有価証券報告書-第71期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 13:30
【資料】
PDFをみる
【項目】
115項目

対処すべき課題

(1) 当面の対処すべき課題の内容等
当社グループは、中期経営計画に基づき、さらなる羽田国際化への対応、新しい空港運営の未来の構築、事業収益性の改善、人材・組織力の強化を重点課題として取り組んでおります。
航空業界におきましては、航空自由化(オープンスカイ)やLCC(ロー・コスト・キャリア)の路線拡大等による競争の激化、上下一体化による効率運営を目指した空港経営改革の動き、訪日外国人2020年2,000万人の目標達成に向けた政策が進むなど、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しております。また、首都圏空港の機能強化の具体化に向けた本格的議論が開始され、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までに運用の見直しなどを踏まえた増枠の検討や、羽田空港のさらなる陸上アクセスの改善が進んでおります。
このような状況を踏まえ、中期経営計画の最終年度である平成27年度は、「羽田空港国際化の進展に対応した設備投資を実行しながら目標利益率を確保すること」を目標として掲げております。
さらに、中長期的には当社グループとして、60年間培ってきたターミナル運営のノウハウを活かし、5年後に控えた東京オリンピック・パラリンピックへの対応に向け、本年をスタートの年として、既存の国内線旅客ターミナルビルにおけるリニューアルを中心とした積極的な設備投資を実施し、おもてなしの深化や多言語化対応などを進めてまいります。加えて、航空会社と協力・協調関係を一層強めつつ、旅客ターミナルビルの魅力向上に努め、地方創生や観光立国の実現に向けた航空と観光の結びつきなど、羽田空港のハブ機能強化に努めてまいります。そして、将来の跡地計画への取組みも含め、発着枠の増加により一層国際化が進展するであろう羽田空港全体の機能拡充に向けて積極的に取り組むことで、首都圏空港の機能強化に貢献してまいります。
また、これまで培ってきた免税事業のノウハウと各種経営資源を結集し、従来の空港における免税売店に加え、観光立国推進の一環として、より競争力のある市中での空港型免税売店を展開するために新会社を設立し、空港と連携した市中免税店の開業に向けて準備を進めております。今後も出国する国内外の旅行者の新たな消費需要喚起と利便性の向上に努め、非航空系収益の拡大を図ってまいります。さらに、新しい空港運営の未来の構築において、安定的収益を上げるための新しい空港運営スキームの確立を目指し、海外空港事業に参画するなど羽田空港外においても当社事業のノウハウを活かした新たな事業展開にも取り組んでまいります。
そして、これらを支えるべく当社グループの既存事業の効率化を徹底するとともに人材組織力の強化を図り、当社グループの企業価値を高めつつ中期経営計画の具体化を推進し、一丸となって環境変化に着実に対応してまいります。
また、英国のSKYTRAX社より羽田空港旅客ターミナルビル全体の施設やサービスの品質が総合的に世界最高水準にあると評価され、日本の空港で初めて受賞した「5スターエアポート」や、国内線空港総合評価部門での3年連続世界第1位の評価等を踏まえ、今後も空港を利用されるお客様を第一に考え、お客様から信頼され、選ばれ続けられるよう、利便性、快適性及び機能性に優れた施設とサービスを提供してまいります。
当社は、空港法に基づく、羽田空港における国内線旅客ターミナルビルを建設・管理運営する空港機能施設事業者としての責務を果たすべく、今後とも日本経済や航空業界の動向等を見極め、公共性と企業性の調和という基本理念の下、グループ一丸となって旅客ターミナルビルの利便性、快適性及び機能性の向上を目指し、顧客第一主義と絶対安全の確立に努め、絶え間ない羽田空港の価値創造と航空輸送の発展に貢献することにより、企業価値の向上を図ってまいります。
(2) 株式会社の支配に関する基本方針
当社の会社支配に関する基本方針、及び会社支配に関する基本方針の実現に資する特別な取組み、並びに会社
支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止
するための取組みの各概要は以下のとおりです。
①会社の支配に関する基本方針
当社は、当社株式の大規模買付行為が行われる場合に、これを受け入れるか否かの最終的な判断はその時点に
おける株主の皆様に委ねられるべきものであると考えます。
