有価証券報告書-第97期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営環境及び経営方針等
当社グループを取り巻く経営環境は、省エネルギーの進展等による国内エネルギー需要の減少傾向が継続するとともに、小売事業において厳しい競争環境にあるなか、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞の影響などにより、一層厳しくなっている。
当社グループは新々・総合特別事業計画(以下「総特」)に基づき、グループ一丸となって非連続の経営改革をやり遂げ、福島への責任を貫徹していく。さらに、社会的なご要請やお客さまからのご期待にお応えするための「カーボンニュートラル」や「防災」を軸とする諸施策を通じて、企業価値の向上を実現していく。
(https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210421004/20210421004-1.pdf)
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
総特のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目指す。
(3)経営環境及び対処すべき課題等
小売事業の競争激化や原子力発電所の長期停止に加え、自然災害の激甚化・広域化に伴う防災・電力レジリエンスの強化、再生可能エネルギーの大量導入等による電源の分散化、さらには世界的なカーボンニュートラルへの意識の高まり、ESG投資の拡大に伴う地球温暖化対策への要請など、事業環境や社会的要請は大きく変化している。
当社グループは一丸となって、福島第一原子力発電所の事故を決して風化させることなく、福島への責任を全うするため、「復興と廃炉の両立」を推進していく。
また、厳しい事業環境にあっても、社会的なご要請やお客さまからのご期待にお応えするための「カーボンニュートラル」や「防災」を軸とする諸施策を通じて、収益力と企業価値の向上を実現していく。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、社員の出社前検温の徹底や地域をまたぐ往来の制限など、徹底した感染予防策を講じた。また、そうした経験を踏まえ、在宅勤務下でも社員が自律性を発揮し、多様な働き方を実現できるよう、危機管理の強化と社員の幸福度・仕事の生産性・お客さまの満足度の向上を同時に達成する新しいワークスタイルの確立に向けた取り組みをすすめていく。
2021年4月に国から示された「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、安全を最優先として海洋放出に向けた準備をすすめるとともに、風評影響を最大限抑制する取り組みを主体的に行っていく。
加えて、柏崎刈羽原子力発電所と福島第一原子力発電所で発生した一連の不適切な事案により、事業をすすめるうえで最も大切な社会の皆さまからの信頼を大きく損なうことになった。当社としては、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓」という原点に今一度立ち返り、発電所の安全性や業務品質の向上に向け、全力をあげて取り組んでいく。
①当年度の施策
[ホールディングス]
<福島事業>イ.福島復興に向けた取り組み
当社は、被害者の方々の個別のご事情を丁寧にお伺いしながら、迅速かつきめ細やかに賠償をすすめ、当年度末までに累計10兆46億円をお支払いした。
また、昨年10月には、福島復興本社を発電所立地地域である双葉町に移転し、より地域に根差した活動をすすめ、当年度末までに、放射線量測定等の国や自治体による除染・中間貯蔵などへの協力人数は累計44.7万人、除草や清掃・片付けなどの復興推進活動への派遣人数は累計53.2万人となった。
風評被害の払拭に向けた福島県産品の流通促進活動については、小売店や飲食店と連携したイベントの開催やSNS等による情報発信に加え、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、インターネットを活用した販売・キャンペーン企画やデリバリー・テイクアウトのイベントの開催などの新たな施策にも取り組んできた。
ロ.福島第一原子力発電所の廃炉
汚染水対策については、陸側遮水壁やサブドレン、建屋屋根の補修、敷地舗装等の重層的な対策により、昨年12月には計画目標を上回る1日あたり約140m3まで汚染水の発生量を抑制するとともに、1号機から4号機のタービン建屋等の内部に滞留する汚染水の処理を完了した。
使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、3号機において安全に作業をすすめ、目標より約1か月早い本年2月末に全ての燃料の取り出しを完了したほか、1号機、2号機における取り出しに向けた調査等を着実にすすめてきた。
また、「復興と廃炉の両立」を推進し、廃炉事業への地元企業の参画拡大をはかるため、地元企業に対する中長期の発注見通しの説明会や地元企業と元請企業との商談会を開催した。さらには地元における廃炉関連産業の形成や事業スキーム等の検討体制を強化するため、社長直轄のプロジェクト組織を設置した。
<経済事業>ハ.柏崎刈羽原子力発電所の安全確保
柏崎刈羽原子力発電所においては、新規制基準に基づく安全対策工事をすすめるとともに、厳しい条件を想定した訓練の実施や新潟県との原子力防災に関する協力協定の締結などにより緊急時対応力の強化や広域避難計画の実効性の向上に努めてきた。
こうしたなか、IDカードの不正使用や核物質防護設備の機能の一部喪失などの事案を発生させ、地域のみなさまをはじめ広く社会のみなさまからの信頼を大きく損なうこととなった。
当社は、これらの事案を大変重く受け止め、原子力・立地本部長及び新潟本社代表を発電所に駐在させ、現場・現物の視点に基づく組織の立て直しや情報公開・社会の目線に対する発電所所員の意識向上などに取り組むとともに、経営層と発電所所員の直接対話を通じた組織の課題の抽出をすすめてきた。
引き続き、現場に経営資源を最大限投入し、組織全体として体制の強化をはかっていく。
ニ.持続的な成長の実現に向けた取り組み
カーボンニュートラルへの社会的要請の高まりや自然災害の激甚化を踏まえ、電気に対するお客さまや社会からのご期待に応えながら、喜んでいただける価値を提供できるよう取り組んできた。
具体的には、グループ全体のDX戦略の策定やグループ各社との協働によるマーケティング体制の整備をすすめるとともに、脱炭素社会の実現に貢献する電化の推進や社会全体のレジリエンス強化に寄与する防災の産業化に向けた諸施策について検討・実施をした。
