有価証券報告書-第201期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/23 13:33
【資料】
PDFをみる
【項目】
166項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクとして、「事業環境・ビジネスモデルに影響を与えるリスク」「安全・安心の確保に関するリスク」「経営資源の確保に関するリスク」「ガバナンスに関するリスク」の4つを設定いたしました。それぞれのリスク顕在化を防ぐための取組みは以下に記載のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月23日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境・ビジネスモデルに影響を与えるリスク
① 法的規制
東武鉄道が展開している鉄道事業においては、鉄道事業法第3条により、路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の認可を受けなければなりません。同様に、運賃の設定・変更についても同法第16条により、鉄道事業者は旅客運賃等の上限を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならず、国土交通大臣は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して認可しております(総括原価方式)。また、認可を受けた運賃等の上限の範囲内で運賃等を設定・変更する場合は、国土交通大臣に届け出ることとなっております。
当社グループは、事業全体に占める鉄道事業の割合が高く、法制度の変更や運賃改定の結果によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。また、鉄道事業以外の当社グループ会社が展開する各種事業においても、様々な法令・規則等の規制の適用を受けており、これら法的規制が変更された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 出生率の低下による人口減少・少子高齢化の急激な加速
わが国の合計特殊出生率は2016年より減少傾向に転じ、出生数の減少も続いております。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により出生率と出生数の低下にさらに拍車がかかる見込みであります。今後地域によって差はあるものの、人口減少と少子高齢化が進行することが想定されます。
そのため、当社グループにおいては、相互直通運転を活用したシームレスな輸送をはじめ利便性や速達性の向上により快適な通勤・通学輸送と魅力ある観光輸送の提供、並びに良質で暮らしやすい住環境の提供や観光誘客を推進しております。これらの取組みをとおして当社沿線の価値向上をはかり、定住化促進と交流人口の創出に努めております。
しかしながら、消費活動の基盤となる人口減少と少子高齢化が沿線地域で急激に加速した場合、鉄道事業を中心に東武沿線を主たるマーケットとして事業を展開している当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ ライフスタイルの変化
昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、働き方や日常生活において新しい生活様式が浸透し、今後もニーズの変化・多様化が続き、新型コロナウイルス感染症発生前の状態には戻らないことが推測されます。
そのため、当社グループにおいては、安定的な収益の確保が厳しい事業環境においても利益を確保できるよう事業構造改革を行い、事業運営体制の見直しやコスト削減施策による効率化と省力化を進めてまいります。また、デジタル技術を活用した「TOBU POINT」の取組みの推進や、流通事業でのEC事業の拡張等により、沿線利用者の付加価値と利便性の向上とグループ収益の拡充を目指してまいります。さらに、サテライトオフィスの積極展開や商業施設の新規開業・リニューアル、ニーズに応えた機能を備えた住環境を提供するなど、「住みたい・住み続けたい沿線づくり」を通じて、各事業においてライフスタイルの変化に適応した新しいサービスを展開し、事業の持続的発展を目指してまいります。
しかしながら、通勤・通学やレジャー等で移動を前提としないライフスタイルが定着した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ 競争環境の変化
当社グループは、鉄道事業をはじめ幅広い事業を展開しており、事業環境の大きな変化や競合事業者の出現等による需給関係悪化や競争激化は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、事業環境の変化やお客様ニーズの変容を的確にとらえ、新たなサービスの展開につなげることにより、お客様へ最適なサービスを迅速かつ柔軟に提供してまいります。
⑤ パンデミック等の発生
パンデミック等が発生し、外出制限や出控えが継続した場合には、運輸事業やレジャー事業を中心に利用者が急減し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、お客様が安全・安心に利用いただけるよう感染症対策等に継続して取組んでおります。特に、新型コロナウイルス感染症に対しては、換気の徹底、抗ウイルス・抗菌加工、抗菌清掃の実施等お客様や従業員への感染予防対策を最大限はかるとともに、鉄道事業をはじめ国民の安定的な生活の確保に欠かせない事業を継続しつつ、感染症拡大の抑止と早期の業績回復に向けた取組みを行っております。
(2)安全・安心の確保に関するリスク
① 安全・安心の確保
当社グループでは、安全・安心の確保はお客様の信頼を得るうえで最も重要であると考え万全を期しておりますが、万が一、重大な事故を発生させ長期的に事業を運営できなくなった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、「安全はすべての事業の根幹である」との信念のもと、お客様と従業員の安全確保を最優先に安全管理体制の確立に努めるとともに、安全のための設備投資や教育・訓練等に継続して取組み、安全・安心の確保に努めております。