当社は羽田空港において、航空系事業として、国内線旅客ターミナルビルの建設、管理運営を行うとともに、国際線旅客ターミナルビルを建設、管理運営する東京国際空港ターミナル株式会社の筆頭株主として、同社から
国際線旅客ターミナルビルの主要な運営業務の一括受託などを行っております。一方、非航空系事業として、羽
田空港、成田国際空港、関西国際空港並びに中部国際空港において物品販売業等を営み、その収益を基盤として
航空界の急速な発展に即応した旅客ターミナルビルの拡充整備に努め、事業規模の拡大を図ってまいりました。
そのため、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、旅客ターミナル事業の有する高度の安全性と公共
性についての適切な認識に加え、当社の企業価値の源泉をなす重要な経営資源(独創性の高い技術・ノウハウ、特定の市場分野における知識・情報、長期にわたり醸成された取引先との深い信頼関係、専門分野に通暁した質
の高い人材等)への理解が不可欠であると考えます。
当社は、大規模買付者が突然現れた場合に、当該大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益に
与える影響について株主の皆様が短期間の内に適切に判断するためには、大規模買付者及び当社取締役会の双方
から、大規模買付行為が当社に与える影響や、大規模買付者の経営方針等の情報が適切かつ十分に提供されるこ
とが不可欠と考えます。さらに、当該大規模買付行為に関する当社取締役会による検討結果等の提示は、株主の
皆様の判断に資するものであると考えます。
当社としましては、大規模買付行為が行われる場合には、大規模買付者において、株主の皆様の判断のため
に、当社が設定して事前に開示する一定のルールに従って、大規模買付行為に関する必要かつ十分な情報を当社
取締役会に事前に提供していただく必要があると考えております。また、当社の企業価値ひいては株主共同の利
益を毀損することとなる悪質な当社株式の大規模買付行為を防止するため、大規模買付者に対して相応の質問や
大規模買付者の提案内容等の改善を要求し、あるいは株主の皆様にメリットのある相当な代替案が提示される機
会を確保し、さらには当該大規模買付ルールを遵守しない大規模買付行為に対しては企業価値ひいては株主共同
の利益の維持・向上の観点から相当な措置がとられる必要があると考えております。
②会社の支配に関する基本方針の実現に資する特別な取組み
当社は、会社の支配に関する基本方針の実現に資する特別な取組みとして、下記③で記載するもののほか、以下の取組みを行い、企業価値ひいては株主共同の利益の維持・向上に努めております。
(ⅰ)中期経営計画に基づく取組み
当社は、旅客ターミナルビルにおける絶対安全の確立のため、さらなる安全対策強化に全力を傾注すると
ともに、羽田空港国内線第1旅客ターミナルビル及び第2旅客ターミナルビルの一体的運営による一層の効
率化を図り、運営諸費用の増加等への対策に努めております。また、東京国際空港ターミナル株式会社を建
設、管理運営主体とする国際線旅客ターミナルビルにつきましては、同社の筆頭株主として、主要な運営業
務の一括受託などを行っております。併せてお客様本位の旅客ターミナルビルの運営を目指し、当社グルー
プCS理念「訪れる人に安らぎを、去り行く人にしあわせを」の下、顧客第一主義を徹底するほか、積極的
な人材育成を図り、全社を挙げて一層のサービス向上、さらなる収益の向上に努めることとし、中期経営計
画に基づく諸施策に積極的に取り組んでおります。
(ⅱ)コーポレート・ガバナンスの強化充実に向けた取組み
当社はコーポレート・ガバナンスが経営上重要な問題であるとの基本的認識に立ち、経営の透明性の確保
を図るため、創業以来、社外取締役及び社外監査役を選任しております。平成16年には、経営に関する監
督・助言機能を強化するため、従来の社外監査役2名に加え、新たに社外監査役1名を選任しました。さら
に、平成21年には監督と執行の分離等を目的に執行役員制度を導入するとともに、取締役の定数を25名から
15名に削減し、コーポレート・ガバナンスの強化と経営の効率化を図りました。また、平成22年には独立役員
を2名指定しておりますが、平成25年にさらに1名指定しております。今後も最適なコーポレート・ガバナン
スのあり方を検討してまいります。
③会社の支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されるこ
とを防止するための取組み
当社は、①で述べた会社の支配に関する基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針