特に、需給変動調整や災害時のバックアップ電源としての役割も期待される電動車両に関しては、業務用車両の電動化を推進するコンソーシアムを設立するとともに、急速充電器の共同利用に関する実証実験を開始した。
また、子会社の株式会社e-Mobility Powerにおいては、公共充電サービス事業などを本格的に推進するための基盤構築をすすめてきた。
[フュエル&パワー]
イ.経営基盤とガバナンス体制の整備
既存火力発電事業等の統合完了により確立した燃料上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売にいたる一貫したバリューチェーンのもと、株式会社JERAの自律的な事業運営と迅速な意思決定が可能な経営体制を整えてきた。加えて、統合シナジー効果の早期発現に向けた基盤を構築するため、中部電力株式会社とともに、燃料・火力発電部門の人財を中心に、株式会社JERAへの転籍をすすめてきた。
東京電力フュエル&パワー株式会社においては、株式会社JERAへの人財の転籍に伴い、社内組織の廃止による会社組織のスリム化をはかるとともに、東京電力ホールディングス株式会社との一体的な事業運営体制とすることとした。これにより、株式会社JERAに対するガバナンスを、より効果的かつ効率的に実施していく。
ロ.株式会社JERAの取り組み
昨年10月、2050年時点において国内外の事業から排出されるCO2を実質的にゼロにすることに挑戦する「JERAゼロエミッション2050」を策定し、洋上風力発電を中心とした再生可能エネルギー発電の導入と、アンモニアや水素を活用して発電時にCO2を排出しないゼロエミッション火力発電の技術開発に向けた検討をすすめている。
洋上風力発電事業については、昨年6月にフランスのIDEOL社及びADEME INVESTISSEMENT社と浮体式洋上風力発電事業会社の設立に関する基本合意を締結するとともに、国内の複数地点における建設計画を公表した。
また、燃料トレーディング事業を担う子会社が2019年度から取り組んでいるLNG取引の最適化は着実な実績を上げ、企業価値の向上に貢献した。
[パワーグリッド]
イ.安定供給と託送原価低減の両立
電力供給の信頼度を確保したうえで、国際的にも遜色のない低廉な託送原価水準の実現をめざし、効率的でサステナブルな事業運営に取り組んできた。具体的には、カイゼン活動にデジタル技術を取り入れることにより設備保全の省力化・自動化の深掘りをすすめるとともに、他の一般送配電事業者と連携し、資機材の共同調達や地域間連系設備の建設の推進、共同のコンタクトセンターによる非常災害時を中心とした応援体制の構築などにより、グローバルレベルの効率的な事業運営基盤の構築とレジリエンスの強化をはかってきた。
また、激甚化・広域化する自然災害への対応については、令和元年房総半島台風の経験を踏まえた中期的な対策として、自治体との連携強化に向けた基本協定の締結や停電に関する情報把握の精度向上と迅速化、復旧活動支援ツールの機能拡充・システム化などに取り組んできた。
ロ.事業領域の拡大に向けた取り組み
地域や社会のみなさまの事業活動や課題解決などを支えるための新たな価値の提供をめざし、事業領域の拡大に取り組んできた。具体的には、国内において、市街地再開発事業における特定送配電サービス事業や携帯基地局サービス事業、電力使用データをもとにした宅内IoT事業を中心に事業展開をはかるとともに、海外での事業機会の発掘やグローバル人財の育成、技術やノウハウを活用した実証事業などにグループ会社も含め継続的に取り組んできた。
また、カーボンニュートラルや地域のレジリエンスの強化といった社会的な課題に対し、産官学の枠を超えて協力し合う社会共創の基盤として、2020年8月、スマートレジリエンスネットワークを設立し、エネルギーにとどまらない多様な分野の企業・団体に参加いただいた。この枠組みを通じて、地域の分散電源の活用や新たな事業機会の創出に向けた検討などをすすめてきた。
[エナジーパートナー]
イ.サービスの拡充・拡大の取り組み
電力小売市場における競争が激化するなか、単なる価格競争ではなく、エネルギーに対するお客さまの多様なニーズをとらえた新たな価値をサービスとして提供する取り組みを積極的にすすめてきた。
具体的には、停電や水漏れ、鍵の紛失など、ご家庭におけるトラブルの応急措置に24時間365日対応する「生活かけつけサービス」をご家庭向けの主な電気・ガス料金プランに標準で付加した。さらに、お客さまのご要望にお応えして、ハウスクリーニングやフロアコーティング等のサービスの提供も開始するなど、お客さまへくらしの安心と快適をお届けする取り組みを拡充してきた。
また、電気の販売に続き、ガス販売においても供給エリアを拡大し、関西・中部エリアでのご家庭向けの販売を開始したことにより、電気とガスをセットで選んでいただける機会を増やしてきた。
ロ.「カーボンニュートラル」価値の提供
お客さまが抱えるESG等に関する課題を解決するビジネスパートナーとして、「カーボンニュートラル」の価値を提供する新たな取り組みを推進してきた。
具体的には、株式会社ルネサンスと提携し、蓄電池や太陽光発電と電動バスを組み合わせることにより、平常時におけるエネルギーマネジメントの最適化と、災害時における電動バスの非常用電源としての活用を可能とする「V2Xシステム」の運用を開始した。
また、固定価格買取制度の買取期間が満了した住宅用太陽光発電等に由来する環境価値を利用して、埼玉県内の事業者さまへ実質CO2フリーの電力を提供する地産地消型の電力メニューとして「彩の国ふるさとでんき」を創設したほか、三井不動産株式会社とともに、オフィスビル等のテナント企業さまに環境価値が付加された電力をご利用いただけるサービスを構築した。
[リニューアブルパワー]
イ.国内水力発電事業の基盤強化
国内水力発電事業の維持・拡大の観点から、経年水力発電所の発電電力量の増加と設備信頼度の向上の両立をはかるため計画的なリパワリングをすすめている。加えて、既存の水力発電所の効率的な運用をめざして、点検ロボットの導入などによる作業停止期間の短縮や、同一水系発電所の一貫制御による発電電力量増加の実現とともに、水力発電所の運転制御の一拠点化等による効率化を推進している。
また、揚水式水力発電については、再生可能エネルギーの導入拡大に伴って重要性が増している調整電源としての強みを活かし、一般送配電事業者の調整力として活用している。さらに、その蓄電機能を活用し、新電力等のお客さまのオフピーク時間帯に余剰電力で揚水し、ピーク時間帯に発電してお客さまに送電する「電力預かりサービス」の提供をすすめている。
ロ.事業領域拡大に向けた取り組み
