有価証券報告書-第48期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/22 15:40
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【項目】
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、足元の企業業績や設備投資は底堅く推移し、雇用・所得環境も緩やかな改善傾向にあるものの、英国のEU離脱問題や米国の新大統領就任による為替変動等の金融市場の混乱等、海外経済の影響を中心に先行き不透明な状況が続いております。
当社グループが属する情報サービス業界は、IT技術のイノベーションによる「IoT(Internet of Things)」、「FinTech」等が新たな社会基盤として活用され始め、従来以上にIT技術に対する期待・需要が高まるとともに、企業向けシステム開発についても「所有から利用へ」の顧客ニーズの変化のなか「クラウド」に代表されるサービス型ビジネスへの転換が進んでおり、業界全体は緩やかな成長基調で推移しました。一方で、このような状況のもと優秀な技術者の不足及び高コスト化等、重要な事業リソースに係る課題も顕在化しており、最新テクノロジーやITイノベーションに対応できる優秀な技術者の育成及び確保が急務となっております。
このような経営環境のもと当社グループは、主に生活者向けに利便性、快適性及び心の豊かさを提供する企業に対して、システム開発及びデータセンターを活用した情報処理サービス、「HULFT(ハルフト)」を中心としたパッケージ製品の販売及びサポートサービス等を提供してまいりました。また、パッケージ製品の更なるグローバル展開、最新テクノロジー(「IoT」「FinTech」等)の研究開発及び活用、先端的なクラウドソリューションやクラウドプラットフォームサービスの活用・連携、全社的な技術戦略を推進する人材の育成等に積極的に取組み、事業基盤の拡大を図っております。これらに加え、当社における対処すべき課題として、前連結会計年度までに発生した大型システム開発案件の開発遅延等から、当社において、本件開発業務に関する技術的難易度が高まったことへの認識及びこれに対応できるレベルの技術力が不足していたこと、多様な仕様変更等へも対応できるプロジェクトマネジメント力を有していなかったこと、並びに、社内及びお客様に対してコミュニケーションが十分に行われなかったことが本件開発遅延等の主な原因と考えており、その再発防止策として、「技術レベルの向上」「プロジェクトマネジメントの改善・強化」「組織風土改革~風通しの良い企業風土の構築と社員のマインドセットの刷新」を掲げて、同様の問題が生じることの無いよう抜本的な対応に取組んでおります。
当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高は31,024百万円(前連結会計年度比4.1%増)、営業利益は3,351百万円(同26.3%増)、経常利益は3,177百万円(同23.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,366百万円(前連結会計年度は6,094百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
なお、前連結会計年度において、大型システム開発案件の開発遅延問題に係る条件付和解に伴う損害賠償費用6,646百万円を損害賠償引当金として損失処理しておりますが、平成28年7月29日付で第三者機関であるソフトウェア紛争解決センターより中立評価を受領したことにより、本和解の停止条件が成就し、本和解は直ちに効力を生じたため、当該損失額は前連結会計年度に計上済の金額で確定いたしましたので、当該和解金の支払いによる当連結会計年度の損益に与える影響はありません。また、前連結会計年度の報告セグメントにおいて分類表示していた「BPO事業」は、平成28年2月1日付で会社分割及び株式譲渡を行ったため、当連結会計年度において、「BPO事業」はありません。
当連結会計年度におけるセグメント別の業績は次のとおりであります。以下、セグメント間取引については相殺消去しておりません。
なお、当連結会計年度より、重点顧客マーケットビジネスへのフォーカスを推進し、また、「選択と集中」によるカテゴリートップを目指すべく組織変更を行っております。これにより、従来「エンタープライズ・ソリューション事業」に含まれていた一部クレジットカード関連事業を「カードシステム事業」に統合集約し、「エンタープライズ・ソリューション事業」は流通小売業界及びその他新規顧客、新サービスの提供に注力することとし、その報告セグメントを「流通・ITソリューション事業」に変更しております。前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分により行っております。
(カードシステム事業)
