有価証券報告書-第82期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、国内航空輸送網の拠点である羽田空港における旅客ターミナル等を建設、管理・運営する企業として、「公共性と企業性の調和」を経営の基本理念としております。この基本理念の下、今後とも、旅客ターミナルにおける絶対安全の確立、お客様本位の、安定的かつ効率的な旅客ターミナル運営に努めることにより確実に社会的責任を果たしてまいります。
また、グループ全体の継続的な企業価値の向上を図るため、戦略的かつ適切な投資の実行及び投資管理によるさらなる旅客ターミナルの利便性、快適性及び機能性の向上や顧客ニーズの高度化・多様化に的確に対応するとともに、航空会社、空港利用者、取引先、株主等関係者への適切な還元を心がけることを経営の基本方針としております。
(2) 経営環境認識
国内外の航空需要はコロナ禍から着実に回復し、羽田空港における当連結会計年度の旅客数は9,000万人を超え、2020年3月の国際線発着枠の拡大を背景に、コロナ前を上回る水準となりました。当社グループでは、2022-2025年度の中期経営計画に基づく取組を推進し、インバウンド等の急激な需要回復や想定を上回る物価高騰にも着実に対応することで、コロナ前以上に収益力を高め、利益成長を実現しました。
中長期的には、日本全体における訪日需要は今後も増加し、羽田空港の航空需要も堅調に推移することが見込まれます。一方で、航空業界においては、地方における労働人口の減少や人流の偏在、航空会社における国内線事業の収益性悪化などの課題が顕在化しております。羽田空港では、航空便数は発着枠の上限水準に達しており、需要回復期から需要安定期へと移行しつつあります。旅客数の量的拡大による成長余地が限定される中、羽田空港単独で安定需要を享受する限りでは、航空業界・日本経済全体にとってマイナスとなり、将来的に当社の成長も頭打ちとなることが懸念されます。
これらの観点を踏まえ、羽田空港での共創・全体最適を通じて、日本全体の航空成長を支えることが、当社グループの役割であると認識しております。
(3) 経営戦略
①長期ビジョン
当社グループは経営環境認識に基づき、羽田空港の目指すべき姿を、日本の玄関口・乗継の結節点として日本全体の移動・人流を活性化し、日本の航空旅客数最大化に貢献する空港であると定めました。この目指すべき姿を実現するための方向性として、「首都圏空港の最大活用」「アジアの経済成長の取込」「国内移動需要の創造」の3点を掲げ、当社グループの新たな長期ビジョンを、従来の「需要享受型」の空港ターミナル会社から、需要を自ら生み出し、共創と全体最適を牽引する「需要創造型」の空港の要(Anchor Role)と再定義いたしました。
当社が要の役割(Anchor Role)を果たし、共創・全体最適に取り組むことで、旅客には安心で快適な空港体験を、地域社会や事業パートナーには持続的な成長を、従業員には挑戦を通じた成長を、環境には着実な配慮を提供しながら、すべてのステークホルダーへの価値向上に繋げてまいります。
日本の航空旅客数最大化に向けた長期戦略において、ハード面では従来の基幹事業の進化として、国が進める人工地盤整備等と連動したターミナル施設の増改修を検討しています。国内線と国際線の機能融合を進め、スムーズな乗継環境の実現により地域送客力を強化するとともに、運営効率の向上を通じて発着処理能力の向上に寄与してまいります。ソフト面では新たな成長の軸として、関係事業者との全体最適を支える空港運営基盤「Total Airport Management(TAM)」を構築し、ナレッジを全国へ共有・活用することで、日本全体の人流創出へと繋げることを目指します。ハードとソフトとの両輪を推進することで取組みの効果を最大化し、収益ポテンシャルを拡大してまいります。
②中期経営計画(2026-2030年度)
2026-2030年度の新中期経営計画においては、長期的な将来像を実現するための企業変革期と位置付け、航空需要の享受にとどまらず、羽田空港全体を最適化し需要創造を牽引する「羽田空港の要」となることを目指します。
羽田空港の要としてすべてのステークホルダーへの貢献を果たすために、当社が2030年に実現すべき項目を整理し、マテリアリティ(重要課題)を再編いたしました。再編したマテリアリティへの対応を前提に、戦略の方向性として、将来の大規模投資の遂行へ向けたキャッシュ・フロー創出力の強化と関係者牽引力の強化を掲げ、「効率」「付加価値」「共創」の3つを中核戦略に据えて取り組んでまいります。