国内洋上風力発電事業については、千葉県銚子市沖の着床式洋上風力発電の実証試験及び実証機の商用化から得られた知見を活かし、千葉県銚子市沖ではオーステッド社と設立した共同開発会社を通じて、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律に基づく洋上風力発電事業者の公募に係る公募占用計画を作成し、2021年5月に主務大臣に提出した。あわせて、秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖でも住友商事株式会社ほか7社とともに組成したコンソーシアムを通じて事業に参画している。
また、今後、国内外で普及が見込まれる浮体式洋上風力発電の技術を獲得し、事業開発の可能性を高めるため、昨年8月に新エネルギー・産業技術総合開発機構の公募する委託研究に参加するとともに、本年2月にはノルウェー沿岸におけるRWE Renewables社やShell Ventures社、Stiesdal Offshore Technologies社との共同実証プロジェクトに参画し、5月には陸上組み立て、浮体部分とキール(重り)の進水、及び風車取付けが完了し、夏頃の試運転を目指し、現在準備をすすめている。
海外水力発電事業については、昨年4月、ジョージアの既設発電所に出資参画し、国内で培った技術をO&Mの最適化に活用するなどの取り組みをすすめている。
(参考)
・当年度の新型コロナウイルス感染症への対策と働き方改革の取り組み
新型コロナウイルス感染拡大を受け、社員の出社前検温の徹底や地域をまたぐ往来の制限など、徹底した感染予防策を講じた。また、そうした経験を踏まえ、With/Afterコロナ時代における本格的な仕事と働き方の変革に向けた取り組みとして「TEPCO Work Innovation」を全社的に推進し、リモートワークやサテライトオフィスの更なる拡充や、リモートワークにおけるコミュニケーションツールの充実化、ペーパーレス・ハンコレス化等の業務プロセス見直しを行った。在宅勤務下でも社員が自律性を発揮し、多様な働き方を実現できるよう、危機管理の強化と社員の幸福度・仕事の生産性・お客さまの満足度の向上を同時に達成する新しいワークスタイルの確立に向け、「TEPCO Work Innovation」の取り組みを引き続きすすめていく。
②優先的に対処すべき課題
[ホールディングス]
<福島事業>イ.「3つの誓い」に基づく賠償と復興に向けた取り組み
福島第一原子力発電所の事故からの10年を区切りとせず、「3つの誓い」に基づき、被害者の方々に寄り添い、時効を理由に一律に賠償請求をお断りすることなく、最後のお一人まで賠償を貫徹していく。
また、来年春以降に計画されている特定復興再生拠点区域の避難指示解除も控えるなか、ご帰還に向けた最大限のご協力を行うなど、今後も復興の最前線に身を置きながら、地域の状況に応じた活動をすすめていく。
加えて、「風評被害に対する行動計画」に基づき、引き続き、小売店や飲食店と連携したイベントの開催やインターネットを活用した企画等による販売促進、SNS等による情報発信を通じて、福島県産品の流通促進活動に取り組んでいく。
ロ.地域と共生した福島第一原子力発電所の廃炉の貫徹
長期にわたる廃炉の貫徹に向け、プロジェクト管理と現場・現物を踏まえた安全・品質管理の機能強化をはかるとともに、「廃炉中長期実行プラン2021」に基づき安全・着実かつ計画的に廃炉作業をすすめていく。
汚染水への対応については、敷地舗装や建屋屋根破損部の補修等による重層的な対策を実施し、汚染水発生量のさらなる低減をはかるとともに、原子炉建屋等の内部に滞留する汚染水の低減に向けた対策などを講じていく。
多核種除去設備等処理水の処分に関しては、地域のみなさまをはじめとした関係者の方々のご理解を深めていただくための対話を継続しながら、国の基本方針を踏まえ、安全を最優先に海洋放出に向けた準備をすすめていく。あわせて、風評影響を最大限抑制するため、海域モニタリングの拡充・強化や正確かつ迅速な情報発信に向けたコミュニケーションの充実をはかり、国際原子力機関の専門家等によるレビューを受けるほか、生産・加工・流通・消費の各段階での対策などにも主体的に取り組んでいく。
また、使用済燃料プールからの燃料取り出しに向け、1号機への大型カバーの設置や2号機での工法の検討などを着実にすすめていくほか、燃料デブリの取り出しに向けた2号機における試験的な取り出し装置の開発や1号機、3号機の格納容器内部の調査などにも取り組んでいく。
加えて、「復興と廃炉の両立」の方針のもと、オープンで透明なプロセスによる地元企業の参画拡大や域外企業の誘致をはかることで浜通り地域への廃炉産業の集積をすすめ、地元の雇用創出や人材育成、産業・経済基盤の創造等に貢献していく。
<経済事業>ハ.原子力発電事業の取り組み
このたびの柏崎刈羽原子力発電所における一連の事案により、事業をすすめるうえで最も大切な社会のみなさまからの信頼を大きく損なうこととなった。当社としては、国内外の知見・経験を積極的に活用するとともに、当社の取締役会の諮問機関であり外部専門家で構成される原子力改革監視委員会から評価やご指導をいただきながら、組織的な課題の抽出や原因分析を行い、本社と発電所が一体となって発電所の安全性や業務品質を向上するための抜本的な改善策を講じていく。
さらに、一連の事案の原因分析・対策立案にあたっては、安全文化・核セキュリティ文化に精通した社外委員のみで構成される「核物質防護に関する独立検証委員会」に評価いただくことで客観性を確保する。
当社は、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓」という原点に立ち返り、発電所を生まれ変わらせるつもりで、発電所の安全性や業務品質の向上に向け、全力をあげて取り組み、立地地域のみなさまからの信頼を得られるよう、コミュニケーションの充実をはかり、地元本位の姿勢で事業に取り組んでいく。
ニ.当社グループの事業戦略と収益力向上への取り組み
当社グループは、電気事業で培った人財や知見、設備などの強みを活用し、多様化する社会的要請やお客さまのニーズのなかでも「カーボンニュートラル」と「防災」を軸に、電化や地域経営などの観点から新たな価値を提供することで社会的課題を解決しながら新たな収益を生み出していく。
また、中長期的な収益力と企業価値の向上のため、再生可能エネルギー事業、モビリティ等電化事業、データ・通信事業、海外事業を中心に、新たな事業を開発・展開していく。加えて、外部からの人財登用により、投資を通じた収益の創出をはかるとともに、投資活動に関する組織能力の向上を実現していく。
こうした事業展開に向け、社員一人ひとりがお客さまのために変革を恐れず挑戦する新たな企業文化を確立するとともに、非連続の経営改革を牽引する人財の確保・育成やグループ全体の経営資源を戦略的に管理・配分する組織体制の整備などに取り組んでいく。
加えて、当社がこれまで培ってきたカイゼン活動をベースにDXを推進することでさらなる生産性向上を実現し、業務プロセスの革新にとどまらないビジネスモデルや企業文化の変革をすすめ、お客さまのご期待に応える商品・サービスの提供につなげていく。