の決定が支配されることを防止するため、「当社株式に対する大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)」
(以下「本対応方針」という。)により、大規模買付行為が行われる場合に関して大規模買付ルールを定め、
かつ、大規模買付者が当該ルールを遵守しなかった場合における対抗措置の発動に係る手続きについて定めて
おります。
(ⅰ)独立委員会の設置
大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するものか否かの検討・審議を行い、大規
模買付行為に関する当社取締役会の判断及び対応の公正を担保する機関として、独立委員会を設置します。
独立委員会の委員は3名以上とし、公正で中立な判断を可能とするため、当社の業務執行を行う経営陣から
独立している当社社外取締役、当社社外監査役、及び社外有識者のいずれかに該当する者の中から選任しま
す。
当社取締役会は、大規模買付行為が開始された場合に当該大規模買付行為との関係では対抗措置を発動し
ない旨の不発動決議の是非について独立委員会に諮問することとし、当社取締役会はその勧告を最大限尊重
するものとします。
(ⅱ)大規模買付ルール
大規模買付ルールとして、大規模買付者は、定められた手続きに従い情報提出等を行うものとし、かつ、情報提出手続き等を経て、当社取締役会が不発動決議を行うまで、大規模買付行為を行わないこととしま
す。
(ア)大規模買付意向表明書の当社への事前提出
大規模買付者は、大規模買付ルールに従って大規模買付行為を行う旨の大規模買付意向表明書(当社所
定の書式)を事前に当社に対して提出していただきます。
(イ)大規模買付行為に関する情報の提出
大規模買付者から大規模買付意向表明書をご提出いただいた場合、当社は当該大規模買付者に対し、改め
てご提出いただく情報の項目を記載した情報リストを10営業日(初日不算入)以内に交付いたします。
大規模買付者は、情報リストに基づき、株主の皆様のご判断及び独立委員会の検討のために必要かつ十分
な大規模買付行為に関する情報を当社にご提出いただきます。
(ウ)独立委員会による検討開始に係る通知
当社は、当該大規模買付行為に関する情報の提出が完了したと認められる場合等、独立委員会による検討
を開始するのが適当と合理的に判断される場合には、その旨を大規模買付者に通知し開示するとともに、独
立委員会による検討の開始を依頼いたします。
(エ)独立委員会による検討及び不発動勧告決議
独立委員会は、独立委員会検討期間として定められた期間内に、大規模買付行為の内容の検討、当社取締
役会等の提供する代替案の検討等を行います。
大規模買付者は、独立委員会が検討資料その他の情報提供、協議・交渉等を求めた場合には、速やかにこ
れに応じなければならないものとします。独立委員会は、当該大規模買付行為に関する情報の検討等の結
果、全員一致の決議により、当該大規模買付行為が当社企業価値を毀損し会社の利益ひいては株主共同の利
益を害するおそれがないものと認める場合には、当社取締役会に対して、不発動勧告決議を行うこととしま
す。
(オ)株主総会における株主意思確認
独立委員会は、独立委員会検討期間内に不発動勧告決議を行うに至らなかった場合には、当該大規模買付
行為に対する対抗措置に係る株主意思確認総会を開催する旨を勧告することとし、かかる勧告を受けて当社
取締役会は、株主意思確認総会の招集を速やかに決定するものとします。
株主意思確認総会の決議は、出席株主の議決権の過半数によって決するものとします。
(カ)取締役会の不発動決議
当社取締役会は、独立委員会が当該大規模買付行為について不発動決議を行うべき旨勧告した場合、取締
役としての善管注意義務に明らかに反する特段の事情が存しない限り、不発動決議を速やかに行うものとし
ます。
また、当社取締役会は、上記(ⅱ)(オ)に定める株主意思確認総会において対抗措置を発動すべきでない
旨の株主意思が示された場合、不発動決議を速やかに行うものとします。
(キ)大規模買付ルールに従わない大規模買付行為に対する対抗措置の発動
当社取締役会が不発動決議を行うまで、大規模買付者は、大規模買付行為を行ってはならないものとしま
す。当社取締役会は、大規模買付ルールに従わない大規模買付行為が行われ対抗措置の発動が相当である場
合、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上を目的として、本対応方針に基づく対抗措置を行
うものとします。本対応方針の対抗措置としては、新株予約権の無償割当てその他の法令及び当社の定款上
許容される手段を想定しております。
(ⅲ)株主・投資家に与える影響
