有価証券報告書-第157期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/23 15:35
【資料】
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【項目】
203項目
(戦略)
○ビジネスモデルと人材マネジメントポリシー
当社グループのビジネスモデルは、交通事業および不動産事業を経営基盤として、各事業間のシナジーを最大化しながら収益を継続的に再投資し、持続的成長を実現する長期循環型事業です。この多角的な事業運営を通じて、コングロマリットプレミアムの創出を目指します。連結各社に強い影響力を持つ中核企業である当社では、人材マネジメントにおいて大切にする想いを人材マネジメントポリシーとして言語化しています。このポリシーはビジネスモデルと密に連動する位置づけであり、長期的な目線で一貫性を持った取り組みを行う基軸となります。中核企業において明確にポリシーや人材戦略を定め、連結各社には自立と共創により総合力を高めるように関わり、人材を連結経営の根幹と位置付けた人的資本経営を各社と連携しながら推進しています。
人材マネジメントポリシー
1.リスペクト・信頼をもとに、多様な連携を生み出す
先入観や組織上の上下関係・親子関係にとらわれず、相互尊重を基盤に会社間・部門間・チーム間・個人間
など網の目状の連携により新価値を創造していきます。
2.変化に前向きな人を増やす
仲間と新しい価値創造に挑み、様々な変化を前向きにとらえて力に変える人とともに成長します。
3.長期的な目線で挑戦と成長を支える
人への投資を続け、従業員が新たな仲間や自らの可能性を広げる機会を作り、能力を存分に発揮できる
ような環境を整えていきます。
4.従業員の幸福を追求し、お客さまの幸福を実現する
お客さまの求める価値をさらに創出する出発点として、従業員の幸福を大切にします。
当社グループのビジネスモデルにおいて、まちづくりを俯瞰的かつ創造的にとらえ、多様な事業を連携させながら推進する組織運営が企業価値創出の源泉です。そのためには、仲間と新しい価値創造に挑み、様々な変化を前向きにとらえて力に変える人の確保・育成・活性化・定着の質が事業価値に大きく関連しています。
当社グループは、連結各社や事業を横断しながら総合的にまちづくりを俯瞰し事業価値を創造する人材、各事業に精通した専門的な人材、デジタル技術活用によって事業横断的に価値を創造する人材の存在に支えられています。なお、人的資本への依存に伴うリスクと対応については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (5)働き方・人材確保に関するリスク」のとおりです。
○中期3か年経営計画の「人材戦略」コンセプト
2024年度を初年度とする中期3か年経営計画の人材戦略として、「人材を連結経営の根幹と位置づけ、従業員から選ばれ続け“個”を最大化する人的資本経営を推進」することをコンセプトに掲げています。
当社グループを取り巻く社会環境は、働く価値観の多様化、少子高齢化、人口減少ならびに就労・雇用環境の変化によって人材流動性が高まり人材獲得競争が激化しております。テクノロジーの進化も踏まえたさまざまな労働市場の変化に正面から向き合い、従業員一人ひとりの「個の最大化」による「企業価値の最大化」の実現を目指しています。特に、当社では個を最大化する3要素として「働きがい」「働きやすさ」「処遇」に対し重点的に取り組んでおります。
「働きがい」を高めるために人材マネジメントポリシーを制定し、従業員が理念やビジネスモデルと人事施策の関連性を理解し、自らの貢献と成長の実感を持てるよう積極的に人材育成や風土醸成に取り組んでいます。また「働きやすさ」を高めるために、心理的に安心できイノベーションが起きやすい職場づくりや多様な人材の活躍を支える柔軟な働き方などの社内環境整備を推進します。そして「処遇」は社内外の優秀な人材の定着・獲得・活躍に向け、市場競争力を意識して引き上げてまいります。これらの3要素をそれぞれ高め、連結経営の根幹である従業員から選ばれる企業であり続けることを目指しております。
また、毎年1回のエンゲージメントサーベイを通じて従業員の意欲や関与度を測定しております。働きがい・働きやすさを高める人材戦略を全社目線と部門目線に分けて課題を分析し、関係者との対話を通じて適切に施策を実行しております。連結各社においてもエンゲージメント調査と改善を順次開始していることや、当社が中心となりグループ採用の推進を行うなど、中核企業として各社の自立と共創を引き出し、「選ばれ続ける企業」としての総合力を高め、企業価値の最大化を図っております。
○人材育成方針
当社では「従業員一人ひとりに寄り添い、学ぶことで成長が実感できる場の提供」を育成方針に掲げております。人材育成プログラムの大きな枠組みとしては、「グループ経営人材・リーダー育成」「階層別研修」「自律的キャリア形成支援」「自己啓発支援」の4つを設けており、ビジネススキル習得やキャリア支援のためのさまざまな施策を展開しております。