[フュエル&パワー]
株式会社JERAは、燃料上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売にいたる一連のバリューチェーンにおいて、各事業領域の成長をはかるとともに、電源ポートフォリオの最適化や一体的かつ適切な経営管理などを行うことにより、競争力が高いエネルギー調達を実現し、お客さまに付加価値の高いエネルギーを安定的にお届けしていく。加えて、海外を中心として、再生可能エネルギーを含むIPP事業などを活用した戦略的な事業を実施することにより企業価値を高めるとともに、再生可能エネルギーとアンモニアや水素等のグリーンな燃料の導入をすすめ、発電時にCO2を排出しない火力発電を追求し、2050年時点で国内外の事業から排出されるCO2を実質的にゼロとするゼロエミッションに挑戦していく。
東京電力フュエル&パワー株式会社は、気候変動の緩和に向けた取り組みに対する社会的要請の高まりや、世界的な経済成長の鈍化など、株式会社JERAを取り巻く事業環境が急激に変化していることを踏まえ、株式会社JERAにおける事業計画の策定への関与と事業計画の進捗に対するモニタリングなどによる株主としての株式会社JERAとの質の高いコミュニケーションを通じて適切なガバナンスを実施していく。特に事業計画の策定にあたっては、計画の進捗管理や長期トレンドの把握を通じて抽出した課題を共有するとともに、その課題への対策が株式会社JERAの経営に随時、柔軟に反映されるよう、支援・監督していく。
[パワーグリッド]
国内の電力需要の減少により託送事業の規模・収入が伸び悩む可能性があるなか、自然災害への対応が電気を安定的かつ低廉にお客さまへお届けし続けるうえでの大きな課題となりつつあり、これらに同時に対応していく必要がある。
激甚化・広域化する自然災害に対して、デジタル技術の活用による効率的な情報収集や電力供給手段の多様化、電力業界内での技術・技能の共通化や設備仕様の統一等の取り組みに加えて、他の一般送配電事業者との相互応援や国・自治体を含めた関係者との連携・協働の強化等の対策を推進するとともに、既存設備の計画的・効率的な更新・革新をすすめていくことで、送配電ネットワークの健全性を維持しつつ強靭性を高めていく。
また、再生可能エネルギーのさらなる普及等に向け、蓄電池などのお客さま設備の活用や既存系統を最大限に活用した効率的な系統連系等によるカーボンニュートラルの促進をはかるとともに、データセンターの普及など電力を利用して社会の利便性を高める活動を地域とともにすすめ、社会の電化を推進していく。さらに、自然災害発生時等にはドローンやスマートメーターから得られるデータを活かして正確な情報発信を行うとともに、早期の停電復旧に向けて分散電源を活用するなどの地域のレジリエンスの強化にも取り組むことで、安定供給を完遂しながら社会の変化に積極的に対応し、送配電ネットワークの新たな価値の創造に挑戦していく。
加えて、人財、設備、データという面的に広がる経営資源を活用し、地域・社会における自治体や事業者等の活動を支える基盤となるプラットフォームを構築する取り組みを通じて事業領域を拡大するほか、海外の送配電事業の推進などによりさらなる成長をはかっていく。
[エナジーパートナー]
国内の電力小売市場において、他社との価格競争がますます厳しいものとなっている。また、自然災害の激甚化や世界的なカーボンニュートラルの潮流、少子高齢化に伴う労働者不足に加え、新型コロナウイルスの影響等により、企業経営や働き方、生活スタイルが激変していくなか、お客さまがエネルギーに対して期待する価値は急激に変化しつつある。
このような競争と変化のなかで、お客さまから選ばれ続けていくため、これまで培ってきた事業基盤に基づく強みと実績を活かしながら、DXの推進等によるお客さまとの接点の品質を高めることを通じてお一人おひとりのニーズをとらえ、「安心」、「カーボンニュートラル」、「省エネ」、「省力化」を中心に、お客さまの期待を超える価値を創造していく。
法人分野においては、当社グループの再生可能エネルギーやグリーン電力証書などを組み合わせた「カーボンニュートラル」や、高効率機器に関する提案やエネルギーマネジメントを通じた「省エネ」・「省力化」、防災に資する備蓄・電源等を通じた「安心」などの価値を提供するサービスを拡充させていく。
ご家庭分野においては、「生活かけつけサービス」の拡充をはかるとともに、太陽光パネル、電動車両、蓄電池、エコキュート等の電化設備の導入と新しい電気料金プランを組み合わせたサービスを提供することにより、災害時にも電気や水のある生活を続けられるという「安心」に加え、太陽光発電により電気を作り、貯めることによる「カーボンニュートラル」の価値についても一体的に提供していく。
なお、電気・ガスのご契約に関する電話営業において、不適切な営業行為があったことを重く受け止め、再発防止策に徹底して取り組んでいる。今後も、法令遵守の徹底にとどまらず、お客さまに寄り添った業務品質の向上に取り組み、より多くのお客さまに信頼いただけるよう努めていく。
[リニューアブルパワー]
国内水力発電事業については、経年水力発電所のリパワリングによる発電電力量の増加と設備信頼度の向上の両立やカイゼン活動を通じた作業停止期間の短縮、デジタル技術を活用したトラブル未然防止などの取り組みをすすめるとともに、揚水発電設備の強みである蓄電・調整力を活用した電力取引・ソリューションビジネスをさらに拡大していく。海外水力発電事業については、長年の国内水力発電事業で培った技術力・ノウハウに加え、ベトナムやジョージアでの事業開発実績なども活用し、開発ポテンシャルが高い国や地域において事業開発を推進していく。また、洋上風力発電事業において、国内公募案件での事業者選定をめざすとともに、国内での新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託研究やノルウェー沿岸での実証事業から得られる知見を踏まえ、将来的に国内外で普及が見込まれる浮体式洋上風力発電技術の開発にも取り組み、海外を含めた地点開発や事業展開をすすめていく。
さらに、自立的かつ柔軟な資金調達を可能とするため、グリーンボンド発行等のグリーンファイナンスの活用等も検討し、成長を支える投資を着実に実現していく。
(参考)
・気候関連におけるレジリエンス戦略
当社グループは、パリ協定における2℃目標を踏まえ、販売電力由来のCO2排出量を2030年度に2013年度比で50%削減する目標を掲げている。2050年までに脱炭素社会の実現をめざすという我が国の目標を踏まえ、当社グループにおいても、S+3Eの観点や革新的な技術の開発状況を見据え、2050年に向けたCO2削減目標について引き続き検討していく。

(注) 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。