「効率」では、資本コストを意識した経営を徹底し、成長性・収益性の観点から経営資源を配分します。投資リターン管理の強化や、不採算事業の整理、非事業資産の圧縮等を通じて筋肉質な経営体質を築くとともに、グループ事業を再編し成長分野に経営資源を集中することで、資本効率の向上を図ります。
「付加価値」では、旅客動線や滞在時間、個々の多様なニーズを柔軟に捉えて、「稼ぐ力」を多角的に強化してまいります。内際一体での商業機能配置や乗継需要の取込、CRM強化、EC拡充などを通じてトラベルリテールを高度化し、施設サービスでは、先端技術を活用してターミナル機能の強化やサービスレベルの向上を図ります。これらの取組みによってターミナル滞在時間の価値密度を高め、旅客一人当たり及び施設面積当たりの収益向上を目指します。
「共創」では、空港全体の運営基盤となるTotal Airport Management(TAM)の構築を進めます。事業者間の連携高度化・空港全体の最適化を推進することで生み出だされる、時間・スペース・人員の余剰を、新たな価値創造に活かし、さらなる空港評価と収益機会に繋げます。また、世界のエアラインから選ばれ続けるべく、旅客ターミナルにとどまらず、羽田空港全体の脱炭素化計画を着実に推進します。さらに、周辺地域や全国各所との連携を深めることを通じて事業領域を拡張し、羽田空港ターミナル外での収益規模を拡大します。
これら中核戦略の推進と合わせて、戦略推進の土台となる人的資本経営を強化することで、持続的な企業価値向上を目指します。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2025年度を最終年度とする中期経営計画におけるガイドライン及び達成状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②経営成績の分析」に記載しております。
2026-2030年度の中期経営計画においては、業績成長目標として、2030年度に売上高3,400億円・営業利益550億円を目標としております。質的成長の成果として、売上高以上の伸び幅で営業利益を拡大することを目指します。また、業績目標に加えて、すべてのステークホルダーへの貢献を可視化すべく、ガイドラインを以下のとおり設定しております。

(5) 対処すべき課題
日本国内のインバウンド需要は引き続き堅調に推移する一方で、羽田空港においては発着枠の制約が顕在化しており、旅客数の大幅な増加による量的成長は見込みにくい状況となっています。また、物価上昇や人件費の増加、地政学リスク等を背景とした為替・エネルギー価格の変動などにより、航空需要及びコスト構造の両面において不確実性が高まっています。
2026年度は、当社グループにおいては、中期経営計画の初年度として、需要享受から需要創造へ転換する、企業変革の起点となる一年です。地政学的リスクや国際情勢の変動による影響を注視しつつ、不採算事業の整理や収益力の強化に努め、利益創出を図ります。また、当社子会社の取引先事業者の選定等に関して、当社が定める日本空港ビルグループコンプライアンス基本指針に照らして不適切な対応が行われていた事実が判明した事案(以下、「不適切事案」という。)を踏まえ、コーポレート・ガバナンス強化を引き続き経営上の重要な課題として認識しています。継続的なモニタリングのもと、2025年6月12日付「再発防止策の策定及び取締役の処分に関するお知らせ」で策定した再発防止策(以下、「再発防止策」という。)を着実に遂行し、信頼回復に努めてまいります。
ターミナル運営では、資材や人件費単価の増加に加えて、第1ターミナル北側サテライト施設の供用開始に伴い、減価償却費やターミナル運営コスト等の不可避な費用増加が見込まれます。また、国際線における旅客数の増加に伴う混雑の解消や、際内乗り継ぎ利便性のさらなる強化に対応するためのターミナル整備が課題となります。このような中で、将来を見据えた施設整備を着実に進めるとともに、PSFC単価改定のほか、継続的な賃料の見直しや、前年度に実施した各サービス料金の改定効果の通年寄与により、増加するコストの吸収を図ります。
リテール運営においては、旅客数の増加が限られる中で、展開ブランドの入れ替えや店舗改装、CRMの強化等により旅客一人当たりの収益の向上を図ります。また、銀座市中免税店を撤退する一方で、ECサイトでの免税品事前予約サービスを強化するなど、拠点・店舗単位で採算性を重視した資源配分を行い、高効率リテールを推進します。
さらに、グループ全体で投資規律を徹底し、業務委託費や諸経費等のコストを精査することで、利益率及び資本効率の向上を図ります。