「グループ経営人材・リーダー育成」の中核を担う「東急アカデミー」は、東急グループ全体の組織力・人間力を高めることを目的として2006年に開講いたしました。2025年度は33名が修了し、これまで延べ900名以上(2026年3月末現在)の修了者を輩出してきました。「経験」「内省」「学習」の3つのプロセスを通じて経営人材としての能力を高める本プログラムからは、当社およびグループ各社の役員への登用実績も生まれており、次世代経営リーダーの育成・輩出に向けた土壌となっております。また、修了生同士のネットワークは会社および事業の枠を超えた連携や共創の基礎となっており、本アカデミーの修了生が起点となってグループ複数社間での定期的な連携会議が実施されるなど、実務面におけるシナジー創出や多様な連携の基盤が新たに生まれております。
「階層別研修」では、各階層の役割に応じたマインドやスキルを学ぶ機会を提供しております。新任管理職研修においてはマネジメント力、新任主事クラス研修においてはリーダーシップ力の向上を図っております。また選択式のスキル研修においては、階層に応じて従業員一人ひとりの強みや弱み、関心のある領域や業務上必要なテーマ等を自身で考えて選択ができるような内容としており、前年度より受講者数が増加するなど学習への意欲が高まっております。
「自律的キャリア形成支援」および「自己啓発支援」においては、従業員が主体的にキャリアを描き、挑戦できる環境整備を目指しています。上司部下間での定期的な1on1ミーティングやセルフ・キャリアドック、社外キャリアコンサルタントによる相談窓口の設置などを通じて、中長期的なキャリアデザインを総合的に支援しております。加えて、従業員の学び直し(リスキリング)を強力に後押しするため、2025年度より自己学習費用に対する会社支援を50%から75%へ拡充するとともに、報奨金を伴う資格取得支援制度を新たに導入いたしました。こうした制度拡充の結果、自己学習支援の利用者数は前年度から約30%増加し、年間で延べ330名が新規資格を取得しました。これは多様な事業においてスピード感を持って価値創造をする専門能力や、視野を広げ、まちづくりを俯瞰的かつ創造的にとらえる能力および、そのエンジンである成長意欲そのものが高まっているととらえています。今後も、従業員の成長意欲を会社の持続的な競争力へと繋げる人的資本の最大化に取り組んでまいります。
○社内環境整備方針
労働市場の構造変化をはじめとした社会環境の急激な変化を機会ととらえ、採用を強化していることからさまざまなバックグラウンドを持つ人材の割合が拡大しています。これを踏まえ、当社グループでは「誰もが働き続けたい会社」を目指し、社内環境整備に取り組んでいます。
当社グループでは2000年代初頭より働き方改革に積極的に取り組み、働きやすい環境づくりを推進してきており、当社の代表的な取り組みとして、自身の職務や環境に合わせて働く時間や場所を従業員が主体的に選択する「スマートチョイス」を展開し、フレックスタイム制やテレワーク制度、ライフステージに応じて希望により役割は変えずに労働時間を短縮する制度などの整備を行ってまいりました。さらに、今後目指す働き方として、従業員やチームのミッション・成果を意識し、多様な働き方を効果的に選択・組み合わせる「ベストハイブリッド」方針を掲げており、本方針により、フレックスタイム制やテレワーク制度などの効果的な活用、さらに従業員個人やチームの「ベストパフォーマンス」発揮を追求してまいります。
また、人材確保や従業員エンゲージメント向上のため、かねてより様々な人的資本への投資拡充を進めており、4年連続となるベースアップ等による継続的な賃金引上げや特別賞与等の支給を通じた業績還元のほか、従業員の中長期的な業績・株価向上の意識醸成を目的とした株式インセンティブの導入、従業員の沿線居住促進や福利厚生の拡充等を目的とした寮・社宅の入居条件緩和なども含めた総合的な処遇改善を実施しております。
こうした取り組みに加え、2025年より中途入社社員のオンボーディングプログラムを刷新し、年間を通じた継続的支援を行っています。多様なバックグラウンドを持つ人材が早期にその能力を発揮し、キャリアを築いていけるサポート体制を構築してまいります。
さらに、お客さまおよび従業員の価値観やライフスタイル、働き方、行動などの多様化を踏まえ、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を人材戦略の要の一つと位置づけ「制度・風土・マインド」の3つの観点から各種取り組みを展開しております。
現在、当社グループのDEIは着実に進展しており、多様性の強化は当社グループの成長力および競争力を高める要因として位置づけられます。当社では外部人材の多様な知見を取り込むべく中途採用に戦略的に取り組んだ結果、2022年度以降新規採用者全体の60%程度の中途採用比率を維持しております。こうした戦略的な採用拡大により、管理職層を含む人材構成の多様化が進んでいます。
並行して女性活躍推進も段階的に進んでおります。DEI推進の象徴的な数値目標の一つとして、2026年度末までに当社における「管理職に占める女性比率18%以上」の達成を掲げております。1988年の女性総合職採用開始以来、採用・配属・登用・処遇において性別を問わない公平な運用を継続し、男女ともに働きやすい制度づくりと女性向け研修等の育成施策を積極的に推進してまいりました。この結果、女性管理職比率は、2022年度12.9%、2023年度13.9%、2024年度14.2%と毎年上昇しており、2025年度末には14.8%となりました。上述のとおり、中途採用を通じた戦略的な人材確保等により、計画策定時と比較すると、性別を問わず管理職層全体の多様性が高まりました。結果として、女性管理職比率の進捗は緩やかとなっておりますが、年々上昇を続けております。
