| 東京海上グループにおける重要なリスク・機会 | 現在のビジネスモデルおよびバリューチェーンへの影響 | 将来のビジネスモデルおよびバリューチェーンへの影響 | リスクまたは機会集中している部分 |
| a)巨大風水災・セカンダリーペリル | ・巨大台風や集中豪雨の発生、雹災・森林火災・洪水等のセカンダリーペリルの発生に伴い、保険金支払が多額となることによる保険引受損益の悪化。 ・上記事象により、バリューチェーンを含む東京海上グループの物的損害が甚大となり、オペレーションの一部遅延・停止が発生。 | ・気候変動により左記事象が深刻化し、さらなる保険引受収益の悪化や、オペレーションへの影響(追加対応によるコスト増を含む)が拡大した場合、バリューチェーンを含めた東京海上グループのビジネスモデルに大きな影響を及ぼす可能性がある。 | ・日本、北米 ・火災保険等のプロパティ(財産)種目 |
| b)地球温暖化、自然資本・生物多様性の喪失 | ・現在においてリスクが発現、または、蓋然性が高まっているリスクではあるが、定性リスク管理上はエマージングリスクとして認識している。 | ・環境劣化に起因する自然災害の増加により、保険収益が悪化する可能性がある ・より深刻で頻繁な災害が発生して社会経済に甚大な被害をもたらした場合、サプライチェーンを含めた東京海上グループのビジネスモデルに悪影響をもたらす可能性がある | ・日本 ・火災保険等のプロパティ(財産)種目 |
| 東京海上グループにおける重要なリスク・機会 | 現在のビジネスモデルおよびバリューチェーンへの影響 | 将来のビジネスモデルおよびバリューチェーンへの影響 | リスクまたは機会が 集中している部分 |
| c)脱炭素・自然共生社会への不適切な対応 | ・同上 | ・不適切な資産運用、保険引受、その他当社行為が持続可能な社会への移行に悪影響を及ぼすとみなされ、東京海上グループのレピュテーションが毀損する可能性がある。 ・持続可能な社会に向けて適切な行動または移行しなかった産業・企業の価値が減損するに伴い、当社資産価値も低下する可能性がある。 | ・温室効果ガス高排出セクターの保険引受または当該セクターへの投融資 |
| d)再生可能エネルギーや自然関連事業に関する保険ニーズの飛躍的増大 | ・再生可能エネルギー需要が拡大する中、発電設備の建設におけるプロジェクトファイナンスにおいて保険手配が不可欠であること等を背景に、保険ニーズが高まっている。東京海上グループでは、洋上風力や太陽光発電等の再生可能エネルギー事業者向けの保険や電気自動車・蓄電池の保険等、脱炭素社会の実現に直接的に貢献する脱炭素関連保険の提供を進めている。 | ・世界中でネットゼロの実現および脱炭素社会への移行に向けて多くの設備投資が見込まれ、それらへの保険ニーズが高まっている。既存保険商品の拡大や新たな保険商品の開発により東京海上グループのビジネスに好影響をもたらす可能性がある。 | ・再生可能エネルギー事業者への保険引受 |
■財務的影響
気候変動・自然関連のリスクおよび機会が当年度および将来において東京海上グループの財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローに与える影響は以下のとおりです。なお、将来における定量的な影響については見積もるにあたり測定の不確実性の程度が非常に高いことから、定量的情報は開示していません。
[物理的リスク]a)巨大風水災・セカンダリーペリル、b)地球温暖化、自然資本・生物多様性の喪失
気候変動に起因する自然災害の増加に伴って、拠点ビル等が被災する可能性があります。被災した場合には、その復旧費用や営業停止期間の収益機会の喪失等が発生し、東京海上グループの連結財務諸表に影響が生じる場合があります。当事業年度において、自然災害に伴う拠点ビル等の被災は発生しておらず、東京海上グループの連結財務諸表に重要な影響を与えていません。また、自然災害の頻度の高まりや規模の拡大により、保険金の支払いが増加し、事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。当事業年度においては、日本国内では2025年8月の九州大雨をはじめとする自然災害に対して574億円、海外ではロサンゼルスの山火事や北米暴風雨等により396億円の保険金支払が発生しており、合計970億円(注)の正味発生保険金が発生しています。
将来的な気候変動に伴い、さらなる保険引受損益の悪化や、追加対応によるコスト増を含むオペレーションへの影響が拡大した場合、バリューチェーンを含めた東京海上グループのビジネスモデルに大きな影響を及ぼす可能性があると考えています。
(注)税引前・国際財務報告基準(IFRS)ベース
[移行リスク]c) 脱炭素・自然共生社会への不適切な対応
当該リスクに関する財務的影響については、当事業年度において、東京海上グループの不適切な対応に伴うレピュテーション低下や、産業・企業における不適切な対応に伴う当社資産価値の低下等は発生しておらず、東京海上グループの連結財務諸表に重要な影響を与えていません。