当社グループは、中期経営計画で掲げる“羽田空港の要=Anchor Role”となることを目指して、「効率」「付加価値」「共創」をキーワードに各施策を着実に実行し、企業価値の持続的な向上へと繋げてまいります。
(6) 不適切事案に関する再発防止策における信頼回復への取り組み
当社は、不適切事案については再発防止策に基づき、各施策の推進を図ってまいりました。今後は整備した制度・体制を監査等委員会と取締役会がモニタリングし、継続的な運用等を通じることで実効的なコーポレート・ガバナンスの構築、内部統制及びコンプライアンスの強化に努めてまいります。
主な取り組み内容は、次のとおりであります。
①経営体制の刷新
経営トップへの権限集中及び牽制機能の欠如を是正し、経営の透明性及び監督機能を確保しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、取締役会の実効性評価等を通じて、経営監督機能の継続的な検証及び改善を行ってまいります。
②最高経営責任者の後継者育成計画の策定及び指名プロセスの透明化及び指名諮問委員会の在り方の見直し
指名・報酬諮問委員会の委員長を独立社外取締役とし、委員会の独立性・客観性を高めました。また、後継者育成計画(サクセッションプラン)の策定に向けた検討を行い、役員指名プロセスの公平性・客観性・透明性を確保する運用体制を構築しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、後継者育成計画では、社長に求める人材要件、候補者の考え方、評価の枠組みを整理し、その運用を着実に進めることで、経営環境の変化に対応した実効性ある人材育成・選任を継続してまいります。
③経営トップへの牽制機能の強化
常勤の監査等委員の選任と監査等委員会室の新設により監査の実効性を確保し、内部統制・内部監査部門の担当役員を明確化し、さらには、主要グループ会社に常勤監査役を配置し、グループ監査体制を強化しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、監査等委員会による定期的なレビューを継続し、内部統制システムに係るグループ監査機能の実効性強化を図ってまいります。
④組織風土の改革
社内通報窓口、社外弁護士事務所による外部通報窓口、監査等委員(社外取締役)への直接通報制度を整備しました。また、内部通報制度の周知・教育を実施するとともに、法令・規程違反等が本社及び監査等委員会に迅速かつ適切に報告される体制を構築しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、通報制度の実効性を検証し、継続的な教育を通じてコンプライアンス意識の定着を図り、さらにはコンプライアンス推進委員会を中心に事案の背景・真因を分析し、その結果を教育・研修に反映することで、職場・組織風土の改善と透明性・信頼性の高い企業運営に繋げてまいります。
⑤経営改善委員会の設置
再発防止策を単なる形式的・一過性な対応にとどまらず、実効性をもって機能させるために横断的に検証・議論する場として経営改善委員会を設置し、組織風土、ガバナンス、調達、後継者育成等に関する課題について継続的な審議を行っております。今後も引き続き経営課題の早期把握及び改善に繋げてまいります。
⑥コーポレート・ガバナンス委員会の設置
取締役会の実効性及びガバナンス体制の継続的な改善を図るために、コーポレート・ガバナンス委員会を設置し、取締役会実効性評価の実施及び社外取締役による意見交換の場を整備しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、取締役会の更なる機能強化を図るため、取締役会実効性評価の結果を踏まえ、指名・報酬諮問委員会と連携した対応策を議論し、取締役会への提言を行うことを通じてガバナンス体制の継続的な改善を図ってまいります。
⑦継続的なモニタリング
監査等委員会及び取締役会において、再発防止策の実施状況及び運用状況について定期的な報告及びレビューを実施しました。今後も定期的なモニタリングを継続し、必要な改善を機動的に実施してまいります。
