有価証券報告書-第57期(2023/06/01-2024/05/31)

【提出】
2024/08/28 13:54
【資料】
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【項目】
140項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、情報通信技術を応用した新しい価値創造で顧客とともに社会に貢献することを企業理念としております。その理念の下、ソフトウェアによって顧客の製品やシステムの価値を高めることを経営の目標としております。顧客の満足度向上のために、品質・納期・価格・セキュリティの4項目に重点を置き、グループ各社の得意分野を活かして相互に補完しあうことにより、ソフトウェアのライフサイクル全体にわたって信頼できるトータルサービスを提供しております。
また、既存の事業の維持発展だけではなく、当社グループの特色を活かした新たな事業の創生にも注力し、顧客に提供できるサービスの範囲を広げていくように努めてまいります。
これまでに蓄積した「ソフトウェアエンジニアリング技術(注1)」を一歩進め、顧客の多様なニーズに呼応した高い水準のサービスを提供するために、「きめ細かなサービスとは何か」を徹底的に追求してまいります。
(注1) 当社の考えるソフトウェアエンジニアリング技術とは次の7要素のことです。
アウトプット(ソフトウェア開発の成果)力
プロジェクト管理力
品質管理力
プロセス改善力
開発技術力
人材育成力
顧客接点(コミュニケーション)力
(2)経営戦略及び目標とする経営指標
<経営戦略>当社グループの事業の中心であるソフトウェア開発は、近年その規模が拡大し、それに伴い品質の低下が危惧されております。その中でも特に品質の低下が人や社会の安全に影響を及ぼす制御・組込分野とその土台となるプラットフォーム分野において当社グループは競争優位を保っており、品質に対する使命を果たしてまいりました。
しかし、ソフトウェア開発においては、開発に関係する会社が増えるほど品質が低下する傾向にあります。このことから、当社グループができるだけ広い範囲を受注することが品質に対する使命を果たすことになり、開発効率の向上にもつながると考え、得意分野にリソースを集中し、受注範囲の拡大を目指しております。また、収益改善のため、プロジェクト受注時の審査、プロジェクト管理の徹底により不採算プロジェクトの撲滅と生産性の向上を実現してまいります。技術面でも、主力技術の強化と新規技術の育成に努めてまいります。
当連結会計年度においては、目標とする経営指標として売上高営業利益率10%、連結配当性向概ね50%以上を設定しておりましたが、いずれについても達成しており、年間配当金は5期連続の増配となりました。
<中期経営計画について>当社は、2024年7月19日付で「ソフトウェアで社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」を中期経営ビジョンとする、新たな中期経営計画(2024年6月~2027年5月)を発表いたしました。継続して人材育成を進めることで生産性を高め、新規設計案件や大規模案件の受注を増やすことで、さらなる成長を目指します。合わせて経営効率の目標を設定し、資本政策などを進めてまいります。
中期経営計画の最終年度である2027年5月期時点で、連結売上高120億円以上、連結営業利益12億円以上、ROE8.0%以上を目標といたします。
具体的な内容は以下のとおりです。
①事業活動
「トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス(T-SES)のレベルを上げて注力分野を拡大する」を基本方針とし、人材育成による新規設計能力、見積能力、マネージメント能力の向上、T-SESのトータル度向上により生産性を高め、新規設計案件や大規模案件の受注を増やすことで事業規模拡大を目指します。また採用の強化、パートナー企業の拡大により技術者の確保に努めます。
※T-SES:当社が保有する知見に基づいて、顧客(またはエンドユーザ)を正しい仕様決定に導き、以降一貫して完成まで請け負うこと。(当社の造語)
②注力事業、注力分野
「社会インフラのデジタルトランスフォーメーション(DX)」に注力いたします。高度経済成長期にシステム化が進められた社会インフラは老朽化が進み、長年の延命措置によりソースコードが煩雑化し、改修が困難な状況です。さらにサイバーセキュリティへの対応や、最新のIT技術の適用など、システム自体の変革が求められております。当社では「社会インフラのDX」を、保守性、拡張性が高く、サイバーセキュリティが備わった先進的なシステムへ転換することと考えており、社会インフラの「セキュア」で「スマート」なプラットフォームへの変革に貢献し、IoTやクラウド、AIなどの最新の技術を備えた新たなシステム開発に注力いたします。
③株主還元
累進配当政策を進めてまいります。なお、当連結会計年度で5期連続の増配となっております。
(3)経営環境及び優先的に対処すべき課題
情報サービス産業におきましては、業務効率化・生産性向上を目的としたデジタルトランスフォーメーション(DX)や情報通信技術(ICT)への関心は拡大傾向にあり顧客投資意欲は堅調に推移するものと見込まれます。
当社グループは、主に社会インフラ分野に関わる参入障壁が高い制御・組込系のシステムの開発を強みとしておりますが、当社グループを取り巻く経済状況の激変から、業界別の受注環境は大きく変化しております。そのため、当社の各セグメント間の受注量の格差が拡がり、受注価格低減の要求もあいまって、早急な対応をとることが求められています。
これらの直面する課題に対処するだけではなく、今後さらなる飛躍をするための備えをすることも重要な課題であり、以下の取組みを行ってまいります。
① 営業力の強化と引き合い案件の増加
取引量の多い既存の顧客からの安定受注に加え、それに次ぐ顧客からの受注拡大のネックとなっているリソース(技術者)を確保するために人材の流動化をさらに進めます。また、新規顧客を開拓するために、当社グループの主力技術分野での提案力を強化し、営業体制の強化を図ります。これにより主要取引先の占有リスク回避にもつなげてまいります。
② 請負化・大規模化の推進
プロジェクト管理支援部によるプロジェクトマネージャ育成プログラムを実施し、プロジェクト管理力を強化することにより請負業務のリスクを軽減し、大規模システムの請負能力を強化します。品質技術部により開発プロセスを標準化し、安定した品質と生産性の向上を図ります。また、必要な技術を持つ技術者を流動的にプロジェクトに結集させるために事業部間の連携を強化してまいります。
③ コスト競争力の強化
プロジェクト管理の強化により品質と開発効率を向上させると同時に、中国現地法人を活用し原価低減を進めます。また、基幹情報システムにより管理業務を効率化させることで販売費及び一般管理費を削減し、コスト競争力を強化してまいります。
④ 優秀な人材の確保、育成
当社グループの競争力の源泉である人材育成に関しては、これまで同様、社外の人材育成の専門家の協力を得て、最優先事項として取組んでまいります。また、採用活動におきましても、海外を含めた広い視野で実施し、優秀な人材の確保に努めてまいります。
⑤ グローバル化の推進
今後も増加することが予想されます海外案件につきましては、顧客がグローバル市場で競争優位を保てるよう技術の育成を図り、顧客とともに積極的にグローバル化を推進してまいります。
⑥ パートナー企業の開拓
業界におけるリソース(技術者)不足を解消するために、業務を任せることのできる技術力に優れたパートナー企業を増やしてまいります。また、あわせて必要となる技術者を必要なタイミングで見つける仕組み作りを進めてまいります。
⑦ 働き方改革の推進
多種多様な働き方に対応するための在宅勤務制度等の導入や、利便性・生産性を向上するための労働環境の改善を進め、持続的な成長を目指してまいります。