本対応方針は、当社株主の皆様が大規模買付行為に応じるか否かを判断されるために必要な情報を提供
し、さらには、当社株主の皆様が大規模買付行為に係るより良い提案や、当社取締役会等による代替案の提
示を受ける機会を保証するための相応の検討時間・交渉力等が確保されることを目的としています。これに
より、当社株主の皆様は、十分な情報のもとで、大規模買付行為への応諾その他の選択肢について適切な判
断をされることが可能となり、そのことが当社株主全体の利益の保護につながるものと考えます。従いまし
て、本対応方針の設定は、当社株主及び投資家の皆様が適切な投資判断をなされる上での前提となるもので
あり、当社株主及び投資家の皆様の利益に資するものであると考えております。
④取締役会の判断及びその理由
当社の中期経営計画、コーポレート・ガバナンスの強化充実等の各施策は、当社の企業価値・株主共同の利
益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、まさに当社の基本方針に
沿うものです。
また、本対応方針は上記の基本方針に沿うものであり、またその合理性を高めるため以下のような特段の工
夫が施されておりますので、本対応方針は、当社の企業価値・株主共同の利益を損なうものではなく、また当
社役員の地位の維持を目的とするものでもありません。
(ⅰ)本対応方針は、平成26年6月27日開催の第70回定時株主総会においてその基本的内容につき、株主の皆様
の事前承認を受けております。当該株主総会の承認は、当該定時株主総会から3年を有効期間とします。当
社取締役会は、3年が経過した時点で、改めて本対応方針に関する株主意思の確認を行い、株主の皆様にご
判断いただくことを予定しております。当社取締役会は、当該株主総会承認の有効期間中、関連する法制度
の動向その他当社を取り巻く様々な状況を勘案して、当該株主総会承認の趣旨の範囲内で、本対応方針の細
目その他必要な事項の決定や修正等を行うこととします。
(ⅱ)本対応方針は、株主意思確認総会において対抗措置を発動すべきでない旨の株主意思が示された場合、当
社取締役会は不発動決議を速やかに行うものとしております。また、当社の業務執行を行う経営陣から独立
している当社社外取締役、当社社外監査役、及び社外有識者のいずれかに該当する者の中から選任される委
員により構成される独立委員会が、株主意思確認総会の招集に先立つ独立委員会検討期間内において、当該
大規模買付行為が当社企業価値を毀損し会社の利益ひいては株主共同の利益を害するおそれがないものと認
め不発動勧告決議を行った場合には、当社取締役会は、取締役としての善管注意義務に明らかに反する特段
の事情がない限り、速やかに同勧告決議に従い不発動決議を行うこととされています。このように、取締役
の地位の維持等を目的とした恣意的な発動を防止するための仕組みを本対応方針は確保しております。
(ⅲ)当社は、取締役の解任決議要件の普通決議からの加重も行っておりません。本対応方針は、大規模買付者
が自己の指名する取締役を当社株主総会の普通決議により選任し、かかる取締役で構成される取締役会によ
り、廃止させることが可能です。従いまして、本対応方針は、デッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成
員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)ではありません。また、当社は、期差任
期制を採用していないため、本対応方針はスローハンド型(取締役会の構成員の交替を一度に行うことがで
きないため、その発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)でもありません。
(ⅳ)本対応方針は、経済産業省及び法務省が定めた平成17年5月27日付「企業価値・株主共同の利益の確保又
は向上のための買収防衛策に関する指針」が求める適法性の要件(新株予約権等の発行の差止めを受けるこ
とがないために充たすべき要件)、合理性の要件(株主や投資家など関係者の理解を得るための要件)をす
べて充たしております。また、経済産業省企業価値研究会の平成20年6月30日付報告書「近時の諸環境の変
化を踏まえた買収防衛策の在り方」の提言内容にも合致しております。
(ⅴ)その他
本対応方針の詳細につきましては、当社ホームページに掲載の「当社株式に対する大規模買付行為への対応
方針(買収防衛策)の継続について」の本文をご覧ください。
( 参考URL http://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/company/ir/ )