今後は、各施策の実効性を監査等委員会と取締役会が継続的に検証し、必要な改善を行うことで、コンプライアンス最優先の企業文化の定着に努めてまいります。当社は、公共性の高い空港施設を運営する企業としての社会的責任を改めて認識し、法令遵守と健全な事業運営を徹底するとともに、空港利用者をはじめとする全てのステークホルダーの皆様の信頼回復に向け、継続的に取り組んでまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、国内航空輸送網の拠点である羽田空港における旅客ターミナル等を建設、管理・運営する企業として、「公共性と企業性の調和」を経営の基本理念としております。この基本理念の下、今後とも、旅客ターミナルにおける絶対安全の確立、お客様本位の、安定的かつ効率的な旅客ターミナル運営に努めることにより確実に社会的責任を果たしてまいります。
また、グループ全体の継続的な企業価値の向上を図るため、戦略的かつ適切な投資の実行及び投資管理によるさらなる旅客ターミナルの利便性、快適性及び機能性の向上や顧客ニーズの高度化・多様化に的確に対応するとともに、航空会社、空港利用者、取引先、株主等関係者への適切な還元を心がけることを経営の基本方針としております。
(2) 経営環境認識
国内外の航空需要はコロナ禍から着実に回復し、羽田空港における当連結会計年度の旅客数は9,000万人を超え、2020年3月の国際線発着枠の拡大を背景に、コロナ前を上回る水準となりました。当社グループでは、2022-2025年度の中期経営計画に基づく取組を推進し、インバウンド等の急激な需要回復や想定を上回る物価高騰にも着実に対応することで、コロナ前以上に収益力を高め、利益成長を実現しました。
中長期的には、日本全体における訪日需要は今後も増加し、羽田空港の航空需要も堅調に推移することが見込まれます。一方で、航空業界においては、地方における労働人口の減少や人流の偏在、航空会社における国内線事業の収益性悪化などの課題が顕在化しております。羽田空港では、航空便数は発着枠の上限水準に達しており、需要回復期から需要安定期へと移行しつつあります。旅客数の量的拡大による成長余地が限定される中、羽田空港単独で安定需要を享受する限りでは、航空業界・日本経済全体にとってマイナスとなり、将来的に当社の成長も頭打ちとなることが懸念されます。
これらの観点を踏まえ、羽田空港での共創・全体最適を通じて、日本全体の航空成長を支えることが、当社グループの役割であると認識しております。
(3) 経営戦略
①長期ビジョン
当社グループは経営環境認識に基づき、羽田空港の目指すべき姿を、日本の玄関口・乗継の結節点として日本全体の移動・人流を活性化し、日本の航空旅客数最大化に貢献する空港であると定めました。この目指すべき姿を実現するための方向性として、「首都圏空港の最大活用」「アジアの経済成長の取込」「国内移動需要の創造」の3点を掲げ、当社グループの新たな長期ビジョンを、従来の「需要享受型」の空港ターミナル会社から、需要を自ら生み出し、共創と全体最適を牽引する「需要創造型」の空港の要(Anchor Role)と再定義いたしました。
当社が要の役割(Anchor Role)を果たし、共創・全体最適に取り組むことで、旅客には安心で快適な空港体験を、地域社会や事業パートナーには持続的な成長を、従業員には挑戦を通じた成長を、環境には着実な配慮を提供しながら、すべてのステークホルダーへの価値向上に繋げてまいります。
日本の航空旅客数最大化に向けた長期戦略において、ハード面では従来の基幹事業の進化として、国が進める人工地盤整備等と連動したターミナル施設の増改修を検討しています。国内線と国際線の機能融合を進め、スムーズな乗継環境の実現により地域送客力を強化するとともに、運営効率の向上を通じて発着処理能力の向上に寄与してまいります。ソフト面では新たな成長の軸として、関係事業者との全体最適を支える空港運営基盤「Total Airport Management(TAM)」を構築し、ナレッジを全国へ共有・活用することで、日本全体の人流創出へと繋げることを目指します。ハードとソフトとの両輪を推進することで取組みの効果を最大化し、収益ポテンシャルを拡大してまいります。
②中期経営計画(2026-2030年度)
2026-2030年度の新中期経営計画においては、長期的な将来像を実現するための企業変革期と位置付け、航空需要の享受にとどまらず、羽田空港全体を最適化し需要創造を牽引する「羽田空港の要」となることを目指します。
羽田空港の要としてすべてのステークホルダーへの貢献を果たすために、当社が2030年に実現すべき項目を整理し、マテリアリティ(重要課題)を再編いたしました。再編したマテリアリティへの対応を前提に、戦略の方向性として、将来の大規模投資の遂行へ向けたキャッシュ・フロー創出力の強化と関係者牽引力の強化を掲げ、「効率」「付加価値」「共創」の3つを中核戦略に据えて取り組んでまいります。