現状、部門長・部長を含めた意思決定層への登用が進んでいるほか、当社グループでは5名の女性がグループ会社社長を担っております。今後もさらなる採用・登用・育成等に努め、女性活躍推進の取り組みを一層強化してまいります。
また、男性の育児休業取得推進を、従業員の幸福に資する取り組みであるとともに、性別を問わず育児と仕事を両立できる環境を整備し、組織の持続可能性を高める重要な施策と捉えております。育児に主体的に関わり、家族と向き合う時間を確保することは、個々の生活基盤の充実に寄与するものであり、その経験は家族間だけでなく従業員間の相互理解やリスペクトを深めるものと考えております。これにより、多様な価値観を尊重する企業文化の醸成や従業員の視野の拡大を通じ、業務における多角的な判断力の向上にも資すると認識しております。当社は男性育児休業の取得を推進することで、従業員エンゲージメントの向上と多様性を活かした価値創出を通じ、企業価値の向上に取り組んでまいります。当社の男性育休取得率においては、2024年度に100%を達成、2025年度は97.6%となりました。引き続き、2027年3月末まで100%の達成・維持を目標に掲げ、仕事と家庭を両立し、意欲的に活躍し続けられる環境整備を実施します。なお、上記の男性育休取得率は後述、主な指標(目標および実績 )における※2の計算方法によるものです。
障がい者雇用についても、2004年に設立した特例子会社の株式会社東急ウィルを中心に、従来の鉄道施設内清掃や名刺印刷業務に加え、2023年度からは書類封入作業やノベルティ製作などへ職域を広げ、安心して長く働き続けられる環境づくりを推進しております(2025年度障がい者雇用率実績2.72%)。さらに、2026年4月には東急ウィル奥沢事務所を開設し、さらなる雇用の創出と活躍の場の拡大を図ってまいります。
加えて、LGBTQに関する取り組みとして、2016年度以降の勉強会開催や相談窓口の開設、就業規則の変更などを継続しております。2025年度は「Tokyo Pride 2025」に人材戦略室長およびDEI推進担当で参加し、さらに社内イントラで発信することで、社内へのALLY発信に取り組みました。 このような様々なLGBTQ施策が評価され、2017年度から2025年度まで9年連続でPRIDE指標の「ゴールド」を受賞しています。今後も年齢、性的指向、家庭環境、経験、価値観など、より広範な切り口でダイバーシティマネジメントに取り組むことで、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。
同じく人材戦略の要素である健康経営についても積極的に取り組んでおります。当社グループは、存在理念として「美しい生活環境を創造し、調和ある社会と、一人ひとりの幸せを追求する」ことを掲げております。当社グループでは、従業員の健康をお客さまからの信頼の基盤、企業価値向上の源泉ととらえ、健康経営を経営戦略として位置付けております。その実現に欠かせない健康経営を推進するため、2016年に「健康宣言」を制定し、継続的に健康経営に取り組んでおります。心身の健康は、従業員が働きがいをもって安心して働き続け、長期的な挑戦と成長を支える基盤と考えられることから、諸施策の実施とともに、従業員一人ひとりが健康に主体的に向き合う風土醸成を図っております。従業員のいきいきとした働き方が、お客さまや地域の暮らしを支え、事業の質と持続的成長に資するものと認識しております。
健康経営の推進体制においては、取締役社長がその役割を果たすCHO(最高健康責任者)を設置しております。CHOのもと、企業立病院である「東急病院」、当社および東急電鉄㈱の全部門に配置された「専任安全衛生担当」、および「人材戦略室(東急電鉄㈱は経営戦略部)」の三者が密に連携する三位一体の体制を確立しております。これにより、従業員が心身の不調を感じた際には、いつでも安心して職場や産業保健スタッフに相談し、医療を含む適切なケアを受けられる環境を整備しております。
また、経済産業省推奨の指標に基づくプレゼンティーイズム調査を継続的に実施しており、最高判定である「A」を継続しております。さらなる改善を目標に、東急病院の産業医・保健師と連携した課題分析に基づき、身体的課題に対しては同院の理学療法士等によるセミナーやAI姿勢分析測定会を開催し、メンタル面においては異動者メンタルチェックを実施することで迅速に産業医等へ相談できる体制を構築しております。
さらに、若年層に対しては、将来の健康リスク低減を目的とした「BODYチェンジU-39」を実施しております。保健師・管理栄養士によるSNSを活用した伴走型支援等を通じて、若年層の頃から自発的な生活習慣改善を促す環境を整備しております。これらの取り組みの結果、通算8回目(陸運業最多)となる「健康経営銘柄」に選定されました。
今後も、さらなる安全・安心の構築、健やかさの創出、労働生産性および従業員エンゲージメントの向上を目指し、「健康経営戦略マップ」に掲げた2028年度までに達成すべきKGIの実現に向けた各種取り組みを推進してまいります。

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