有価証券報告書-第76期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 16:26
【資料】
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【項目】
165項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、国内航空輸送網の拠点である羽田空港における旅客ターミナル等を建設、管理運営する企業として、公共性と企業性の調和を経営の基本理念としております。
この基本理念の下、今後とも、旅客ターミナルにおける絶対安全の確立、お客様本位の旅客ターミナル運営、安定的かつ効率的な旅客ターミナル運営に努めることにより確実に社会的責任を果たしてまいります。
また、グループ全体の継続的な企業価値の向上を図るため、戦略的かつ適切な投資の実行及び投資管理によるさらなる旅客ターミナルの利便性、快適性及び機能性の向上や顧客ニーズの高度化・多様化に的確に対応するとともに、航空会社、空港利用者、取引先、株主等関係者への適切な還元を心がけることを経営の基本方針としております。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ROA(EBITDA)、営業利益率に加え、安定性指標である自己資本比率を重要な経営指標と位置付けております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、前提としていた事業環境が著しく変化していることから、目指す目標数値については、収束の兆しや今後の旅客数の回復動向等を見極め、再検討を進めてまいります。
(3) 経営環境・対処すべき課題等
当社グループは、全てのステークホルダーに満足していただける空港を目指すとともに、事業及び収益機会を創造し、持続的成長を果たすべく、長期ビジョンとして「To Be a World Best Airport」を掲げました。その長期ビジョンに基づき、中期経営計画(2016年度から2020年度)を策定し、羽田空港の“あるべき姿”の追求、強みを活かした事業領域の拡大・収益多元化、収益基盤再構築・競争優位の確立を戦略の3本柱とし、その実践基盤として組織・ガバナンスの再編・強化に取り組んでおります。
羽田空港におきましては、国土交通省による首都圏空港の機能強化として、本年3月29日に国際線の発着枠が約1.4倍に拡大され、当社におきましても、発着枠拡大に対応する国際線ターミナルの拡張整備事業を完了いたしました。当社の経営方針である旅客ターミナルにおける絶対安全の確立のもと、ハード面とソフト面におきましてさまざまな安全対策を施すとともに、航空イノベーションへの対応として、最先端の技術やシステムの導入を進め、空港利用者の手続全体の円滑化と負担のさらなる軽減を図っております。また、新規の商業展開エリアにおいてもリアルとデジタルを融合した新しい形態の店舗を展開しております。今後、国際線利用者と国内線利用者が混在する中で、より多様化する旅客のニーズに的確に対応した施設を提供し、分かりやすく効率的な旅客ターミナル運営を念頭に、より一層の利便性、機能性、快適性の向上を図ってまいります。
一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、航空業界におきましては、国際線では世界的な渡航制限が行われ、国内線においても政府の緊急事態宣言の発出に伴い国内移動の自粛が求められて、航空需要の著しい減退につながっております。当社グループにおきましても、羽田空港を利用されるお客様及び従業員等の感染拡大防止と安全確保を最優先に、監督官庁の指示に基づき、迅速に対応方針を決定して実施してまいりました。引き続き安全確保最優先に対策を継続するとともに、感染症の収束に伴う段階的な旅客便の運航再開にあたり、的確に対応してまいります。
新型コロナウイルス感染症は、5月に段階的に緊急事態宣言が解除され、経済活動が再開されつつありますが、感染拡大の第2波への懸念も高まっており、社会全体で新しい生活様式への移行が進みつつあります。当社におきましても、この新しい生活様式に即した旅客ターミナル事業の運営の検討を進めてまいります。
施設面におきましては、空港における感染拡大防止のための消毒液の継続的な設置、「三つの密」を回避する観点からの旅客ターミナル内の定期的な換気の励行や、ロビー内での旅客同士の間隔を確保するための措置など、新たな取り組みを進めてまいります。
営業面では、新型コロナウイルス感染症の影響で2月・3月の旅客数が大幅に減少した結果、施設管理運営業は施設利用料収入、物品販売業及び飲食業は商品売上等がそれぞれ大きく減収しております。空港利用者の減少への対応としてIT活用によるeコマースのさらなる推進や、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期に伴う訪日外国人の来訪者数の減少も見越した販売促進策の検討、空港における主要顧客である中国人旅客の回復の動向や購買に対する嗜好の変化などに的確に対応してまいります。
今回の新型コロナウイルス感染症の影響は、際内空港利用者が数ヵ月にわたって9割以上も減少するという、今までに経験をしたことのない事態となりました。感染症収束後も非接触型のコミュニケーションの浸透により、人の行動様式に変化が生じることが考えられ、旅客ターミナルに対する顧客ニーズがより高度化・多様化していくことが想定されるため、感染症対策を着実に進めると同時に、旅客ターミナル事業の運営方法の見直しを進め、従来の枠組みにとらわれない発想で、あらゆる困難な環境下においても持続的に事業を継続できる体制を整えていく必要性を認識しております。
今後、国土交通省や航空会社をはじめとする関係者と協議を進めてソーシャルディスタンスや非接触への対応に取り組んでいくとともに、資金調達や従業員の手配など、突発的な事象による急激な航空需要の減退リスクに対する事業継続計画(BCP)のさらなる充実と、速やかに行動できる社内体制の整備にも取り組んでまいります。
その他にも、当社も参画する熊本空港や、海外におけるパラオ国際空港、モンゴルの新ウランバートル国際空港事業などの各空港運営事業、羽田空港跡地で開発が進められているHANEDA INNOVATION CITYへの出資による新たな産業の創造など、旅客ターミナル以外での事業においても、羽田空港で培ったノウハウを生かすとともに、新たなノウハウを獲得して事業領域の拡大、収益多元化に努めてまいります。
このように当社グループは事業環境に応じた課題を的確に捉えつつ、基本理念である公共性と企業性の調和に基づいた持続的成長を目指した取り組みを進めてまいります。特に地球規模での環境対策や社会的問題への対応が求められている中で、旅客ターミナルと関連する施設における環境対策の整備の強化や、労働環境の整備と業務の効率化に向けた取り組み、そして株主・投資家との対話機会の拡大により、さらなるガバナンスの強化に取り組んでまいります。
今後も当社は、空港法に基づく羽田空港における国内線旅客ターミナルを建設・管理運営する空港機能施設事業者としての責務を果たすべく、国際線旅客ターミナルを建設・管理運営する連結子会社であるTIATと連携して、日本経済や航空業界の動向等を見極め、基本理念と中期経営計画に基づき、グループ一丸となって旅客ターミナルの利便性、快適性及び機能性の向上を目指し、顧客第一主義と絶対安全の確立に努め、絶え間ない羽田空港の価値創造と航空輸送の発展に貢献することにより、企業価値の向上を図ってまいります。