「効率」では、資本コストを意識した経営を徹底し、成長性・収益性の観点から経営資源を配分します。投資リターン管理の強化や、不採算事業の整理、非事業資産の圧縮等を通じて筋肉質な経営体質を築くとともに、グループ事業を再編し成長分野に経営資源を集中することで、資本効率の向上を図ります。
「付加価値」では、旅客動線や滞在時間、個々の多様なニーズを柔軟に捉えて、「稼ぐ力」を多角的に強化してまいります。内際一体での商業機能配置や乗継需要の取込、CRM強化、EC拡充などを通じてトラベルリテールを高度化し、施設サービスでは、先端技術を活用してターミナル機能の強化やサービスレベルの向上を図ります。これらの取組みによってターミナル滞在時間の価値密度を高め、旅客一人当たり及び施設面積当たりの収益向上を目指します。
「共創」では、空港全体の運営基盤となるTotal Airport Management(TAM)の構築を進めます。事業者間の連携高度化・空港全体の最適化を推進することで生み出だされる、時間・スペース・人員の余剰を、新たな価値創造に活かし、さらなる空港評価と収益機会に繋げます。また、世界のエアラインから選ばれ続けるべく、旅客ターミナルにとどまらず、羽田空港全体の脱炭素化計画を着実に推進します。さらに、周辺地域や全国各所との連携を深めることを通じて事業領域を拡張し、羽田空港ターミナル外での収益規模を拡大します。
これら中核戦略の推進と合わせて、戦略推進の土台となる人的資本経営を強化することで、持続的な企業価値向上を目指します。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2025年度を最終年度とする中期経営計画におけるガイドライン及び達成状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②経営成績の分析」に記載しております。
2026-2030年度の中期経営計画においては、業績成長目標として、2030年度に売上高3,400億円・営業利益550億円を目標としております。質的成長の成果として、売上高以上の伸び幅で営業利益を拡大することを目指します。また、業績目標に加えて、すべてのステークホルダーへの貢献を可視化すべく、ガイドラインを以下のとおり設定しております。

(5) 対処すべき課題
日本国内のインバウンド需要は引き続き堅調に推移する一方で、羽田空港においては発着枠の制約が顕在化しており、旅客数の大幅な増加による量的成長は見込みにくい状況となっています。また、物価上昇や人件費の増加、地政学リスク等を背景とした為替・エネルギー価格の変動などにより、航空需要及びコスト構造の両面において不確実性が高まっています。
2026年度は、当社グループにおいては、中期経営計画の初年度として、需要享受から需要創造へ転換する、企業変革の起点となる一年です。地政学的リスクや国際情勢の変動による影響を注視しつつ、不採算事業の整理や収益力の強化に努め、利益創出を図ります。また、当社子会社の取引先事業者の選定等に関して、当社が定める日本空港ビルグループコンプライアンス基本指針に照らして不適切な対応が行われていた事実が判明した事案(以下、「不適切事案」という。)を踏まえ、コーポレート・ガバナンス強化を引き続き経営上の重要な課題として認識しています。継続的なモニタリングのもと、2025年6月12日付「再発防止策の策定及び取締役の処分に関するお知らせ」で策定した再発防止策(以下、「再発防止策」という。)を着実に遂行し、信頼回復に努めてまいります。
ターミナル運営では、資材や人件費単価の増加に加えて、第1ターミナル北側サテライト施設の供用開始に伴い、減価償却費やターミナル運営コスト等の不可避な費用増加が見込まれます。また、国際線における旅客数の増加に伴う混雑の解消や、際内乗り継ぎ利便性のさらなる強化に対応するためのターミナル整備が課題となります。このような中で、将来を見据えた施設整備を着実に進めるとともに、PSFC単価改定のほか、継続的な賃料の見直しや、前年度に実施した各サービス料金の改定効果の通年寄与により、増加するコストの吸収を図ります。
リテール運営においては、旅客数の増加が限られる中で、展開ブランドの入れ替えや店舗改装、CRMの強化等により旅客一人当たりの収益の向上を図ります。また、銀座市中免税店を撤退する一方で、ECサイトでの免税品事前予約サービスを強化するなど、拠点・店舗単位で採算性を重視した資源配分を行い、高効率リテールを推進します。
さらに、グループ全体で投資規律を徹底し、業務委託費や諸経費等のコストを精査することで、利益率及び資本効率の向上を図ります。