当社グループを取り巻く経営環境は、省エネルギーの進展等による国内エネルギー需要の減少傾向が継続するとともに、小売事業において厳しい競争環境にあるなか、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞の影響などにより、一層厳しくなっている。
当社グループは新々・総合特別事業計画(以下「総特」)に基づき、グループ一丸となって非連続の経営改革をやり遂げ、福島への責任を貫徹していく。さらに、社会的なご要請やお客さまからのご期待にお応えするための「カーボンニュートラル」や「防災」を軸とする諸施策を通じて、企業価値の向上を実現していく。
(https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210421004/20210421004-1.pdf)
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
総特のとおり、賠償・廃炉に必要な資金を確保しつつ、2026年度以内に連結経常利益で3,000億円/年超、2027年度以降には4,500億円規模の利益水準を達成することを目指す。
(3)経営環境及び対処すべき課題等
小売事業の競争激化や原子力発電所の長期停止に加え、自然災害の激甚化・広域化に伴う防災・電力レジリエンスの強化、再生可能エネルギーの大量導入等による電源の分散化、さらには世界的なカーボンニュートラルへの意識の高まり、ESG投資の拡大に伴う地球温暖化対策への要請など、事業環境や社会的要請は大きく変化している。
当社グループは一丸となって、福島第一原子力発電所の事故を決して風化させることなく、福島への責任を全うするため、「復興と廃炉の両立」を推進していく。
また、厳しい事業環境にあっても、社会的なご要請やお客さまからのご期待にお応えするための「カーボンニュートラル」や「防災」を軸とする諸施策を通じて、収益力と企業価値の向上を実現していく。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、社員の出社前検温の徹底や地域をまたぐ往来の制限など、徹底した感染予防策を講じた。また、そうした経験を踏まえ、在宅勤務下でも社員が自律性を発揮し、多様な働き方を実現できるよう、危機管理の強化と社員の幸福度・仕事の生産性・お客さまの満足度の向上を同時に達成する新しいワークスタイルの確立に向けた取り組みをすすめていく。
2021年4月に国から示された「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を踏まえ、安全を最優先として海洋放出に向けた準備をすすめるとともに、風評影響を最大限抑制する取り組みを主体的に行っていく。
加えて、柏崎刈羽原子力発電所と福島第一原子力発電所で発生した一連の不適切な事案により、事業をすすめるうえで最も大切な社会の皆さまからの信頼を大きく損なうことになった。当社としては、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓」という原点に今一度立ち返り、発電所の安全性や業務品質の向上に向け、全力をあげて取り組んでいく。
①当年度の施策
[ホールディングス]
<福島事業>イ.福島復興に向けた取り組み
当社は、被害者の方々の個別のご事情を丁寧にお伺いしながら、迅速かつきめ細やかに賠償をすすめ、当年度末までに累計10兆46億円をお支払いした。
また、昨年10月には、福島復興本社を発電所立地地域である双葉町に移転し、より地域に根差した活動をすすめ、当年度末までに、放射線量測定等の国や自治体による除染・中間貯蔵などへの協力人数は累計44.7万人、除草や清掃・片付けなどの復興推進活動への派遣人数は累計53.2万人となった。
風評被害の払拭に向けた福島県産品の流通促進活動については、小売店や飲食店と連携したイベントの開催やSNS等による情報発信に加え、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、インターネットを活用した販売・キャンペーン企画やデリバリー・テイクアウトのイベントの開催などの新たな施策にも取り組んできた。
ロ.福島第一原子力発電所の廃炉
汚染水対策については、陸側遮水壁やサブドレン、建屋屋根の補修、敷地舗装等の重層的な対策により、昨年12月には計画目標を上回る1日あたり約140m3まで汚染水の発生量を抑制するとともに、1号機から4号機のタービン建屋等の内部に滞留する汚染水の処理を完了した。
使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、3号機において安全に作業をすすめ、目標より約1か月早い本年2月末に全ての燃料の取り出しを完了したほか、1号機、2号機における取り出しに向けた調査等を着実にすすめてきた。
また、「復興と廃炉の両立」を推進し、廃炉事業への地元企業の参画拡大をはかるため、地元企業に対する中長期の発注見通しの説明会や地元企業と元請企業との商談会を開催した。さらには地元における廃炉関連産業の形成や事業スキーム等の検討体制を強化するため、社長直轄のプロジェクト組織を設置した。
<経済事業>ハ.柏崎刈羽原子力発電所の安全確保
柏崎刈羽原子力発電所においては、新規制基準に基づく安全対策工事をすすめるとともに、厳しい条件を想定した訓練の実施や新潟県との原子力防災に関する協力協定の締結などにより緊急時対応力の強化や広域避難計画の実効性の向上に努めてきた。
こうしたなか、IDカードの不正使用や核物質防護設備の機能の一部喪失などの事案を発生させ、地域のみなさまをはじめ広く社会のみなさまからの信頼を大きく損なうこととなった。
当社は、これらの事案を大変重く受け止め、原子力・立地本部長及び新潟本社代表を発電所に駐在させ、現場・現物の視点に基づく組織の立て直しや情報公開・社会の目線に対する発電所所員の意識向上などに取り組むとともに、経営層と発電所所員の直接対話を通じた組織の課題の抽出をすすめてきた。
引き続き、現場に経営資源を最大限投入し、組織全体として体制の強化をはかっていく。
ニ.持続的な成長の実現に向けた取り組み
カーボンニュートラルへの社会的要請の高まりや自然災害の激甚化を踏まえ、電気に対するお客さまや社会からのご期待に応えながら、喜んでいただける価値を提供できるよう取り組んできた。
具体的には、グループ全体のDX戦略の策定やグループ各社との協働によるマーケティング体制の整備をすすめるとともに、脱炭素社会の実現に貢献する電化の推進や社会全体のレジリエンス強化に寄与する防災の産業化に向けた諸施策について検討・実施をした。
特に、需給変動調整や災害時のバックアップ電源としての役割も期待される電動車両に関しては、業務用車両の電動化を推進するコンソーシアムを設立するとともに、急速充電器の共同利用に関する実証実験を開始した。
