有価証券報告書-第74期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/26 15:00
【資料】
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【項目】
147項目
②戦略
気候変動への対応は社会の持続可能性にとって重要な課題であるとの認識のもと、当社グループは、2018年に環境省が主管する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」へ参画し、国際エネルギー機関(IEA)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による今世紀末までの平均気温上昇が「4℃未満」と「2℃未満」の2つのシナリオ(RCP8.5(注1)、RCP2.6(注2))に基づき、2030年の社会を考察しました。 また、航空運送事業者の責務として、CO2排出量の削減をはじめとするさまざまな取組を着実に推進すべく、2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)を目指すことを2020年6月に宣言しました。その後、IEA SDSシナリオ(注3)などをふまえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成し、2021年の「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」および2022年の同ローリングプランに反映しました。さらに2023年の同ローリングプランでは、2050年までのカーボンニュートラルに向け、1.5℃シナリオの世界の実現を目指すことを前提に、GX戦略を策定しました。
上記に加え、2021年2月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、2022年3月にはSBT(Science Based Target=科学と整合した目標)イニシアティブへの賛同を表明するなど、グローバルな枠組みでの情報開示に努めています。
なお、2022年のICAO(国際民間航空機関)の総会にて、国際航空分野における「2050年までのカーボンニュートラル」を目指す長期目標、および、CO2 排出削減の枠組みであるCORSIA(注4)の見直しが採択され、国際航空に課せられるCO2排出規制は今後さらに進む可能性があります。
このような環境下、当社が掲げる削減目標達成に向け、省燃費機材への更新、日々の運航での工夫(JAL Green Operations)、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の活用による従来の取組を加速させてまいります。その上で、CORSIAによるオフセット義務の取組として、排出権取引の活用を追加するとともに、中長期的には世界で開発中の合成燃料、ネガティブエミッション(CO2回収等)といった新技術を有するサプライヤー・パートナーとの連携を促進し、新たな技術を活用することも進めてまいります。
(注)1.RCP8.5 シナリオ:IPCC 第五次報告書における高位参照シナリオ(2100 年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当するシナリオ)
2.RCP2.6 シナリオ:IPCC 第五次報告書における低位安定化シナリオ(将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発された排出量の最も低いシナリオ)
3.IEA SDS シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)による持続可能な開発目標を完全に達成するための道筋である、持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)
4.Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:航空会社全体の国際線のCO2排出量において、基準値を超える排出分を参加国の航空会社で分担してオフセット義務を課す制度。2024年以降は「2019年の排出量を超えない」から「2019年比85%を超えないこと」に見直され、ベースラインが15%深掘りされました。
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