当社グループは、中期経営計画で掲げる“羽田空港の要=Anchor Role”となることを目指して、「効率」「付加価値」「共創」をキーワードに各施策を着実に実行し、企業価値の持続的な向上へと繋げてまいります。
(6) 不適切事案に関する再発防止策における信頼回復への取り組み
当社は、不適切事案については再発防止策に基づき、各施策の推進を図ってまいりました。今後は整備した制度・体制を監査等委員会と取締役会がモニタリングし、継続的な運用等を通じることで実効的なコーポレート・ガバナンスの構築、内部統制及びコンプライアンスの強化に努めてまいります。
主な取り組み内容は、次のとおりであります。
①経営体制の刷新
経営トップへの権限集中及び牽制機能の欠如を是正し、経営の透明性及び監督機能を確保しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、取締役会の実効性評価等を通じて、経営監督機能の継続的な検証及び改善を行ってまいります。
②最高経営責任者の後継者育成計画の策定及び指名プロセスの透明化及び指名諮問委員会の在り方の見直し
指名・報酬諮問委員会の委員長を独立社外取締役とし、委員会の独立性・客観性を高めました。また、後継者育成計画(サクセッションプラン)の策定に向けた検討を行い、役員指名プロセスの公平性・客観性・透明性を確保する運用体制を構築しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、後継者育成計画では、社長に求める人材要件、候補者の考え方、評価の枠組みを整理し、その運用を着実に進めることで、経営環境の変化に対応した実効性ある人材育成・選任を継続してまいります。
③経営トップへの牽制機能の強化
常勤の監査等委員の選任と監査等委員会室の新設により監査の実効性を確保し、内部統制・内部監査部門の担当役員を明確化し、さらには、主要グループ会社に常勤監査役を配置し、グループ監査体制を強化しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、監査等委員会による定期的なレビューを継続し、内部統制システムに係るグループ監査機能の実効性強化を図ってまいります。
④組織風土の改革
社内通報窓口、社外弁護士事務所による外部通報窓口、監査等委員(社外取締役)への直接通報制度を整備しました。また、内部通報制度の周知・教育を実施するとともに、法令・規程違反等が本社及び監査等委員会に迅速かつ適切に報告される体制を構築しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、通報制度の実効性を検証し、継続的な教育を通じてコンプライアンス意識の定着を図り、さらにはコンプライアンス推進委員会を中心に事案の背景・真因を分析し、その結果を教育・研修に反映することで、職場・組織風土の改善と透明性・信頼性の高い企業運営に繋げてまいります。
⑤経営改善委員会の設置
再発防止策を単なる形式的・一過性な対応にとどまらず、実効性をもって機能させるために横断的に検証・議論する場として経営改善委員会を設置し、組織風土、ガバナンス、調達、後継者育成等に関する課題について継続的な審議を行っております。今後も引き続き経営課題の早期把握及び改善に繋げてまいります。
⑥コーポレート・ガバナンス委員会の設置
取締役会の実効性及びガバナンス体制の継続的な改善を図るために、コーポレート・ガバナンス委員会を設置し、取締役会実効性評価の実施及び社外取締役による意見交換の場を整備しました。今後の運用及び定着への取り組みとしては、取締役会の更なる機能強化を図るため、取締役会実効性評価の結果を踏まえ、指名・報酬諮問委員会と連携した対応策を議論し、取締役会への提言を行うことを通じてガバナンス体制の継続的な改善を図ってまいります。
⑦継続的なモニタリング
監査等委員会及び取締役会において、再発防止策の実施状況及び運用状況について定期的な報告及びレビューを実施しました。今後も定期的なモニタリングを継続し、必要な改善を機動的に実施してまいります。
今後は、各施策の実効性を監査等委員会と取締役会が継続的に検証し、必要な改善を行うことで、コンプライアンス最優先の企業文化の定着に努めてまいります。当社は、公共性の高い空港施設を運営する企業としての社会的責任を改めて認識し、法令遵守と健全な事業運営を徹底するとともに、空港利用者をはじめとする全てのステークホルダーの皆様の信頼回復に向け、継続的に取り組んでまいります。