また、子会社の株式会社e-Mobility Powerにおいては、公共充電サービス事業などを本格的に推進するための基盤構築をすすめてきた。
[フュエル&パワー]
イ.経営基盤とガバナンス体制の整備
既存火力発電事業等の統合完了により確立した燃料上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売にいたる一貫したバリューチェーンのもと、株式会社JERAの自律的な事業運営と迅速な意思決定が可能な経営体制を整えてきた。加えて、統合シナジー効果の早期発現に向けた基盤を構築するため、中部電力株式会社とともに、燃料・火力発電部門の人財を中心に、株式会社JERAへの転籍をすすめてきた。
東京電力フュエル&パワー株式会社においては、株式会社JERAへの人財の転籍に伴い、社内組織の廃止による会社組織のスリム化をはかるとともに、東京電力ホールディングス株式会社との一体的な事業運営体制とすることとした。これにより、株式会社JERAに対するガバナンスを、より効果的かつ効率的に実施していく。
ロ.株式会社JERAの取り組み
昨年10月、2050年時点において国内外の事業から排出されるCO2を実質的にゼロにすることに挑戦する「JERAゼロエミッション2050」を策定し、洋上風力発電を中心とした再生可能エネルギー発電の導入と、アンモニアや水素を活用して発電時にCO2を排出しないゼロエミッション火力発電の技術開発に向けた検討をすすめている。
洋上風力発電事業については、昨年6月にフランスのIDEOL社及びADEME INVESTISSEMENT社と浮体式洋上風力発電事業会社の設立に関する基本合意を締結するとともに、国内の複数地点における建設計画を公表した。
また、燃料トレーディング事業を担う子会社が2019年度から取り組んでいるLNG取引の最適化は着実な実績を上げ、企業価値の向上に貢献した。
[パワーグリッド]
イ.安定供給と託送原価低減の両立
電力供給の信頼度を確保したうえで、国際的にも遜色のない低廉な託送原価水準の実現をめざし、効率的でサステナブルな事業運営に取り組んできた。具体的には、カイゼン活動にデジタル技術を取り入れることにより設備保全の省力化・自動化の深掘りをすすめるとともに、他の一般送配電事業者と連携し、資機材の共同調達や地域間連系設備の建設の推進、共同のコンタクトセンターによる非常災害時を中心とした応援体制の構築などにより、グローバルレベルの効率的な事業運営基盤の構築とレジリエンスの強化をはかってきた。
また、激甚化・広域化する自然災害への対応については、令和元年房総半島台風の経験を踏まえた中期的な対策として、自治体との連携強化に向けた基本協定の締結や停電に関する情報把握の精度向上と迅速化、復旧活動支援ツールの機能拡充・システム化などに取り組んできた。
ロ.事業領域の拡大に向けた取り組み
地域や社会のみなさまの事業活動や課題解決などを支えるための新たな価値の提供をめざし、事業領域の拡大に取り組んできた。具体的には、国内において、市街地再開発事業における特定送配電サービス事業や携帯基地局サービス事業、電力使用データをもとにした宅内IoT事業を中心に事業展開をはかるとともに、海外での事業機会の発掘やグローバル人財の育成、技術やノウハウを活用した実証事業などにグループ会社も含め継続的に取り組んできた。
また、カーボンニュートラルや地域のレジリエンスの強化といった社会的な課題に対し、産官学の枠を超えて協力し合う社会共創の基盤として、2020年8月、スマートレジリエンスネットワークを設立し、エネルギーにとどまらない多様な分野の企業・団体に参加いただいた。この枠組みを通じて、地域の分散電源の活用や新たな事業機会の創出に向けた検討などをすすめてきた。
[エナジーパートナー]
イ.サービスの拡充・拡大の取り組み
電力小売市場における競争が激化するなか、単なる価格競争ではなく、エネルギーに対するお客さまの多様なニーズをとらえた新たな価値をサービスとして提供する取り組みを積極的にすすめてきた。
具体的には、停電や水漏れ、鍵の紛失など、ご家庭におけるトラブルの応急措置に24時間365日対応する「生活かけつけサービス」をご家庭向けの主な電気・ガス料金プランに標準で付加した。さらに、お客さまのご要望にお応えして、ハウスクリーニングやフロアコーティング等のサービスの提供も開始するなど、お客さまへくらしの安心と快適をお届けする取り組みを拡充してきた。
また、電気の販売に続き、ガス販売においても供給エリアを拡大し、関西・中部エリアでのご家庭向けの販売を開始したことにより、電気とガスをセットで選んでいただける機会を増やしてきた。
ロ.「カーボンニュートラル」価値の提供
お客さまが抱えるESG等に関する課題を解決するビジネスパートナーとして、「カーボンニュートラル」の価値を提供する新たな取り組みを推進してきた。
具体的には、株式会社ルネサンスと提携し、蓄電池や太陽光発電と電動バスを組み合わせることにより、平常時におけるエネルギーマネジメントの最適化と、災害時における電動バスの非常用電源としての活用を可能とする「V2Xシステム」の運用を開始した。
また、固定価格買取制度の買取期間が満了した住宅用太陽光発電等に由来する環境価値を利用して、埼玉県内の事業者さまへ実質CO2フリーの電力を提供する地産地消型の電力メニューとして「彩の国ふるさとでんき」を創設したほか、三井不動産株式会社とともに、オフィスビル等のテナント企業さまに環境価値が付加された電力をご利用いただけるサービスを構築した。
[リニューアブルパワー]
イ.国内水力発電事業の基盤強化
国内水力発電事業の維持・拡大の観点から、経年水力発電所の発電電力量の増加と設備信頼度の向上の両立をはかるため計画的なリパワリングをすすめている。加えて、既存の水力発電所の効率的な運用をめざして、点検ロボットの導入などによる作業停止期間の短縮や、同一水系発電所の一貫制御による発電電力量増加の実現とともに、水力発電所の運転制御の一拠点化等による効率化を推進している。
また、揚水式水力発電については、再生可能エネルギーの導入拡大に伴って重要性が増している調整電源としての強みを活かし、一般送配電事業者の調整力として活用している。さらに、その蓄電機能を活用し、新電力等のお客さまのオフピーク時間帯に余剰電力で揚水し、ピーク時間帯に発電してお客さまに送電する「電力預かりサービス」の提供をすすめている。
ロ.事業領域拡大に向けた取り組み