売上面においては、前連結会計年度において製品保証対応等により一時的に減少したシステム開発及び情報処理サービスが回復したこと等により、当連結会計年度のカードシステム事業の売上高は15,658百万円(前連結会計年度比14.1%増)となりました。
利益面においては、売上高の回復に伴い収益性が改善したこと等により、当連結会計年度の営業利益は2,535百万円(同89.7%増)となりました。
(流通・ITソリューション事業)
売上面においては、既存顧客向けのシステム開発及び情報処理サービスが減少したこと等により、当連結会計年度の流通・ITソリューション事業の売上高は4,898百万円(同8.8%減)となりました。一方で、前連結会計年度より新たに取組み始めた経費精算やデータ分析領域等における先端的なソリューションを活用したサービスは、顧客開拓やマーケティング活動の進展等の成果が出始めております。また、最新テクノロジーである「IoT」や「ブロックチェーン」を活用した「本人のみ受け取り可能な宅配ボックス」の実証実験等、事業の将来展開を見据えた新たな取組みを積極的に行っております。
利益面においては、生産性の向上等により収益性は向上しているものの、売上高の減少及び一部プロジェクトの開発中止に係る解約損失引当金繰入額728百万円を計上したこと等により、当連結会計年度は720百万円の営業損失(前連結会計年度は438百万円の営業損失)となりました。なお、前述のプロジェクトの開発中止に係る損失計上や既存顧客の取引規模減少等により将来の事業収益の低下が見込まれることから、当連結会計年度において176百万円の減損損失を計上しております。
(HULFT事業)
通信ミドルウェアのデファクトスタンダードである当社の主力製品「HULFT」の累計出荷本数は、前連結会計年度末から約7,800本増加し約189,600本となり、導入社数は前連結会計年度末から約300社増加し8,700社を超えました。
売上面においては、「HULFT」「DataSpider」及び「HULFT Series」製品等のサポートサービスは順調に推移したものの、「HULFT」等のライセンス販売について前連結会計年度は大型案件の受注があったこと、グローバル製品戦略の見直しがあったこと等により、当連結会計年度のHULFT事業の売上高は7,081百万円(前連結会計年度比2.5%減)となりました。一方で、平成28年9月より販売を開始した戦略製品である「HULFT IoT」は大手企業向けの受注が決まる等、着実に案件が増加しており、他社との提携による共同サービス展開も進展しております。
利益面においては、更なる事業拡大を狙い、製品開発体制及びテクニカルサポート体制の強化、グローバル展開強化のための次世代製品の研究開発、ブランド力向上に向けたマーケティング活動の推進等、先行投資として位置付ける施策を講じていることにより、販売費及び一般管理費が増加し、当連結会計年度の営業利益は1,256百万円(同54.5%減)となりました。
(その他)
その他には㈱フェス等を分類しており、売上面においては、医療機関向けシステム運営管理受託及びITサービスマネジメントの標準である「ITIL」関連事業が順調に進捗したこと、また、特定顧客への情報処理サービスの提供が加わったこと等により、当連結会計年度のその他の売上高は4,388百万円(同35.2%増)となりました。
利益面においては、売上高の増加及び収益性の向上等により、当連結会計年度の営業利益は459百万円(同18.4%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より2,446百万円増加し、7,903百万円となりました。各キャッシュフローの増減状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,394百万円(前連結会計年度は452百万円の収入)となりました。
主な減少要因は、大型システム開発案件の開発遅延問題に係る損害賠償金6,646百万円を支払ったこと等によるものであります。また、主な増加要因は、減価償却費2,739百万円を計上したこと、税金等調整前当期純利益2,691百万円を計上したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は800百万円(前連結会計年度比77.9%減)となりました。
主な減少要因は、サーバー・通信機器及びソフトウェア等に660百万円を支出したこと、関係会社株式317百万円を取得したこと等によるものであります。また、主な増加要因は、有価証券100百万円が償還になったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は4,640百万円(同354.0%増)となりました。
主な増加要因は、コミットメント期間付タームローンによる長期借入の実行により7,000百万円の収入があったこと等によるものであります。また、主な減少要因は、セール・アンド・割賦バックの返済により1,416百万円を支出したこと等によるものであります。