② 気候変動及び自然災害等の発生による事業運営・維持への影響
当社グループは、鉄道事業をはじめ幅広い事業を展開しております。近年の平均気温の上昇等の気候変動は大型台風や線状降水帯の頻発をはじめとした異常気象の発生リスクを高めており、大規模な自然災害につながる可能性があります。これに加え、テロ・不測の事故等の発生により長期的に事業を運営できなくなった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、大規模な自然災害等の緊急事態に備え事業継続計画を整備するなど危機管理体制の充実強化に努めるとともに、自然災害に強いインフラの整備やテロ対策等、安全確保のための対策にも継続して取組んでまいります。
③ 情報セキュリティ対策
当社グループは、様々な業務分野において多くの情報システムを使用しております。これらへのサイバー攻撃や不正なアクセス、コンピューターウイルスへの感染や人為的不正操作等により当該システムの機能に重大な障害が発生した場合には、事業の運営に支障し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては『情報セキュリティポリシー』に則り、規程類を整備し情報セキュリティ機能向上や社員教育を実施するとともに、問題が発生した場合においても、当社グループ全体で迅速に対応できる体制を整備しております。
④ 個人情報の管理
当社グループは、各事業において顧客の個人情報を含むデータベースを管理しており、情報が流出した場合には損害賠償や信用の低下等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、情報の取得及び利用に際しての社内での保護規程類を定め管理体制を整備するとともに社員教育を実施し、関係者の情報管理を徹底するほか、情報処理を社外に委託する場合も秘密保持の整備、監督を強化するなど、取り扱いには十分留意し情報管理を行っております。
(3)経営資源の確保に関するリスク
① 人材確保
当社グループは、鉄道事業をはじめ多くの労働力を必要としており、多様化する人材の確保に向けて、安定した雇用をはじめ、多様化する働き方への対応、福利厚生の充実、人材育成・活用や健康増進等、働きやすく働き続けられる就労環境の確保をはかっていくとともに、自動運転等の新しい技術の活用を推進し、業務の省力化・効率化を進めてまいります。
しかしながら、出生率の低下による人口減少と高齢化は、一層早いスピードで進むことが想定され、労務費の高騰及び人材確保が困難となった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 有利子負債残高の増加並びに調達金利の変動
当社グループは、各事業で継続的に行っている設備投資等の必要資金を、主として社債や金融機関からの外部借入れによって調達しております。特に新型コロナウイルス感染症の拡大による収益の低下による借入額の増加により、有利子負債残高が膨らんでおります。今後、金利が上昇基調になった場合や、格付機関が当社の格付を引き下げた場合には、金利負担の増大や資金調達条件の悪化を招くことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、連結有利子負債残高の適切な管理に努め削減をはかるとともに、資金の調達手段の多様化を進めることにより、中長期の金利環境を勘案しつつ適時最適な方法による調達を行っております。
③ 資源価格の高騰
当社グループは、鉄道業をはじめとして多くのインフラ設備を活用し、動力として電力や燃料を使用しております。自然災害の発生や海外情勢の悪化等により資源の価格が高騰した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、省エネ車両や設備の導入によるエネルギー消費やCO2排出量の削減をはかるなど、コスト抑制とともに持続可能な社会の構築に取組んでおります。
④ 保有資産の価値下落
当社グループは、多様な事業展開を行う上で必要な資産や、株式等の投資有価証券等を保有しております。収支管理の徹底や事業構造改革の実施により、事業採算性を高め資産価値の向上をはかるとともに、投資有価証券については保有意義の検証を行い、中長期的に希薄と考えられる場合は段階的に縮減をはかっております。
しかしながら、保有資産のキャッシュ・フロー創出力の低下や株価の大幅な下落等によりその時価が著しく下落した場合は、減損損失または評価損等を計上することにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4)ガバナンスに関するリスク
① コンプライアンス
当社グループは、各種事業において関係法令を順守して事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生した場合には、社会的制裁や信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、「東武グループコンプライアンス基本方針」を制定し、コンプライアンスマニュアルの整備やグループ全社員へコンプライアンス教育の強化をはかるなど、法令順守の徹底と不祥事発生の防止に努めるほか、東武グループ全社員に対して内部通報窓口の周知による利用促進等を行うなど、コンプライアンスの確保に取組んでおります。
② 人権
当社グループにおいては、働きやすい制度や職場環境を整備し多様な人材が活躍しておりますが、人権を侵害する問題が発生した場合には、社会的制裁や信用の失墜等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループにおいては、人権について組織的・継続的に教育を行う体制を整え、社員の正しい認識と理解を深めるとともに、社員が活き活きと働くことのできる職場環境づくりに引き続き取組むなど、人権の尊重に向けて継続して取組んでおります。
なお、上記は当社グループの事業等について予想される主なリスクを例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。