国内洋上風力発電事業については、千葉県銚子市沖の着床式洋上風力発電の実証試験及び実証機の商用化から得られた知見を活かし、千葉県銚子市沖ではオーステッド社と設立した共同開発会社を通じて、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律に基づく洋上風力発電事業者の公募に係る公募占用計画を作成し、2021年5月に主務大臣に提出した。あわせて、秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖でも住友商事株式会社ほか7社とともに組成したコンソーシアムを通じて事業に参画している。
また、今後、国内外で普及が見込まれる浮体式洋上風力発電の技術を獲得し、事業開発の可能性を高めるため、昨年8月に新エネルギー・産業技術総合開発機構の公募する委託研究に参加するとともに、本年2月にはノルウェー沿岸におけるRWE Renewables社やShell Ventures社、Stiesdal Offshore Technologies社との共同実証プロジェクトに参画し、5月には陸上組み立て、浮体部分とキール(重り)の進水、及び風車取付けが完了し、夏頃の試運転を目指し、現在準備をすすめている。
海外水力発電事業については、昨年4月、ジョージアの既設発電所に出資参画し、国内で培った技術をO&Mの最適化に活用するなどの取り組みをすすめている。
(参考)
・当年度の新型コロナウイルス感染症への対策と働き方改革の取り組み
新型コロナウイルス感染拡大を受け、社員の出社前検温の徹底や地域をまたぐ往来の制限など、徹底した感染予防策を講じた。また、そうした経験を踏まえ、With/Afterコロナ時代における本格的な仕事と働き方の変革に向けた取り組みとして「TEPCO Work Innovation」を全社的に推進し、リモートワークやサテライトオフィスの更なる拡充や、リモートワークにおけるコミュニケーションツールの充実化、ペーパーレス・ハンコレス化等の業務プロセス見直しを行った。在宅勤務下でも社員が自律性を発揮し、多様な働き方を実現できるよう、危機管理の強化と社員の幸福度・仕事の生産性・お客さまの満足度の向上を同時に達成する新しいワークスタイルの確立に向け、「TEPCO Work Innovation」の取り組みを引き続きすすめていく。
②優先的に対処すべき課題
[ホールディングス]
<福島事業>イ.「3つの誓い」に基づく賠償と復興に向けた取り組み
福島第一原子力発電所の事故からの10年を区切りとせず、「3つの誓い」に基づき、被害者の方々に寄り添い、時効を理由に一律に賠償請求をお断りすることなく、最後のお一人まで賠償を貫徹していく。
また、来年春以降に計画されている特定復興再生拠点区域の避難指示解除も控えるなか、ご帰還に向けた最大限のご協力を行うなど、今後も復興の最前線に身を置きながら、地域の状況に応じた活動をすすめていく。
加えて、「風評被害に対する行動計画」に基づき、引き続き、小売店や飲食店と連携したイベントの開催やインターネットを活用した企画等による販売促進、SNS等による情報発信を通じて、福島県産品の流通促進活動に取り組んでいく。
ロ.地域と共生した福島第一原子力発電所の廃炉の貫徹
長期にわたる廃炉の貫徹に向け、プロジェクト管理と現場・現物を踏まえた安全・品質管理の機能強化をはかるとともに、「廃炉中長期実行プラン2021」に基づき安全・着実かつ計画的に廃炉作業をすすめていく。
汚染水への対応については、敷地舗装や建屋屋根破損部の補修等による重層的な対策を実施し、汚染水発生量のさらなる低減をはかるとともに、原子炉建屋等の内部に滞留する汚染水の低減に向けた対策などを講じていく。
多核種除去設備等処理水の処分に関しては、地域のみなさまをはじめとした関係者の方々のご理解を深めていただくための対話を継続しながら、国の基本方針を踏まえ、安全を最優先に海洋放出に向けた準備をすすめていく。あわせて、風評影響を最大限抑制するため、海域モニタリングの拡充・強化や正確かつ迅速な情報発信に向けたコミュニケーションの充実をはかり、国際原子力機関の専門家等によるレビューを受けるほか、生産・加工・流通・消費の各段階での対策などにも主体的に取り組んでいく。
また、使用済燃料プールからの燃料取り出しに向け、1号機への大型カバーの設置や2号機での工法の検討などを着実にすすめていくほか、燃料デブリの取り出しに向けた2号機における試験的な取り出し装置の開発や1号機、3号機の格納容器内部の調査などにも取り組んでいく。
加えて、「復興と廃炉の両立」の方針のもと、オープンで透明なプロセスによる地元企業の参画拡大や域外企業の誘致をはかることで浜通り地域への廃炉産業の集積をすすめ、地元の雇用創出や人材育成、産業・経済基盤の創造等に貢献していく。
<経済事業>ハ.原子力発電事業の取り組み
このたびの柏崎刈羽原子力発電所における一連の事案により、事業をすすめるうえで最も大切な社会のみなさまからの信頼を大きく損なうこととなった。当社としては、国内外の知見・経験を積極的に活用するとともに、当社の取締役会の諮問機関であり外部専門家で構成される原子力改革監視委員会から評価やご指導をいただきながら、組織的な課題の抽出や原因分析を行い、本社と発電所が一体となって発電所の安全性や業務品質を向上するための抜本的な改善策を講じていく。
さらに、一連の事案の原因分析・対策立案にあたっては、安全文化・核セキュリティ文化に精通した社外委員のみで構成される「核物質防護に関する独立検証委員会」に評価いただくことで客観性を確保する。
当社は、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓」という原点に立ち返り、発電所を生まれ変わらせるつもりで、発電所の安全性や業務品質の向上に向け、全力をあげて取り組み、立地地域のみなさまからの信頼を得られるよう、コミュニケーションの充実をはかり、地元本位の姿勢で事業に取り組んでいく。
ニ.当社グループの事業戦略と収益力向上への取り組み
当社グループは、電気事業で培った人財や知見、設備などの強みを活用し、多様化する社会的要請やお客さまのニーズのなかでも「カーボンニュートラル」と「防災」を軸に、電化や地域経営などの観点から新たな価値を提供することで社会的課題を解決しながら新たな収益を生み出していく。
また、中長期的な収益力と企業価値の向上のため、再生可能エネルギー事業、モビリティ等電化事業、データ・通信事業、海外事業を中心に、新たな事業を開発・展開していく。加えて、外部からの人財登用により、投資を通じた収益の創出をはかるとともに、投資活動に関する組織能力の向上を実現していく。
こうした事業展開に向け、社員一人ひとりがお客さまのために変革を恐れず挑戦する新たな企業文化を確立するとともに、非連続の経営改革を牽引する人財の確保・育成やグループ全体の経営資源を戦略的に管理・配分する組織体制の整備などに取り組んでいく。
加えて、当社がこれまで培ってきたカイゼン活動をベースにDXを推進することでさらなる生産性向上を実現し、業務プロセスの革新にとどまらないビジネスモデルや企業文化の変革をすすめ、お客さまのご期待に応える商品・サービスの提供につなげていく。