将来的には、上記リスクの発現に伴い、資産価値の低下等、財務諸表に影響を与える可能性があります。
[機会]d) 再生可能エネルギーや自然関連事業に関する保険ニーズの飛躍的増大
東京海上グループでは気候変動および自然関連の機会を捉えるべく、保険商品・ソリューションの開発・提供に力を入れています。気候変動においては、洋上風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギー事業者向けの保険等、脱炭素社会実現に直接的に貢献する保険を提供しています。さらなる価値提供拡大に向けて、2025年5月より新プロジェクト「Tokio Marine GX」(注)を始動しました。グループ一体となり保険商品・サービスラインナップの拡充、GX領域における新たなリスクへの対応、グループの強固な財務基盤を活用した保険引受キャパシティの提供等を通じて、より幅広いお客様のGX支援の取組みを推進することで、2026年度末時点における脱炭素関連保険料450億円の達成をめざすとともに、将来にわたる持続的な成長を実現してまいります。自然関連についても、2025年2月に東京海上グループに加わったID&Eグループが有する自然関連リスクの可視化・評価技術や自然共生型インフラの設計等の専門性を活かし、お客様の自然関連リスクへの対応やネイチャーポジティブ実現に向けた取組みを推進していきます。
これらの取組みは、将来の保険引受収益の増加をはじめとする財務業績およびキャッシュ・フローに好影響をもたらす可能性があります。
(注)再生可能エネルギー事業者向け保険の引受およびリスクマネジメントの専門性を有するTokio Marine GX社(旧GCube社)をGX支援の牽引役として、グループ一体でGX分野の保険商品・サービスのラインナップの拡充、GX領域における新たなリスクへの対応および当社グループの強固な財務基盤を活用した保険引受キャパシティの提供等を通じて、お客様のGX推進を支援するとともに、GX関連保険分野における最先端・リーディング保険グループとしてのブランド確立を目指すプロジェクト
■リスクおよび機会に対する戦略
東京海上グループは気候変動・自然関連のリスクおよび機会に対応するために様々な取組みを実施しています。リスクの観点では、保険引受や投融資における損失の増加、資産価値の変動等を通じて、将来的に財務状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、これらの変化は、顧客の脱炭素化やレジリエンス向上を支援する保険・ソリューションへの需要拡大といった新たな事業機会をもたらす可能性もあります。こうしたリスクと機会の両面を踏まえ、以下のような戦略を策定しています。
物理的リスクa)、b)への対応では、被害の未然防止や事故発生時の被害軽減、早期復旧のためのソリューションの提供に注力しています。具体的には、自然災害時の迅速な対応態勢の構築や、デジタル・AI等の技術を活用した保険金支払の高度化に取り組んでいます。また、防災コンソーシアムにおけるソリューション共創や、ID&Eグループや東京海上レジリエンス株式会社によるソリューション提供等を進めています。社会の災害レジリエンス向上に不可欠な火災保険制度を持続的に運営するとともに、防災・減災につながる保険商品開発、提供するソリューションの拡充、BCP(事業継続計画)策定支援の高度化等を通じて、支援提供先の拡大に取り組んでまいります。
移行リスクc) に対しては、気候変動に伴う温室効果ガス排出の管理・削減等に係るコストの増加が、投融資先の企業価値や東京海上グループの保有資産価値に影響を及ぼす可能性があります。東京海上グループでは、政策投資として保有している株式の保有ゼロに向けた取組み(非上場株式および資本業務提携による出資等は除く)や脱炭素化を目的とした取引先とのエンゲージメントに努めており、これらの取組みが上記の影響を軽減することにつながっています。具体的には、東京海上日動火災保険株式会社において、保険引受に伴う温室効果ガス排出量の約9割を占める大口顧客200社のうち160社について深度ある提案・対話を行うことを2030年目標として掲げ、取組みを進めています。
また、機会 d) については上述のとおり、洋上風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギー事業者等に対する保険商品・ソリューションの開発・提供等に力を入れています。
上述のとおり、東京海上グループは、保険商品・サービスによる再生可能エネルギーの普及支援、脱炭素化を目的とした取引先とのエンゲージメント、保険引受・投融資方針の厳格化等を通じて、2050年ネットゼロの実現に取り組んでいます。また、自然共生社会の実現に向けて、自然共生サイトの認定に向けた取組みや、取引先企業との対話を通じた支援を実行しています。東京海上グループの移行に向けた計画は次のとおりです。

上記移行計画には不確実性が伴いますが、確実な実行・推進のために東京海上グループは様々な取組みを実施していきます。
例えば、脱炭素社会および自然共生社会の実現に向けては、保険引受先・投融資先との建設的なエンゲージメントを通じて、脱炭素計画のみならず、自然資本への依存・影響への対応状況をモニタリングするとともに、脱炭素関連保険や自然関連事業を支えるソリューションの提供を進めています。また、サステナビリティ・テーマ型投融資による資金提供も実行しています。2050年のネットゼロ達成および自然共生社会の実現は、再生可能エネルギーの普及や技術的発展、カーボン・クレジット市場の健全な発展に加え、ネイチャーポジティブに資する技術およびビジネスモデルの進展を前提としています。東京海上グループは再生可能エネルギー発電事業や関連設備に関する保険商品やカーボン・クレジット関連保険、自然関連リスクやネイチャーポジティブに資する商品・ソリューションの開発・提供等を進めてまいります。気候関連の中間目標の詳細は、「④指標と目標 ■気候関連の目標に関する開示」に記載のとおりです。
■気候レジリエンス
東京海上グループは、物理的リスクおよび移行リスクに関するシナリオ分析を行い、気候変動が保険金支払、投融資先の企業価値および東京海上グループの保有資産価値に及ぼす影響を評価しています。
リスクの観点では、シナリオ分析の結果、いずれのシナリオにおいても一定の影響が生じ得ると識別しています。一方で、損害保険事業は比較的短期の保険契約が多いことや、東京海上グループの運用資産は流動性の高い金融資産が中心であること、また、政策投資として保有している株式の保有ゼロに向けた取組みを進めていることから、これらの影響に柔軟に対応することが可能であると考えています。
また、気候関連の機会の観点からも、選択したシナリオに基づき将来的なビジネス機会を検討しています。脱炭素社会への移行が進行するシナリオにおいては、「■リスクおよび機会に対する戦略」に記載しているサステナビリティ戦略を着実に実行していくことで気候関連の機会を享受することが可能であると考えています。また、脱炭素社会への移行が進まない場合においても、自然災害の頻発化・激甚化に対する社会全体のレジリエンス向上に資するような商品やソリューションの開発等の取組みをより一層推進することで、保険金支払の増加による影響を相殺・軽減することが可能であると考えています。
今後も、上記の評価結果も踏まえ、「■リスクおよび機会に対する戦略」に記載しているサステナビリティ戦略を、気候関連のリスクに対応するとともに、気候関連の機会の獲得につながるよう充実させながら実践していきます。なお、気候関連のレジリエンス評価については、最新の研究結果をもとにシナリオ分析に用いるシナリオや定量化モデルの改修が図られる可能性があるなど、一定の不確実性があると考えています。
シナリオ分析の概要は、下表のとおりです。保険引受の物理的リスクのシナリオ分析に用いたシナリオは、IPCCのRCP8.5シナリオであり、強度の強いものであることから、東京海上グループの保険引受に係る自然災害の激甚化等に対するレジリエンス評価に関連するものであると考えています。また、運用資産のシナリオ分析では、移行リスクのシナリオとして、NGFSの2つのシナリオ(Orderly-Net Zero 2050、Disorderly-Delayed Transition)を使用しています。物理的リスクおよび移行リスクへの影響の大きさがシナリオによって異なる中、東京海上グループでは複数シナリオを以て多角的に分析していることから、運用資産に係る物理的リスクや移行リスクに対するレジリエンス評価に関連するものと考えています。なお、当該シナリオ分析は、気候レジリエンス評価の一環として実施しているものの、その定量的な結果については上記の不確実性を踏まえ、未だ高度化が必要な状況と認識しています。今後も、より適切な定量化モデルの活用に向けて研究・調査を進めていきます。
| 物理的リスク(支払保険金への影響) | 移行リスク(資産運用への影響) | |
| 分析に用いたシナリオおよびその情報源 | IPCCのRCP8.5シナリオ | NGFSの以下のシナリオ ・Orderly-Net Zero 2050 ・Disorderly-Delayed Transition |
| 分析に用いた時間軸 | 2050年まで | 2050年まで |
| 分析に用いた事業の範囲 | 日本および北米の損害保険 | 日本および北米等の主要拠点が保有する運用資産(株式、社債、CMBS、国債) |
| 分析の前提とした主要な仮定 | 気候変動による支払保険金への影響が、国連環境計画金融イニシアティブの気候変動影響評価プロジェクトによる分析評価ツールで導出される経済損失への影響と同程度と仮定している。 | NGFSが提供するシナリオに準拠して、シナリオ変数(炭素価格、エネルギー需要、燃料価格、排出量、気温等)が変動することによって企業価値に与える影響を定量化している。また、低炭素社会への移行に伴い、気候変動の緩和や適応を技術的に実践することで得られる優位性(いわゆる「機会」)によるポジティブな効果を含めて算出している。 |
| シナリオ分析を実施した報告期間 | 2025年3月期 | 2025年3月期 |