[フュエル&パワー]
株式会社JERAは、燃料上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売にいたる一連のバリューチェーンにおいて、各事業領域の成長をはかるとともに、電源ポートフォリオの最適化や一体的かつ適切な経営管理などを行うことにより、競争力が高いエネルギー調達を実現し、お客さまに付加価値の高いエネルギーを安定的にお届けしていく。加えて、海外を中心として、再生可能エネルギーを含むIPP事業などを活用した戦略的な事業を実施することにより企業価値を高めるとともに、再生可能エネルギーとアンモニアや水素等のグリーンな燃料の導入をすすめ、発電時にCO2を排出しない火力発電を追求し、2050年時点で国内外の事業から排出されるCO2を実質的にゼロとするゼロエミッションに挑戦していく。
東京電力フュエル&パワー株式会社は、気候変動の緩和に向けた取り組みに対する社会的要請の高まりや、世界的な経済成長の鈍化など、株式会社JERAを取り巻く事業環境が急激に変化していることを踏まえ、株式会社JERAにおける事業計画の策定への関与と事業計画の進捗に対するモニタリングなどによる株主としての株式会社JERAとの質の高いコミュニケーションを通じて適切なガバナンスを実施していく。特に事業計画の策定にあたっては、計画の進捗管理や長期トレンドの把握を通じて抽出した課題を共有するとともに、その課題への対策が株式会社JERAの経営に随時、柔軟に反映されるよう、支援・監督していく。
[パワーグリッド]
国内の電力需要の減少により託送事業の規模・収入が伸び悩む可能性があるなか、自然災害への対応が電気を安定的かつ低廉にお客さまへお届けし続けるうえでの大きな課題となりつつあり、これらに同時に対応していく必要がある。
激甚化・広域化する自然災害に対して、デジタル技術の活用による効率的な情報収集や電力供給手段の多様化、電力業界内での技術・技能の共通化や設備仕様の統一等の取り組みに加えて、他の一般送配電事業者との相互応援や国・自治体を含めた関係者との連携・協働の強化等の対策を推進するとともに、既存設備の計画的・効率的な更新・革新をすすめていくことで、送配電ネットワークの健全性を維持しつつ強靭性を高めていく。
また、再生可能エネルギーのさらなる普及等に向け、蓄電池などのお客さま設備の活用や既存系統を最大限に活用した効率的な系統連系等によるカーボンニュートラルの促進をはかるとともに、データセンターの普及など電力を利用して社会の利便性を高める活動を地域とともにすすめ、社会の電化を推進していく。さらに、自然災害発生時等にはドローンやスマートメーターから得られるデータを活かして正確な情報発信を行うとともに、早期の停電復旧に向けて分散電源を活用するなどの地域のレジリエンスの強化にも取り組むことで、安定供給を完遂しながら社会の変化に積極的に対応し、送配電ネットワークの新たな価値の創造に挑戦していく。
加えて、人財、設備、データという面的に広がる経営資源を活用し、地域・社会における自治体や事業者等の活動を支える基盤となるプラットフォームを構築する取り組みを通じて事業領域を拡大するほか、海外の送配電事業の推進などによりさらなる成長をはかっていく。
[エナジーパートナー]
国内の電力小売市場において、他社との価格競争がますます厳しいものとなっている。また、自然災害の激甚化や世界的なカーボンニュートラルの潮流、少子高齢化に伴う労働者不足に加え、新型コロナウイルスの影響等により、企業経営や働き方、生活スタイルが激変していくなか、お客さまがエネルギーに対して期待する価値は急激に変化しつつある。
このような競争と変化のなかで、お客さまから選ばれ続けていくため、これまで培ってきた事業基盤に基づく強みと実績を活かしながら、DXの推進等によるお客さまとの接点の品質を高めることを通じてお一人おひとりのニーズをとらえ、「安心」、「カーボンニュートラル」、「省エネ」、「省力化」を中心に、お客さまの期待を超える価値を創造していく。
法人分野においては、当社グループの再生可能エネルギーやグリーン電力証書などを組み合わせた「カーボンニュートラル」や、高効率機器に関する提案やエネルギーマネジメントを通じた「省エネ」・「省力化」、防災に資する備蓄・電源等を通じた「安心」などの価値を提供するサービスを拡充させていく。
ご家庭分野においては、「生活かけつけサービス」の拡充をはかるとともに、太陽光パネル、電動車両、蓄電池、エコキュート等の電化設備の導入と新しい電気料金プランを組み合わせたサービスを提供することにより、災害時にも電気や水のある生活を続けられるという「安心」に加え、太陽光発電により電気を作り、貯めることによる「カーボンニュートラル」の価値についても一体的に提供していく。
なお、電気・ガスのご契約に関する電話営業において、不適切な営業行為があったことを重く受け止め、再発防止策に徹底して取り組んでいる。今後も、法令遵守の徹底にとどまらず、お客さまに寄り添った業務品質の向上に取り組み、より多くのお客さまに信頼いただけるよう努めていく。
[リニューアブルパワー]
国内水力発電事業については、経年水力発電所のリパワリングによる発電電力量の増加と設備信頼度の向上の両立やカイゼン活動を通じた作業停止期間の短縮、デジタル技術を活用したトラブル未然防止などの取り組みをすすめるとともに、揚水発電設備の強みである蓄電・調整力を活用した電力取引・ソリューションビジネスをさらに拡大していく。海外水力発電事業については、長年の国内水力発電事業で培った技術力・ノウハウに加え、ベトナムやジョージアでの事業開発実績なども活用し、開発ポテンシャルが高い国や地域において事業開発を推進していく。また、洋上風力発電事業において、国内公募案件での事業者選定をめざすとともに、国内での新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託研究やノルウェー沿岸での実証事業から得られる知見を踏まえ、将来的に国内外で普及が見込まれる浮体式洋上風力発電技術の開発にも取り組み、海外を含めた地点開発や事業展開をすすめていく。
さらに、自立的かつ柔軟な資金調達を可能とするため、グリーンボンド発行等のグリーンファイナンスの活用等も検討し、成長を支える投資を着実に実現していく。
(参考)
・気候関連におけるレジリエンス戦略
当社グループは、パリ協定における2℃目標を踏まえ、販売電力由来のCO2排出量を2030年度に2013年度比で50%削減する目標を掲げている。2050年までに脱炭素社会の実現をめざすという我が国の目標を踏まえ、当社グループにおいても、S+3Eの観点や革新的な技術の開発状況を見据え、2050年に向けたCO2削減目標について引き続き検討していく。

(注) 本項においては、将来に関する事項が含まれているが、当該事項は提出日現在において判断したものである。